紙の本
三浦老人昔話
2024/01/06 22:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『半七捕物帖』と同じ世界線の物語だが、半七と比べて謎解き要素が薄く、江戸情緒で読ませる感じになっている。
解説によると著者は半七シリーズに飽きていたらしいのだが、ひょっとしたらあまり整った物語にすると、「語られた物語」にしては出来すぎていると思っていたのかもしれない。作中でもこのことが仄めかされている。
紙の本
岡本綺堂氏の短篇14編が収録された作品集です!
2020/08/19 10:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、明治から昭和初期にかけて活躍された小説家で、劇作家の岡本綺堂氏の作品です。同氏は新歌舞伎の作者としても知られ、著名な作品として小説「半七捕物帳」などがあります。また、数々の怪奇譚小説も発表されています。同書は、その一つで、死んでもかまわないから背中に刺青を入れてくれと懇願する若者、下屋敷に招じられたまま姿を消した女形、美しい顔に傷をもつ矢場の美女の因縁話など、しみじみとした哀話からぞくりとする怪談まで、岡っ引き半七の友人、三浦老人が語る奇譚12篇と附録として短篇2篇を加えた作品集となっています。となっています同書には、「桐畑の太夫」、「鎧櫃の血」、「人参」、「置いてけ堀」、「落城の譜」、「権十郎の芝居」、「春色梅ごよみ」、「旗本の師匠」、「刺青の話」、「雪見舞い」、「下屋敷」、「矢がすり」、「黄八丈の小袖」、「赤膏薬」が収録され、楽しめます。
紙の本
100年近くも前の作品なのに
2023/02/03 14:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
岡本綺堂のやや怪奇味を帯びた作品が入っている短編集である。明治初期から中期に幕末頃の話を聞きがたりする という体裁を取っているため、幕末と明治初中期の風俗をともに知ることができる。驚いたのは100年近くも前の作品なのに、江戸言葉のテンポの良い語り口で、さして引っかるところもなくスラスラと読めることである。短編集にありがちの、話を無理やり面白くしようと、オチの部分を作り込むこともなく自然体の語り口であるところもよい。
投稿元:
レビューを見る
下屋敷の、結局どうしてどうなったのかわからないのが良い。
踊り字そのままの歴史的かなづかいなのにするする読める。表紙口絵がまた良い。
デザインはミルキィ・イソベ、口絵は山本タカトだそうで。
投稿元:
レビューを見る
帯表
岡っ引き半七の友人、
三浦老人が語る
怪奇と妖美の
読本世界へ
ようこそ
「ぢゃあ、
まあお話を
しませう・・・」
投稿元:
レビューを見る
明治の半ばに著者と知り合った三浦老人が、江戸末期の昔話を語る、という設定。三浦老人は半七捕物帳の主人公である半七老人の友人で、半七より更に年上。家主をしていた。怪談、不思議譚、哀話が語られる。身分制の不条理にまつわる話はいたたまれない。断ち切られたような結末にリアリティを感じる。三浦老人昔話に加えて、2つの小篇が収録されている。本版は旧仮名遣いだが、読みにくさは感じない。
収録作品は三浦老人昔話として、桐畑の太夫、鎧櫃の血、人参、置いてけ堀、落城の譜、権十郎の芝居、春色梅ごよみ、旗本の師匠、刺青の話、雷見舞、下屋敷、矢がすり。小篇は、黄八丈の小袖、赤膏薬。
投稿元:
レビューを見る
数奇な運命に弄ばれる江戸の人々を描いた奇譚集 岡本綺堂には探偵物語や怪談のイメージを抱いていたが、こちらの本ではそういったものの要素は数話に幾らかある程度であった 少し後味の悪い話が多いが、当時の武士や町民の暮らしぶりや倫理観・ものの考え方等に触れられ、その点興味深く読むことが出来た 駕籠屋の息子が意地を張り通して愍然な最後を遂げる「刺青の話」と、武家の奥方と若い役者の密会にまつわる話で寒気を感じるようなオチを迎える「下屋敷」が特に良かった 「矢がすり」に登場する、意外な素性を持った頬に薄い傷跡のある美女”矢飛白おきん”を描いた山本タカト氏の口絵が艶やかで非常に魅力的である
投稿元:
レビューを見る
半七の友人である老人の昔語りという体裁の短編集。
物語だけで良さそうなものだけど、話を聞くまでの様子が毎回描かれる。
その削ってしまえる部分の、聞き手と老人の交流や季節の移ろいがゆったりした空気をかもしだす。
書籍情報には怪談や哀話とあったけれど、怪談らしい怪談は少ない。
「哀話」には決められた役割のために自分を生きられない悲しさがある。
そこに生まれたから、この役割だから、という縛りは時代の影響を大きく受ける。
老人の語る江戸末期は、聞き手が生まれる前の「昔」。
聞き手は、「新しいことを話す人は多くいるけれど昔を語れる人はどんどん減っていくのだから今のうちに聞いておきたい」と考えている。
綺堂は江戸情緒の表現に定評がある人で、この本の解説にも失われゆく江戸を書き残すようなことが書いてある。
