紙の本
青春に置いてかれる
2021/12/06 22:26
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
同世代が学生時代を謳歌する中、ただ肉体労働に明け暮れる北町寛多の姿が鬱屈しています。読書と執筆に喜びを見いだす姿と、聖母のような秋恵との出会いに救いがありました。
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テレビに出てる作者をみて興味をもったので読んでみた。自分勝手だけど少しの温かさを持ってる主人公がなかなか良かった。彼女がやさしすぎ。
主人公関係ないけどネズミ目線の短編が激しかった。
kobo
親類を捨て、友人もなく、孤独を抱える北町貫多17歳。製本所で短期契約のアルバイトを始めた貫多は、持ち前の自己中心的な短気さと喧嘩っぱやさでまたしても独りになってしまう……。話題の芥川賞作家の渾身作!
内容(「BOOK」データベースより)
小さいころから執念深く、生来の根がまるで歪み根性にできている北町貫多。中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る貫多は、長い年月を経てても人とうまく付き合うことができない。アルバイト先の上司やそこで出会った大学生、一方的に見初めたウエイトレス、そして唯一同棲をした秋恵…。一時の交情を覆し、自ら関係破壊を繰り返す貫多の孤独。芥川賞受賞作『苦役列車』へと連なる破滅型私小説集、待望の文庫化。
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数か月前に芸人のサスペンダーズ古川さんのnoteで日雇い日記を読んでたことを思い出して、読みたくなった西村さんの私小説。
貫太の不器用ですぐ怒ったりするだめなところ、そしてそれをすぐ後悔するところ、それでもうまくできないところ、自分じゃないけど自分みたいでちょっと苦しくなった。最後、秋恵、ありがとうってなる。
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貫太と秋恵の短編が5編、フィクションの短編が1編。
『赤い脳漿』貫太の理不尽な怒りも解らなくもない。怒りと後悔とのせめぎあい。
『悪夢』私小説以外の話を初めて読んだ。オチは読めたが諸々のえげつない描写は良かった。
MVP:なし
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苦役列車から流れて読んでみた。
相変わらずの貫多の大冒険物語。
バイト先でのトラブル、
知り合った女性とのいざこざストーリーが、
やはりおもしろい。
最低な人間だけど、人間くさい貫多。
友だちには絶対なりたくないタイプとおもいつつも、その飾り無いゲス語りに、妙に共感出来てしまうところもあり、ぐいぐい読み進めてしまう。
物語後半のその貫多に出来た天使のような彼女の話も貫多とのコントラストがあいまって、妙に考えさせられる。
途中のネズミ一家の話も秀逸。
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相変わらずの貫多である。社会の最底辺を這いつくばる労働者の心理描写にはゾクゾクさせられる。酔っ払ってこのあと人を殺してしまうとか、恋人をボコボコに殴るのではとか身構えてしまうのだが、小心者の貫多のこと、そこまでの事件は起こらない。最後の秋恵との物語は貫多の振る舞いに嫌気がさすが、最後はうまくまとまった。ネズミの物語は唐突だが、これも面白かった。なぜこの順番に作品を並べたのか。
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著者と同世代の人たちはバブルの真っ只中で青春を過ごしているはず。その世代における底辺の日常は実はいつの時代にもある。70年代の松本零士の「男おいどん」の世界も然り。人の生き方、生活は一様ではない。正解も理想もない。それぞれの世界でのやり方、生き方がある。
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「とりあえず、あすこで二週間ばかし働いて生活を安定させる第一歩としよう。で、少し金を貯めたら、まともな仕事先を探してみよう。ぼくの人生はそこからだ。」という北町貫多のセリフが気に入りました。
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北町貫多 パレット ソープランドに行く為の積立資金 日雇いの湾岸人足仕事 件の職工に見咎まれる 歪み根性 醜女の部類 余裕の舌舐めずり 金輪奈落の憎しみを抱いてしまう 鬱憤が蓄積 睥睨 潜在的に抱いている雰囲気を、敏に感じとってしまった。 