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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍でカミュの「ペスト」が再注目されているようですが、こちらもそういった極限の状態で人間らしく生きるということを考えさせられる作品でした。
紙の本
ペストの猛威と因習の中で、希望はあるか。
2012/11/06 10:49
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投稿者:moriji - この投稿者のレビュー一覧を見る
偶然手に取った本ですが、当たり!でした。やみくもに本を読んでいるとたまにこのような出会いがあります。(外れももちろん多い。むしろそのほうが多いかも)
16世紀のイギリス中部の田舎が舞台です。中世のイギリス、というだけでそこには様々なイメージが湧いてきます。例えば宗教の対立であったり(清教徒とイギリス国教の)因習がまだ現実に息づいている社会であったり、貧しさと封建制であったり、身分制度の固定と差別であったり、呪術と野性が生きて活動している社会であったりがそれですが、この小説にはたっぷりとそんな要素が盛り込まれています。
この、中世の田舎村にペスト禍が襲ってきます。それまでは、いろいろな問題を含みつつもなんとか美しい農村と牧畜と信仰と心の素朴な形が保たれていたのですが、ペストの襲来により、それらすべてのものが破壊されて行きます。それはまずは村人たちの生活であり、習慣であり、信仰そのものでもあるのですが、人々がどんどんペストにより亡くなっていくなかで、主人公の女性と国教会の神父、その妻を中心して、なんとかこの災禍を逃れようとする必死の行動を中心にして描かれます。これ以上ペスト禍を広げないために、村は完全に他の都市との交流を断ちます。その、閉鎖された小社会の中で生起する問題、蔓延する死、重篤な病状、拡がる呪術による治療と慰め、その中で、宗教を中心に据えた牧師たちの必死の抵抗など、息もつかせぬ展開がページを閉じることを許しません。
ペストという野性が猛威をふるう中で、人はどのように正気を保ちつつ、次の展望を抱いていくことが出来るのか、宗教の持つ意義は?そんな大きな問題をも提起しています。
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中世イギリスでのペスト禍中を生きる女性の話。
感染=死の恐怖から村人達の人間性が試されていく。
生まれが賤しいが知性と人間性とに恵まれた彼女は、困難を乗り越えて、逞しく生まれ変わる。
目前にある事実を受け入れて、一瞬、一瞬をただ誠実に生きることが大切だと、とにかく語りかける。
それにしても、この作者の本はいつもながら暗い一方で鮮やかな人間賛歌がある。
その根底には、神の不在とキリスト教への緩やかな反発が見えるのは、私だけ?
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ペストが流行した時に、感染を拡げないために村を自ら封鎖したというフランスの実話がベース。なぜそうしたのか、それは正しかったのか。村の3人に2人が死んでゆく、という状況が凄まじい。
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ペストが蔓延する村で、己のできる限りの力で生きていくアンナの話。
ジェラルディン・ブルックスのストーリーテラーっぷりときたらもう!
そしてこの人は人間の書き方が非常に巧み。
読んでいてその世界の中にすっと溶け込んでいく感がある。
静かな筆致が描く状況は悲惨極まりないのだけど、ただアンナの生き方に目を奪われてそれをあまり感じない。
むしろアンナの人生の方が壮絶に思える。
生と死、諦め、母として女としての感情、嫉妬、友情、信仰、恐怖、失望。
多くのものを綯交ぜにして、先に進んでいくアンナに女性としての強さを感じる。
日本で訳出された3作の中ではこれが一番好きだ。
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久々の星5つ! ジェラルディン・ブルックス、見てきたような嘘をつき。……いや、小説ってそういうものなんですけど、改めてすごいなと。
疫病が流行して次々に人が死んでいく、17世紀のイギリスのある村の話。病気で順番に人が亡くなっていく話を読んで何が面白いのか?と思いつつ、『古書の来歴』がかなり良かったので手に取りました。読み始めるや、主人公に次々と降りかかる試練の数々。これでもかこれでもかと起こる事件。やめられないでしょう、これは。
残酷な描写が苦手な方にはおすすめしませんが、『悪童日記』にしびれた人は合うと思います。ぜひ。
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悲しい話だった。
史実に基づいてるということだから、実際にこんな目に遭った人がいるんだろうけど…。
こんなに試練ばかりで神の存在なんて信じられるのかな?
