紙の本
鎖国していたはずの江戸時代に「グローバリゼーションの中の江戸」って?
2020/06/14 22:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、江戸時代の前提めいた部分(=鎖国していた)を揺るがす論で貫かれている。
時代の一歩手前は、戦国時代という内乱状態。江戸時代は、経済が疲弊しまくった中でスタートし、弱い経済の日本を守るために、国を全面オープンにはしないという選択をした。それに付随するあれこれの施策が、いつの間にか鎖国的に見えただけなのかもという立場。一方、海外の技術は積極的に取り入れて、日本の技術として移植⇒発展させたという時代の始まりでもあった。
江戸時代の日本は、ただ国を閉じていたのではなくて、積極的な取捨選択していた時代だったんだ!いう発見。ちょっといろいろ調べて、著者の論を自分なりに追ってみたくなりました。
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岩波ジュニア新書717~1江戸の西洋ファッション:2江戸の茶碗とコップ:3江戸の視覚の七不思議:4江戸時代が出現したグローバルな理由~肝は4であって,1492コロンブス一行のイスパニョラ島上陸・・1510ポルトガルのゴア占領・・1511ポルトガルのマラッカ占領・・1525舟山群島にポルトガル居住区建設・・1533神屋寿禎の石見銀山灰吹き法精錬成功・・1538日本の銀輸出開始(倭冦の前後期の交替)・・1543後期倭冦による日本への鉄砲売り込み・・1560-メキシコ・ペルーで銀生産・・1575長篠の戦い(硝石輸入増大)・・1580東南アジアの和船急増・日本人町の建設・・1592・97秀吉の朝鮮半島侵略とアジア植民地計画・・1600リーフデ号事件・・1609家康が対墨通商・鉱山技師派遣をフィリピン総督に依頼・・1633-36海外渡航禁止・銅山開発・蘭東印会社専従による貿易維持・自給能力の向上計画・・・これを解説して繋げよう。種子島に鉄砲を伝えたのはポルトガル人も加わった倭冦であったといのは目から鱗
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田中優子著『グローバリゼーションの中の江戸』.
大航海時代を経て、我が国は世界史と接触をもつ時代がはじまる.
科学技術の発展は、航海術など諸科学の機能のうえに、アジアとヨーロッパが<海洋>でつながる時代にはいる.
グローバリゼーション.地理的空間を圧縮する.そのために異なる文化、利用不可能が活用可能となる.
資することもあればと利点をあげ、かえす論理で競争、不幸、植民地化、アメリカ化と不平等を示す.
グローバリゼーションは、生活・文化・習慣にも変革をもたらし、受容のうえに<主体性>を試される.
変革と受容に政権と庶民.どちらが利点の恩恵に浴し、どちらが利益を提供する役割を担うか.
そこを緻密に問い直そうとするかの感が、行間にうかがわれる.
グローバリゼーションは必然.その時代に生きることを否応なく求められている若者に、試金石を示すということのようだ.(岩波書店 2012年)
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面白かった。
同じジュニア新書の砂糖の世界史と対になっている。
銀、鉄砲、砂糖、木綿、磁器、これらがいかに世界をかえたのかよく分かる。
ものの本、呉服の由来もはじめて知った。
明治以降の日本のやり方への批判も。
秀吉が東アジアにやったことも大きさよ、、、。
日本が東アジアの一員であることを今後も考えながらいかなくては。
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江戸時代は鎖国の時代?
