- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.12
- 出版社: みすず書房
- サイズ:20cm/514,81p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-622-07666-7
- 国内送料無料
紙の本
親切な進化生物学者 ジョージ・プライスと利他行動の対価
【科学技術書出版賞(2010年度)】熾烈な生存競争と淘汰のもとで、なぜ他者を利する行動が生じたのか? 哲学的テーマをはらむこの謎を追い求めた末に、ホームレスとして死んだ科...
親切な進化生物学者 ジョージ・プライスと利他行動の対価
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商品説明
【科学技術書出版賞(2010年度)】熾烈な生存競争と淘汰のもとで、なぜ他者を利する行動が生じたのか? 哲学的テーマをはらむこの謎を追い求めた末に、ホームレスとして死んだ科学者ジョージ・プライスの生涯を、波乱の科学史を織り交ぜながら綴る。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
利他的行動について考える
2012/02/06 15:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災のさい、多くの人々が自分の身の危険をかえりみず、他人を助ける行動に出た。こういう利他的行動はなぜ起こるのだろう。本書では風変わりな研究者ジョージ・プライスの生涯を中心に進化生物学の歴史をたどっていく。
プライスの発見した共分散方程式の専門的なところは理解できなかったが、私なりの解釈を述べてみる。
日本のように鎖国もしていた島国では、利己的行動をとるより、利他的行動をとったほうが、集団にとっても個人にとっても徳だということだ。つまり自分勝手な行動ばかりして他人から嫌われ、集団内に居づらくなったとき、日本のように狭い社会では逃げ場がない。逆に第11章で述べられているように近隣個体と定期的に接触していれば、お返しが期待できて、利他的行動のほうが割に合う。従って利他的行動をする遺伝子が集団内に広まっていったと考えられる。
ただ、第13章に「真の善良さが生まれるためには、グループに対して無慈悲なライバルの存在が不可欠」で、「これは、グループ間の外人嫌いを育む」とあるように、昔ながらの助け合いが残っているような地域では、よそ者には冷たいということにもなる。
それにしても、ジョージ・プライスという男、「彼の目つきには、残酷なまでに本音を見透かすようなところがあった」そうだが、とてつもなく波乱万丈な人生を送っている。大恐慌時代のニューヨークで貧困生活を送り、大学卒業後は原爆製造のマンハッタン計画にかかわり、その後職を転々とし「超常現象」というトンデモ科学の研究もする。離婚、病気入院をへて、失業中に図書館で読んだ論文から突如、共分散方程式をひらめき進化生物学の研究を始める。50歳を過ぎて突然ホームレスを自宅に泊め始め、自分自身もホームレスとなり、自殺する。だがこんな奇矯な行動をさしひいても今もっと評価されてもいいと思う。
生物学の研究者を目指す若い人に読んでもらいたい。