紙の本
東京の一部で起きている、縁のない話
2014/01/14 14:13
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投稿者:愚犬転助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで著者の軽妙な語り口と鋭い考察にハッとするところも多かったが、この本は著者の思いが強いせいか、だるい内容。要は、都会の一部で起きている食の改革を語りたいよう。本人にとっては新しく、世界を変えようとする動きのようだが、たんなる思い込みだろう。
タイトルから来る分類は、たしかに当たっている。小生は自他ともに認める右翼、それも極右に近い。好きな食べ物は、地元でつくった農薬たっぷりの野菜、近海の汚水まみれの魚、飲むのは地元の水道水とブルゴーニュの農薬入りワイン。著者の区分けからすれば、フード右翼となる。フード左翼は、マクロビオテックやビオ、スローフード、地産地消、ミネラルウォーターを好むというが、小生の嫌いなものばかりだ。ビオでつくったワインなぞ弱々しいか、あるいはロマネコンティやマダム・ルロワのつくる超高値ワインかのどちらかだ。小生の地元でつくったワインはたちの悪い観光酒だし、多くの酒は灘の大手による買い取りに依存しきっている。地産地消は、夢のような話。
ついでにいうと、著者の区分けから魚介類が完全に落ちている。どんな魚介類を食っているかも日本人なら重要だが、きっと著者は魚1尾をおろして食べたことがないのだろう。その程度のレベルの食談義だ。
紙の本
言いたいことはわかるんだが・・・
2015/09/20 18:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんと言うか。
「私は、一握りの富裕層の贅沢な自己満足をしています」
と言う事をわかりやくす。自分で宣言される。
また、魚関係に全くの言及なし、肉と野菜しか視点が無い。
故に言いたいことは理解できるが、もう少し煮詰めて考えて欲しかったと思いました。
紙の本
せっかくのテーマだが内容不足
2015/09/25 23:16
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投稿者:Michiyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで自分の周囲にいたリベラル、左派の政治主張を持っている人は、何故か自然食品や有機栽培農法等健康的な食への関心が高いと漠然と感じていた。ある人は、健康食品にやかましいのは左翼だ、とまで言い切っていたが、保守主義だが自然食品を好み合成保存料や着色料を含んだ大量生産品を毛嫌いする人もいる。
果たして政治主張と自然食への関心度には何らかの相関があるのか?ずっと抱いていた疑問にこの本は答えてくれそうたと心が揺さぶられたものだった。
だが読み終えて感想を一言で言うと、期待はずれだった。これだけ真正面にテーマを据えた題名だっただけに、非常に惜しいと思う。いや、むしろこれだけ明確な題材だったにもかかわらず、内容が空虚でもったいないばかりだ。今後類似の題材を扱い、尚且つ緻密で論理的な著書が現れれば、そちらにこの題名を譲ってあげるべきとすら思う。
本書における「フード左翼」というのは自然志向、健康志向の食を選択する人々を、対する「フード右翼」はファーストフード、大量生産の加工食品等を選択する人々の事と定義している。この着眼点は非常に納得いくものだ。
だが著者はせっかくこの対立構造を見出したものの、その後の掘り下げや二極化構造の取り上げ方が不足している。
一番まずいと思ったのは、著者が「フード左翼」に完全に取り込まれてしまっている点である。取材しているうちに「フード左翼」の人々の言動に心を奪われてしまったのだろうか?ある対立構造を説明する際、著者はどちらの立場にも属さず客観的な態度に終始することが鉄則だ。それなのにこの著者はいともたやすく一方へ寄り添ってしまった。どうりで「フード左翼」側の記述ばかりで好意的な説明が多かったわけだ。
このような背景もあり、対する「フード右翼」側の記述は簡略で分析が不足している。
そして一番知りたかった政治志向と食の志向との相関関係だが、結局有耶無耶のままで終始してしまう。何故著者自身で調査しなかったのか甚だ疑問である。是非とも一般的な人を対象とした無作為抽出アンケート調査を行ってほしかった。
また、かつて「買ってはいけない」という本のシリーズが話題になったことがあった。記述内容に誤解や恣意的な理由付けが散見され、アンチ本というべき本も出たり、再反論も出されたりと相当もめた展開となった記憶がある。この「買ってはいけない」の編集元は左翼論壇の「週刊金曜日」というのが肝である。
槍玉に挙げられた側は本書の定義で言う「フード右翼」が選択する食品群である。
残念なことに、既に過去にこれほどまでに明確な「フード左翼」「フード右翼」の衝突があったにもかかわらず、本書でこの騒動を詳しく解説し分析されることはなかった。何故無視したのか?ここも大きな疑問が残った。
全体を通して、著者が読んだ文献からの引用や自身の実体験、当事者への取材内容、そして類推的なまとめで終始している。様々な方面を調べて明らかになっていく日本の食の傾向は伝わってくるが、著者の論説を裏付ける客観的なデータが圧倒的に不足している。読み終えた後、せっかくのテーマが消化不要となっている印象を抱く。