なぜ、「鎖国をしていた」「開国した」ということになったのか。教科書で習ったことを、疑わないまま、それを常識として知識にしている。それが危険だな、と思った。学校で習ったことが、すべて本当ではない。江戸の文化についても、なかなか面白かったけど、それに加えて、「鎖国」「開国」「日本」などのことばをどういう立場で使うのか、という視点でも面白かった。
グローバル、ということばを、世界均質化、と捉えてはいけない。どこか大きくて強い(と思われる)国を真似すればいいってもんじゃない。
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グローバリゼーションの功罪を問う。
リサイクル時代江戸を賛美しすぎるきらいはあるが世界中が消費社会と化した現代に一言物申した本であり青少年のみならず大人も読むべきである。
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本書は、少年・少女向けの「ジュニア新書」であるが、ブクログの他の方のレビューを読んで興味を持ち、手にとってみた。
「グローバル経済」とは、現在よく語られている言葉だが、その概念についてあらためて深く考える機会はあまりないように思うが、本書は、「江戸時代」という切り口でその「グローバル経済」をわかりやすく考察している。
本書は、「グローバル経済」とは最近になってからいきなり始まったわけではなく、「大航海時代と言われる15世紀末から、世界はグローバリーゼーションに突入」し、「江戸時代は1603年に始まり、まさにその中で成立した」という。
その具体的影響の実例としてあげられている「ボタンとズボン」や「インド更紗」「文様」などの話は興味深く読めた。
また、江戸時代の「陶磁器」や「風景画」などの文化の話は、「グローバル」と結びつけるにはちょっと違和感があったが、日本が外国文化を取り込んで換骨奪胎することが当時からすでに行われていたことがよくわかる。これは日本の文化的特性なのだろうか。
しかし、「江戸時代が出現したグローバルな理由」を読むと、豊臣秀吉や山田長政をまったく評価しないなど、どうも視点に独自のイデオロギーの裏打ちというか偏りががあるようにも感じる。
著者は本書の内容以上に語りたいことがもっとあるのではないかと、読後にちょっと違和感をもった。
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今から思い返すとあまり根拠はなかったのですが、江戸時代というのは鎖国をしていたので「グローバリゼーション」には全く縁がない社会であると思っていました。
しかしこの本を読むことによって、江戸時代の末期においても、当時の役人は当時の世界状況(中国で起きていた出来事等)を理解してペリーとも交渉していたことが紹介されていて、今までの考え方を見直すことになりました。
最近は江戸時代の詳細な状況(良い点も悪い点も)が、学術論文ではなく、私が読むような本によって紹介され、歴史の好きな私にとって良い環境になってきました。今後も様々な意見を得て、自分なりの江戸時代の姿をイメージできるようになりたいです。
以下は気になったポイントです。
・この本はすでに15世紀末から地球規模で起こっていたグローバリゼーションの中で、日本人がどのように「自分の体に合った服」をつくり、その激しい流れに呑み込まれずに、独自に生活していたかということを書いた本である(はじめに、P5)
・インドのように紀元前から蓄積してきた木綿業を奪われた国もある、支配国イギリスがインドの綿花を安く買い、インド国内で機械により木綿の大量生産を行い、低価格でインドに売りつけた(はじめに、P8)
・江戸時代の日本は、グローバリゼーションの中で、そこに自らを合わせることなく、導入するものとしないものを分別しながら自らの道を行った(はじめに、P16)
・江戸時代になってポルトガル船、スペイン船への渡航禁止令を出しても、日本はあまり困らなかった、オランダ東インド会社が、ポルトガル船の代わりをしてくれたから(P7)
・オランダ東インド会社は、アジアに約20か所の拠点があった、全従業員は1753年時点で、約25,000人、最大はバタヴィア(ジャカルタ)で5000人、長崎は最も小さく11人の社員のみ(P14)
・1636年の記録では、オランダ東インド会社が日本に売った60%は中国生糸、21%は中国綿織物、1705年には、インド木綿(21%)やベンガル、ペルシャ等の生糸もあった、日本が絹織物の技術をもったから(P15)
・明治維新と戦後に起こったのは、都市設計・建築物・エネルギー政策・衣類・食べ物に至るまで欧米化することであった、欧米社会の生活を「豊かさ」だと思いこんで、幸せがあるはず、と考えて目標にしたから(P23)
・江戸時代には様々な食べ物が外国から入ってきた、ジャガイモは南米原産でジャカルタから、天ぷらはポルトガル、でも米と大豆と海産物の組み合わせは不動、シンデレラはアメリカのカボチャを馬車にしたもの(P57)
・江戸時代の人々は蝋燭を採用したが部分的で、油を使う行灯が圧倒的(P60)
