紙の本
風土の人間に及ぼす影響
2022/05/11 16:01
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著名な哲学・倫理学者の代表的一冊。気候や環境ではなく人間から風土を考えている。日本文化を風土から考えると言うよりアジア・中東・ヨーロッパの文化と比較しながら考え述べている。人は自然の中から規則を見出すとも。ただ、文中では日本の「家」制度を称賛したり「家」から天皇制を擁護したりしていて、その論拠を示しておらず個人の主観だけで述べている部分もある。初稿は90年程前で文章的には読みずらかった。古典の部類であろうか。
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哲学者、和辻哲郎氏の代表作です。賛否両論ある名著です。
2020/05/02 12:09
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、我が国の哲学者であり、倫理学者でもあり、また日本思想家でもあった和辻哲郎氏の代表作です。同書は、和辻氏がドイツ留学中にマルティン・ハイデッガーの『存在と時間』に示唆を受け、時間ではなく空間的に人間考察をおこなったものとされています。1931年に刊行され、第二次世界大戦後、盛んになった日本文化論の先駆的な作品とも言えるものです。同書では、風土をモンスーン、砂漠、牧場に分け、それぞれの風土と文化、思想の関連が追求されています。「風土が人間に影響する」という思想は、悪しき環境決定論であるという批判や、天皇制肯定論になっているという批判もある一方、この考え方こそがグローバリゼーションをとどめるための積極的な方法論であるとする評価する声もある傑作です。
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日本文化論
2018/11/30 10:31
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
気候を克服することは困難であり、むしろその宿命を愛さねばならないということを認識したうえで、様々な留学先での自然条件を経験し、自然、特に日本の自然風土と歴史に対する愛情を感じる書。
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「風土とは、単なる自然環境ではなく人間の精神構造の中に刻み込まれた自己了解の仕方に他ならない」という観点から、モンスーン・砂漠・牧場という異なる三類型を設定し、世界の民族・文化・社会の特質を浮き彫りにした一冊。
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著名な和辻哲郎氏による名作。確かによく日本や諸外国の景観を良く把握し哲学的な考察をしている。特に「モンスーン、牧場、砂漠」に地球の風土が3分できるという視点は目から鱗である。しかし、いたるところでの描写が考察というよりも単なる直感ではと思うようなところもある。しかしともかく、今でこそ景観と人間は比較的議論のテーマとして扱われるようになってきたが、戦前にこれだけの考察ができた人物がいたことに驚きで和辻氏の偉大さもこういった議論のパイオニアであることにあるのだろう。
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風土が人間に与える影響を考察したこの本は、とても野心的な試みとして書かれたものだと思う。もちろん、一世紀近く昔に書かれたものだから、異文化なるものへの理解も十分ではないけれど、そんなこといったらダーウィンの業績のすべてを否定しなくちゃならなくなるわけだし、現代の価値観で定義するのはまったく無意味だと思う。この本の意味はなによりも風土学に先鞭をつけたことにある。それに、言葉がすごく美しい。風土と人間性とそれを表す和語、という三つの要素の組み合わせが、なによりも美しいと思っている。
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歴史は風土的歴史であり、風土は歴史的風土である。
都市の歴史性ー都市の風土性
歴史的な建物ー風土的な建物・・・
歴史・風土という軸の中で「伝統」はどう位置づけられるのだろう。
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哲学者:和辻哲郎さんの本です。
ちょっと首をひねるような論じもありますが、農業形態からの社会的考察はなんか納得しちゃうものもあります。
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日本の倫理学者、和辻哲郎(1889-1960)の主著の一。1935年刊。「風土」は単なる客観的な「自然」ではなく、自然と人間との一体的な関わり合いであり、人間の生活に取り入れられた自然のこと。その風土をモンスーン型、沙漠型、牧場型の三つに分類し、その型それぞれにおける人間の特質、また文化の特質を説いた著である。モンスーン型では受容的・忍従的性格、沙漠型では対抗的・戦闘的性格、牧場型では、合理的・計画的性格が見られるとする。
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風土を中心として考えると、民族性というものがはっきりわかる。国民性はむしろ風土から生まれているのだ。すべてで納得させられた一冊。すごい。
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学術的に述べるならこじつけととれる部分もあるが、宗教・文化・風俗と環境には密接な関わりがあるという著者の主張に納得させられた18歳の夏。
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最近また読み始めました。
風土といってもこの方は哲学出身?だったと思いますが、かなり哲学的な見解からつづっているので、読みこなしていくのが大変だと思います。
言語学、詩学なども勉強していかないと本当の意味で理解するのは難しいかな、と思います。
しかし、書物としては一級品であることは間違いなさそうです。
とりあえず、分類としては哲学のところに入れておきます。
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風土とは、単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻み込まれた自己了解の仕方に他ならない。
この視点から著者はモンスーン、砂漠、牧場の三類型を設定し、世界各地域の民族、文化、社会の特質を見事に浮き彫りにした作品であります。
面白いので是非見て下さい!!
