紙の本
ロシアの音楽と精神
2017/09/28 11:08
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「暗い」「凄い」「壮大」といったイメージのロシアにおいて、豊かな想像力が支えた芸術家たちの忍耐力の何たるかをチャイコフスキーを中心に添えてロシア音楽史を総括している。
紙の本
ロシア音楽という世界へ踏み込むための第一歩
2012/03/25 23:58
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かねたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012」のオフィシャルBOOKである。
2012年のテーマは、チャイコフスキーやラフマニノフなどのロシア音楽。
そして、筆者はロシア文学者にして東京外語大学の学長である。
プロローグは、筆者の音楽体験から始まり、筆者のロシア体験へと展開する。
これらは、筆者の回想録と感じられた。
「第1章 メロディの謎、またはノスタルジーという経験の全体性について」では、ロシア生まれの作曲家が二十世紀音楽に果たしている役割の大きさから始まり、ロシア音楽がノスタルジーと暴力の二分法で言い尽くせるかということへと展開する。
「第2章 ロシア文化の二分法」では、「正統の都モスクワ」と「異端の都サンクトペテルブルク」を対比して、それぞれの文化の違いなどを明らかにしている。
「第3章 熱狂とノスタルジー-十九世紀のロシア音楽」と「第4章 暴力とノスタルジー-二十世紀のロシア音楽」では、それぞれの時代を代表するロシアの作曲家を紹介している。
第3章はグリンカから始まり、チャイコフスキーで終わり、第4章はスクリャービンから始まり、ショスタコーヴィッチで終わる。
「第5章 知られざる現代ロシア音楽」では、デニソフやグバイドゥーリナら現代ロシアの作曲家を紹介している。
「第6章 偉大な芸術家に会った」は、ロストロポーヴィッチとゲルギエフへのインタビューとなっている。
全体を通して、筆者の回想が織り込まれ、ノスタルジックな印象を強めていて、回想録のようであると感じられた。
その一方で、第3章から第5章は、ロシアの作曲家を紹介するガイドブックという体裁となっている。
回想録風という印象は、以前に読んだ公式BOOKでも感じられた。
もしかすると、これが公式BOOKのスタイルなのかもしれないが、あまり賛同はできない。
自分が筆者となるなら、感情的な表現はそぎ落として、ガイドブックに徹するのに思った。
スタイルについての不満はともかくとして、いわゆる西洋音楽史からは外されることの多いロシア音楽の特徴がまとめられていると思う。
ロシア音楽あるいはロシア音楽史へと踏み込む最初の段階で読む本としては、ベターだろう。
巻末の「主要参考文献」も役立ちそうである。
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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012のアンバサダーでもある亀山郁夫氏が後期ロマン派からロシア国民楽派を経て現代ロシア音楽までの音楽家と音楽について思いの丈を語りつくした一冊。
難を言えば、著者は「自分の知っていることは読者も知っている」かの如くの語り口なためにいささかハードルが高い。
常識のようにロシア革命からフルシチョフまで語られて、その時代背景を元に音楽解釈されてもなー(タジタジ)
熱狂と暴力と果てしないノスタルジーに満ちたロシアクラシックの解説書(決して入門書ではない)
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ロシア音楽礼賛。チャイコフスキーだけではなく、広くロシア音楽が年代順に紹介されています。革命、戦争、宗教。どの国にもあることだけど、国によってその内容は異なるもの。ロシアならではの歴史背景やその時代の文学・絵画・思想なども引き合いに出され、取りあげられた曲がより味わい深く感じられるようになりました。
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2012ラ・フォル・ジュルネ公式本。
亀山先生のロシア音楽愛がよーっくわかりました(笑)
先生チェロ弾きでらっしゃるのねー。
この本では、ロシア音楽の大きな特徴は「熱狂」と「ノスタルジー」そして作曲家によっては「アイロニー」であると述べられています。
この特徴付け、「乱暴ではあるが」と本文中でおっしゃってらっしゃいますが、コレを頭において、いざラ・フォル・ジュルネに挑んでロシア音楽漬けになってみたら、色々わかったような気がしましたよう。
プロコフィエフは結構エロいようだ、とかね(・∀・)
いや解った気になってるだけでしょうけれどw
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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012の会場で手にして、
待ち時間の間に読み終えた…途中で著者本人の
講演も聴いて…それまで、やや退屈にも感じていた本書が
俄然面白くなったんです!
