紙の本
アグルーカの行方
2021/12/16 16:38
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家事業として北極に向かったフランクリン隊、その行方は謎に満ちており、隊長のフランクリン卿が死んだ事はほとんど確実とされているが、その墓の位置も明らかになっておらず、残された情報もわずかであり、さらにイヌイットたちの間でその動向が口伝されたこともあって、謎が謎を呼んでいる。
「アグルーカ」というのは、「大股で歩く男」という意味で、とても立派な男を意味する。イヌイットの間でこのように伝えられる男が北極から南のカナダへ行き、無事に母国に戻ったという伝承があり、その行方も追いつつ、著者たちは北極を歩み行く。フランクリン隊の伝説も面白いが、角幡さんの旅も十分ハラハラする。
紙の本
靴を食べた男
2017/05/26 21:48
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投稿者:こゆき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を手に取ったのは偶然ですが、よく聞く話「遭難して食料がなくなり、靴を食って生き延びた」という逸話の出典が分かり、大変嬉しかったです。
内容は、北極で謎の遭難をしたイギリスの探検隊の行方を辿りながらその謎を考えていくという、探検の報告です。実際にお骨が見つかったとか遺品が見つかったとか、そんなことは無かったようですが、興味深い説が沢山あげられていました。
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角幡作品は過去3作読んでいるが、本作も期待を裏切らず面白いノンフィクション作品だった。
角幡氏と同行者の荻田氏が歩く現代の北極圏と、かつてフランクリン隊が目指した北西航路が、まるでパラレルワールドのように展開して行く。絶望の淵を彷徨ったアグルーカと、自ら決断し途中から衛星通信を拒絶した著者たちが見たものは、きっと同じ景色であったに違いない。少し気が早いが次回作も楽しみだ。
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早稲田探検部恐るべし。19世紀に北極を進んだ人たちはさらにすごいが、人のいないところに3ヶ月もいるっていうのはどういうことかさっぱり想像できません。
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極北の地で103日間、約1600キロを歩き続けた記録である。氷点下40度の環境では、毎日5000キロカロリーを摂取しても体内の脂肪が失せていく。作者は疲労から口唇ヘルペスを発症し、腫れあがった唇から膿や血が流れそれはそのままつららになった。強烈な飢餓感から麝香牛を撃ち殺し、その肉を解体し貪り食うシーンは迫力に満ちている。巻中にあるカラー写真も美しい。もっと激しい描写があっても良かったのではないかと想う。それ程の凄い冒険だもの。
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新聞の書評で本書を見つけ、開高健ノンフィクション賞を受賞した時から気になっていた著者でもあり、読んでみた。
19世紀半ばに、ジョン・フランクリン率いる北西航路探検隊129名全員が亡くなった航路を辿ることで、彼らの見たものを自分の目で確かめようと、著者と極地探検家の荻田泰永の二人で挑んだ北極冒険譚。
彼らの旅の行程をなぞりつつ、途中途中にフランクリン探検隊の謎にまつわるエピソードが差し挟まれていくという構成で、語りもうまく、そのあたりなかなかニクイ。
かなり厳しい旅であったことは想像に難くないのだが、思いのほか淡々とした印象を持ったのは私だけだろうか?
ただその中でも、麝香牛を殺して食べるシーンは心に刺さった。著者も最終章で「生きることに対する罪悪感」と振り返っているが、自分の命を守るためにほかの命を奪うという生命の本質のようなものを突き付けられた気がして、ちょっと動揺してしまった。
「残酷」と言ってしまえばそれまでかもしれないが、きっとそれが命の持つ本来の姿なのだろう。私たちは普段見て見ぬふりをしているだけなのだ。
もともとノンフィクション好きだし、このような冒険譚も大好きなのだが、常々思うのは、なんだってこの人たちはわざわざこんなところまで行って、肉体と精神の極限の只中に飛び込むのか、何を好きこのんでマイナス40度だの、断崖絶壁だの(本作にはないけど)、明日の命の保証のないことをするのか、全然理解できない!私なんか大金積まれて頼まれたって絶対嫌だ!!誰も頼まないだろうけど。
まあ、でも、著者やそのほかの著名な冒険家が言うように、題目は何であれ、冒険そのものが目的で、それ自体に価値があると思える、探検することそのものに囚われる、それに尽きるのだろうな…。
冒険家の冒険家たる所以でしょう。
それにしても…恐るべし、早稲田の探検部。
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この人の探検ものは生真面目だなと思う
過酷な探検があり
綿密な歴史・背景の裏打ちがあり
堅実な文章で1冊の本になる
高野秀行のような突き抜けた可笑しさが
あるわけではない
読んでいて面白いのだけど
とてもまじめな冒険である
この本も
あまりよく知らなかった
フランクリン隊の行方を追った極地探検である
丹念に歴史を追い
自身の冒険の経験を付加して
夢ある結論に導かれる
1冊の本のための
著者の労力を考えると
これこそ探検家の業みたいのを
思わざるをえない
2012年最後に読み
2013年最初に読了した本
場面では
書評にもあっただろうか
