紙の本
大学教授は銀婚式の夢を見るか
2012/01/12 13:25
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:k-kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は、一流大学をでて、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの証券会社に就職したエリートサラリーマン。ニューヨークで活躍するが倒産の憂き目にあう。日本に戻ったものの、損保会社ではリストラの執行役の立場に追いこまれ、躁鬱病になったか。そして舞台は仙台市外の大学へと展開する。
例によって精密な描写が続く。あと書きには参考書のリストが付されているが、加えて證券会社とか大学関係者に突っ込んだヒアリングを行ったようだ。たしかに文章にはリアリティがある。それに地方の大学教授が軽自動車を乗りまわすなんて生活感が濃い。
主人公の生き方は潔いのである。証券会社が倒産しても、自身の保身など考えずに、最後までひとり終戦処理にあたる。ダメ大学生を英文ゼミで鍛えて一流会社に合格させる。離婚した妻の身内の不幸をテキパキと献身的に処理するとか。受験に失敗した息子を、朝5時にたたき起こして特訓して国立大学に合格させる等々。あまりに主人公は格好良すぎすぎないか、もちろん色物語りも挟まれているのだが、スーパーマン物語として読んでしまった。
新聞連載だったことと関係があるのだろう。毎日の新聞を賑わせているキーワードが満ち満ちている。金融危機、証券倒産、家庭崩壊、過労死、リストラ、分数のできない大学生、老人介護、緩和ケア、……等々。それぞれのキーワードに関わる短いシーンを積み重ねている。全編をつらぬくのが、離ればなれの境遇に追い込まれたものの、信頼関係を取り戻した男女、ということか。”銀婚式”の言葉が、本文中には二度ほど出てくる。最終章の結びの言葉もそうだ。
紙の本
ちょっとドラマチックすぎかな
2016/02/20 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DS-S - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公と同じ世代の男性として読んでて憧れる部分はありますが、話としては少しできすぎかなと思うところがしばしばあり。いかにも小説でしか起こらないようなドラマチックにしすぎてる感がありました。
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なぜタイトルが銀婚式かってそう来ましたか。篠田節子は女性なのに良くここまで男性の半生を書くなと。海外勤務の長いサラリーマンって設定も篠田節子多用するよな。リストラ、鬱、介護とか色んな現代的な要素が出てくるけど全体的にはぼんやりした印象。
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新聞の連載だったようで…だからかもしれないが、なんとなく流れがスムーズじゃないというか、ローで走っていたのが急加速、急停車、みたいな。
過去を振り返るところから話がスタートするのだが、いつになったら本題に入るのか、ちょっとイライラしました。
いつの間にか入っていたらしい。
以前読んだこの方の作品は面白かったので、正直期待して借りたのだが、いまいちでした。
主人公は50近い男性。
かっこいい、のかもしれないが、かっこよすぎ?
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タイトルに惹かれて読んだが期待はずれ。主人公の身に起きる様々な出来事が書かれていくが何をいいたいのかなって感じ。
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テーマ:家族と仕事
『銀婚式』を描く動機づけ (篠田氏NHKラジオ出演時に)
高度経済成長期→バブルを迎え、やがてバブルも崩壊。
大変面白い時代ではあったけれども、その内側に生きた人々にとっては激動の時代でもあった。
為政者や、権力者ではなく、いちサラリーマンの個人的な視点から、時代全体を描いてゆきたいと思い、この作品を残したいと感じた。
ストーリー
赴任先のNYから、主人公・高澤が帰国するシーンから物語は始まる。
勤めていた証券会社が経営破綻。無職となっての帰国だった。
NYでの暮らしに馴染めなかった妻は心の病気に罹り、離婚。
帰国後、中堅損保会社への再就職を決めた高澤だったが、今度は自分が鬱病に罹り、リストラにあってしまう。
友人の紹介で、地方大学(仙台市)への再々就職を決めた高澤。はじめは全く理解不能だった学生たちと触れ合っていく中で、彼らには意外なくらいの真面目さ、熱心さ、大人には見せない逞しさがあることに気づく。
一方、離婚した妻との間にもうけた一人息子は、一浪の末、宮崎県の国立大学に入学。別れた妻は、親の介護の問題を一人で抱え込み、神経をすり減らしていく。親を含めた身辺の年寄りたちが、季節が移り変わるように、相次いであちらの世界に旅立ち、どこか観念的に捉えていた自分自身の老いと死を身近なものとして意識するようになった。
