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紙の本
毛沢東の悪行を支えた男の生涯
2012/04/10 01:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MESSY - この投稿者のレビュー一覧を見る
「中国のベリヤ」と呼ばれた男の伝記です。
ベリヤとは言うまでもなく、スターリンの大粛清の執行役をつとめた、悪名高い人物です。
ベリヤが最後は死刑になったのに比べ、康生はいわば畳の上で往生したのですから、もっとワルかもしれません。
ともあれ、毛沢東の手先となって大活躍(?)した男の生涯ですから、面白くないわけがありません(不謹慎な言い方で恐縮です)。
まず強い印象を受けるのは、権力に対する触覚ともいうべきものです。共産党が政権を握る前の党内抗争のなかで、王明から毛沢東にあっさり乗り換えた変わり身。
文革を引き起こした毛沢東の心理状態への洞察。
中国の伝統的な書画を愛し、自らも優れた書家、画家でありながら、政治的に必要と判断すれば破壊をためらわない、節操のなさ。
そして、毛沢東が亡くなる10カ月前に病死し、断罪される憂き目を避けることに成功した、タイミングのよい死に方。
とにかく、すさまじい男です。
もちろん、毛沢東が死に、4人組が逮捕されて文革が終わった後で、断罪はされました。共産党からの除名処分も受けました。しかし、すべて彼が亡くなった後のことで、いわば後の祭りです。かつての愛人だったとみられる江青ら4人組が裁判にかけられた末路に比べ、この男が天寿を全うしたのは、なんとも承服しかねる気分になります。
もっとも、さらに承服しがたいのは毛沢東、その人の扱いでしょう。文革のときの康生や4人組の悪事も、大躍進の惨禍も、おぞましい反右派闘争も、すべて毛沢東が根源です。にもかかわらず、中国のWTO加盟を控えた1999年から、中国の紙幣の図柄がすべて毛沢東になりました。
本書と同時に、昨年出た「毛沢東の大飢饉」や「毛沢東最後の革命」、あるいは最近出た「毛沢東大躍進秘録」などを読むべきでしょう。毛沢東の数々の悪行を支えたのは康生と4人組だけでなく、劉少奇や周恩来、トウ小平ら、当時の共産党の指導部にいた人たちだったことが、よくわかります。つまり、共産党は政権を維持するために、毛沢東の罪をいわば不問にしたのです。康生と4人組を断罪しただけで済ませている共産党政権は、本当の意味で歴史に向き合ってはいないのです。
そのせいもあって、いくつかの謎が浮かびます。共産党が政権を樹立したあと、康生の活動はしばらく低調ですが、それはなぜなのか。同じころ、林ピョウの活動も比較的低調だが、それは偶然なのか。康生と仕事仲間だったこともある陳雲は文革の政治抗争に巻き込まれるのを上手に回避した印象があるが、それは康生とのつながりに負うところはないのかーーなどです。