麝香牛を仕留めるところ
1日5000キロカロリー食べるところ
といった極地探検ならではの食のシーンに
迫力を感じた
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壮絶な北極探検記。なにより筆者が同年代というところに驚く。精神力、行動力、大胆さ、計画性、洞察力、感受性、すべてが羨望の対象。ジャコウウシを撃って食料にするところは、読んでいて辛くなるような記述だったが、極限状態では人も動物も弱肉強食の序列に組み入れられる現実があるのだと突き付けられた。リアリズムに貫かれた文章は、開高健を思い起こす。淡々と語られるユーモアもいい。
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探検行としての面白さ、迫力に、フランクリン隊の謎にせまるミステリーとしての魅力、そして文章の簡潔ながら的確な表現にわくわくしました。欲を言えば、写真などは纏めてしまわずに、要所要所に欲しかったです。
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北極探検記
全滅したフランクリン隊と同じルートを辿ると言う
装備は現代の最新型としても、徒歩で橇を引っ張りながらの移動
身を削るような行為だが、だからこそ、挑戦したいらしい
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四方八方雪と氷しかないなんて、想像はできても感覚は全くつかめない。それなのにこの一冊はものすごい現実感が迫ってくる。
だからなのか、読み進めるのはとても疲れた。消耗していくのがはっきりとわかった。300Pぐらいで休みをいれて、普通の小説を読んだらなんだか体から力が抜けるようだった。
すごいな、なんでそんなにまでなって、などと読んでいる間に何度思ったかわからない。特にヘルペス。写真を見なくても痛々しさがわかりすぎて、どこでもドアで薬を手渡しに行きたくなった(もう旅は終わっているのに)。あと生肉でおなかをこわした日。休めないからとよれよれと前へ身体を進ませようとする姿が痛々しい。荻田さんが見かねて荷物を持ってくれたというくだりにほっとさせられる。
麝香牛の母親を殺して解体したくだりはつらくて読めなかった。
(実際には流し読み) もうたまらなかった。
出会った動物、飛んでいる鳥、釣った魚、鳥の卵、普段目にしないものを次々と食べることに驚いた。
そういう食べ物に関する知識だけでなく、他の知識も豊富だなと感心する。助けを求められない極地への旅をするのだから吸収している知識も半端ではないのだろうな。
壮絶な一冊だった。
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身体が芯から凍えるような気分になったり、
心の内から熱い想いがわき上がったり、
喜怒哀楽をともに。読み応えのある作品。
かつて北極探検で全滅したフランクリン隊を追って、
北極を歩いて旅する冒険家。
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19世紀に北極で遭難したフランクリン隊の軌跡を追いその謎を解明しようと言うもの.探検家の角幡の面目躍如.
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『もし私が今度の旅で何か分かったことがひとつだけあったとすれば、それはあの時に感じた、ある種の生きることに対する罪悪感であった』
北西航路発見の探検で死んでいったフランクリン隊の足跡をたどりながら1600kmの道のりを歩き続けた冒険・旅
とても面白かった
”自分の体から出る水分の多さにうんざりした”
”通信手段として、岬や丘など目立つ場所にケルンを積み上げ、中に記録を残すのが連絡手段であった”
”山岳地帯の探検で重要なのはGPSが教えてくれるデジタルデータではなく地形図から読み取れるアナログデータだ。極地では緯度と経度という厳密な数字によって把握するしかない。”
”フランクリン隊と私たちの大きな違いは地図の存在だ。山や川や島や岬がどこになるかだけでなく、進めるのか、撤退すべきなのかなど将来の具体的な行動を予測できることに、地図を持つ本当の意味があるのだ。”
”当時の英国探検家が非難されるのは、過剰に着飾ったヴィクトリア朝の生活や文化に固執し、それを北極の生活の中にまで持ち込もうとしたところにあった”
・15C末~16C、西欧諸国はスペイン・ポルトガルに阻まれ東洋に進出できなかった、貿易を目的とした商業航路=北東航路・北西航路の開拓
・カナダの毛皮貿易、北極地方海域での捕鯨業・漁業の隆盛、スペイン・ポルトガルの国力の弱体→北西航路は見つからなくても良くなった
・英国は北西航路探検をやめなかった
・北西航路の正解ルート=キングウイリアム島を東から回り込む(西は北極海からの多年氷が流れ込んできて閉じ込められるから)
・「ベーリング海峡~北米大陸の海岸線~キングウイリアム島の西の海(=ハーシェル岬;1839年トーマス・シンプソン&ピーター・ディース」は当時知られていた→つまり、ピール海峡がキングウイリアム島まで続いているのか?それが北西航路の発見になる
・ジェームズ・クラーク・ロスがキングウイリアム島を北米大陸の一部と報告していた→この誤りがフランクリン隊の針路の選択に深刻な影響を与えた
・1854年、ジャン・レーが、キングウイリアム島が島であることを突き止めた
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ツアンポー峡谷も力作と思ったが本作も読みごたえあり。映像だけだと伝わらない極北探検の歴史、大変な苦労を知ることができた。