もともと本人は、あまりチャイコフスキーがお好きではないらしく…
副題の「熱狂とノスタルジーのロシア音楽」に思い入れがあったのです。
新書のタイトルは、版元の意向で、よりキャッチーなものへと
替えられることが多く、多くは内容にそぐわないタイトルになっている…
もしかしたら、本書も、よくあるそんな一冊であるのかもしれません。
ただ、著者本人がロシア音楽が大好きであるのは疑いようもなく、
そんな熱気は、本書からも伝わってきます。音楽が生まれた背景…
それが抱える歴史を概観するには格好の書でもあるでしょう。
講演の中でカミングアウトされていたのですが、
浅田彰氏は、本書について、YouTubeを聴いて書いていることを
正直に綴っているのが良い…などというようなコメントをしたらしく…
本人は、シニカルな評かもしれませんが…とも云っていたけれど…
専門外のボクには、星の数ほどあるYouTubeの情報から
これぞ!と思うものをピックアップできることこそ、
慧眼であるんだろうな…って感じたんです…
なにしろクラシック音楽の解説書は、レア音源を扱うものが多すぎて…
良さそうだから聴いてみよう…なんて思っても、
その機会にめぐりあえずにいることが多く、ジレンマを感じてました。
本書は、お薦めの曲は、比較的お手軽に接することができ…
まさに、入門書として、良心的なつくりになっているんです。
自分へのおみやげに手にしてきた、本書とCDを振り返りながら
GWの熱狂とノスタルジーにひたる…この頃…
ま、これだけ楽しませてもらえば、いいんじゃあないかな…?
★は、ひとつおまけして…ということで…
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ロシア音楽の単純で複雑なところ。良く分析されている。正教と西欧の板挟みならず、異端(分離派)との葛藤。しかし19世紀末のロシア人音楽家はかようにして生き残ったのだ。
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YouTube、Wikipedia情報が多い。
しかし、現代音楽が失敗した今、ラフマニノフこそ先見の明があったとする説は興味深い。
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ワクワクして読み始めたけれど。
いろんな作曲家に分散しすぎていて期待はすれ。
もっとタイトル通りにやって欲しかった。
それから「ロシア的」という言葉にしても、
「ノスタルジー」や「感傷」についても、
もっと言葉を使って頁を割いて書いてくれなければ、
章立てのタイトルだけ思わせぶりで、
実質のない文章になっていると思う。
期待が大きかった分、物足りなかったナ。
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チャイコフスキーは好きですし、著者にも若いころは翻訳でお世話になったけれど・・。
ちょっと音楽的におかしいところが多いです・・。
私でなくていいから(笑)だれか専門家にチェックしてもらったほうがいいかも!音楽をあまり知らない人が丸呑みしたら、それからまた違う歴史に変わるんだろうな~。まあ、歴史って改ざんされて伝わるものというのは周知の事実ですが。
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チャイコフスキーは53歳でこの世を去っている。私と同じ年齢だ。これまで自分がなし得た事と1840年生まれのチャイコフスキーがなし得た事のあまりの違いに愕然とする。
本書は表題と中身の印象が少し違っている。著者の亀山氏が「チャイコフスキーがなぜか好き」なのであって、チャイコフスキーに深く入り込んだ解説書ではないのだ。
つまりロシア文学者としてロシア音楽が好きでチャイコフスキーも好き、そんな著者が好きなロシア音楽についての深い洞察とご自分の人生の懐古とロシア音楽への愛情を書き連ねたのが本書。
したがってチャイコフスキーに詳しくなれるわけではありません。
「ぼくたちがロシア音楽に聴き取っているのは、まさしく、人間の感情を足場にした<魂の全体性>なのだ。(中略)ロシアの作曲家は、人間の存在をまるごと包み取る巨大なタペストリーのごとき音楽、人間に固有な様々な魂の表現を描きとる音楽を生み出してきたのだった。」
本書で私はむしろムソログスキー、リムスキーコルサコフ、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ショスタコービッチについて少し学んだ。
他にも知らないロシアの作曲家に詳しく記載されているが、知らないだけに読んでもピンと来ない。
ソビエト連邦という国に翻弄された芸術家達の苦悩が、この深く表現力のある音楽を生み出したのかと思うと複雑な気持ちになる。
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Network audioの音のすばらしさから最近音楽づいています。音楽づいているといっても、ただ訳もわからず聞いて興奮しているだけですが・・・
今回は訳もわからず聞いている中でもなぜか惹かれる傾向があると気づいたロシア音楽をテーマにした入門書。まぁタイトルは実に軽くふられていますが、内容は素人にはゴッツイです。音楽という芸術も歴史と宗教の影響を強く受けていて、その背景を把握することがより深く感動することにつながっているという主張です。その仮説と主張が正しいかどうかは僕にはわかりませんが、その熱い思いや、何を言っているかわからないけど、こういうのめりこんでいる感じが刺激的で楽しい(「超半音階技法」とか「微分音音楽探求者」ってどんなSFって感じ)。まさに未知の世界。
ドストエフスキーとチャイコフスキーが交流があったというのも驚き。
読みながらCDを聞いてみると楽しさ倍増。知らない作曲家が多いのですが、あらたな発見があって楽しい!