因みにこの本は学校のデザインの授業で皆買わされます。そして読んで感想文も書かされます^^;
最初は読むのめんどくさいと思ってたんですが、読んでいると、和辻さんの本に引き込まれてしまいました(*^_^*)
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(2006.04.20読了)(2002.07.03購入)
副題「人間学的考察」
単行本は、1935年の出版ということなので、昭和10年となり、だいぶ昔の本です。大学の頃からいつか読まねばと思っていた本です。やっと宿題が一つ終わった感じです。
人間の文化は、その住んでいる土地の気象条件や自然環境の影響の下に形成されるということを、体験を交えながら論じた本です。本当にそうなのかどうかは定かではありませんが、「血液型」で性格を論じたりすることと同様、多くの人々の話題の種を提供していることだけは確かなことと思います。
優れた解説(井上光貞さん)がついていますので、本文で意味を捉え切れなかったところは、解説を読んで分かった気になることができます。
●日本文化論の系列(290頁)
1.他の諸民族の文化との比較において、日本文化を位置付けようとするもの
和辻哲郎「風土」、梅棹忠夫「文明の生態史観序説」、ライシャワー「日本歴史の特異性」、中根千枝「家族の構造」
2.日本民族が他の文化ないし文明を摂取する仕方を通して、日本の文化を理解しようとするもの
津田左右吉「支那思想と日本」、中村元「東洋人の思惟方法」
●風土とは(292頁)
風土は人間の外にある自然ではなくて、その土地に特有な寒さに耐え得べく独特の様式に家を作る習慣というように、その民族の精神構造のうちに刻まれて具現しているものである。
●風土による三つの類型(293頁)
1.モンスーン地帯
夏の半年、南西モンスーンが熱帯の暑熱と湿気を同時にもたらす。このような気候のもとでは、自然の暴威には耐えながらも、豊かに食物を恵む自然の恩恵に抱かれていることがよしとせられ、受容的・忍従的な人間類型が形成せられる。
2.砂漠(雨量の欠乏による広漠不毛の地)
ここの気候は乾燥を本質とし、自然は生気のない、荒々しい世界である。従って人間は、部族の命令に絶対に服従しながら団結し、自然との間に、また乏しい自然の恵を求めて他部族との間に、耐えざる戦闘を繰り返す。
3.ヨーロッパ
南欧は明るく北欧は暗いが、共通なのは夏の乾燥と冬の雨季の結合である。夏の乾燥は牧場における夏草の繁茂を妨げる。ここでは、自然が人間に対して温順なのである。ゆえに人間はモンスーン型人間のように自然に忍従する必要はなく、砂漠的人間のように自然を恐怖する必要もなかった。このように従順なる自然において初めて、合理的精神が発達したのであり、自由の観念や、哲学や科学が誕生した
●空間性(3頁)
ハイデッガーの「有と時間」を読むと、人の存在の構造を時間性として把捉する試み行っている。では、なぜ同時に空間性が、同じく根源的な存在構造として、活かされて来ないのか、これが、風土性の問題を考え始めたきっかけであった。
●風土(9頁)
ここに風土と呼ぶのはある土地の気候、気象、地質、地味、地形、景観などの総称である。
●人間(18頁)
人間を真に根本的に把捉するためには、個(人)であると共にまた全(社会)であるごとき人間存在の根本構造を押さえなくてはならぬ。
●海は交通路(82頁)
山は距てるが海は結びつける、ということは地中海についてのみ正しいのである。それに比して我々の海は何よりもまず食物を獲る畑であって交通路ではなかった。
イタリアから南フランス、イスパニアに至るまでギリシアらしい風土を持つギリシアらしい風土を持つ沿岸地方に必ず植民地を作ったギリシア人にとっては、地中海は実際に交通路であった。ローマとカルタゴとの激しい折衝もこの海が交通路でなかったならば起こらなかったであろう。
●雑草(84頁)
ヨーロッパには雑草がない。それは夏が乾燥期だということに他ならぬ。雑草とは家畜にとって栄養価値のない、しかも繁殖力のきわめて旺盛な、従って牧草を駆逐する力を持った、種々の草の総称である。
●ローマの世界支配(113頁)
ローマがハンニバルの遠征に堪えカルタゴに打ち克った時、ローマの世界支配の道は開かれたのであった。だからハンニバル戦争は、古代史における決定的な岐路であったと言ってよい。たといハンニバルが勝利を得たとしても、セム人のカルタゴが世界支配を始めるという事はなかったであろう。なぜならカルタゴは異邦人の傭兵でもって戦っていたのである。
●ヨーロッパの日光(135頁)
ヨーロッパを北から南へ、すなわち日光の強まってゆく方向へ旅したものは誰しも必ず感ずることと思うが、日光の力の強まるに従って人間の気質は漸次興奮的・感激的になって行くのである。ドイツ人の沈鬱は南ドイツではよほどその度を減ずる。フランス人は静かではあるがもはや沈鬱ではない。イタリア人になればむしろ騒々しいという言葉が当てはまるであろう。
●西欧の芸術(136頁)
西欧の芸術のもっとも代表的なる者はベートーヴェンの音楽、レムブラントの絵画、ゲーテの詩などである
●家(195頁)
彼ら(ヨーロッパ人)はちょうど日本の家族が茶の間に集まって無駄話をしたりラディオを聞いたりすると同じ意味で、カフェーへ行って音楽を聴きカルタを遊ぶ。カフェーは茶の間であり、往来は廊下である。この点から言えば町全体が一つの「家」になる。
●ローマ人(223頁)
ローマ人は、その発明した円形劇場や公衆浴場などが示しているように、風景の美を顧みないでただ人工的なものの内に享楽することを特徴とした。
著者 和辻 哲郎
1889年3月1日 兵庫県姫路市生まれ
1912年 東京帝国大学哲学科卒業
1925年 京都帝国大学文学部助教授
1927年 ドイツ留学
1931年 京都帝国大学教授
1933年 東京帝国大学文学部教授
1949年 東大退官
1955年 文化勲章受章
1960年12月26日 死去、享年71歳
(「BOOK」データベースより)amazon
風土とは単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。この観点から著者(一八八九‐一九六〇)はモンスーン・砂漠・牧場の三類型を設定し、世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした。
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リージョナリズムの話になるといつもこの本に辿り着く気がします。
ただ、まだちゃんと読んでない。どうにも退屈してしまうので。いつかしっかり読みたいです。