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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本が第一次世界大戦にどのようにかかわったかを教えてもらう機会はあまりない。そうした中で本書は実情を知る本。いったいどのようなことがあったのかを知るのは重要で参考になる。
電子書籍
大正期の日本
2023/10/09 21:36
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一次世界大戦をきっかけに英米型のデモクラシーが志向された時代の日本について政治、経済、軍事、社会などなどジャンルごとに語られている。
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「欧州大戦」である第一次世界大戦をいわば奇貨として、極東の島国日本は国際社会に打って出る。
国力においては一人あたり国民所得は昭和14年のピークへ向けて上り坂、外交においても「国際会議屋」の八面六臂の大活躍をみるに、けっこういい線いっていたのだ。
(「大正時代の日本は光り輝く文明国だった」p8)
あの戦争なかりせば、と「いい線」の延長線上にあったかもしれないもう一つの日本を、つい夢想したくなる。
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本書は、第一次世界大戦前後から1930年代までの日本を、外交・軍事・政治・経済・社会・文化の6つの視角から描写。当時の日本の再現を試みている。
最初はちょっと文章のリズムに馴染めない部分もあったが、まずは国際協調の時代としての第一次大戦後の世界が外交という大枠から描写され、次に軍事、政治とそれが規定する国内状況へと筆が進められていくうちに、100年前の日本の姿が見事に浮かび上がってくる。
経済の状況も「成金」という普通、あまり経済史家が正面から取り上げない事象や人物に多くページが割かれ、ユニークな叙述となっている(経済の章は成金論と高橋是清の話でほぼすべて)。「社会」「文化」の項目においても調査の時代という視角を前面に押し出したり、あるいは「平和記念東京博覧会」(1922)を当時の大衆文化状況の集約として取り上げるなど、著者の独自の視点が前面に出ている。
それでいて全体的にはバランスの良い叙述となっており、勉強になった。オススメ。
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第一次大戦と日本の関係とともに、大正時代の日本の大衆社会についてまとめた一冊。
世界史上では日本で触れることの少ない第一次大戦の詳細を知ることも大事だが、
後半部分の大正時代の大衆社会についてが、日本の歴史、また現代の日本をを知る上では、かなり大きい。
これまでの歴史に関する本の間隙をついた貴重な一冊ではないだろうか。
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1910年代から1920年代にかけて、欧米を中心とする世界大戦の動きと、それに大きく影響を受ける日本について時代をまとめられたコンパクトな一冊である。
確かに、第二次大戦後の社会にまで影響を与えている数々の要因がここに始まったことは紛れもないようである。
今年は第一次世界大戦から100年の節目である。世界中で爆弾の音が聞こえるなか、いまこそこの時代を振り返ってみるのは決して悪くないだろう。
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WWI開戦100周年にあたり、日本史教科書での扱いが小さい性もあるのか、あまり話題にならないが、後の日中戦争、太平戦争に至る道のりが整地されていったのがこのWWIの時期である。政党政治の興隆とその崩壊による軍部へ期待、その軍部にしてもWWIへの参戦と、観戦分析による総力戦の決意とそれ故の絶望、日本史、日本近代の曲がり角がこの時期になる。
本書は外交、軍事、政治、経済、社会、文化に分けてこの時代の分析を行っており、本書を通して読めば、WWIが山川日本史にあるような日本にあまり関係の無かったことという認識は亡くなるはずだ。日本で言えば大正は明治や昭和に比べ研究が少ないように思えるが、その後の今に続く日本の出発点に当たる時期にあると思う。総力戦への備え、国家総動員体制は戦前戦中の話だけではない。戦後高度経済成長を実現したのも実際のは戦中の総動員体制が(軍需の重しが取り除かれたが)政策的に維持されてきたからだ。そして今なおその後遺症に苦しんでいる。
また、軍部、特に陸軍における総力戦への決意、そして絶望に関しては未完のファシズムが詳しいので、是非併読をお勧めする。