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ドストエフスキーの小説の新訳が有名な亀山先生ですが、わたしは先生の翻訳したドストエフスキーをまだ読んだことがありません。そのかわり、『磔のロシア』などロシアの文化史の研究書を何冊か読み、たいへん強い印象を受けました。
本書は亀山先生のロシア音楽への熱い思いが溢れていて、巻末のロストロポーヴィッチ(チェロ奏者)、ゲルギエフ(指揮者)との対談も含め、たいへん興味深く読むことができました。ただ、音楽を切り口にしたロシア文化論である本書を、入門書的な本のタイトルから内容を想像して読み始めると、戸惑うかもしれません。著者はチャイコフスキーそのものよりも、副題「熱狂とノスタルジーのロシア音楽」の方に力点を置いて熱弁をふるっていますので…。
個人的には、20世紀の音楽に様々な刺激を与えたロシア音楽の系譜を改めて聴きなおしていきたい、という思いを強く持ちました。
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数年前、急遽、チャイコフスキイの弦楽セレナードで舞台に乗ることになった。1カ月で合奏から脱落しない程度に難しい譜面をさらわなければならず、文字通り気が狂ったように練習した。自分のパートをさらうのはきつかったが、合奏練習に行くとそれは喜びに変わった。冒頭のノスタルジーをかきたてられる旋律、見たこともないのに「ロシアの大地」などという言葉が頭に浮かぶ。他方、第1楽章主部のテーマの何たる典雅。あるいは通俗に堕ちそうで堕ちないワルツ。エレジーのセンティメント。そして快活でも優雅なフィナーレの最後に戻ってくる冒頭の旋律の感動。チャイコフスキイとの蜜月を過ごしたのである。
でもチャイコフスキイはなぜか好きではない。では嫌いかというとそういうわけでもない。交響曲も弾いたことがあるが、弾いて楽しく、聴いてすばらしい作曲家だと思う。でも、これから死ぬまで全くチャイコフスキイを聴かなくとも平気。
だから『チャイコフスキーがなぜか好き』と言われたって別に読む気はしないのだが、著者が亀山郁夫なら、手に取ってみるし、20世紀までのロシア音楽全般に言及されているのなら、「ロシア音楽はなぜか好き」だから、読んでみる。
最初のほうで、われわれがロシア音楽に漠然と感ずる何かを、しっかりと言語にしてしまうあたり、さすが亀山郁夫。それは副題にある通り、熱狂とノスタルジーである。そして時として風刺やアイロニーが含まれる。チャイコフスキイはアイロニーを欠くが、ムソルグスキイにはそれがある。そのことを20世紀に継承したのが、プロコフィエフとショスタコーヴィチである。だから評者はショスタコーヴィチに愛するが、プロコフィエフは美しいと思いつつ、距離を感ずるのかと納得する。そしてチャイコフスキイもしかり。
著者が音楽評論家の友人にチャイコフスキイの音楽がなぜ胸に届かないかと聞いた、その返事というのも面白い。作曲家なんてみんなナルシシストだけど、音楽への愛が自己愛を上回る瞬間が必ずある、しかしチャイコは音楽よりも自分のほうが大好きだったんだろう、というのである。
さらにもうひとつの大局観は、正統ロシア的で異教的なモスクワと、西欧的であるがゆえに異端のザンクト・ペテルブルクの対比である。そうしたいくつかの軸を示しながら列挙されるロシアの作曲家たちの解説はとても見通しがいい。チャイコフスキイまでの音楽は「熱狂とノスタルジーのロシア音楽」と題された章で語られ、スクリャービンからショスタコーヴィチまで、すなわち革命とテロルの時期は「暴力とノスタルジーのロシア音楽」と題されている。
「雪解け」以降のロシア音楽の章では、デニーソフ、グバイドゥーリナ、シュニトケ、ペルト、カンチェリ、シリヴェストロフ、ティシチェンコが取り上げられているが、熱狂—ノスタルジー、有機的—無機的、キリスト教的—異教的、キャベツタイプ—たまねぎタイプなどといったいくつかの二稿対立でその特徴が分類されているところが面白いし、なるほどと思う。
この章を読みながら、無性に聴きたくなって、最近ご無沙汰のシュニトケやシリヴェストロ���などのCDをとりだしてきたのだが、しかし、それでもチャイコフスキイを無性に聴きたくはならず、ただ、弦楽セレナードだけ聴き直してみた。美しい。
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「好き」なものの背景を知ることができたのが良かった。音楽に限らず美術でも文学でも創り出されるには歴史や政治情勢や文化、信仰などの背景があり、私はそういった背景から生まれる曲想に惹かれているのかも。
また、自分の馴染みのない新しい音楽に触れられたのも良かった。現代ロシア音楽は、あまり馴染みがなく、今回本を読んだことで聴く機会につながった。ただ、聴いてみても良さがよくわからなかったりもした。
美術でも、古典作品に比べると現代美術作品は良さがよくわからなかったりするので、馴染みがないことにより、受け入れキャパシティが狭いのかもしれない。