紙の本
「道徳教育」のテキストにピッタリ
2021/04/14 13:39
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投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2012年の出版ですが、最近になってこの本を知って読みました。
原発事故があぶり出した御用学者の発言の酷さには、あきれるばかりでしたが、それを具体例を使って20の規則にまとめてあります。特に、香山リカ氏と池田信夫氏の記事を使っての考察は分かりやすくてよかったです。
「名を正した学者の系譜」として、武谷三男氏・高木仁三郎氏・小出裕章氏の3名がイラスト入りで紹介されているのも、おおいに参考になりました。彼らの行動には尊敬の念しかありません。
福島第一原発事故後に、東大工学部が『震災後の工学は何をめざすのか』という文書を出していたのは知りませんでした。しかもその内容には呆れました。この文書に対する考察も参考になりました。
本書の後半は「東大話法」の根幹を「立場」という概念から説明してあります。「立場」についての考察も過去の文献を使って考察してありよく分かりました。
「東大話法」は原発問題に限ったことではなく、日本社会全般で使われているとの指摘には、暗澹たる気持ちになりました。この本が書かれてから何年もたっていますが、状況は悪くなる一方な気がします。この本を参考にして、私も「東大話法」をなくしていきたいと思いました。
この本は、義務教育の「道徳」で教える内容にピッタリだと思います。
紙の本
「立場主義」いう視点
2012/02/02 10:58
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hharu - この投稿者のレビュー一覧を見る
一部の人々の間では早くも今年の流行語大賞にノミネートされた感があるのが、「東大話法」という言葉だ。著名なオピニオンリーダーや学者などの言説をバッサバッサと斬っていくところは痛快で、その点に期待する読者にももちろんお勧めできるが、むしろその後に「立場主義」を論じている4章が本書の真骨頂だと思う。
マルクスが分析したように「資本主義社会」は「商品」で構成されているわけだが、著者の言う「立場主義社会」は「役」で構成されているということにもなるだろうか…。“日本の資本主義は西洋の資本主義とは違う”などと言われることがあるが、そうした点にも関係ありそうだ。また、よく言われる「公」と「私」、「建前」と「本音」といった対立軸とは別に、特に日本には、「立場」と「意志」とでも言えるような対立軸があるのかもしれない。さまざまなテーマを考えるヒントになる書物である。
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今度の原発事故のあといろんな言論が出たが、本書は原発を巡って発言する大学教授、知識人の話法に見られる典型性を東大話法と名付け批判したものである。中でも、のちにやらせであったことが露呈した玄海原発のプルサーマル導入をめぐる公開討論会は、ぼくもユーチューブで見たことがあるが、東大教授の大橋弘忠という男が、会場から上がる質問に、「素人がなにをほざく」式の鼻をくくったような回答をしていたが、あれこそまさに東大話法だったのだと思い知った。本書では他にも小出さんが、引きこもりの人たちに偶像化されているという香山リカ批判、事故のあとなんの反省もなく、科学の未来を信じろ式に声明文を出した恥知らずな東大工学部の話法を一つ一つ分析批判する。安冨さんの書き方は決して易しくはないから、1度読んだだけで本書を理解するのは難しい。しかし、思ったことは、世に頭が切れる、回転が速いという人の話法には共通した論法があることで、わたしたちは安冨さんの書をよく読んで、今後の反論に備えなくてはいけない。
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今回借りてきた安富本、2冊目にこれを読むのは正直ちょっとハードル高そうな気がしたのだけど、思いのほかしっかり読むことができた。もしかしたら、1冊目に読んだ『あなたが生きづらいのは‥』よりも読み込めたんじゃないかな?
頑張った~。というのは、これまでの何冊かと同じようにメモ読(今思いついた造語です)したから。読む締切があって、書き込めないところが、図書館本を読む効能。簡単に読み返せないから、必要なところはメモしとくしかないので。その分、じっくりかみ砕く。速読はできないけど、熟読はできる。
「魂の脱植民地化」とか「エントロピー」とか、安富さんが作り出した(?)言葉及びその筋の方にはよく知られているらしいけど、初めて出会う語にはちょっと目を白黒させたけど、なんとかかんとか理解できたかと思う。手を止めてググったりもした。
そして噂の「東大話法」この法則はスゴイ。この本が出版されたのが2012年だけど、10年近くたって未だにあちこちに蔓延る事・・・。
「立場」という言葉を、夏目漱石の用例から取られているのは、国文卒の人間としては(こういうのも「立場」かしら??)興味深かった。
少しだけ気になったのは、233ページ
「学者の言うことを信頼するかどうかを判定するには、その人の主張することを吟味するだけでは不十分」「その人が立派な人なのかどうか、それが大切」
というところ。安富さんにしてはやや主観が過ぎるような気がした。何をもって「立派」と言えるんだろうと。この文脈では、ゴフマン博士のことを言われてて、氏の生き方や行動がそれを表してるんだろうと思ったけど、私たちが基準にするのに「立派」というのはかなり危なっかしい・・。
あとエントロピーの理論。熱は宇宙に捨てられるというけど、今夏の洪水の原因が海水温の上昇にあると聞いて、う~ん・・と考えてしまった。辻村ちひろさんと一緒に撮られた動画とかあるけど、そういう点についてお話されたことはあるんだろうか?なければ、一度聞いてみたい。
何しろ、まだ男性の恰好をされてた8年前の本なので(とはいえ語り口が優しく感じ、脳内では今の安富さんで何度か再生された)いろいろアップデートされてる部分もあるのかな?