やがて迎えた息子の結婚式。高澤も、別れた妻と出席。帰り道、高澤は妻に、ふと漏らす。
「やり直すか? もうニューヨークじゃないし」
――「あのまま続いていれば、今年、銀婚式なのね」 妻のつぶやくような声が、少し甘やかな空気をまとって聞こえてきた。
主人公のキャラクター
・誠実で真面目で努力家
・責任と義務で仕事をする堅物
・女心はわからない
→「女」のわからない男の視点で「女」を描かないといけない難しさがあった。
→「女性にこんな思いをさせているのに、この男は気づいてない!」→小説の醍醐味、腕の見せ所
篠田氏の実感
①現代においては、主人公のようなタイプの人間はないがしろにされている
「24時間働けますか?」タイプの人間よりも、「空気を読む」「人間の機微を理解でき、優しさを持っている」等といったタイプの人間が求められている→時代錯誤な主人公だけど、ラストは明るく希望があるように終わらせたかった。
②みんなが言うほど、日本の将来は悲観的じゃないのでは?と感じた
取材を通じて出会った若者たちの逞しさ。→作中では学生・息子の逞しさとして描いた。
③別れた妻の母の介護の問題
妻がすべてを背負いこんでしまう
誰もが完璧に介護ができるわけじゃない
「介護を全うすることで、人間的になっていく」というストーリーが作られてしまってる。
実際のところ、介護というのは、あまりにも過酷
→加えて、介護を終えた後の虚脱感(戦争から戻ってきたような虚脱感)次の人生を踏み出せない。
人間の生き死にが不自然なものになってしまう。
「いい生き方がある」ように「いい死に方」があるのではないか���
④夫婦の問題
夫婦っていうのは、割れ鍋に綴じ蓋
不器用な男性が、青春の恋からやり直すようなラストにしたかった。
→丁寧かつ、リアル。傑作とまではいかずとも、篠田さんが次に描く小説は必ず読みたい。
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高澤が勤めていたNYの証券会社が経営破綻した。
残務整理の後に帰国。
再就職先の会社でがんばるが、鬱病に。
ひょんなことから名もない地方大学で学生を教えることになる。
ここでの彼の教え方がとてもすばらしい。
まじめな堅物さんの魅力満載。
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なんだか不再議なスピード感に溢れている、というのが第一印象。
アクションやサスペンス、クライムものなどとは程遠いのに、あれよあれよという間に物語は疾駆していく。
毎回に必ずヤマを1つ作らなければならない…、という連載ものの宿命なのかもしれないが。
だから非常に読みやすく、実際にスルスルとほぼ一気読み状態になってしまったのだが、反面、心に沁み入ってくるコアな骨太感のようなものは感じられなかった。
離婚、リストラ、介護、教育崩壊、子供の受験…、多くの現代人が抱えがちと言われている問題を散りばめてはいるが、ただ現象として扱っているだけ、あくまで表層だけを軽く触っているような印象。
一言で言うならば、主人公が薄く、軽い。
「ゴサインタン」や「弥勒」であれだけの世界を真っ直ぐに描き出し、また「ロズウェルなんか知らない」といった比較的ライトタッチの作品でも名人芸を見せてくれた篠田節子氏の実力を知る者にとっては、物足りない一作と言わざる得ない。
連続テレビドラマなんかの題材としてはちょうどいいのかもしれない。
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ニューヨーク勤務となって順風満帆な人生かと感じていたのにちょっとしたことで生活が崩れていく。
離婚、会社の破綻、別会社に再就職したらリストラ。偶然会った知人の紹介で大学に勤めることになったと思ったら、親との関係が……。
別れても息子との付き合いがあり、それに伴い前妻との不思議な関係も持続。親子の関係は離婚しても切れないだろうしなぁ。
海外勤務がなければ離婚しなかったカップルなのかも? と思うと、この微妙な関係もうなずける。
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離婚後リストラにあい、親の介護や、息子の進路、自分の結婚のことなど、つぎつぎと問題が浮上する。
リストラ後、大学で教鞭をとることになるが、地方低偏差値私立大学の学生の様子など、かなりリアルに描かれている。主人公の高澤は自分勝手のようにも見えるが、やることになったら、きちんと自分の責任ははたすタイプ。離婚によって別居していた息子にたいしても一生懸命取り組むところは評価できる。
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ストーリー運びはさすがにうまいなぁと思った。あっという間に一気読み。
ただ、読後感は「なんとなく物足りない」という感じ。
いろんなエピソードがてんこ盛りかつ突っ込み不足で、結果浅いものになってしまったのかな、と思う。なんだか残念。
