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名もなき毒 (文春文庫 杉村三郎シリーズ)
著者 宮部 みゆき (著)
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回され...
名もなき毒 (文春文庫 杉村三郎シリーズ)
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商品説明
今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【吉川英治文学賞(第41回)】【「TRC MARC」の商品解説】
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現代に切り込む考えさせられるミステリー
2012/01/24 00:23
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あめりサンライズ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「誰か」の続編的存在ですが、この本から読み始めても十分楽しめる大傑作です。面白くて、私は一気に読んでしまいました。
ミステリーというジャンルには収まりきらず、現代に対するメッセージ性の強い、深い作品です。殺人の起こり方、登場人物の行動の仕方、様々な場面設定が、まるでノンフィクションかのような錯覚を起こすほど、昨今の時事問題を取り込み、現代の「毒」をテーマに書かれています。
化学的な「毒」から、人間自体の内部に蔓延る「毒」へと焦点が移っていき、展開ごとに良い意味で予想を裏切られ、夢中で読んでしまいます。主人公杉村の言葉には、深く考えさせられるものや、心に残る表現が多く存在します。
私が読んだ感想では、本書の人間自体に蔓延する「毒」は、孤独を端に発した、説明のつかない怒りのエネルギーにあるような気がします。
大震災で絆の大切さが再確認された今、本書を読むと単なるミステリーを超えて、自分の行き方や現代について省みるきっかけを作ってくれるような本でもあり、とてもオススメです。
紙の本
余計なことに首を突っ込む杉村
2019/04/14 17:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきの杉村シリーズ第2作目の小説である。杉村三郎は今多コンツェルンのグループ広報室に勤務する。義父が同コンツェルンの会長である。会長の妾腹の娘、菜穂子と結婚したのである。結婚の条件の一つがそこで勤務することと決められたので、従っている格好である。
上記の通り、杉村はサラリーマンであり、後日独立して探偵事務所を設立するが、この時はまだ勤め人であった。そのせいか、話は次々に進んでいき、切れ目がない。ところが、『希望荘』で独立すると、ストーリーが読み切りで区切られている。扱っている事件が終了するとそこで区切りがつくというわけであろう。
この『名もなき毒』では、事務所の風景が随分多い。それもそのはず、当初いた女性のアルバイト職員が困った社員で、職場をかき回す。どうやら、グループ広報室で雇用する前の職場でも同様のトラブル・メーカーだったらしい。
組織の所属長としては、この種の社員の扱いには手を焼いてしまう。まず、なぜそんな問題社員を採用したかである。しかし、それは本書ではほとんど追及されていない。まあ、ミスなのであろう。それだけならよかったが、この女性が活動的だった。しまいには杉村宅に押しかけてきて、ナイフをかざしてきた。読者が人事担当者だったらやめてくれと叫んでいるところであったろう。
次々に勃発する事件はそれだけではなかった。連続毒殺事件が続いていた。被害者の一人はコンビニの紙パック入り飲料を飲んで殺されてしまった。犯人はその被害者の愛人ということで落ち着いたかにみえたが、杉村が独自に追求したところ、コンビニのアルバイト店員が真犯人であることが明らかになった。
杉村はサラリーマンで余計なことに首を突っ込んだわけである。これで妻の今多菜穂子に責められる。杉村の本性が少しずつ表面に現れてくる。夫婦間の会話などが木目細かく描写され、読者はどっぷりと宮部のペースに浸かっていく。これほどくどく描いていくのは、本作品が新聞小説だったことに起因しているようだ。
それにしてもこれだけの大部の作品を一気に読ませてしまうのは大した腕である。まだ、後編が続いているようなので、少しずつ楽しんでいこう。
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悪意という毒
2018/12/28 20:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
人に毒を放つことで自らの存在を誇示するクレーマーに対処する一方で、連続青酸カリ毒殺事件に巻き込まれる杉村三郎。思いも寄らないラストに向けての複層的な展開は、宮部先生ならではの圧巻の筆致でした。600ページにも及ぶ紙幅を長く感じさせないのは流石です。また、平穏な日常を蝕んでいく悪意という毒を、これでもかと描いていますので、事件は一応の解決を見ますが、得体の知れない読後感が残ります。ところで、迷惑な隣人がテレビで特集されるように、「名もなき毒」を放つ人は実際に存在します。決して他人事ではないと思いました。
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ただ単に犯罪が起こって、犯人が捕まってめでたしめでたしで終わる様な作品ではない
2018/05/24 20:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
杉村三郎シリーズの第二作である。必ずしも第一作の「誰かSombody」を読まなくても成立する話だが、随所に前の事件として言及があるので気にはなる。だから順番に読むのが好ましいと思う。宮部みゆきらしい社会派的な要素を強く持った作品だ。タイトルの付け方もうまい。物語の本質に係わっているが、かなり読み進めてからでないとその意味はわからない。600ページ近くあるので読み応え十分だ。ただ単に犯罪が起こって、犯人が捕まってめでたしめでたしで終わる様な作品ではない。
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『誰か』の続編です
2023/03/31 21:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部さんが描く迷惑女の破壊力たるや、読んでいていっそ清々しい程突き抜けてるよね。日常と隣合わせの悪意 リアリティがあります。
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私たちの中にある毒のことを思う
2020/06/21 23:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
もちろんフィクションだが、ノンフィクションとして身近にありそうな話。事件は、青酸カリによる無差別殺人....なのだが、その悲惨な事件が脇役になってしまうほどの何本も平行して起こる小さなしかし見過ごせない事件...「他人がどうしても気に入らない。」「自分のせいじゃない」という誰もが普通に思う感情の積み重ねが臨界点を越えて起こる事件が巻き起こる。ニュースで見聞きする事件の多くはたぶんそのようにして起こるのだと当たり前のことを確認した気もする。
