紙の本
思っていても言わないこと、
2021/07/11 09:18
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投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
抑えているつもりなのにとび出してしまう感情。それらを自分の中で折り合いをつける為の方法を人間という生物として学ぶべきタイミングに、お手本が見つからなかった。また、最悪の事件が発生してしまった後にも、間違えてしまったことを誰からも指摘されないで生きてしまうとその背負った罪をどのようにして償えば良いのか。償うべきなのか。大人なら誰しも、一つは思い出すはずの子ども時分にやってはいけないことをやってしまった時のこと。胸の内にそっと秘めながら生きていく。
紙の本
予想の範囲内の結末
2020/06/20 08:41
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
たぶんこういう感じのストーリーだろうなぁと見当がつき、おおむね予想したとおりの結末だった。己の中の陰鬱な部分を自分の中で作り出した(存在する)もう一人の自分に背負わせて、そちらにすべてを押し付けて何食わぬ顔で生きている人というのは、程度の差はあれ、結構多くの人がやっていることのように思うので、筆者は異常なことのように書いていたけど、さほど特異なこととは思えなかった。
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密室状態の家で両親と兄が殺され、小学生だった彼女だけが生き残ったその事件は「僕」が12歳の時に起きた。「僕」は事件のことを調べてゆく。「折鶴事件」と呼ばれる事件の現場の写真を見る。そして…。巧みな謎解きを組み込み、エンタテインメントをのみ込む、渾身の長編。
生き残った女とはバーで知り合う。中学が同じ。探偵から声をかけられる。
彼女の前カレが使い込みをして失踪。彼女の過去も教えてくれる。
ベランダの大きい鉢植えに死体がないか確認を依頼。断る。次回彼女の家を訪ねる時に伝える。掘るが何も出てこない。折鶴事件の担当者に隠された事実を聞きにいく。美人の妻に異常な嫉妬をする夫。それが原因で兄はニート。妹に肉体関係を求める。これ以上やったら両親に言う。家は監視カメラだらけ。なのに誰も家に入った形跡なし。実は裏口のカメラは細工していた。近所で空き巣事件発生。空き巣が入れるようにドアを明けておく。
女の告白。空き巣が入ってきて両親を縛る。兄を両親を殺し自殺。
しかし納得できない。
予定通り空き巣が入る。両親は縛られる。兄も殴られる。
空き巣がいなくなった後、兄が両親を包丁で殺す。母を全裸にして折鶴をまく。
証拠となるものは燃やす。燃えカスは埋めた。すべて予定どおり。
勃起した陰茎を見せられる。射精され洋服にかかる。
睡眠薬を上げるふりをして毒を飲ませる。
兄は精神病。箱庭と殺害現場は全く同じ。
女と結婚。
弁護士事務所はクビ。不倫の弁護士にリストラを相談されていたが会話を録音し訴えようとしていた。
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主人公は幼い頃、自分の中に時々現れ話しかけてくる実体のない(R)という存在がいた。
幼い彼に、白衣を着た男は言う。
「君は好き勝手生きるわけにはいかない。
自分だけの内面に生きているわけにもいかない。
いつか世界は君を攻撃する。
そして攻撃を受けた君はその世界に復讐しようとする。
そうなる前に君は変わらなければいけない・・・」
バーで出会った中学の同級生紗奈江は、猟奇的殺人で家族を殺され唯一生き残った少女だった。
彼女の混沌に入り込んでいく中で、
主人公もまた自分の泥沼に入り込む。
中村文則の小説を読むたびに、
この小説家はいつも町の片隅に生きる「たった一人」のために書いていると感じていた。
読む者全てにではなく、
読んでいる者、そのたった一人のために。
この小説は特に、その「たった一人のため」を強く感じさせる一冊であったと思う。
私はいつもその「たった一人」の読者である。
たった一人に、確実に届くと言うことが、
どれほどの希望をこの世界にもたらすことができるのだろうか。逆もまた然り。
「たった一人」を甘く見てはいけない。
中村文則は、小説の登場人物の光と闇を通して、
いつもいつも「一人の人間」に手を差し伸べている。
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やっぱ「文芸作品」は性に合わない。主人公がやたら悶々として、結局そのまま終わりって感じ。せっかくのミステリ要素も付け合わせ程度で終わっちゃってるし。
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冒頭の医者とのやりとりから早くも精神の奥底をえぐられるような感覚を覚え、一気に読んでしまった。
中村さんの小説は心配になるくらい人間の陰鬱を掘り下げていて、それを自分自身、他人事として、ただの小説として客観視できない部分も多くて怖くて苦しくなる。
今回読後は正直、自分の中にある目を向けたくないことや、気付かないですむことはもう考えないようにしよう、そんなことしない方が絶対楽に幸せに生きていけるよ、と思った。中村さんの本読まないようにしようとさえ思った。
でもたぶんすぐに読むだろう。
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この迷宮事件に、強く惹かれるのはなぜか。彼女が好きだから? それとも─ ─。「僕」がある理由で知りあった女性は、一家殺人事件の遺児だった。密室状 態の家で両親と兄が殺され、小学生だった彼女だけが生き残った。「僕」は事件 のことを調べてゆく。「折鶴事件」と呼ばれる事件の現場の写真を見る。そして ……。
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描きたいことが散らばっている印象。
自分のなかの悪に憧れる別人格のことと、過去の事件と。
事件の告白の場面もあり得ないし。
迷宮入り事件だというけど折り紙の指紋で犯人分かるてしょ!
