紙の本
解剖学者、三木成夫氏によるデビュー作で、こころとは内臓された宇宙のリズムだと説く興味深い一冊です!
2020/05/15 11:53
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、香川県丸亀市出身の解剖学者、発生学者であった三木成夫氏によって著されたデビュー作です。同書で著者は、「こころとは、内蔵された宇宙のリズムである」という信念から、子どもの発育過程を丁寧に辿りながら、人間の中にこころが形作られるまでを解き明かした作品となっています。同書の構成は、「内臓感覚のなりたち」、「内臓とこころ」、「こころの形成」、「質問に答えて」、「補論」となっており、なかなか興味深い内容です。
紙の本
読めば読むほど深い
2017/08/10 15:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:s.k. - この投稿者のレビュー一覧を見る
解剖学の深淵にようこそ!という感じです。語り口は軽く、とてもおもしろいのに、それでいてとことんまで深い。
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人間の心の形成で重要な心の働き 尿意を感じる膀胱、おっぱいを欲しがるとき乾きを感じるときの口腔 お腹が空いた時の胃の反応 等の脳への刺激と反応 そして、その反応への学習 、その反応に応じた子供の成長に携わる大人たちが与える影響が 子供も心理的な発達に大きな影響を与える。 なるほどと思いました
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保育園での講演を中心にまとめた本書。
著者の親しみやすい語り口と、文末随所に挟まれる(笑声)の文字が臨場感を伝えてくれます。 講演で用いた解剖スケッチが多数掲載されているため、視覚的・直感的にもわかりやすく、専門用語を噛み砕いで伝えてくれているので、感心しながら読んでいるうちにあっさり読了。けれど、内容が薄いという訳ではありません。むしろその逆。肉体と精神の繋がりに関する蒙をここまで啓いてくれる本には、滅多にお目にかかれまい、と感じました。
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これは面白い。特に、最後に収められた、この増補版を作るにあたり後藤仁敏氏が選んだという二篇「夜型の問題――かくされた潮汐リズム」と「再現について――形態学の実習」がこれぞ三木成夫の持論という感じで面白い。
表紙の絵は受胎38日目の胎児の顔。ミツユビナマケモノにそっくりだそうです。ヒト発生初期の1週間の間に、脊椎動物5億年の進化の歴史の再現を見る。その感動が伝わってきて、すごい。
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本書は『内臓のはたらきと子どものこころ』(一九八二年、築地書館)を元本とした。
文庫化にあたり、明らかな誤字・脱字を正し、本文中使用漢字はできるだけ統一した。
また、今日の観点からみて差別的と受けとられかねない表現があるが、作品発表時の時代的背景を考慮し、原文通りとした。
解説=養老孟司
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この間ふと考えた、「人間の身体=筒」というイメージ。口から肛門に至る消化管の「中」は人体からみれば「外」なんだよなと。で、書店で目に入ったこの本を読んでみました。解剖学的な見地からみた内臓とこころの関係。
「腑に落ちる」とか「腹に据えかねる」とか、感情を表現する慣用句に内臓がよく使われるように、内臓と感情(こころ)とは密接に繋がっています。合気道やヨーガの呼吸法では「丹田」に気を集めたりします。どうやらこの辺に大切なものを感じるセンサーがあるらしい。
まぁそんな取り留めのない事を考えながら読むと面白いんですよ。筆者はあの養老孟司先生の師にあたる解剖学の大家だそうで。
あと面白かったのは、発生学的にいうと舌と腕とはすぐ隣りの細胞から分化したという話。舌の表面は内臓由来だけれど、その中の筋肉は下から潜り込んできた「腕のいとこ」。だから自在に動かせるんですね。内臓はだいたい不随意筋ですからね。「喉から手がでる程…」という言葉もしっくりきます。
まぁ、こんな役に立たないことを読むのが読書の醍醐味なワケです。
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とっても面白かった!解剖学を知らない私でも理解できたし、今後もっと深く知りたいと思わされた。宇宙リズムとか桃源郷とか、ともすればトンデモ科学になってしまいそうなことでも、なんとなく、まさに「はらわたで」理解できてしまう文章だった。ユーモアのある口語体も素敵。3歳児と菩薩の顔の講義を受けたかった。
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果てしない広がりを持つ本だった。単なる内臓(はらわた)の話ではないんだね。
講演をベースにした本。聴衆に語りかけるように話す三木先生が目に浮かぶようだ。
「人間とは何か」と私たちは問い続けているわけだけれど、本書は“はらわた(内臓を含めた体の内側のメカニズム)”を切り口にそこにアプローチしている。
人間一個体の生物学的発生と人類の進化の歴史が並列的に論じられていた。魚類→両生類→爬虫類→鳥類→哺乳類的な発生を人間一個体の誕生が再現していると。
生体のリズム・サイクルと天体の運行の相関関係。一般的な宇宙としての大宇宙と私たち一個体という小宇宙。梵我一如を連想する。古代インドの思想にまでつながってくる。
魚にとっての鰓(えら:「魚へん」に「思」う、というこの漢字もまた霊妙である)が人類にとっての声帯に変わったと説いている。声帯という内臓。内臓の一部を揺らすことで私たちはコミュニケーションしたり、歌ったりするんだな。人間以外にも歌う動物がいるだろうか? 鳥? イルカ?
