紙の本
いい意味でも、悪い意味でも。
2020/05/15 15:27
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章も主題も登場人物の性格も、いい意味でも悪い意味でも上手くまとまり、楽しめるし、社会や世界平和、個人の求める人生の意義を考え込みもする、一冊。
紙の本
近未来の私たちを仮想できる
2016/10/20 07:41
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投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
核兵器のこと、原発のこと、自然環境のこと、人と人のつながりのこと、とりわけ家族のこと、生と死。瀬戸内の静かな島々を舞台に繰り広げられる核データ争奪の物語は、人類の近未来を地球規模で考えさせられる、楽しく温かくスケールの大きいものだった。
紙の本
こういうお手本があってもよい
2020/08/31 21:45
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投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
「読ませる」技術が抜群。やはり作者のキャリアが違う。
おそらく意図せずして教養が垣間見える文章。内容としては読者の気づきとか思索を促す深みはないと思うが、娯楽小説としての割り切りは潔いとすら言える。
書き手を目指す人にとっては教科書的な使い方もできるのではないか。
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癌で無くなった父には秘密があり、秘密を託された娘は、指名手配を受けながらも、友人たちの協力により、秘密に迫っていく。そこには日本による原爆開発の関与が。社会学者である主人公は自身の倫理観からその問題に立ち向かって行く。
根底に流れるのは、「楽しい終末」で示された人間の開発し、保持し続ける制御技術に対する疑念であり、それは東日本大震災での体験をもとに強固なものに消化され、強い物語となった。原爆の仕組みについても、池澤さんらしく真摯に説明している。
社会に問題を提起するという意味合いにおいて、この物語がとても有効に機能している。その辺りを嫌味なくまとめてるあたりは流石と思う。(小説として凄いかは別として。。)
原爆は抑止力であり、原発はエネルギー保証において非常に重要であることは理解できる。そこは間違いなく池澤さんも理解してると思う。
しかしながら、作家としてまたは世を憂う詩人として、そこに問題提起していこうという姿勢が重要で、私はひどく共感を覚える。小泉元首相や山本太郎だけじゃない、こういう作家にこそ注目が集まるべきと考える。
池澤さんはようやっとこれを書いてくれた。それだけで今の僕は充分に満足。
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原爆開発の証拠を携えて瀬戸内海の島から東京までの逃避行がテンポよく進む。元々は毎日新聞連載小説だそうだ。
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キトラボックスの前譚として興味がでたので読んだ。
話の展開はあまり私の好みではないかなー。
キトラボックス『映画化』の際のキャスティングの参考に。
行田はやっぱり加瀬亮だと思う。美汐は誰がいいかな。
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原爆開発という機密プロジェクトに関わった過去を持つ父と、その父からの遺言をある秘密とともに託された娘。
父の死をきっかけに、動き始める、28年前に封印されたはずのプロジェクトを巡る思惑たち。
原発を扱う作品として興味を持つと同時に身構えたところもあったが、最初から最後まで実に読みやすく、また、常に続きが気になり、一気に読み上げてしまった。
東野圭吾さんの「天空の蜂」という作品のことが頭に浮かぶ。おふたりの感性、あるいは誠実さのようなものがそうさせるのか、この二つの作品はどこか似ているような感じがする(そして、どちらも是非、おすすめしたい)。
登場人物の顔が浮かぶ、生々しい描写。どのような事件も、日常も、生きている人が紡ぎだした風景の中に存在する。いつのまにか、社会から、政策から、顔が見えなくなるのは何故だ。ふつふつとわく怒り、居心地の悪さに不完全燃焼を抱えたままの心に、はっとさせてくれる、ぶれないでいられるための眼差しのヒントを、この作品は与えてくれる。
「ポリティカルサイエンス」というジャンル特有の「いなやイメージ」を払拭してくれたのは、主人公・美汐の背筋のしゃんとした、気持ちのよさからだろうか。少しも苦もなく読めた。
あまりに一気に読みすぎてしまったので、また少し間をおいて、読み返してみたいと思う。
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池澤夏樹「アトミックボックス」読んだ http://books.mainichi.co.jp/2014/01/post-e716.html … はーおもしろかった。。!今年度エンタメ部門第1位(なんのランキングだ?いま作った) 原爆設計、被曝、核バランス、良心、信用。国家の威信と日々の生活。さらりと読めるけど訴えているものは重い(つづく
思想と思想の対決、お互いが自分にとっての倫理を全うしようとする。池澤夏樹にしては珍しい、叙情を抑えた硬質めの短文を重ねる文体と早いテンポがいいし主人公が手放しで魅力的なのも初。この人らしいまっ直な若さも勇気も、荒唐無稽にならないぎりぎりで大胆に話を進めて行く。やー楽しんだ(おわり
