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文庫

紙の本

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 ジョセフィン・テイ (著),小泉 喜美子 (訳)

時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

税込 864 8pt

時の娘

税込 669 6pt

時の娘

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みんなのレビュー88件

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評価内訳

紙の本

江戸川乱歩が「ベスト級の論理探偵小説」といって愛読したミステリーの名作。リチャード三世の謎に挑む入院中のベッドの上の警部。歴史家瞠目の推理手順。

2001/12/17 12:50

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本のカバーの折り返しに、ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』、チャンドラー『長いお別れ』、ダール『あなたに似た人』といった名作が挙げられているのを見て、そういった巨粒と同じようにミステリー好きが読んでおいてしかるべき本なのかと、「格」を初めて知った次第。
 作者の名もお初だったが、『ロウソクのために一シリングを』という最近翻訳が出たばかりの彼女の代表作の1冊は、ヒッチコック「第3逃亡者」の原作だそうだ。

 探偵もののミステリーについて全然詳しくないけれど、解き明かされる対象としての事件が複雑で凝った構造をもつものと、事件を解く手法が特異で面白い構造をもつもの、両者が相まったものという分け方が可能なのではないかという気がしている。
 最近の日本のミステリーを少しかじったりレビューなんかを読んでいると、事件がこれでもかとばかり迷宮のような構造をもって、読者は小出しにされたヒントを追いかけながら、幾たびも作者に裏切られるという楽しみを得ることが多いように思う。

 この『時の娘』は、どちらかというと探偵の個性や設定の方により重きを置いていて、とてもユニークな探偵小説である。
 偉丈夫のロンドン警視庁のグラント警部は足腰を痛めて入院している。事情は詳しく述べられていない。グラント警部ものはいくつか書かれているので、英国ファンには自明なのかも…。
 見舞いにくる女優の友人が、これまた関係がはっきりしないのだが、退屈を紛らわすために歴史上の人物の肖像版画を沢山もってきてくれる。「刑事らしく顔を吟味したら?」という薦めだ。
 その気になったグラントは、早速検討を始め、一枚の非常に個性的な男性の肖像に心を惹かれる。
 それが獅子王リチャード三世。シェイクスピア劇になっていて有名だが、わずか2年の治世にも関わらず、2人の甥っ子を権力のために虐殺したということで英国史上悪名高き王である。

 ところが、病院の医師や看護婦に訊ねると、彼がどんな病気持ちか、どんな性格に見えるか興味深い反応が返ってくる。グラントも、その肖像画の顔は殺人犯人のそれに見えない。シロと当たりをつけた上で、病室に出入りする人たちに頼んで歴史書をもってきてもらい、リチャード三世の人生を辿ってみることにする。
 途中、グラントにとっては大変ありがたい援軍が参加することになる。女優の友人の知人でアメリカから来ている歴史研究生である。農民一揆の研究をしている青年だが、グラントと文献を読みながら推理をつなぎ合わせていくうち、すっかりリチャード三世という人物の魅力に取りつかれていく。

 歴史家たちは歴史的事実を追いかけるあまり生身の人間を見つめていないと憤慨しながら、コンビは物的証拠を重んじ人の噂を排除して、誰が利益を得るかという発想でリチャードという人間と周囲の人間を追いかけていく。歴史上の事件といえども、現代の事件に通じるという信念をもって…。
 このミステリー小説で史実がひっくり返るのか——その結果は読んでのお楽しみ。入院先のベッドの上でも知的なゲームで楽しみを見い出そうとする英国人気質やら、論理的な会話が特徴的でたぐい稀な1冊である。
 英国史に詳しくない人でも、丁寧な巻頭の解説やグラントの推理で、読んでいくうち薔薇戦争前後の知識が身についてしまう。

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紙の本

ベッドの上で推理する

2002/07/08 00:05

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る

ドジを踏み入院してしまった警部が暇つぶしに歴史上の人物「ヘンリー3世」の真実を推理する変り種の推理小説。史実とされているヘンリー3世の2人の王子殺しを私はまったく知らなかったのだが、どんどん事実が発見されていく様は読んでいて面白かった。歴史物として読んでも楽しめる一冊。