だけど昔は良かったという無批判な理想化とは違うんじゃないかと思う。
戦後生まれの戦前賛美や、不況しか知らない子が高度成長期を羨むような、「ろくでもない現在」からの逃避を綺堂の文には感じない。
この本の中の江戸は「今」よりずっと不自由で無用な苦痛がたくさんある。
だからといって昔はひどかったと切り捨てるのでもなく、そういう昔を悼みながら愛おしむような向き合い方なんだと思う。
「旗本の師匠」は実話っぽい雰囲気。これを理不尽ととらえているのは綺堂の性格なのか世代なのか。
武勇伝のように語っていた勝小吉や尾崎行雄をちょっと思い出した。この二人も世代が違うけど。
「黄八丈の小袖」は『尊属殺人が消えた日』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4480854088を考えてしまった。
編者の解説はあまり好きじゃない。意味を持たせ過ぎているように感じる。
投稿元:
レビューを見る
置いてけ堀の櫛の話は怪談としておもしろい。
しょうゆの御家人や矢がすり、手習いの師匠の話などを読むにつけ、やっぱり生きにくい世の中だったのかもしれないなと思い直す。だからこそ、明治維新が起きたのだろうしね。江戸時代の幕藩体制を一番迷惑に思っていたのは、さむらい達だったのではないか。
解題にもあるが、生まれどころを間違えた人たちの哀話が中心だった。哀しくもおかしみのある話。
投稿元:
レビューを見る
岡っ引き半七の友人である三浦老人から聞いた奇譚、という設定に痺れますね。プラトン社の雑誌『苦楽』に載った12篇は、半七はもう書きたくないと断って書いたネタだけあって人情話ではおさまらない、怪談、因縁、悲話などいろんな話が盛り込まれててそれぞれ面白い。
もちろん三浦老人が現役の頃の思い出話を語るので、描かれるのは江戸。この話が語られた明治の風景と、話の中に描かれる江戸の風景の対比もこれまた良い。
付録の2篇「黄八丈の小袖」「赤膏薬」も面白かった。ままならない所が良い。
投稿元:
レビューを見る
江戸を舞台にした短編小説集。なんてことのない、実際にどこかにありそうな、だけれどもなかなかないだろうなあと思える物語の数々。一見喜劇に思えることが当人にとっての悲劇であったりだとか。そこに描かれた人々の悲喜交々が、おかしいような、そして悲しいような。少しずつ、じっくりと浸って読みたい一冊です。
お気に入りは「鎧櫃の血」。いかにもなタイトル。そしてやっぱり怪談話。なのだけれど……醤油って! よりにもよって醤油!!! 笑っていいのか何なのか。でもこのラストにはぞくり。
投稿元:
レビューを見る
ふとしたきっかけで陥ってしまう狂気と、それに巻き込まれる理不尽。とても異様に思えるのに、それを自然に描いてしまうとこが怖いのですが、そういうものに自分が行き合ったら普通の反応しちゃうのものなのか。
時代小説って…宮部みゆきかしゃばけか壬生義士伝しか読んだことないと思うのですが…武士と町人の普段のくらしの中の境界やら折り合いの難しさが実際的とゆーか身につまされるとゆうか。あちゃー、と言いたくなるとゆうか…武士って大変なんだなぁ。
春色梅ごよみ。
同情の涙でした…お近さん、かわいそーで。今ならさしずめ運動部に青春かけてた子が、引退してこれまでと違う友達からやおいの世界を知り自分でも書き始め受験に差し障りが…てなくらいでしょうが、江戸時代の武士の家だったばっかりに…涙。現代日本ってほんと素晴らしいですね。
きっと今の日本のこの溢れ返りっぷりは、過去涙を飲んできた人々の上にたっているんだろなぁ、ととおいめ。かくいう自分も、きっとかつては地方の農民で活字に飢えてた口だと思ってます。
下屋敷。
事件は上屋敷で起こってんじゃねぇ、下屋敷で起こってんだ、ばりな。いや、まじでその役者どうなったのか。出してくれたよね。
投稿元:
レビューを見る
岡本綺堂「三浦老人昔話」は捕物帳の話をしてくれる半七老人の友人、大久保に住む三浦老人が語る昔あった話。今の世の中は新しい話ばかりが溢れている。昔の面白い話を老人から聞くようなことも無くなってしまった。ネット登場以降でほぼ全滅である。明治の頃に老人から聞く話は江戸期のこと。半七捕物帳で語られるミステリでもなく青蛙堂鬼談で語られる怪談話とも違う、それ以外の因縁話や人情話、ちょっとしたエピソードである。武家の奥様がご贔屓の女形役者を内密で下屋敷に招くが恐ろしいことに…「下屋敷」。江戸時代の藩主や旗本の家は家族の住む上屋敷、隠居などが住む中屋敷、蔵屋敷とも言われ荷物を置くための下屋敷に分かれる。「むかしの大名や旗本の下屋敷には色々の秘密がありましたよ」旗本大久保家の小石川巣鴨町にある下屋敷での話。怖い、怖い!更に、狂気なのか祟りなのか本所の置いてけ堀の因縁話「置いてけ堀」、母の病を治す人参を買うために身売りした姉、しかし母の命は助からず、そのうえ姉も失った弟の怒りが暴走する「人参」など。こうした話を年長者から聞くこと自体が昔話になりつつある。更に今のおじいちゃんが話す昔の話が世代的にバブルの話ではあまりに軽い。