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家族が殺されて娘ひとりが生き残ったら。
いやん、耐えられない。
周囲の対応にもピリピリしなければならない毎日かと思うと余計に。
そんな事件になぜかのめり込んでしまうなんて。
まぁ、謎めいていれば興味がわくのはわかるけれど。
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鬱々してしまった。誰でも暗い部分を抱えてるものだけど、ここまで全面に出ちゃう人は、私はちょっと受け付けない。主人公の中に住んでたRの存在がすごく気になった。
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引き込まれて、数時間で読んだ。
主人公に漂う、生きることに対する虚無感やら罪悪感やらを内包した暗さは、安定。
日置事件の謎が明らかになって、そこからさらに主人公の考察によって深まっていくところで満足感を得られる。
ただ他の登場人物が、主人公が考えている言葉(デュエットとか)を全く同じように遣っているのは、違和感がある。あと、瓶ジュースもらってから事件まで数ヵ月空いてることを警察が怪しまなかったところも。
あとなぜR?そしてRに、新見だからNって呼ばれてたけど、名字より名前の方がベターだと思った。
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今までで一番明るい印象。
文則さん読んでて特有の胸がつまる感じはなかった。
迷宮入りのはずだった事件が、徐々に輪郭を帯びていくのが気持ち良かったからかな。
なんやかんや結局2人で珈琲を飲むという日常にもホッとしてしまった。単純。
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前向きなあとがきからは想像できない狂気に満ちた内容に読み始めは動揺しました。「君があの事件を追う理由を教えようか。あの事件の奥に、あの謎の奥に、君は自分を見ているのだろう?」「この世界の温度も必要とせず、優しさも必要とせず、希望も必要とせず、これまでの内面の傷なども問題にしない、僕は無造作で、不条理な存在になる。僕はあちら側へ、あの残酷な世界の側へ行く。」狂っているわりには主人公はとても論理的に考えていて推理小説みたいです。読後感は空っぽです。
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のめりこんでしまった。独特の言い回しを多用した一人称の文章もさることながら、あまりにもダークなその世界観に。あくまでも健全に生きている人にはおそらく理解すらできない世界観なのかもしれない。でも、ある種の人にはこれ以上ない共感を持って迎えられるだろう。そして、僕もその一人であったということだ。
僕の中にはRはいなかったし、多神もいなかった。でも、だから健全なのかと問われると自信をもって返答することはできない。この小説で描かれる事件が迷宮であり、と同時に自分の内部こそが迷宮なのだ。
ところどころに、はっとさせられる描写が満載。又吉が推薦していた作家だということは知っていたが、初めて読んでみてなるほど、と思った。他のもぜひ読んでみよう。
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自分の中にRという別人格をかかえる僕は,楽に生きるために心の奥の泥にRを追いやるが,大人になるに従って,Rがじわじわと滲み出てくる.そして,元同級生と名のる女沙奈江と出会い,彼女が迷宮事件のただ一人の生き残りと知って,事件の真実に絡みとられていく.心の闇のような薄ら暗い,死へのほのかな希求が,ずっと靄のようにかかった物語だった.