大学で大人気の先生が語る〈失敗〉〈挑戦〉〈成長〉の自立学 （岩波ジュニア新書）

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：カツ丼　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

「婚学」でこの著者を知り、氏の本は大方読んだ。

中高生を対象とした(であろう)本書は、そのスタンスが存分に発揮され、しかもそれが平易な言葉でつづられている。そういう意味では貴重な一冊。

詳細な内容は他のレビューに譲るとして、その意味は単語の使用(仕様)に注目すると分かり易い。その代表が、「素敵」と感じで書ける単語を「ステキ」と敢えてカタカナで表記する所だ。中高生向けなのか、著者のスタンスなのか、ポエム的な書き方がなされている。

こうしたフワフワとした言葉にくるまれているのは、要するに「親の言うことを聞け」「親の喜ぶことをしろ」「世の中は理不尽なこともあるが耐えろ」といったいわゆる「大人の事情」。言葉を換えれば「規範」、「家父長主義」。「婚学」がネット上で炎上し、多数の(主にジェンダー的観点からの)批判を受けたのも、この「規範」、「家父長主義」ゆえではなかったか。(授業の内容は本書59-62ページにあります)

自分の道を見出せず、規範に寄りかかりたい中高生や、自分の言葉に自信が無く、もっともらしい言葉にすがりたい親御さんにはお薦めの本。更に言えば、この本の本当のターゲットは、中高生でなく、こういった中高生向けの本を読むことによって、自分が大人であることを確認したい"オトナ"なのだ。つまり、この「星一つ」という評価は、読み手によって簡単に覆る。

覆す人には響く言葉になっていることは簡単に想像できる。そういう意味では良書。その意味で星はもう一つあっても良かったが、ごめんなさい。どうしても私には無理なんです。

【補足】中高生がこの本の情報を調べて読んでいるとすれば、そのこと自体は何の不思議もありません。本来この本はそういった層がターゲットのはずです。更にその中で、この様な雑なレビューをここまで読んだ奇特な(物好きな)中高生がおられるとすれば、その方々に向けて一言申し上げます。

大学で学ぶのは、この本に書かれたマジョリティ(多数派)の問題ではありません。その意味、内容、動向に少しでも疑問や違和感を抱き、考え、行動するマイノリティ(少数派)の問題です。少なくとも私はそう思っています。

この本を有意義に血肉とし、「素敵」な「大人」になられることを、「ステキ」になりきれず、「素敵」でもない、それでいて「大人」になってしまった者の一人として心より願います。