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池澤夏樹の「アトミックボックス」http://books.mainichi.co.jp/2014/01/post-e716.html … を読み始めた。まだ20ページくらいだけど、これは! 池澤夏樹は突き抜けたな。文体はやや硬質めでテンポがいい(どちらも池澤夏樹にしてはとても珍しい)「わたしは月と潮を味方につけて海に出て行く」。。。
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父から極秘プロジェクトのデータを託された娘が、警察に追われながらも、真相を知ろうとする作品でした。
エンタテインメントとして楽しめつつ、読み終わった後で、原子力や原発についてあらためて考えさせられました。
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帯にひかれて購入。緊迫感まったくなしの逃亡劇でした。警察がゆるすぎ!。対決相手もなあ・・。演説ばっかで・・。最後の新聞社の対応も気に入らんし。作者のファン以外の人にはオススメしづらいかもしれません。図書館で借りるレベルでした。
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めちゃくちゃ面白いけど4か5か迷うなぁと思いながら読み進め,予想外のラストにやられて5に決定。さすが巧いなぁ。
先が気になって急いで読んでしまったのを後悔。特に最終盤。また読んでみよう。出てくる女性も気持ちいい。宮崎駿に共通する気がする。
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池澤夏樹と言えば、まっすぐな内省が僕のイメージであって
「エンターテイメントしてみます」なんて言った日にゃ
へそで茶を沸かしてしまうと思ってたが、悔しいが面白い。
テンポよく、イベントがあって非常に面白い。
彼の問題意識がよく出ている主題の選び方だが
あんまりそんなことは考えずに読んでほしい。
彼なりに、もしかすると政治を迂回する方法として
こんな小説を書いたのかもしれんとも思うが、
悔しいけど面白い。
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反原発、海、万葉集と、そこはかとなく、いや、いかにも池澤夏樹っぽい作品だ。ギリシャ神話(「カロンの艀(はしけ)」)や北海道の山の名前がアイヌ語で出てきたりするのも池澤夏樹っぽいのだ。一方、かなり読みやすく素直なストーリー展開というのが、実は池澤作品っぽくない気もするが、まぁそれもいい。
核と人間の在り方、国家と個人の問題を問う骨太作品。だけど読み味はさっぱり爽やかだ。
かつて日本国内で隠密裏に進められた原子爆弾作り、「あさぼらけ」計画に携わった父親が残した遺書とデータを手にした娘、主人公の美汐が、公安からの執拗な追跡を、瀬戸内の島々の知人の助けを得ながら逃れ、最後に「あさぼらけ」計画の首謀者たる大物政治家の元にたどり着き対峙する物語。
あくまで隠蔽しようとする公安、政治家という国家の論理に、いち個人がいかに立ち向かうかをスリリングに描いている。
ストーリーとしては単純明快で人物造形も申し分なく、あっと言う間に読み切れる娯楽作品だが、秘められたテーマが奥深い点が、さすがの池澤作品だなと唸らされる。
戦後日本のGHQ統治から説きおこし、大日本帝国軍隊を解体、日本の非武装化を目論んだアメリカが、米ソ冷戦や朝鮮戦争を機に再武装へ舵を切りなおし、警察予備隊から保安隊に、やがて自衛隊へと増強される歴史を「あさぼらけ」計画の黒幕に語らせ、日米安保もけっして絶対ではなくアメリカの都合に過ぎない点を浮き彫りにさせ、故に日本が密かに原子力爆弾を製造しようとしていたという話に信憑性を持たせる。
しかし絶対に防ぎきれない放射能漏れのように、日本の国家機密は漏洩していく。その漏れていった先が北朝鮮だという味付けも実に面白い。核実験、ミサイル発射を繰り返す昨今、この機密漏えいを更に隠蔽しようとする国側の論理が現実味を帯びる。
「いや、日本国にとっての損失だ。北朝鮮ではなく別の国との交渉の場で、おたくがあの国の核開発の手助けをしてしまったからこんなことになった、と言われる」
絶対なものでない日米安保を憂慮し、「平和を願うことと平和を実現することは違う」と原爆製造を隠密裏に進める国家という魔物に対し、「個」として対峙する主人公の思いが熱い。国の存続を思ってのことだという政治家の「愛国心だよ」という言葉にも「つまり国益ということですね?」とバッサリ。
国家の理論と人間の論理がぶつかり合うクライマックスシーンは実に読み応えがある。国民を数でしか見ていない政治家に「でも一人一人には考えも、思いも、意地もあるんです。数でまとめられないものがある」と「個」の訴えをぶつけ、最後は「私は今ここであなたに人間としての倫理で勝ちたい」と言い放つ。
結果、主人公は勝つのか負けるのかは、本書を読んで確かめて欲しい。
本書は特に若い人に読んで欲しい。10代、20代だな。それくらいの世代向けの内容だと思う。自分位の世代になると主人公の抵抗っぷりに、ついつい「蟷螂の斧」なんて言葉が浮かんでくるのだが、いやいや、それじゃいけない、と改めて背筋を伸ばす読後なのであった。
3.11の後、さらには、日本原子力開��機構の施設での被曝事故の後、美汐の言葉がズシリと響く。
「国対国の対立以前に、なによりもまず、人類対核なんです」
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初の池澤夏樹作品。フツーに面白かったです。国産原爆計画、いかにもありそうな話ではあるが、それにしたって公安が何十年も追いかけるにはちょっと…と思ったら、そうきたか!
スピード感があって読みやすい。オススメ。
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国家単位での壮大なストーリーで楽しめたけど、ジェノサイドを読んだあとだけに少し空間的な展開が小さく感じてしまった。あと、最後はもう少し盛り上がってもよかった。