イニシアチブ ろう弄し 肉慾の計画 排斥はいせき 無能視 疎まれて 瞬間興醒め 飯田橋の厚生年金病院裏のアパート 青春を、十全に謳歌 これで彼奴は一生土方だと嗤ってあたらしく 不快な予言 屈辱の澱 インフェリオリティーコンプレックが再度頭を擡げてくる 鶯谷 諦観めいたものを抱きながら 脳を麻痺させる為にも 顰めっ面 異常な嗜虐の虫 嗄れた声 ゲテモノによる、グロテスクなマンズリをな 蔑んで 所詮は性根の糞袋 上野桜木町 強烈なカタルシスめいたもの 陳腐な言い草 彷徨いぶり 懲罰的な報い 嘆願して 憑き物が落ちた 甘くプラトニックな焦れったい恋情 一穴主義 新宿一丁目の豚小屋めいた八畳間の自室 自分の積年の理想像 生来短気で我儘者 能登の七尾 化粧函 何か痛々しそうな口調 勇足 哀れみをこめた目 岡惚れ アングラ劇団員 邂逅 サルモネラ菌 捨て身の復讐 更地 乞食の糧途 大学出でインテリの秋恵 成就 相思相愛 常に感謝と尊敬の念を忘れず 忘恩の質 本性が極めて冷血にできてる男 覚束ぬ 赤い脳梁 旧花園町の一角の、八畳一間の豚小屋 仔細しさい 立つ瀬 成程 爾来 興を喚起せしめてきた 清楚 邪推が妙に嬉しく 埋没 境遇 絶対的な自負 甘美な優越感 ブルマーなんて最低だよ。あんなの、一種のセクハラだよ 催しものよし 三白眼 劣情 萎えて 想起 興醒め 徹宵てっしょう 沽券 シフトを組んで 当日欠勤 ルル 微熱の範疇 破顔 邪慳 恬然と甘受 結句は変に拗らせ 欠如 芝公園で狂凍死したある私小説作家の月命日 潜伏期間 越後の辺りで客死 位牌 檀家 煩い 練り梅 頑是ない童女みたいな表情 殊勝な気持ち 瞼 聖母像めいた高貴な厳粛さ 訝しく 苦役列車 勝手に貫多とオーバーラップ オブラートに包まないブラックな感情 ズボラ 人一倍 鏤め 脱帽 失うものはもう何もない 酷く孤独で残酷 滑稽さ マイノリティ 存在することでの主張、圧力のようなものを感じます。 パフォーマンスと呼ばれてもいい 南沢奈央
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中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る北町貫多。一時の交情、関係を築きつつも必ず最後はメチャクチャに破綻してしまう彼の孤独な姿はそのまま自分自身の裡にあるのではないかと思い、彼の作品を読んでます。
ここには短編集がいくつか納められていて、そのうち、『悪夢―或いは「閉鎖されたレストランの話」』以外はすべて自分自身の体験から生まれた私小説です。『人もいない春』では印刷会社の職工に些細なことで絡んで悪態をつき、雇用の契約が延長されずに解雇され、タクシーの運転手にまで当り散らし、『二十三夜』では男女のことでトラブルを起こし、大喧嘩の末に店を追い出されたり、『乞食の糧途』では同棲する秋恵との危うい生活が描かれます。
その秋恵を『赤い脳漿』で彼女のトラウマとなっている交通事故で目の当たりにした人の脳漿にそっくりなマーボー丼を彼女に食えと強要させ、しかし『昼寝る』ではパート勤めの秋恵を心配したところで、結局お約束の展開となる彼女への罵倒となるのですが、ここではなぜか、二人の関係がよくなってしまいます。それにしても、何で自分がここまで西村賢太作品を読み込んでいるのかといえば、自身の体験したこともその一部にあるということと、彼自身の分身である北町貫多のしでかした人間関係の破綻が、そのまま自分の人生の人間関係の破綻と重なる部分があるのではなかろうかと思っております。
どこがどうだとは具体的には申し上げませんが、今後も北町貫多の人生の軌跡を追っていきたいとともに、自分自身のことを少しは見つめて聞きたいなと思っている昨今でございます。
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初西村賢太。
なかなかおもしろかった!
自分のことを「ぼく」っていうのが、アンバランスでよろし。
乱暴な感じとか、バイト先での話とか、気持ち分からんでもないな〜ってなります。いやいや、それにしても、分からんでもないって変な言葉ですね。
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西村賢太という作家の描く主人公には、やはり底知れぬ魅力がある。暴力や暴言で徹底的に痛めつけたかと思いきや、自らの行いに涙を流して悔いたり、時には頭を臥して詫びたりもする。このどうしようもなく愚直な男を見るたびに、私は荒廃した丘陵地帯をひたすらに進んでいく放浪者のようなイメージを思い浮かべるのです。
北町貫多という男の10代後半〜中年に至るまでの出来事を描いた私小説に混じって、一篇だけ毛色の異なった作品が掲載されていることに、私の興味は惹かれました。この『悪夢ー或は「閉鎖されたレストランの話」』という一篇を読み、私小説家ではない西村賢太に、初めて触れたような気がします。
ひっそりと、誰も見向きもしない場所で語られるこの物語は、避けられない運命と狂気のような復讐を遂げるストーリーにより完結しました。孤独な場所での血なまぐさい憎念と、ある種の諦観に、貫多の内面を垣間見ました。
本作は、一人の人物に寄せて書いた短編集と見ることもできますし、一人の主人公を描いた一つの物語として見ることもできるのではないでしょうか。読了後に、改めて思うのは…自分はやはり、この人の作品が好きであり、この人の描く男には愛着を持たずにはいられないということでした。
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私のブログ
http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1998692.html
から転載しています。
西村賢太作品の時系列はこちらをご覧ください。