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どちらかと言えば「フード左翼」を中心とした解説であるが、食をめぐるポリティクスを解き明かす本書は、現在の社会運動、特に「反原発」運動やニセ科学を考える上でも非常に有用な視座を与えてくれるだろう。
自然食やマクロビオティックに代表されるような「フード左翼」的な試みが、消費社会の動きの中で発展し、いろいろとちぐはぐな政治思想を生み出してしまったという点は、現在の「ノンベクレル」関係の動きと切り離すことはできないだろう。感情保守的(!)な新左翼運動と結びついた社会運動を見直す上で、本書は極めて優れた試みと言える。
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コンビニ弁当が健康志向を取り入れようとするも、全く売れないって話は店員時代に実際に体験しているのでよくわかる。
笑うほど売れない。
栄養学とか学んでる女子大生とタイアップした弁当とかね。
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食の選択は政治的行動である。
という前提のもと、工業製品と化した資本主義に根差した現代の食へ反旗を翻す“自然回帰”を「フード左翼」と定義した今作。
速水さんの著作は身近にあるものの意味を違った角度から切り込むという特徴があって、その斜に構えたカッコよさに嫉妬するほどだが、この作品もそれに違わぬ嫉妬を抱いた。
「有機野菜」とは本来とてもクリーンなイメージがある。しかし、この有機野菜が世界にとっては害毒かもしれないという「フード左翼のジレンマ」の章は白眉である。世界を荒らしているに違いない大量生産の食が逆に食の「民主化」を達成し、世界に貧困に歯止めをかけるかもしれないという仮説も読めば読むほどうなずいてしまう。
まるで、愛国を訴えるネトウヨが逆に国益を損ない、本来ボーダレスであるべき左翼が沖縄で愛郷心溢れる反基地運動をしているような。。そんなねじれが食においても起こっているような・・・そんなジレンマがより政治に見えるという面白さ。
そして最後は・・・最期は自分はどんな食生活を送っているだろうか。そんな問題意識を喚起してこの作品は終わる。
これからの自分の食を見つめさせてくれる作品である。
そしてそれが政治であり、それが面白い。それに気付かせてくれた。
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食へのこだわりは、単なるこだわりを超えた理念(イデオロギー)である――。
食の嗜好を実地調査も踏まえ分類していきますが、どちらかをバカにする目的ではないので、悪意のない冷静なまとめに仕上がっています。
文章の書き方も、炎上目的の挑発的な書き方ではなく、フラットで嫌みがない感じ。
雑誌についても言及されていて、本書で触れられているオリーブ女子、服部みれい、うかたまに対して自分が感じていたモヤモヤ不思議な感じが、見事に整理されていました。
タイトルこそ「フード左翼とフード右翼」ですが、メインは「フード左翼」の方。
彼らのなかにはらんでいる矛盾や真面目すぎるがゆえの分裂など冷静にそのまま書かれています。
調査をしているうちに著者も左に寄っていくというオチ尽きで(笑)
日本人は政治を熱く語り合うことは本当に少ないですが、日常の延長の政治として、食から切り込んでいくアプローチが面白かったです。
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タイトルだけ見ると自然派食品を好むフード左翼と
ジャンクフードを好むフード右翼を軽いノリで分析しちゃおう
というような本かと思っていたのですが
我々が毎日行っている食という消費が
実は個々人のイデオロギーにも通じているのだという
非常に興味深い議論をしている面白い本でした。
私も著者が本を執筆し始めた当初に感じていたであろうのと同様に
気取ったフード左翼に嫌悪感を感じているのが正直なところなのですが
そんな簡単なものではないのだと考えさせられました。
しかし、食なんてものが政治と何の関係があるのかと
思っていましたが有機栽培などの源流が学生運動や
ヒッピー文化など本物の左翼のようなところから
出てきた流れだいうことに驚かされました。
他にも放射能問題、遺伝子組換え問題、セントラルキッチンなど
にまで論点は多岐に渡り、様々な示唆を与えてくれました。
しかし惜しむらくは著者が途中からフード左翼にかなりかぶれてきて
少し公正に欠く内容になっていったことが残念でした。
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ちょっとキワモノ的なタイトルですが、なかなかどうして。現代日本の食に対する思想のあり方が見事に分析されています。タイトルからはかなり政治色が強い印層を受けますが、実際には思想的背景のほうに焦点を当てています。日本の場合はアメリカとちがい、それほど食生活と政治思想は強く結びついていません、はい。
で、本書の場合はフード左翼(革新=左派という程度の意味ね)に大部分が割かれています。有機農法やマクロビ、スローフードに地産地消。。。どういう人がそこに惹かれ、何が問題であるかがわかりやすく解説されています。もちろん、矛盾や問題を含んでいるからと言ってそのすべてが否定されるわけではなく、ある意味で注意深く中立・公正を保とうとしているのがわかります。あえて注文を付ければ、フード右翼ももっと深くつっこんで欲しかった。