タイトルにもなっている内臓とこころの関係性。言語。文化。ここまで深遠な内容を分かりやすく伝えてくれた著者(話者)に敬服する。
http://cheapeer.wordpress.com/2013/08/06/130806/
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専門的な内容になってくると難しくて追いつけないけれど、それを読み飛ばしてもあまりある面白さがありました。もっと専門的な知識があったら倍は楽しめたのに!とちょっとくやしい思い。いや~でも面白かった。
人間は自分が思っているとおりに自分の体をコントロールしている気がしているけれど、本当はヒトの考え方や行動は、身体や内臓の動きにかなり縛られているんだろうな~と気づかされました。そして現代人が、いかに自然な身体のリズムとは無関係に生きて行かなきゃならないのかを思い知らされた。まったくなんでこんな窮屈な生き方を選んだんでしょうね、人間は。
以下2つの話が特に印象に残りました。
・「現代人は太陽の1日24時間のリズムで当たり前のように生活しているけれど、夜更かしや赤ちゃんの夜泣きは、月の24.8時間周期のリズムや四季のリズムを無視し太陽のリズムだけに無理矢理合わせて生きているのが原因で起こるのではないか」という説には深く納得。
・「個体発生は系統発生を繰り返す」といいますが、ヒトの受精卵は30日くらいでサカナに、36日くらいでハ虫類に似てきて、38日目くらいに哺乳類の顔つきになってくるそうです。で、進化の過程でいくと水を出て陸に上がるころ、つまり胎児がハ虫類に似てくる頃と、つわりが始まる時期が、一致するんですと!
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講演を原稿化したものとのことことで、専門的な内容のわりに語り口調がソフトで分かりやすい。
ホモ・サピエンスの進化、あるいは言語能力から導き出された架空のものを真実と思いこめる人類の特性に対し、本書タイトルから想像するに、論理的な思考、“あたま”で考えたものではなく、“こころ”で感じた本能的な何かが人には備わっていて、それが本来の思いだったりするのかなという興味で読んでみた。
主旨としては、体を、体壁系と内臓系とふたつに分け、“ころろ”=内臓系の感性というか欲求の見直し、復興を訴えるもの。要は、成長の過程で見て取れるように、生物の体内にはこれまでの進化の過程で体得したリズムや感性が眠っていいて、それらと現世の思考や時間軸との差が歪みとして表れている、そのことを意識すべしということか。
潮汐のリズム(24時間と24時間50分の差)や、つわりの始まりの考察が印象的。子宮内の胎児が進化の過程をたどるという話はこれまでも聞いたことがあるが、魚類から両生類を経て、爬虫類期に入った頃につわりが起こるのは、水中から陸へ上がったことによる負荷の増大、重力に逆らった頃の記憶が再現されるからという話は非常に興味深かった。
少し思っていた(期待していた)話とは違ったのだけど(むしろ体壁系=”あたま”の思考はどのように生まれ、”こころ”と”あたま”の差はどこにあるのかという話を期待していた。人間を人間たらしめている他の生物との差がそこにあるのかと)、内臓感覚は、無視できない大切な感覚だということは良く判った。
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受精卵が子供になるまでの過程を医学的生物的な検知でレクチャーしたもの。情に寄り添っての説明で、好感がもてるが、
進化や、眠りの周期の話などが、若干認識が古い。
1982年の本なのでしかたが無いと言えばしかたないが。
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リズムとバランス。
5章から書き言葉になり読みやすくなった。グロテスクな表紙のイラストが一体なんであるか、の解説には驚く。その「時点」においてわたし達は過去、サメでありトカゲであった。
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腑に落ちるってのがなんなんだってのがよくわかります。なによりも、ご自分の子供の話をしている部分がすごい。親ってそういうことまでできるんだって。うちはもう育てちゃったけど。あと、舌でなめまわすってのがすげえ大事だってのが。
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比較発生学、解剖学的な観点から子どもの発育にそって、
内臓感覚がどのように育ち、こころをかたちづくっていくかを
解き明かす。
いきものがその内に太陽や月、季節などと呼応するリズムを
持っていることの神秘から、大宇宙の中の小宇宙を内在させる
わたしたち、という自覚にみちびかれる。
こういう考え方は子を持った母なら案外だれもが持っているような
気がするが、研究者などの立場の人は従来まともにとりあわない
種類のものらしい。
「のどから手が出る」とか「舐めるように見る」というのが
非常に本質をついた表現であると納得。
講演録なので気楽に読める反面、
話が表面的だったり飛躍したり、
その後もっとまとまった文章の形で残されれば、
と惜しまれてならない。