損保会社でのリストラや大学生が急に立派に成長しはじめるエピソードは、「そんなうまくいくわけないでしょ!?」と思ってしまった。非現実的に感じた。
現代社会ではリアルにある出来事なのに、描き方が浅いため真実味がなくなっている。
主人公の高澤も、どこか上っつらな男という感じがした。
すべてに関して傍観的であり、気持ちがこもっていないように感じた。
実家の弟に「離婚して自分勝手に好きなように生きていると、わからないことが多い」と言われたり、母に「自分を守ることばかり考えてずるい」と言われたりしていたが、そこにこの主人公のキャラクターが表現されていると思った。
それとも、篠田さんは皮肉的に「わかった風な男の孤独と悲哀」を表現したのかしら。
だとしたら、それはそれでスゴイのだが…。
図書館でずいぶん待ってやっと手にした一冊でしたが、わたし的評価は☆3つってとこ。
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巧い。
ベテランの巧さを楽しめる 1 冊。
2012 年度 2 時間ドラマ大賞確定級の巧さ。
途中、渡辺淳一っぽくなってきた時は
どうしようかと思ったが、
さらりと乗り越えたのも良かった。
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面白かった。
途中、止められなくてほとんど一気読み。
ラストも良かった。
篠田さんの長編小説は本当に味わい深いです。
不器用でまじめで、誠実だけど鈍感で見栄っ張りで…
そんな、ある典型的な日本人男性の生き様。
問題続きの仕事場に、身も心もへとへとになりつつも、
そこにはやはり「やり甲斐」もある。
そんな平凡な日常こそが幸せで、
そこに影を落とすのは、むしろ家庭や家族の方なのかもしれない。
「人生まことに悲喜こもごも」
何が幸いして、何が不幸のモトになるのかわからない。
どんなに両手でしっかり掴もうとしても、
人生はいつも頼りなく儚げで、主人公を翻弄する。
でもね、がんばって、日本のお父さん。
あなたがどんなに不器用でも、
誠実に生きようとする限り、そんなあなたの背中を
女も子どもも(見てないようで)ちゃんと見ているよ。
尊敬しているよ。
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エリート証券マンだった男が、離婚したり、リストラされたり・・・の物語。
とはいっても、暗くなることもなく、まあ、人生いろいろあるよねって感じ。
なかなか共感できるのでは。
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長編で一貫して単一視点というのは珍しいかも?
篠田節子の描くエリート中年サラリーマンの典型みたいな主人公。最初のほうはオシゴト小説風で、盛り上がってぐんぐん読めた。が、ふと気づくと、主人公、挫折を繰り返しているようで、実は結構ラッキーな境遇。そんなうまくいくもんかね、と、ちょっとしらける。主人公はいわば敗北を重ねているのだが、負け方がカッコよすぎるんだよね。あと、うつ病はあんな簡単に治らないような…。実際には抑うつ状態になっちゃったくらいだったんだろう。
さらに、本人の境遇だけでなく、保険会社時代の個人代理店の老人たちや、大学時代の学生たちとの交流が、イイ話だなあ風になっていて、そんなうまくいくもんかね、と鼻白む。それで後味いいのはいいんだけど。
そして「銀婚式」というタイトルを考えると、主人公の仕事人生を描いているようで、実はそれは単なる枠組みに過ぎず、いろいろ苦労を重ねているようなのに、プライベートな関係の相手に対する身勝手さが全然変わっていないのに驚くのであった。でもまあそういうものかもね。
銀婚式という言葉は、一時恋愛関係になる若い(といっても30代)女性と、離婚した元妻が発するのだが、2人はよく似ていて(楚々として育ちがよく、決して自分の要求を声高に言ったりしないタイプ。それが好みのようだ)、かなり苦い離婚を経た後(仕事上も苦労を重ねた後)の若い女性との恋愛においても、主人公は自分の都合で相手が何を考えているかに思いを馳せることなく、破局するのでった。別れを告げられる場面のイタさは、『ヴィリ』(山岸凉子)で、自分がプロポーズされると思い込んだ主人公が娘との結婚を申し込まれる場面に匹敵するわ。また、元妻が老両親の介護を抱えた状態のため、受験を控えた息子を預かろうと言うところも、いや、息子は大変な状態の元妻の唯一の心のよりどころ(実際上の助けでもあろう)、それを奪っちゃって、介護だけやらせようなんて、その酷薄さにびびった。
主人公視点でしか描かれないため、元妻はめんどくさい女、恋人はずるい女に見えるっちゃ見えるのだが、実親&実家の面倒を押し付けた弟夫婦(特に弟嫁)の辛辣な言葉を見ると、主人公アゲが目的ではないんだろう。
ラスト、元妻と復縁するのかな、と思わせつつ、お互い大変な時にバラバラで苦労も分かち合わなかったんだから、年数だけたっても、銀婚式にはならないんだろうな、と、索漠たる思いになる。
どうでもいいんだが、主人公は1960年頃の生まれのようだが、それで、1回寝たら即相手の親に会う(結婚想定して)ってちょっと違和感あったのだが(しかも相手は30代の大人の女)。