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紙の本

時の娘

2001/06/08 18:05

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kana - この投稿者のレビュー一覧を見る

 入院して動けない警官が、暇つぶしのためにヘンリー3世のことを調べていく話。悪人として名高いヘンリー3世を調べているとどんどん思い掛けない事実が判明し…。どのようにして歴史が作られていくのか、人の噂はどのように広まっていくのかを痛感する。確かに歴史はゴシップだとは思っていたけど、この本を読んで「本当にそうだ!」と感動した。

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紙の本

「ダ・ヴィンチ・コード」のヒットを横目に、むしょうにこの本が読みたくなった。一枚の肖像画をめぐるミステリー。「真理は時の娘」なのですよ。

2006/06/29 21:03

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「二十歳過ぎたら自分の顔」とか「人間は四十歳過ぎたら自分の顔に責任を持たねばならない」などと言いますが、人相って本当に大事だと思うのです。美形であるか不細工であるかとは別次元の問題として、やはり顔には内面がにじみ出るものです。「時の娘」は、まさにそんなミステリー。
 足を折って入院中のグラント警部は、人の顔を見るのが趣味であり職業でもあります。無聊を慰めるため友人が差し入れてくれたのは、山ほどの「人の顔」肖像画の写真でした。警部は肖像画を見て、それがどんな人物か想像をめぐらせた上で、絵をひっくり返して正解を知るというゲームに退屈を紛らせ、ほぼ百発百中ですが、最後の一枚で大はずれ。
 グラント警部はその一枚の絵を「モナ・リザ」よりも魅力的だと感じます。(昔はこの本の表紙にその肖像が使われていたのです。著作権の問題ですかね? 残念です)警部の目には「良心的過ぎた人、悩める人」と写ったその人物は、なんとリチャード三世。残虐非道な暴君と世に伝わる人物です。これはいったいどういうことか?
 グラント警部が信じたのは、自分の直感でした。彼はリチャード三世の真実の姿を解き明かそうとします。病院のベッドの上で、書籍・文献だけを頼りにして。手始めの一冊が、看護師に借りた学校の歴史の教科書というところがナイスです。事件は何百年も前の出来事であり、グラント警部はベッドに縛りつけられているため、アクションシーンと言うものはありません。でも退屈とは無縁で、心地よい疾走感と興奮があります。
 グラント警部というのが子どもみたいな人で憎めません。部下を使い走りに資料を集めさせ、推理に夢中になって、行きづまれば落ち込み上手くいけば舞い上がり……それは普段の職務上では絶対見せない顔なのでしょうね。この話、学者が主人公で薀蓄を語りまくったら、面白くもなんともないと思うのです。グラント警部はぜんぜん偉くなく、虚勢を張ることもありません。唯一、教訓めいたことが語られるとすればラストの、ちょっとしたどんでん返しでしょうか。歴史が好きな人、絵画が好きな人、ミステリーが好きな人は、きっと楽しめます。うーん、肖像画美術館に行きたい!

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紙の本

既成の概念を打破する名作

2002/05/08 18:28

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 
 犯人を追いつめたのはいいものの、自らは蓋の開いていたマンホールに落ち、背骨を傷める重傷を負ってしまったヤードのグラント警部。病室の天井ばかりを見つめては、幾何学の問題を解くばかりの毎日を過していた。そんなところに友人の女優が持ち込んだのは、歴史上の有名人物たちを描いた数点の肖像画。
 グラントは、そのうちの一枚に自らが抱いた印象と、名前を聞いて思い浮かべる評判の、あまりものギャップに驚く。かくして、世紀の大悪人として英国史に登場し、シャークスピアの戯曲ともなった《リチャード3世》に興味を抱いたグラントは、重なり合う歴史の襞に奥深く隠された彼の素顔を暴こうと、安楽椅子探偵ならぬ安楽寝床探偵となる。
 