そして、自分の中に潜む「毒」を思う。それは、こころが弱われば、自らをも殺す「毒」だ。すべてを強く他人のせいにしたときは犯罪をもよぶ「毒」。しかし少しの「毒」も無ければ、戦えない。そして、人の中にある「毒」は「言葉という道具」でもってその威力を発揮するのだなぁ...。面白いけれど、恐ろしい。
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毒は伝染する。
2018/12/01 20:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こば - この投稿者のレビュー一覧を見る
杉村三郎シリーズの2作目。個人的にはシリーズの中で1番好きな作品です。本作から読んでも十分に楽しむことができます。
本作のような事態まではいかなくても「あ〜こういう人いるなぁ」と共感できる攻撃的な登場人物は、爽快なラストではありませんが、自分がどういう人間でありたいか考えさせられます。
きっと私は不器用でお人好しな杉村三郎のようになりたいのだと思う。
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なかなか
2018/01/20 20:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまぜみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
分厚い文庫ですが
どんどん読めました
予想した結果ではありませんでしたが
楽しめました。
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現代社会には至る所に「毒」が隠されている!
2016/01/27 09:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、現代社会に隠された一見ありふれた、しかし大きな問題に発展する可能性もある「毒」がテーマになっています。ある会社に雇われた原田いずみは、実は悪質な人物で、様々なところで、いろいろな問題を起こしている人物でした。そんな彼女の対応窓口となった一人の男性はいかに。。。。そして、そんな時、世間では無差別毒殺事件がマスコミをにぎわしていました。さて、いったいどうなどのだろう。読者は一気にこの作品に引き込まれること間違いなし!
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敵にも味方にも人間らしさが感じられます
2021/12/25 21:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
理不尽を体現したような強烈な主要人物がいますが、主人公が温厚で冷静なおかげで、主人公に感情移入してもストレスを感じることなく読み進められました。長編小説ではありますが、中盤からも様々な人物が現れて惹き込まれる展開になり、終盤は畳み掛けられるようでした。
作中の人物の台詞を通して、私自身がハッとさせられる箇所もありました。楽しめるのはもちろんのこと、色々と考えさせられる作品でした。読み終えてみると、名もなき毒とは言い得て妙な表題だと思います。
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悪意
2020/10/29 15:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここに出てくる人物ほどじゃなくても、悪意を感じることってあるもんな。
そういう毒って、浄化するのに時間かかるんだよね。
デトックスだよ。
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私もその名前を教えてほしいと願う
2020/01/08 22:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
名もなき毒とは何なんだろう、作品には青酸カリやシックハウス症候群、土壌汚染といった恐ろしい「名のある毒」も登場するのだが、ここでいう毒というのは人間そのもののことだ、よく「あの人は毒のある人だ」というあれだ。その毒によって身内の結婚相手を自殺に追い込んでしまった恐ろしい女まで登場する。作品の中で、宮部氏は人類はジャングルの闇を跳梁する獣の牙の前で無力だったが、ライオンという名前が与えられたときから人間はそれを退治する術を編み出したと主人公に語らせている。そして我々の内にある毒の名前を教えてほしいとも語らせている、凶悪で無慈悲な事件が頻繁に起こる昨今、私もその名前を教えてほしいと願う
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良作は口に苦し
2017/09/24 19:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる「杉村三郎シリーズ」の第二弾です。タイトルの『名もなき毒』の毒は、作中の連続毒殺事件の毒だけを指しはいないでしょう。市井に普通に生活する人々の中に静かに毒素が広がっているのかもしれません。杉村本人だけでなく、彼の家族までが毒のターゲットとなっていく様にゾッとします。
宮部作品はみんなが丸く収まる大団円は描かれない、とある作品の解説にありました。この作品も例外にあらず。良薬だけでなく良策も口に苦し。
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ストーリーよりも登場人物がポイント?
2014/03/19 21:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BACO - この投稿者のレビュー一覧を見る
2つの出来事が同時進行しているが、いずれも抵抗感なく理解できるあたりはさすが宮部みゆきだと感心した。
この作者の小説は、題材そのものに対する引きつけ感よりも、登場人物の心境の変化に興味を持ってしまい、まさに「生きているのでは」というところに面白さを感じてしまう。
その為、登場人物の心理変化がキーとなって事件の発展性につながっているのではないかと思う。
「事件があって人がいる」のではなく、「人がいて事件がある」といったところでしょうか?
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インパクトに欠ける
2012/01/24 21:57
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぼのひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までの作品から毒で殺人事件が起き・・・みたいな話を勝手に想像していたせいか、ちょっと内容的にぼんやりとしてインパクトに欠けるストーリーでした。
日本語がうまく文章はさすがうまいですが、熱中して読むタイプの本ではなかったです。