ということで、次の本へ・・。
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なんだかすばらしいです。内容はいろいろありますが、他者を批判しているよで自己を批判しています。
「自分の目の前に都合に合った話であれば、嘘であろうと何であろうと、喜んで飛びつきます。逆に、自分の目の前の都合に合わない話は、どんな筋が通っていようとも、「どうせ嘘に決まっている」と目を背けます。」
という一文の通りです。
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福島第一原発の爆発事故を引き起こした政府関係者や東電関係者,専門家の言質に対する強烈な違和感がどこからくるのかがこの本でわかってきた。気がつけば日本社会は,いまや著者の言う東大話法・欺瞞言語であふれ,暴走社会化している。
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「言葉の空転」を生ましめるのは情緒か。最近だと郵政民営化、改革、国際貢献など。小泉政権はシングルイシューポリティクスと批判された。一つの争点で政権選択を迫る手法だ。我々日本人はイシュー(争点)の内容を吟味することなく感覚で付く側を選ぶ。当時、私も郵政民営化に賛同した一人だ。今振り返るとまったくもって恥ずかしい限りである。不明はいつだって後で判明するものだ。馬鹿の知恵。
http://sessendo.blogspot.jp/2015/10/blog-post_24.html
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現代日本社会における統治者側の欺瞞・無責任体質が東大話法により行われているプロセスが暴かれている。
東大話法は、東京大学という機構が象徴的に取り入れているが、何も東大関係者だけではなく、欺瞞・無責任な態度な者によっても行われる。
第4章の『「役」と「立場」の日本社会』という章で、なぜ東大話法なるものが現代社会で蔓延してしまったのか歴史的に解明されている。
「立場」という言葉の使い方について、夏目漱石の苦心が分析されている箇所が面白かった(笑い)。
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自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
自分の立場の都合の良いように相手の話を解釈する。
都合の悪いことは無視し、都合の良いことだけ返事する。
どんなにいい加減で、つじつまの合わないことでも自信満々に話す。
自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を力いっぱい批判する。
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安冨さんの本は何冊か読んだけれど、この本が一番分かりやすくてよかったと思う。
私も東大話法に畏れ入り、自分も時には東大話法を使って誰かを欺いてるかもしれない。
立場主義に毒されて、今、自分はこの立場で何を望まれているのかと常に考えてしまう。
そこからなかなか抜け出せない。
私は今、何を言いたいのか、何をしたいのか、分かるようになりたいし、自分の体や心が望むような発言や行動をしたい。
でも、私は何をしたいのかが空虚で…と思ったら、沖縄戦で戦死した方が家族に宛てて書いた手紙のくだりで、本当は「寂しい、悲しい」と思っている気持ちを否定して、立場でものを考えないとならないとなれば、中身は空虚だというようなことが書いてあり、胸にぐさっと来ました。
言い過ぎ、というような意見もある本ですが、私はそうは思いません。
安冨さんの感じていることが、とてもよい精度で書き表されている本なのだと感じました。
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それは、東大関係者だけが使用する話法では無い。
人の意志を支配し、自分に取って都合の良いように話を進めていく効果的な話法。
それは、現在の高等点数至上主義教育の頂点とされる東大にあって、より強化され効果的に使用される。
そして、東大の教育過程においては、その東大話法をうまく活用することが必須であり、結果として多くの官僚や電力会社等巨大企業の経営者等が使用する話法ともなる。
詳細は、本文を参照していただくとして、福島原発事故以降、政財官、そして学、医の多くの分野の専門家達が話す言葉に、なんとなく釈然としないまま、でも、彼らの望むままに意見を進められていくような嫌な感じがしていた。
その話の内容を、実例を挙げながら分析し、いくつかの特徴を抽出する。
そして、その法則をあてはめて別の話を分析すると、綺麗に幾つかの特徴が表れていることがわかる。
それを「東大話法」として体系化し、その話法に振り回されることなく、自分の意志を正しく持つための武器。本書には、そのような位置づけがあると思う。