・竹を使って多くの生活必需品、道具類を使った、40年ほど前まではタケノコの皮は肉屋でよく使われていた(P60)
・小田野直武は、浮世絵師ではなく、藩の絵師として様々な植物画や、それを取りいれた花鳥画、風景画を描いている(P85)
・江戸時代には31日という日付は無かった、30日の3を「み」10を「そ」日を「か」と呼んで、月末を「みそか」と呼んだ(P91)
・高尚な本は京都を中心に(ものの本屋)、大衆的なマンガ本やゲームのようなものは、江戸(絵草紙屋)で出されていた(P105)
・コロンブス一行は、アメリカのイスパニョラ島に上陸した時にそこを「ジャパン」だと思い、キューバを「中国」、大陸を「インド」と思ったと航海記に記している、コロンブスが旅立った1492年にグラナダ王国が陥落し、700年に及ぶイスラムとキリスト教徒の戦いは終わり、欧州は完全にキリスト教域になった、これがグローバリゼーションの始まり(P121)
・1510年にポルトガルがゴアを占領して、アフリカ人が南アメリカに奴隷として運ばれた、アジアの奴隷貿易が終わろうとしていたころに、欧州人によるアフリカ人の奴隷貿易が始まった(P122)
・ポルトガル人によって、イスラム教徒によって担われていたアジア貿易は変化した、ゴア・マラッカ・ホルムズの三大商業拠点は、ムスリムと闘って得たもの(P122)
・朝貢貿易から締め出された欧州人は、海賊たちと一緒に行動しない限り仕事がなかった、鉄砲は中国人とポルトガル人倭寇が扱う貿易商品であったので、種子島には漂流したのではなく商売として来ただろう(P127)
・歩兵に対する鉄砲配給率は、朝鮮侵略では14-26%であったが、関ヶ原では40%超であった、原料の鉄はインドや中国福建省、タイから輸入していた、秀吉の刀狩も鉄の供給のためという説もあり(P129)
・中国の冊封国は、朝鮮王国、琉球王国、ヴェトナム、マラッカ、インドネシア等、広範囲に広がっていた、冊封国になるためには「国王」を名乗り、中国皇帝の臣下になること、日本も1402年に足利義満が日本国王になり1408年の死去により離脱した(P132)
2012年9月8日作成
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岩波ジュニアー文庫という洗脳教科書では
見ることのできない角度から
若者に向けた世界史の中のニホンを浮き彫りにする
特に《鎖国》と呼ばれている江戸前後を解剖する
鎖国はむしろ江戸以前であって
江戸は自主的に管理しながら
海外情報と貿易を庶民の目線で広めていることを
独特の視点から解き明かしている
その証拠として現代のお祭りでも
ポルトガル人や挑戦や琉球からの使節団に扮した
仮装行列がアチラコチラで行われているというし
浮世絵やファッションや食器やメガネなどの技術を通して
あるいは政治や経済や侵略戦争を通して
人間の悪行と成長を紐解いて行く
経済を江戸では《経世済民》と呼び
世を営むことで全ての人や自然を救済することを
意味したという
GDPとは無関係に暮らしを過不足なく豊かにする
グローバルに生きるということは
力尽くの大国に従って真似することでなく
地域ごとの特色を活かしながらも
世界の中から可能性を選び出して補い合うということだと
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とくに興味深かったのが「3 江戸の視覚の七不思議」。恥ずかしながら、レンズを通してみた想像の絵や遠近法や陰影法を駆使した絵など、ここまで黄表紙がおもしろいとは思ってなかった。ほか、柳田国男『木綿以前の事』から、磁器の登場が庶民に喜びを与えたことなど、江戸時代の庶民レベルにおけるグローバル化の具体例が紹介されている。東アジア文明圏における「徳」の価値観は物理的な世界征服を必要としないとの指摘から、江戸時代ではその「徳」の価値観が行動に、行動が結束や感化のネットワークになったとの由。挙げられている事実と結論が少し遊離しているきらいはあるし、その主張も現代的な価値観に流されているような感じもするが、それらの事実を取り上げること自体は大切な仕事だと思う。
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江戸時代は「鎖国」という通俗概念を否定し、江戸時代こそ日本がグローバルな世界の中で、平和国家として位置付けられる第一歩だったという史観で語られる内容。内容の半分は江戸時代の文化的発展と需要、もう半分は豊臣秀吉の朝鮮出兵から、アジアの中の自立した国家を目指す徳川幕府の頑張り……が語られる。
岩波ジュニア文庫といっても、内容は結構難しくて、本当にジュニア向けかと思うことが多々あるけれども、この本は別の意味で「ジュニア向けとしていいのかな?」と思った。いろいろと問題点はあると思うけれども、第一はやはり作者が歴史学者でないことが挙げられると思う。このことの何が問題かというと、物事を一面で語りすぎていて、知的発見の喜びが大きい前半に比べると、後半はちょっと同意できかねる部分が多々あった。