 
 捜査中に怪我を負ってしまった警官が、ベッド上で過去の事件に興味を抱いて、その真相を安楽椅子探偵として推理してしまう。このような趣向は、現代英国本格の代表的な作家であるコリン・デクスターが、モース警部シリーズ『オックスフォード運河の殺人』で扱っている。モース警部の退屈な毎日が、グラント警部のものとそっくりなことから、おそらくデクスターは、本作『時の娘』の影響を受けて、モース警部を安楽寝床探偵としての活動を強いたのだろう。いつもは活動的な警官が、警官としての思考を留め置きつつ、動けなくなった身体に苛立ちながらも、病室に立ち寄る人物たちが提供してくれる情報のみを材料に推理を進めていくことによって、過去に起こった出来事の真相を暴く。確かに、このような趣向のミステリは面白い。作家としても書く甲斐のある作風なのだろう。
 
 この作品の面白さは、皆が悪人として知っているリチャード3世を、新たな表現を使って呼び、彼の素顔を謎の真相として明かすことにある。歴史の事実として、疑うことなく信じている事柄こそ疑うべきであるという逆説が、ミステリファンの心を掴んで離さず、歴史にそれほど興味を持っていなくても、リチャード3世の素顔が、究極的に言えば悪人なのか善人なのかという謎の解明を心待ちにしてしまう。ジョセフィン・テイは、全編に逆説の必要性を説くようにして皮肉めいた呈示をちりばめて、読者の既成事実を信じたいという自然な欲求を妨害しつつ、既製事実に裏切られることの快さを教示してくれている。
 
 キーワードは、《トニイパンディ》という地名を指す言葉。その意味は──事実として知られている事柄が、実は創作されたものであり、事実はまったく異なった現実である、というようなことが人類の歴史には多く見られる──というもの。疑うことの必要性や面白さを知った作者だからこそ、名作を書き残したのだということがよくわかる。ミステリにおいても、他の創作物においても、転換点となるような位置を占める名作とされる作品には、共通する条件がある。それは、既製の作品を批判するような精神を持ち、破壊と創造を行った結果として新しい作品を誕生させていることである。
 
 『時の娘』には、二つの破壊と創造が存在している。第一に、捜査のために動き回ることが出来ない探偵が、推理を展開することによって真相を手にするという、新たな探偵像を創造したこと。第二には、歴史上の既成概念を覆すような論理を披露したこと。そして、この両者が密接に繋がりあっていることが素晴らしい。
 
 興味深い謎を、ミステリに登場する探偵だけが持ちえる論理性──グラント警部は、リチャード3世を悪人とすることで、いったい誰が得をするのか? という警官らしい思考を推理の出発点としている──そして彼らが活躍することができるミステリの世界を構成する構造──推理の過程を楽しむために、情報が管理されている。例えば、登場人物たちは様々な印象を抱きつつ、グラント警部に協力して、幾多の情報を提供する──に乗っ取って物語としているのだ。
 

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電子書籍

まだ読み出しですが

2015/09/29 16:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひるよん - この投稿者のレビュー一覧を見る

いきなり大きな歴史の舞台からページが始まっています。これから先がわくわくします。

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紙の本

歴史は真実?

2003/06/12 11:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saga - この投稿者のレビュー一覧を見る

 グラント警部は入院中。時間をもてあます彼はリチャード三世の肖像画を見てふと疑問を抱いた。王位を奪うためにふたりの幼い王子を殺したのは本当にこの男なのか? そして、警部の謎解きが始まる。
 登場人物がいい。率直にものを言う看護婦<ちびすけ>と<アマゾン>、女王のような威厳のある婦長、機知に富んだ女優マータ、警部の足となって調査を助ける人のよいアメリカ青年ブレント。みな個性的で、セリフが楽しい。特に警部とブレントの会話は生き生きとし、謎解きの楽しさが伝わってくる。ただ、家政婦ティンカーの口調「〜だかね?」、「〜ますだよ」が、この作品の古さを感じさせた。
 ブレントがこう言う。「結局、何事によらず、真実というのは、誰かがそれについて説明したもののなかにはまったく含まれていないんです」
 歴史書だけでなく、印刷された文章はすべて真実として受け取りがちだが、時には疑ってみた方がよいのかもしれない。

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2014/11/09 00:54

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2012/02/12 23:04

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2004/11/22 15:24

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2005/01/26 13:05

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2004/11/27 10:15

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2010/07/27 08:51

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2006/02/11 02:14

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