また、巻末の立場に関する議論も、見逃せない。それは、東大に限らず、われわれみなが多かれ少なかれ支配されている考え方だと思うから。
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世界は、人類が地球環境と調和しつつ平和で豊かな暮らしを続けるための現実的なエネルギー源として、原子力発電の利用拡大を進め始めていました。このような中で、東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故が起こりました。我が国は、事故終息に向け最大限の力を発揮しなければなりません。 (※東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻 「震災後の工学は何を目指すのか」の一節より)
このような文章が「東大話法」の典型であると、いきなり切り捨てられている。まず、「世界は」と言うことによって責任関係を曖昧にしていること、そして「我が国は・・・しなければなりません」という一文に見られるような、自分たちが「国」を代表しているいう意識。この話法こそ間違いの元凶であるというのが、著者の主張だ。しかも、切り捨てているのが現役の東大教授であるというから面白い。
本書では東大話法規則というのが全部で20個紹介されているのだが、最も興味深いのは以下の規則だ。
東大話法規則⑧ 自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。
この話法は、以下のステップによって構築される。
ある問題について書かれたものを大量に集め、幾つかに分けて分類する
それぞれの代表的論者を二、三取り上げて、主張を整理する
自分の意見はどれにも属さないで、全体を相対化するものだというスタンスを取る
どれかに属する人は、その外側に立って「冷静に観察」している人よりもレベルが低いと捉える
このようなものが、傍観者的態度の典型であるというそうだ。う~ん、心当たりあるな。
本書は原発をテーマに書かれており、刺激的な印象も受けるため、そこに目が行きがちではあるが、この問題は原発のみに限らないのだと思う。世の中に溢れている文書はなぜ分かりづらいのか、なぜ議論は噛み合わないのか、そんなことを考える際の一助になりそうな一冊である。
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福島の原発事故の半年後くらいに出たのかな。理性的な安冨先生の抑え切れない焦りと怒りが滲みます。東大原子力にどれだけ金が流れ込んでいるか(他分野全部より一桁多い)、理解できない無責任な発言群は「東大話法」である、それだけで読む価値がある。「影響はない」じゃねーんだよボケ、という姿勢に密かに共感です。もう、言えなくなってしまった、住み続ける人たちがいるから(2019-07-29)
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自分の本棚の分類では「原発問題」というカテゴリーに入れたけれども,本書は,モノの考え方に関するとても大切な視点を与えてくれる本です。
特に,専門家という人たちの「傍観者の論理」「欺瞞の言語」を鋭く見破る眼を持たないと,もう一度,あの原発事故と同じような目に遭うかもしれません。
先日の武田邦彦講演会で,原発村の社員らしき人が,「武田先生の講演は東大話法だ」なんて言って内容を批判していて,そのときは,この本を読んだのかなあと思いました。ま,新聞にも取り上げられていたのでそれを読んだのかもしれません。だって,本書を読めば,その質問をした電力会社の人は,自分の立場に立って,電力会社社員としての役目を果たそうとしている意見だったからです。そういう立場で考え行動することが,結果に対して如何に無責任になってしまうのか…も本書で述べられています。
本書のタイトルにもある「東大話法」の話も確かに面白いですが,私は,第4章の「役と立場の日本社会」が特に共感できました。
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福島第一原子力発電所の事故後うようよでききた
先生方がなぜあくまで傍観者でいられたか
を立場がそのように発言させたと考えれば得心がいくと解説した本である。
論理的な思考が稚拙な日本人を煙にまくにはこの程度のレトリックで十分だということがよくわかる。
また面白いことに話法なのである。記述法ではないのである。ところが原子力白書など東大話法満載であるのに誰もこれを声にだして読もうとはしない。
立場に立つ人が自分の信念に反してまで発言することをやめても
別の人がその立場にたつ。
これは原始力に限らず、景気の復興、自給率の確保、教育の向上、市民生活の安全性の確保、男女共同参画の推進。
なんでもよい それが社会にとって必要なことと認知されれば、それをテコに実効力がなくてもお金が人が流れ込むという問題があるのではないだろうか。
私はそのようなもろもろを飲み込むブラックホールのようなものが今回の事故で見えた気がする。
東大話法はその表層にすぎないと思えるのだがいかがであろうか。