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まず、この邦題はふさわしくない。
このメインタイトルからだと、どちらかというと生物学的な観点から人間が走るメカニズムに迫ったものかな…という先入観をともすれば抱かせるかと思うが、そうではなく、まさしくランニングに関する人類の歴史を綴ったもの。
副題には申し訳程度に入っているが、薄っぺらい新書の真似事のようなことなどせず、もっと原著に忠実であるべきだったろう。
中身については、著者が冒頭で述べているように、あくまで1人のノルウェー人ジャーナリストの視点からの史実であり、あまりにも対象が広大なのでどうしても何らかの偏移が感じられる内容に仕上がっており、網羅的とまでは言わないものの、知識欲を刺激するという要素も含め、充分楽しみながら読了した。
ザトペックやリディアードといった、現代の市民ランナーにとって名が売れている人たちの一面も窺い知ることができた。
日本での出版が2011年と少し情報は古いが、2020年の今に至る過程に思いを馳せてみることも含め、なかなか興味深かった。
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原題はRunning: A Global History。だから走ることの歴史書。邦題に魅かれて図書館で借りたけど読むのに2週間もかかった。
交通手段や伝達手段として人は走り始め、その後は賭けレースや布教のため、1900年代になってやっとトラックが整備され記録も正しく取れるようになったという。
女性ランナーについてはここ50年ぐらいでやっと認められるようになったなんて衝撃。
アディダス・プーマ・ナイキのことなども書かれてたり、瀬古さんのこともあったり、著者はよく調べたなーという感じ。ランナーは読んだら得るものはいろいろあるんじゃないかと思う。
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ランニングの歴史書。太古の走りから、伝令としてヨーロッパにネットワークを作っていた頃、賭けの対象としてのレース、古代オリンピック、禅僧、近代オリンピック、まらそん、女子マラソン、ジョギング、瀬古、ケニアの選手、あらゆるランニングを取り上げ、歴史的な観点から、今のランニングはどのようにして成り立っているのかを説く。日本の駅伝や瀬古選手、飛脚などにも言及されている。400ページ近くあるが、一気に読める。ランナーにはお勧め。
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年末恒例の"来年こそはシリーズ"の中で買ったものなのだが、年が変わると気も変わるもので、すっかり放り出しそうになっていた一冊。まあ人間には、向き不向きというものがありますからね。
しかし本書を少し読み始めると、自分の走る走らないはさておき、十分に楽しめる一冊であるということが分かった。古今東西の「走り」の歴史が一望できる、壮大な文化人類史となっている。
なぜ人は走るのか?その目的としては、古代のインカ帝国、中央ヨーロッパ、中国やインドなどに見られる伝令システムとしての役割や、古代ギリシャ、ローマなどに見られる競技としての役割などが挙げられている。 しかし最も興味深いのは、古代の時点で既に、現代と同じように自分自身の鍛錬を目的として走る人達が存在していたということである。ローマ帝国ストア派哲学者セネカはランニングを哲学の発想の源に置いていたというし、日本の霊峰、比叡山にも俗に“マラソン僧侶“として知られる修行僧の一団などが存在している。
その他、初期の箱根駅伝に関する牧歌的なエピソードなども面白い。まあ、読んでる暇あったら走れよって話なんですけどね。ほんとに。
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【2012 FEB05 日経新聞書評より】
「(前略)民俗学と文化史を専門とするノルウェー人の著者は人間の「走る」という行為に着目し、面白い人類の歴史をまとめ上げた。(中略)
《走り始めたときに人類になった》私たちは《人類であり続けるために(略)走らなくてはならないのだ。肉体的、精神的な機能を停止した、機械での移動を強いられる怠惰な生き物になってしまわないように》。
この単純素朴な結論に、心の底から首肯できることこそランニングの魅力なのかもしれない。
本書は、壮大な「走る人類史」を描きながら、走ることの魅力を(問題点も含めて)余すところなく正しく伝えている(と思える)。」(スポーツライター 玉木 正之)
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太古におけるランニングは有事の伝令のためだった。その後、賭け事としても行われた。レースになってからも最初の頃は随分いい加減でいまと比べればひどい記録だった。そんなところからランニングブームが到来した。アマチュアレベルでは、健康や身体強化などがモチベーションで始まるが、いつの間にか走らずにはいられなくなってしまう。記録もそうだが、走った後の爽快感がランニング依存症を引き起こす。走りたいから走る。ただそれだけ。
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紀元前の伝令としての「走者」から、比叡山修行僧、瀬古選手などが紹介されていてとても面白かった。私の場合、週一でも続けられれば良いのですが。。