http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1998219.html
人もいない春
北町貫多17歳の頃の話。水道橋の製本所での話。
以下は貫多の暴言の数々。
「若い醜女特有の複雑にねじれている心理」
「工場から一歩外に出りゃ、ただの能無しのくせしやがってよ」
「こっちは見苦しいあんたを哀れんで慈善のつもりで言ってあげたのに、やっぱり所詮は性根の腐った糞袋だね。生きててもしょうがないから、早く自殺した方がいいよ」
「これだけ言われても、女房、子供のことを思えば歯向かえねえむてのか!このヒツジ野郎めが!貴様、雲助の分際で生意気だぞ!今夜中に死んじまえ!」
二十三夜
北町貫多32歳の頃の話。神保町の古本屋でコーヒーの出前に来た20歳位の女性に片思い。ビール券をプレゼントしたところ喫茶店店主を通じて返却され恋は終わる。その後、古書店主の新川に女性を紹介してもらい、仲良く飲んでいたのだが、ふられたと勘違いした貫多は
「何だよ、こんな糞ブスにまでふられてしまうのかよ」
と暴言を吐く。実はその女性、貫多のことを気に入っていたというのに…。
悪夢 或いは閉鎖されたレストランの話
レストランに棲むクマネズミを擬人化した話。人間への復讐のため、カレー鍋に飛び込み、サルモネラ菌が溶け広がるくだりは衝撃的。
乞食の糧途
秋恵シリーズ。秋恵がパートに出だした頃の話。パート先の人間関係で悩む秋恵を大した事ないから早く晩ご飯の支度をしてくれと誤魔化す貫多、ふと自身が20歳時の運送会社でのアルバイト時代に重ねる。ヒモの身分で偉そうな、というツッコミ満載の作品。
赤い脳漿
秋恵シリーズ。たまたま入った中華料理店を気に入った貫多、秋恵用に出前を取ってあげたが、麻婆豆腐が苦手だと言う。秋恵は幼い頃、交通事故を目撃し、被害者の頭部から脳味噌が出ていたのを見てしまったためだという。
その後、秋恵の過去のアルバムを見せられ、醜い顔付きを目にして劣情が萎えた貫多は、意趣返しに先の中華料理店で再び麻婆豆腐を注文し嫌がらせをする。そして後悔の念…。
昼寝る
秋恵シリーズ。風邪をひいたのにパートを休めないと頑張る秋恵と心配し看病に勤しむ貫多。そしてキレる貫多。
「てめえは一体、いつまで病んでりゃ満足するんだ!」
「てめえみてえにグズグス寝たり起きたら働いたりしてりゃ、いつまで経ったって治らねえだろうが。まだるっこしい奴め。そんな微熱程度のものなんざ、本来は1日じっと静養してりゃ簡単に消し飛ぶもんなんだ。」
「何でお前は僕の言った通りにしないんだ。仕事なんか休めとあれ程言ってあげてただろが。それを無視してのこのこ出かけて行くから結句は変にこじらせてしまったんじゃねえか」
「何が他の人に迷惑だ。高校生の雌ガキでもできる、たかがスーパーのレジ打ちパートに何をそうムキになってやがんだ」
その後、秋恵の風邪は治り、貫多が風邪を移されるというオチ��
これらの暴言は置いといて、何となく貫多の気持ちは分かるな。風邪を引いたらまず静養ってのが基本だし、無理して仕事しても逆に周りに迷惑をかけることになるし。自分の言いつけを守らずいつまでも風邪をこじらせている相手がいたら、そんな気持ちになるのは共感するな。
2度目の感想
http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/2007312.html
相変わらず中毒性のある西村賢太作品を読み直している。心身共に疲れていてもつい手に取りたくなる不思議な魅力。
前回書いていない、興味深いセンテンスは以下の通り。
人もいない春より。
「どうで五十年も六十年も、おめおめ生きていようった訳じゃねえんだ。いよいよ駄目となりゃあ、そん時は野垂れ死したっていいんだ。まぁ、なるようにしかならねえのさ」
「とりあえず、あすこで二週間ばかり生活を安定させる第一歩としよう。で、少し金を貯めたら、まともな仕事先を探してみよう。ぼくの人生はそこからだ」
二十三夜より。
「あすこに、彼女目当てで来てる奴らは痛い間抜け揃いだね」なぞ云う、じぶんもその1人である事実を棚に上げての、まるで負け惜しみめいた情けないもの。
乞食の糧途より。
「折角勤め出したものを、わざわざ逃げてやる必要はねえよ。お前は何もしてないのに、ただ真面目に働いているだけなのに、そんなお気ちババアの為に辞めてやるなんざ、馬鹿馬鹿しいじゃねえか」
赤い脳漿より。
平生何事にも記憶力の良い貫多にして、それで初めて思い出したぐらいだから、所詮は閨事の後の睦言で出たどうでもいい話へ、何か適当な相槌を打ったに過ぎぬ程度の頼みごとだったのであろう。
昼寝るより。
「ここからが体内の自然治癒力が活動を始める時間帯だからな。人間の体ってそう云う風にできてるんだとよ」
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モデルがいるに違いない「秋恵」さんの心境を知りたいなと思った。
レストランの話は、思わずのけぞってしまいました。
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相変わらず最低ではあるが他作品に比べると若干マイルドな
気がする。
麻婆豆腐やねずみの話なんかはちょっとグロテスクだった。
でもやっぱり今回もなかなか楽しめた。