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- カテゴリ:一般
- 発売日:2012/01/18
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/252p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-331941-2
読割 50
紙の本
昭和の特別な一日
著者 杉山 隆男 (著)
東京オリンピックの開会式の空を飛んだもうひとりのパイロット秘話、銀座から都電が消えた日、中野にオープンした東洋一のブロードウェイ…。東京の“特別な一日”を描く。『新潮45...
昭和の特別な一日
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商品説明
東京オリンピックの開会式の空を飛んだもうひとりのパイロット秘話、銀座から都電が消えた日、中野にオープンした東洋一のブロードウェイ…。東京の“特別な一日”を描く。『新潮45』連載を加筆・修正し書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
杉山 隆男
- 略歴
- 〈杉山隆男〉1952年東京生まれ。一橋大学社会学部卒業。読売新聞社を経て著作活動に入る。「メディアの興亡」で大宅壮一ノンフィクション賞、「兵士に聞け」で新潮学芸賞受賞。
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紙の本
掴めるものはわずか
2012/03/21 08:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「鉄仮面」の愛称で親しまれた初代のぞみN300系新幹線が、2012年3月16日、20年の役目を終え引退した。駅のホームに群がった鉄道ファンの姿を見ていると、この日はこの人たちにとって「特別な一日」なんだろうなあ、と思ってしまう。
「特別な一日」は、人それぞれに違う。母を亡くした日、父とさよならした日、初恋の人と再会した日、卒業式で校歌を歌った日、現役を終えた日、・・・。さまざまな場面が、その人なりの思い出のアルバムに収められているはずだ。
そして、これからやってくる、「特別な一日」のための、白紙のページがつづく。
本書は「昭和」という時代の中から、東京・神田で育って著者の「特別な一日」が四編収められている。
ひとつは、昭和39年10月10日の東京オリンピックの日。この日を「昭和」の「特別な一日」として記憶している人は多い。9歳だった私も記憶に残っている。
二つめは、昭和42年12月9日の、銀座から都電が引退した日。
三つ目は、昭和38年4月12日の、東京・日本橋の上の高速道路工事が始まった日。
そして、本書に収められた最後の「特別な一日」は昭和41年10月29日の、東京・中野に「ブロードウェイセンター」がオープンした日。
昭和という激動の時代をわずか四つの「特別な一日」で描くのはいささか無理があるし、日本全国で「特別な一日」を探し出せばそれも山とでてくるだろうが、それはそれでやむをえない。
著者は、自身の育った環境を中心にして円を描くことで、おそらく半分は自分史的な作品をこしらえたといえる。もちろん、これは個人的な作品ではないので、これらの土地が持っている歴史や風土を描いているのも事実だが、わずか四つの「特別な一日」を見せられても、不燃焼な気分が残って仕方がない。
まして、「昭和」という時代が、そしてそれも戦後の高度成長期の時代と限定してもいいが、「特別な一日」を境にして何を手にいれ、何を失くしてきたのかを、もう少し読みたかった。もっとも、それは一冊の本で読めるものでもないだろうが。
「高度成長の上り坂を日本という国がひたすら走りつづける中で、両手いっぱいに何かを掴みとろうとすれば、いま手の内にあるものを捨てていくしかない」と著者は本書の中に記しているが、それは「昭和」という時代を表現しながら、この作品のことも表しているような気がする。
掴めるものなど、わずかでしかない。