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著者は緒言で「世界ランニング史の完全版を書くことなど、到底不可能」と謙遜しているが、これだけ網羅されていれば十分だろう。古代文明における伝令から、ごく最近の事柄に至るまで詳しく書かれている。瀬古利彦を取り上げた一章もある(著者の解説には首肯できない部分もあるが)。健康法としてのジョギングの発祥、発展について書かれた章は知らないことばかりで、勉強になった。
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マラソン大会で仮装している人がいるけど、その期限ってものすごく古いんですね。芸能ランニングってジャンルがあって、人々の娯楽になっていたと。
走ることに関して「へえ〜」って感じの知識のオンパレードです。
でも、一番面白かったのは実は文末の解説でした。マラソンにはまっている人は、解説だけでもって読んでみるのも面白いと思います。
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オリンピックが終わり、なぜアフリカ人か長距離が速いのか疑問に思っていたので、時宜を得た本だった。疑問は余り解消されなかったが。
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人はいつから走るのか、なぜ走るのか、走ることで何を得てきたのか、世界中のランナーの話が詰まった一冊です。
賭けも含んだ競争、記録を求めてきたアスリートの歴史のエピソードからは、走ることで社会的あるいは金銭的な見返りを求めてきた、ある意味で人間の卑しさが見えます。
一方で近年これだけ多くの市民ランナーがマラソンという距離にまで挑んでいるのを見ても、古代ギリシャの哲学者たちが走ることに重要な意味を見出していたという事実を見ても、人類の走るという行為に潜んだ本質的な人間の欲求も垣間見える。
人類の変わらない部分の歴史なのだと思います。
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古今東西のランニング(長距離中心)にまつわる歴史と逸話を収載。ランニングの歴史に興味がある人には○だが。。。
歴史的には狩人、そして文明世界では伝令が世界各地ではランナーであり、それを抱える貴族などがパトロンとなって家来の伝令同士の競争を行った。17-8世紀にはそれが見せ物に発展し、ようやくオリンピック以降に近代競技への道が開けた。現在一般大衆までがたしなむようになったジョギングの歴史はせいぜい50年程度ほんの短い期間でしかまだない。
そんな中でも高野山の修験者の話は凄まじい。何年にもわたる深夜の山岳マラソン+断食、死んだ者もいる。
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古代から現代まで、アフリカの英雄から日本の修行僧まで、短距離走からウルトラマラソンまで、陸上競技史としてよくできています
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親経験者、教師や保父保母などの仕事についたことがある人、車を運転する人ならよーく知ってると思うが、子供って突然意味もなく走りだす。
競歩を体験してみたら分かるが、早足で歩くより、ゆっくり走る方が楽な足の運び方がある。
こんなことでも分かるように、ソフト上でもハード上でも、人って走れるようにできているんだと思う。
この本は、人が走ってきた歴史をほぼ時系列で記している本である。タイトルの邦訳から誤解しやすいが(ちなみに原題はRunning:A Global History)、直接的に人間が走る理由を説明しているものではない。
有史以前の、二足歩行から集団狩猟で走っていた時代から始まり、宗教的な意味合い、戦場での伝令、飛脚や郵便配達、見世物や賭博目的のレース、産業革命後のメートル法と速度計測の精度向上、近代オリンピックの復活、ナショナリズムによる国威高揚、体育会系スポコン的な修養と記録向上、万人向けの趣味娯楽、発展途上国ランナーの外貨獲得に及ぶまでの、人間が走ってきた通史が分かりやすいダイジェストで書かれている。
中村・瀬古の師弟愛、中国馬軍団の度を超えたスパルタ訓練、当たりの章は読んでてツラかった、そんな思いまでして走る連中に共感が湧かない。逆に市民マラソンの発展や、北欧ランナーたちの自主性を重んじた上でのストイックなトレーニングなんかは、本を置いて外に走りに行きたくなるくらいにワクワクした。
やはり俺はヘタれジョガーなんだろう。自分が気持ちいいから気持ちいいだけ走る。しんどさの向こうにあるものを見たい気持ちはあるが、しんどさの壁厚を無理やりあげていくつもりはないんだってことを確認できた。
ジョギングを万人には勧めない(この本にもそういうことは書いてある)が、走ることに興味がある人、マラソンや駅伝をテレビで見るだけでは飽き足らなくなった人、距離・速度に関係なく走ることの気持ちよさに目覚めた人は一読の値打ちあり。
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古代から現代までの、走ることに関する歴史をつづった本。通信手段が限られていた古代では速く走ることができる人が高く評価されていたということや、速く走ることがイベントやショーして評価されるようになった時代があったこと、冷戦時代には国家をあげて速く走る選手を育てていたことなどが、順番に語られる。今のジョギングブームの時代だけがすべてではないということが分かるような本。走ることを主軸に、多くの資料を集めて執筆されているが、どんどん楽しく読み進めることができるかというと、すごく楽しいという本ではなかった。