江戸時代が他の時代と比べて特筆するほど平和だったのは確かだし、輸入品目の国産化が日本文化を発展させたことは確かだけれども、自由貿易しなかった弊害は大きくて、日本では江戸時代に二度の大きな大飢饉が起きていることを考えれば、外国から穀物を輸入できなかった江戸幕府の体制的限界は褒められるものではなかったと思う。さらに、徳川幕府は一貫して秀吉の朝鮮侵略を「武威を示した」と称揚しているし、帝国的側面でいえば蝦夷地の開拓でロシアと一触即発の状況になっている。そもそも、そんなに徳川幕府が朝鮮や中国と仲良くしたければ、「征夷大将軍」なんて肩書きは真っ先に変えるはずだけれど。
中国にしても、中国的世界観を是とはできない(西洋的世界観を是とできないように)。冊封制度は西洋の帝国主義と同じように横暴だった。明朝だって侵略戦争はしたし、そもそも冊封制度の「世界は俺のもの」思想は、徳とは別の理屈で、その尊大さがのちに英中戦争の遠因になっている。あと、秀吉を読み書きできない人のように書いているのは、マジで語るに落ちていると思う。
中南米の銀が世界的に(日本にも)影響を与えるくだりなどは良かった。でも、結局、時代の流れの中では、国の興亡はどうしようもないことだということは解るが、だとしたら作者の史観はどうしようもなく古いものでないかと思うんだよね~。「中国の冊封は良い帝国主義」なんて本気で思ってそうなところが評価を下げている。
江戸時代のエコを語っているけれども、江戸時代はリサイクル社会ではあっても、自然についてはむしろ環境破壊社会だった。人間が牛馬のように働き、身分も固定化され、余剰人口を抱えることも難しい社会だった。そういうスタンスで語られる本も併せて読むと良いと思う。でも、作者の本業の日本文学や社会学の辺りは、知的に楽しめるものになっている。
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前半は目からウロコの連続。縞模様の語源は「島=インド」の模様だとか、八重洲の由来はヤン・ヨーステンだとか、人に話したくなるウンチクが満載で。
後半はいまいち読むのがつらかったな。「鎖国」という言い方がいかに的をはずしているのかはよくわかったけど、秀吉への評価は一方的で一面的だと思うし、朝鮮出兵への断罪の仕方も近視眼的であるように感じた。いや断罪はいいんだけど、あれを断罪するなら、元寇はどうなんだとか、もうちょっと広い視野からの批判が必要であるように思う。
あと明らかに経済を敵視しちゃってるところも引いちゃう。経済を重視するってのは「贅沢を尊ぶ」みたいなのとは別次元のはずなんだけど、その辺の批判の仕方が荒い。
ま、とはいうものの、全体的には「読んでよかったな」と思います。レンズの語源はレンズマメってことが知れたし。
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江戸時代を多少賛美し過ぎているきらいはあったが全体に面白かったと思う。個人的には、本の中で取り上げられた「江戸時代のファッション」「浮世絵」などが、初めて知る知識が多かったこと、それと教科書で見たことのある写真をふんだんに使われつつ教科書とは全く異なるアングルから書かれていたため、とても興味惹かれた。
一番の良かったのは江戸時代に限らず広い観点から「グローバル化」「グローバリゼーション」を考え直すきっかけになったことだったのでないかと思う。
「グローバリズム」とはどういった概念なのか?から始まり、ジュニアにもわかる言葉で簡潔に説明した上で、良い点悪い点をハッキリ掲げている。
江戸文化をグローバル化の観点から見直すことで、「グローバル化」そのものが、曖昧模糊としたものから少しずつ形が見えてきた感覚だった。
日本はアジアをはじめ世界各国と繋がっており、どうしたって相互に影響し合っているのだろう。
歴史の勉強を始めたばかりの方や、ジュニアの方には良い本ではないかと思う。教科書に書かれた歴史とは違う観点を知る意味で。歴史は多角的に捉えられるということ・多角的に捉えるとひとつの歴史的事実の認識がもともとあったものとは異なってきたり、より深みを増してくるという事を知る、という意味で。
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江戸時代、日本はみずから「鎖国」の道を選び、長崎の出島でのみ細々とオランダ、中国と貿易を行っていたとするのが、従来一般の江戸幕府に対する外交観だろう。1492年にコロンブスがアメリカに到達し、その後の南アメリカでの銀山開発、鉄砲の伝来と国内生産、秀吉の朝鮮侵略、そして家康の江戸幕府。こうした一連の流れの中で、16世紀以降の日本はグローバリゼーションに巻き込まれ、やがてそのことを自覚し、転換していった歴史だと捉え直す。しかも、本書の目的は現代の日本が真にグローバルであることの意味を問いかけることにあった。
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江戸時代は世界のグローバリゼーションの中で出現した。また、「江戸時代は庶民も外国の文物に触れる機会も多く、それによって江戸文化も成熟していった」という考え。
前半は退屈だか、後半の3章、4章は秀逸だと思う。後半だけでも読んでみるては?