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月を見つけたチャウラ ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)
硫黄鉱山での重労働の果てに暗い坑道を抜け出ると…静かで深い感動に包まれる表題作。作家が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」など15篇を収録。シチリア出身のノ...
月を見つけたチャウラ ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)
月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短篇集~
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商品説明
硫黄鉱山での重労働の果てに暗い坑道を抜け出ると…静かで深い感動に包まれる表題作。作家が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」など15篇を収録。シチリア出身のノーベル賞作家が、突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く短篇集。【「BOOK」データベースの商品解説】
静かで深い感動に包まれる表題作や、作者が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」など、全15篇を収録。シチリア出身のノーベル賞作家が、突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
月を見つけたチャウラ | 9−24 | |
---|---|---|
パッリーノとミミ | 25−49 | |
ミッツァロのカラス | 51−62 |
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奇妙な人生の瞬間
2015/06/20 19:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
炭坑の奥底で働く男達、何か明るい未来が待っているのでもないが懸命に生きて、働いて、夜も昼も無い坑道から出てきて、ふと見上げると月が出ている。それだけの話なのに、救われるような、生き続ける希望を持てそうな気持ちになる。
カラスに弁当を盗まれるのに腹を立てた農夫の運命。至極単純な話のようなのだが、丹念に追えばそこに複雑な精神の動きがあり、世界に少しだけしわが寄ったような奇妙な瞬間の出来事であったようにも見える。
人を一瞬で死に至らしめる能力を突然手に入れた男。それは自身の幸福にはさして寄与しないどころか、彼を世界から弾き出す装置に他ならない。そんな洞察をする間もなく、彼を取り巻く奔流に押し流されていく。
頑固な甕直し職人が、うっかり大甕の中から出られなくなってしまう。だが窮地に陥ったのは、彼の雇い主の方だった。頓知話のようでいて、さまざまな不条理を積み重ねて生まれる悲劇でもある。
飼い犬に対する奇矯な行動が慢性化しているが、彼自身はそれが狂気の産物だと理解していて、見よ、犬の視線さえそれを物語っているではないか。人に言えないちょっとした奇行というのは誰しもあるのかもしれず、その苦悩も他からは計り知れない。でも笑っちゃう。
小説の登場人物達が、作家を訪れて、自分を主人公に本を出して欲しいと懇願する世界。だが作家の目は厳しく、彼らを選抜し、批評する。小説についての小説、ある種のメタフィクションであろうが、作家の内面の苦悩をこういう形で表しているようにも見える。それは面白い小説と、書きたい小説の間の対話であり、筒井康隆あたりなら直接的に書いてしまいそうなところ、寓話的な風景にしている。
生まれたばかりの赤ん坊が、魔女によって別の醜い赤ん坊にすり替えられてしまう。その赤ん坊を可愛がれば、実の子もどこかで可愛がられるのだという。まるきり理不尽だが伝説の魔女の所業はいかんともしがたい。しからば不幸を嘆きつつ、日常に埋没するしかない。
他の作品も含めて、日常の中の平凡で小さな不条理が育っていくのを、一枚ずつ積み重ねていって人生になったのが、一作ごとの物語と言えるだろうか。底辺からブルジョア層まで、社会のあらゆる場所にそんな風景はある。傍目に奇妙に見えることでも、発端は些細なつまずきや行き違いに過ぎず、たぶん誰でも入り込む可能性のある迷路を、実在感をもって浮き出させてくる作品集になっている。
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1934年ノーベル文学賞受賞者
2016/04/04 16:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は不条理演劇の先駆者と言えるだろう。本書にも作中の人物が作者の手を離れて動き始めるような、奇妙な感覚の短編が収録されている。