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<目次>
はじめに
第1章 外交
第2章 軍事
第3章 政治
第4章 経済
第5章 社会
第6章 文化
おわりに
<内容>
淡々と当時の文献からの抜粋が続く。「○○版日本の歴史」シリーズの”第一次世界大戦期”を読んでいる気分。ただ、選んだ文献の組み合わせなどから当時の様子がはっきりと浮かび上がる。この時代の第一人者ならではであろう。前著の『理想だらけの戦時下日本』を読んだ時も感じたが、この時期の大衆は、「戦争」などを感じることもなく(この本では第一次世界大戦)、日々を平和だと思って過ごしていたのだろう。そういう意味で、現在の日本のリーダーの旗振りが、日本をこの時代の後に訪れた悲劇の再現を目指しているようで怖い。
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第一次世界大戦に日本がどのような状況で参戦したのか、また終戦後の国際連盟と日本との関係を特に描いた本だった。特に国際連盟との関係で日本が積極的に人種問題を提起したり、また国際平和に対して理解を深めようとしていたことは特筆すべき点である。ただし、朝鮮人労働者と底辺の日本人労働者との軋轢、平和展での混乱を見ると分かるように国家としての目的・理想と民衆の現実が乖離していく状況がどんどんと日本に暗い影を作っていく。個人的にはもう少し陸軍の動きであったり、5・15事件やら2・26事件の背景を描いて欲しかった部分はあったが、それについては川田稔先生の近著で探ることにしたい。
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この人の本、俺は随分と読んでいるけど、相変わらず歴史を語る「定点」のようなものが見えにくい。
イデオロギーを前面に打ち出した歴史本はそれはそれでうっとおしいし、「客観性」を重視した歴史語りが大切であることを俺も理解しているつもりなんだけど、もうちょっと筆者の立場を出しても良いんじゃない、といつも思う。
取り上げる個々のエピソードや事象は割と面白い。ただ、それらが「全体」の中でどれほどの意味を持っているのかが分かりにくいんだよね。まあ、ある時代の歴史の「全体」というのも、実にフィクショナルな観念なんだけど。
以上、ここまで書いたことは、俺が今まで手に取ったこの人の他の本の多くにも感じられることなんだが、ただ、数を読んだだけに、こちらもその語り口に馴れたので、読みにくいということはなかったです。
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欧州を破壊した第一次世界大戦は世界に国際協調をもたらした。日本もその潮流の中で大正デモクラシーが開花する。好景気と大衆消費社会、政党政治の確立、皇太子の欧州訪問と立憲君主としての自覚、アメリカ、イギリスとの協調による軍縮。その一方で戦後の反動からくる不況、貧富の差の拡大、二大政党の腐敗など、影の面も出てくる。満州事変と国際連盟からの脱退を支持する国民世論は民意による政党政治家のアマチュア外交にプロの外交官が敗北したからとあるが、この辺の記述が少ないのでよくわからない。何故、国民は国際協調を諦め、満州事変を支持したのか。戦時体制が社会の平準化を進め、貧富の差を縮め女性の社会進出を促したが、資本主義による大衆消費社会の確立とのギャップをどう捉えるのかなど、書きたりでない部分も多い。
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なぜ、日本は第一次世界大戦に参戦した理由を政治・外交・軍事の面から詳しく解説してほしかった。この著作は大戦後の影響を中心に語られていました。「海軍は 第一次世界大戦後の国際秩序から利益を受けていた。海軍にとって南洋群島は戦略的な拠点だった。その旧ドイツ領南洋諸島は、国際連盟からの委任によって日本が統治している。そのように認識する海軍にとって、国際連盟脱退は、太平洋の戦略的な拠点を失うことを意味した。」確かにそうですよね。でも、結局は連盟脱退に。日本は世界から孤立の道を歩み、やがて次の大戦に突入する。
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高校の社会史の先生が「戦後日本の次に平和だった時代」と評していた大正時代。今までおぼろげにしか知らなかったが、この本はその平和であった時代の見取り図を与えてくれる。
格差・二大政党制への指向と挫折・金融不況とその脱却、女性の社会進出、いずれも現代日本と同じような話である。
戦間期の国際連盟や国際司法裁判所において日本人が活躍していたことは本書で初めて知った。