さて、意地の悪いところだけを大胆に要約すれば、フード左翼は『都市民(都市派/リベラリスト)』で『アッパーミドル』に包括され、人口全体の1%でしかなく、現代農法を否定して世界中の人に有機農法野菜を食べさせようとすれば、現在の倍以上の耕地面積が必要となり環境破壊が進むけど?というところか(笑)
結局、フード左翼に連なる農業生産は『従来農法=近代農業』には交わることはなく、土着することのない一過性の(「短期的な」という意味ではない)ものでしかないというところが私はイヤなのかな。よく『都会生活に疲れて脱サラして田舎で就農しました』的な人がいて、毎日野菜をもらったり畑仕事を手伝ってもらったりして『田舎の人はみんな親切でよくしてくれます』というけれど、そういっている本人は今後において近所の人たちを物心両面でどのように支えて行くのだろうか?それをしない限り、『お客さん』だよね。
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評論家の速水健朗さんの本。
タイトルがぱっと目につく、そして、帯も目につく本。
フード左翼とフード右翼という概念は面白いな。
自然食系が左翼、チェーン・がっつり系が右翼だが、その左翼と右翼という言葉がしっくりくる。
ただ、タイトル倒れの面があって残念だな。
途中で四象限の図とかあるが、実際に使っているのは二象限だけだったりな。
着想は面白いので、もう少しこのような分類を使った深堀りがあってらよかったな。
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食べているもので政治を語る。
面白い切り口だと思います。マクロビや地産地消、オーガニックなどのフード左翼に偏っているのが惜しい。
あまり意識していない消費の選択のずっと奥の方にシーシェパードなどがいるのかも。それはそれで怖い。
でも、遺伝子組み換え作物もなんとなく気持ち悪い。
私は、今は右往左往し、人生の最後の方はおそらくセントラルキッチンにお世話になるのでしょう。
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入院中に読了。
本書では、食べ物・食べ方の嗜好(志向、思考)と政治的な志向(思考、意識)の関連性を試みている。政治的というより、経済的な階層や「地域差」といった方が適当か。
「左」なボブは感覚として感じ取っていたが、改めて考えてみると、なるほど…とうなずくことも多い。
科学的に正しくても、否定もしくは拒否されることは多く、多くを学んでいる(はずの)学生(教官もにいる!)にもそういった傾向は強かった。
参考になったのは補章「高齢者の未来食と共産主義キッチン」。脳梗塞の影響で嚥下障害になり、とろみ食を経験したことと、同じ病棟にいる老人たちの食事風景を目の当たりにして、すごく共感した。
「フード左翼」がメインだったので、「フード右翼」についてももう少し言及して欲しかった…
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刺激的なタイトルであるが、フード右翼のことはほとんど出てこない。
著者本人はフード右翼だったものが、本書の制作を通じて不完全ながらフード左翼に転向したといい、その方向での転向はあっても、逆はないのだ、という。僕は若かりし頃明らかにフード右翼であったが、いまは確かにずいぶん左傾化した(ちょっとまた右下に落ちてきている気もするけど)。それが政治思想とどう結びつくだろうか。周辺の人を見てみる。たしかに関連性があるような気もするが…。
セックスは共に出来ても食事は共に出来ない、という分断例はインパクトもある一方で理解も出来る。しかしそれを政治思想にむすびつけるのはどうよ、と思いつつも、そういう飛躍と単純化が楽しさでも有る。
フード左翼はオリーブ少女的政治意識の持ち主であり、「うかたま」とかがそれを引き継いでいるのだ、と言われると、なるほどそうか、と。
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現代の複雑化している食思想がよくわかる。食と政治の関係は我々ではどうすることも出来ないほど強く繋がっているのだなと。有機栽培や動物愛護など理想的な理論では、人類も地球も救えない皮肉な仕組みがある。自分の周りには左派が多く(ファッション左派含む)意識の高い人は確実に増えていて、現実とのジレンマも生じているはず。
どちらの動向も注目しながら自分の目指すものも固めて行きたい。
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アメリカでは主流になりつつある「食」という観点からの政治への参加を
日本の歴史、現代の流れからの切り口で書いた本書。
冒頭は多少、フード左翼を馬鹿にしていたような作者であったが、自らもおいしいし楽しい、という理由でフード左翼の側に変化していく作者の様子がおもしろかった。
ピーター・シンガーの引用にあるように、「現実的な左翼になる為には、旧来の左翼が抱いていた理想主義を弱め、代わりに「競争」と「強力」を深めていくべきだ、という指摘には激しくうなずいた。