紙の本
マーカイム・壜の小鬼 他五篇 (岩波文庫)
著者 スティーヴンソン (作),高松 雄一 (訳),高松 禎子 (訳)
『宝島』で知られる作家スティーヴンソン(1850‐1894)。詩人のヴィヨンを主人公にした最初の短篇「その夜の宿から」、「水車屋のウイル」、そして南海を舞台にした晩年の摩...
マーカイム・壜の小鬼 他五篇 (岩波文庫)
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商品説明
『宝島』で知られる作家スティーヴンソン(1850‐1894)。詩人のヴィヨンを主人公にした最初の短篇「その夜の宿から」、「水車屋のウイル」、そして南海を舞台にした晩年の摩訶不思議な話「壜の小鬼」と「声たちの島」まで、寓話、ユーモア物、奇譚など、散文の文体を徹底的に追求した作家が織り成す多彩な短篇7篇を精選。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
その夜の宿 | 5−43 | |
---|---|---|
水車屋のウィル | 45−93 | |
天の摂理とギター | 95−151 |
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紙の本
旧世界と現代の衝突によって目覚めた物語
2013/02/11 16:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
同時代において最強の文豪だったらしいスティーブンソンとは、世界を理知的に見る人なのかと思う。それはあたかも世界を方眼紙に載せて分析するような、幾何学的な視点が感じられる作品集。
「壜の小鬼」その小壜を買ったものは、それより安い値で売らなければならない。それがこの世に現れた時は数百万ドルで買われたというが、数十年を経た今は50ドル。するとそれを1セントで買ったものはどうなるのか。現世的な解決はともかく、提示された級数的な論理体系の中では行き詰まり、ジレンマである。世界がその枠から溢れ出すのではなく、極小化して人間の手に負えなくなることによる破局。
「声たちの島」これもハワイ諸島で、ドル銀貨を次々と取り出す魔術師。しかし無から有を生み出す魔術は無く、そのツケはどこかに回って来る。様々な魔術と近代合理主義が共存する世界の人々が、そのギャップと折り合いをつけて生きていく姿は、コミカルではあるが、しかしなぜか笑えない。
「天の摂理とギター」なんの権威も無く放浪する興行師夫婦。がさつで破天荒な性格と、泥沼を這いずるような暮らしの中で、芸術の価値を説くのがその場しのぎの口からでまかせなのか、かつては真剣に信じた理想なのか、それも混沌の中にある。果たして底辺社会の人々にも、ギターの音色は潤いをもたらしたのかと問いかけられる。
「水車小屋のウィル」アルプスの山奥の閑村で生涯を終える男。町に出る気は起きないという彼には、町まで行けば海の向こうが見たくなり、その次は星の世界へ行かねばという連鎖の構造が見える。
これらは宇宙の、あるいは人間の内面という空間の構造の脆さや、矛盾を突いて来るような話ではないか。
15世紀の詩人ヴィヨンの放埒な日常を想像した「その夜の宿」、当時の詩人の境遇、その才能に相応しい生活を許さないパリの社会構造を映しているのかとも思う。
「ねじれ首のジャネット」怪談ではあるが、どういう因果の怪談か曖昧だ。信仰への離反か、道徳律か、ではこのスコットランドの農村の人々はそれを批判できるほど立派なのか。「マーカイム」これも道徳と信仰が絡んでいるが、どこか遠くで「キレイゴト」と囁く声が聞こえるのは気のせいだろうか。あるいは本書の中に置かれるからそう思えるのか。
超自然的な出来事であれ、罪悪であれ、それらの価値観を肯定も否定もせず、ただ発生要素を並べて見せることで、従来と同じように評価する人もいれば、違う角度からの見方に気づく人もいるということなのか。
実は「バベルの図書館」のステーヴンスンの巻の収録作が全部入っている(訳者も同じ)。ボルヘスによる序文は無いけど。
紙の本
訳も良く、全体的に面白かったです。
2021/05/28 18:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:一読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
水車屋のウイルや天の摂理とギターなど全体的に面白かったです。訳も読みやすくオススメですね。