信仰の力ってすごいわ。
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地味な癒し系かしら?と勝手に思い込んで読んでいたら、なんのなんの。さにあらず。
ダイナミック。後味にはロマンティックも少々。
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1665~66年に英国の小さな炭鉱の村を襲ったペスト禍。
運命共同体と化した村人たちが危機を乗り越えるべく耐え、奮闘するが、同時に迷信から来るリンチも。
主役の女性も幼い二人の息子を失い、悲しみにくれる暇もなく村人たちのために奔走。
心の支えとなったのは、村人たちを指導した若い牧師夫妻。
その状況でも友情と嫉妬、愛情と憎悪が渦巻く。
危機に際して剥き出しになる人間の醜さと、真の強さを持つ人間の美しさ。
近世英国のキリスト教社会という閉鎖的な舞台ですが、ラストは意外な展開に!?
牧師さんが一番の肉体労働者で、身を粉にして働く姿が涙ぐましいですねw(^O^;
17世紀中葉に実際に英国で発生した「イームの疫病」を題材にしています。
著者ジェラルディン・ブルックスの長編デビュー作です(^O^)
ニン、トン♪
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ブルックスの表現力は、この作品も凄い。
17世紀に英国を襲ったペストの流行。小さな村が、その試練にどう立ち向かったのかを、アンナという一人の女性の視点で語っていく。炭鉱で働く夫の死、子供、愛する下宿人を次々と失い、牧師夫妻と行動をともにするが、そこからさらに波瀾万丈の展開が待ち受ける。
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1665年のイギリスの田舎町でペストが発生。村の識者である牧師はペストが収まるまで自発的に村を封鎖し、外部との一切の接触を断つことを決める。外部との取り決めで生活に必要な物資は届けられるものの、ペストの伝染は止まらず、村人は次々と病に倒れ、死んでいく。
下宿させていた他所者が最初にペストに倒れ、村での発生源となったため、始めのうちは村人に忌避されていた寡婦アンナも二人の幼い子供を病で失ったが、村で一番学のある牧師夫妻に献身的に仕え、少しでも病を食い止めようと励んでいたが、状況は日々悪くなる一方。
出口のない状況に、村人の心は次第に荒廃し・・・?
というような話。
田舎の小村でのペストの発生から終焉までを描く話。
冒頭部分がペストの流行がほぼ収まった時点での描写で、そこから主人公アンナが過去を振り返る形で話が進んでいくので、最後は村の封鎖が解けて終わりなのかと思っていたら全然違った。
主人公アンナは逆境の中でどんどん知識と力を身に着け成長するが、まさかラストがあんなことになるとは思わなかった。どう頑張っても暗い結末にしかならなそうだと思っていたので、いい意味で裏切られた。
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この著者は[古書の来歴]でしり、大変に面白い作品だったので、この
前作をよんでみた。疫病が流行った中世ヨーロッパが舞台だが、個人的にあまり興味の無いストーリーで評価が低い。
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初作家さん ぶとくないが読み応えあった
ペストに荒れる村に宗教が絡む
ひとり身のアンナがエリノアに対し段々と愛おしさが芽生えてくる
病に倒れたエリノアを看病するマイクルに対する嫉妬心は今までの清廉アンナとは違う人間臭さが見えた
男は種まいたら終わり それもある意味悲しいような
アンナが我が子につけた名前 エリノアへの深い想いにガツンとやられた
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ペストものだった・・・なんてーか、このご時世シャレにならんな・・・全然時代も国も違うんだけどさ・・・
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イギリス、ダービシャーの有名な村イームで実際にあった事件がもとになっている。ペストが大流行するロンドンからの織物が病気を運んできた。最初に感染した職人の、全ての荷を焼き捨てるようにとの訴えは貧しい村民には届かず、悪疫は村中に蔓延する。人々の支えとなるべき領主一家は長年仕えた奉公人たちを置き去りにオックスフォードへ逃亡。若い牧師と名家出の妻が献身的に村人の為に働く。
語り手は無骨だが優しい鉱夫の夫を落盤で、ふたりの幼子を悪疫で続けざまに亡くした若い寡婦。牧師夫妻に導かれて無学な細民から薬草の知識を身につけて村民の助けになるまでに成長していく。
物語のはじめは悪疫が去った翌年、残された人々が辛うじて生き延びている村。そして前年の疫病の年の物語が本編。最後にまた初めの年に戻る。
村を封鎖することによりペストの蔓延を防いだ牧師モンペッソンは実名だし、他の人々もほぼ忠実に描かれているようだが、実在の村イームの名が使われていないのには何か意味があるのだろうか?
あと、封鎖された村に生活物資を支援するチャッツワース・ハウスの伯爵、公爵じゃないの?と思ったら、この人は4代伯爵で公爵になるがそれはまだ後の話。ちなみにハードウィック家のベスの子孫だった。
ところで、最後近くになって意外な展開。尊敬に値すると思った牧師、かなりの狂信者だった。
最後のエピローグもなんだかこれいらないや、って、感じでした。
古典的な題材を現代の感覚であしらうとこうなるのかなあ。