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紙の本
構造災 科学技術社会に潜む危機 (岩波新書 新赤版)
著者 松本 三和夫 (著)
戦前から連綿と続く、日本社会に根をおろした「構造」に目を向け、その「構造」から、科学技術と社会のあいだの危機のメカニズムを解明し、問題克服の道筋をさぐる。【「TRC MA...
構造災 科学技術社会に潜む危機 (岩波新書 新赤版)
構造災
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商品説明
戦前から連綿と続く、日本社会に根をおろした「構造」に目を向け、その「構造」から、科学技術と社会のあいだの危機のメカニズムを解明し、問題克服の道筋をさぐる。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- はしがき
- 序章 構造災としての福島原発事故
- 第1章 構造災とは何か──科学社会学の視点から
- 1 見逃される構造災
- 2 対症療法の増殖──「カンブリアの羊」騒動より
- 3 連鎖する秘密主義
- 4 「どかん」型と「じわり」型
著者紹介
松本 三和夫
- 略歴
- 〈松本三和夫〉1953年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会学博士。同大学大学院人文社会系研究科教授。著書に「船の科学技術革命と産業社会」など。
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紙の本
叡智を集めて何故こういう結果になってしまったか?
2013/02/24 23:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のタイトル、『構造災』は構造的な災禍という意味で、構造災と名付けられた災害の一種についてまとめられたものである。構造的な災害とは当初の印象では、建築、土木構造物の災害と解してしまった。最近各地で起こっている公共建築物、つまり橋梁、隧道、道路などの破壊や崩落などの災害であると早合点してしまったのである。
ところが、読み進めるに従ってこれらとは直接は何の関係もないことが分かってきた。本書の章立ては次のとおりである。
・構造災とは何か
・構造災のメカニズム
・構造災の系譜
・いま生まれつつある構造災
・構造祭をのりこえる提言
この構造災とは、松本氏がほぼ10年前に著した「知の失敗と社会」という書で発表した概念である。構造災とは、価格と技術と社会の界面でおこる災害だという。これだけでは分からない。社会のどこかに歪みがあり、そこに失敗の原因を求めることではない。同じように技術的に未熟な点があって失敗したわけでもない。社会と科学技術との関係において、相互関係に何が埋め込まれているかを理解しなければならないという。
本書では福島原発の例を出しているが、面白いのは再生可能エネルギーと原発との対比である。原発が費用的にもパフォーマンス的にもエネルギー製造という点で優れているという結論が出ると、他にそれを上回る可能性のあるエネルギー製造方法があっても、それを採用する方向には向かわないというのが、構造災の特徴の一つだとしている。この場合は風力発電を引き合いに出している。
古くサンシャイン計画の際に、風力発電に関する日本の適不適の調査が行われた。日本では発電風環境適地が少なく、風力発電に適さないという神話が生じたという。これによって数多くのメーカーが風力発電設備の開発から撤退したという。
しかし、この調査による論文の結論には適さないとか不適などという根拠は何も示されておらず、今後も継続すべきだというのが論文の主旨だったという。松本氏はこれを神話だとしている。この神話が風力発電の発展を阻害したもので、これを構造災の一例として挙げている。
たしかに、我々は風に依存する風力発電ではそれもありうると考えていたのではないか。原発に比べれば風まかせで安定性に欠けているし、得られる電力も知れているようだ。しかし、原発事故が発生してみると、これらの候補となるエネルギー源について、十分な検討が為されないうちに葬られていることが分かる。
こういうことが構造災という、公益にとっての災禍として現れていることに気付かされる。これはほんの一例で、松本氏は様々な例をとって社会と科学技術が絡む中で生じる謎を分析している。読みやすく分かりやすいとはいえないが、論理的な文章で理解しやすい点も多い。
多くの有識者が集まり、議論を戦わせることは大いに必要であるが、そうしてきたにしては漏れや齟齬が多いのは不思議である。分析の次には対策を立てて思い切ってメスを入れない限り、再び迷路に入り抜け出せない結果になる。今後の成果を期待したいところである。
紙の本
巨大かつ複雑な科学技術を扱う組織の限界を明らかにした本
2017/01/28 19:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とある地方の公務員 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、原子力発電を初めとする巨大かつ複雑な科学技術と社会の仕組みとの間で起こる危機や災害(「構造災」)のメカニズムを解明することにより、その科学技術を扱う組織(セクター)の限界を明らかにしています。
本書のオリジナリティーは「構造災のメカニズム」(第2章)にありますが、理論編にあたることや、問題自体の難しさのために、一番読みづらい内容かもしれません。