この本で今日を持ったトピックについて、参考文献を当たってみたい。
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「日清・日露戦争と第二次世界大戦との間の第一次世界大戦に具体的なイメージがともなわないのは、明治と戦前昭和に挟まれた大正の時代像があいまいなことに関連している。」
第二次世界大戦に向かう戦前の体制に関して、なぜそうなったのか関連書籍を何冊読み進めていってもよくわからない、よくわからないものをわからせてくれる本を探す旅はまだまだ続いている。
本書もその一環で手に取った。
冒頭に引用した一文、まさにボクの中でもその通りなのである。
第一次世界大戦は学校で習った知識の中では欧州の戦争に日本が東の方からどさくさ紛れにちょっかいを出したくらいにしか思っていない。
大正時代関しては期間が短かったということもあるのだろうが、頭に残っているのは『大正デモクラシー』と『関東大震災』くらいである。
しかし、デモクラシーが成立した時代の後になぜ戦前の軍国主義のような時代がまかり通ったのかに繋がる知識がごっそり抜けているのだ。
著者は言う。
「第一次世界大戦前後の大正時代は振り返るに値しないのか。そうではないだろう。大正と今との間には時代状況の類似点があるからである。類似点を三つ挙げる。」
・第一は大衆社会状況下の格差の問題
・第二は長期の経済停滞
・第三は政党政治システムの模索
「以上の三つの類似点は、大正の新しい〈光〉と〈影〉の時代像とともに、歴史的な示唆を与える。大正時代の日本は光り輝く文明国だった。この時代がモダンで平和だったのは、長期の経済停滞にもかかわらず、経済的な国際協調が基調になっていたからである。」
引用が長くなったが、国内においては上記の3つの類似点の観点で大正時代を中心とした国内の在り方が整理されている。
なるほど、類似という点ではまさに類似していると言えなくもない。
ただ、それよりもボクにとって意外だったのは『経済的な国際協調』、第一次世界大戦の仕組み・枠組み・戦略の違い、この戦争の前後において世界の在り方が変わっていったという部分である。
第一次世界大戦のボクのこれまでの拙い見方は『欧州における列強の戦争』以外の何モノでも無かった。
しかし、この戦争の大義は欧州に限らず、戦後の枠組みも考慮すると『「徳」=国際正義を代表するアメリカと「力」を代表するドイツの戦争だった。「力」は敗けて「徳」が勝った。』という整理の仕方が新鮮であった。
この時代からアメリカの大義は名目上『国際正義』なのである。
実際、戦中から戦後の国際体制の再構築を想定した国際連盟の枠組みが連合国を中心に進められる。
しかも、日本は国際連盟の常連国としてアジアの利益に止まらず、国際協調という新外交の枠組みを忠実に実行し、国際連盟を通して列強の義務を果たしていくのである。
ここまで国際連盟において当時の日本がコミットしていたとは驚きであった。
歴史の教科書では国際連盟脱退は触れられているが、国際連盟での日本の役割についてはほとんど言及されていない。
ただ、ここから先が問題なのである。
国際協調の下に国家戦略を進めて��た日本がなぜ、それに反するような道を20数年のうちにたどることになるのか。
その原因は様々なものがあるだろうが、全ては最初に触れた原題との類似点の3つに起因するものである。
長期の経済停滞は持てるものと持てないものの格差を広げ、デモクラシーが浸透し政党政治が機能すると、政党は多数派工作のためにより大衆に阿る政策に傾いていく。大衆に阿る政治はプロフェッショナルを排斥し、大衆の声に阿るアマチュアリズムに傾倒していく。
アマチュアリズムは勢いが過ぎると腐敗を生み、国を憂う高い志はナショナリズムの昂揚で大衆の不満を吸い上げ、力で克服する。
大正から昭和へ向かう時代、このように整理をすると薄ら寒いほど現在の状況に酷似する。
しかし、大衆はそれほど愚かではないという部分をまだ信じたいボクとしては、まだ『なぜ力で克服する』という方向に大衆が熱狂していったのか?という大衆心理についてはまだまだなっとくできない部分があるのである。
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書名通りの本。
第一次世界大戦と日本の「外交」「軍事」「経済」「社会」「文化」の関係について述べられる。
戦争がもたらした好景気と「船成金」、そして、その反動となる恐慌。経済格差。
翌年の起こる「真珠湾攻撃」までの記述。しかし、消費文化に勤しむ上流階級の姿が描かれていて空寒い。
第一次世界大戦が「日本」へ及ぼした影響などを知るための良書だと思う。
高校の日本史で習ったことより、更に深く内容を知ることができ有益だった。