紙の本
母子の葛藤
2017/07/23 10:02
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『そばかすの少年』の姉妹編。母子の葛藤を軸とした物語で、『そばかす』よりも人間の内面が深く描かれていると思う。特に、夫を亡くした喪失感と娘への愛憎に苦しむコムストック夫人が印象的である。
ただ、長年母親に冷遇されながら、エルノラの性格に暗さが見られないのは些か不自然。そして、エルノラの父の真実を知りながら、二十年も口を閉ざしていた隣人夫妻。エルノラの母コムストック夫人より彼らの方が余程酷い。彼女の苦悩を二十年間も放置したまま、エルノラの良き隣人を演じていたのだから。
本編の中で、リンバロストの自然描写がやはり素晴らしい。博物学者だった著者の知識が遺憾なく発揮されている。
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アメリカ人作家ジーン・ストラトン・ポーター氏の傑作です!
2020/06/20 10:08
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカの作家、自然写真家、博物学者、映画プロデューサーなど幅広く活躍されたジーン・ストラトン・ポーター氏の名作です。同氏は、同書のほか、『そばかすの少年』といった作品も書かれています。『リンバロストの乙女』の作者として知られている。同書の内容は、母に愛されずに育った少女エルノラという少女が主人公です。彼女はリンバロストの森に住んでいます。母の反対を押し切り、なんとか町の高校へ入学できたものの学費を自分で稼がねばならず、「鳥のおばさん」と呼ばれる学者に出会い、リンバロストの森に生息する美しい蛾や植物を採集することで学費を稼ぎます。やがて、夫の真の死因を知ったエルノラの母は、エルノラに対する憎しみが溶け、今までの分を取り返すかのようにエルノラを溺愛し協力的になります。そして、ある日、療養のためリンバロストの森を訪れていた青年とエルノラは恋に落ちるのですが、彼には婚約者がいたのです!一体、エルノラの恋はどうなるのでしょうか。続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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知らなかった
2015/02/23 13:55
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投稿者:ゆりりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろいろな世代、いろいろな立場から楽しめる小説です。
私は50代なので主人公の母親の感情の濃さに目が奪われました。
背景も美しく何度も楽しめる立場の違いもよく描かれていて飽きません。
長い間廃刊だったものだそうですが、私は初めて手にしました。
少女小説というジャンルに入るのでしょうか?
赤毛のアン等に興味のある方は一読をお勧めします。
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美しいリンバロストの森の端に住む、少女エルノラ。冷徹な母親に阻まれながらも進学を決めたエルノラは、蛾を採取して学費を稼ぐ。名翻訳者・村岡花子が「アン」シリーズとともに愛した永遠の名著。
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(上下巻まとめて記す)
角川のマイディア文庫で学生時代に買ったものが手元にあるが、今回の河出書房文庫版はあとがきが梨木香歩さんだというので思わず入手。カバーイラストも梨木さんの作品でお馴染みの早川司寿乃さんのさわやかな装画。
20年前に読んで自然の恵みを活かして人生を切り開いていく主人公に感銘を受けておもしろかったという記憶だけはあったが、細かい筋は忘れていた。今回読みなおして、努力家で前向きで賢くやさしく美しい主人公の少女と対を成すような、ワケありで変わり者の母親の存在がひじょうに大きいと発見した。この母と娘の緊張感ある関係は身に覚えがあるというか普遍的な気がする。また主人公の成長を陰日向に見守ってきた善良な隣人夫婦と母親の価値観の対比も興味深いと思った。
前半の山場はそんな母と娘の和解で、後半の山場は許嫁のある好青年との関係をいかに丸くおさめるかだが、主人公が当時の倫理観と母親の心の傷に最大限気を遣って、賢さと慎み深さと誠意と犠牲的精神とで立ちまわり恋敵の再生と幸せさえ約束して大団円に終わるのを読みつつ、道ならぬ恋で苦しんだ村岡花子はこの物語をどんな気持ちで訳したのだろうと思いやらずにいられない。
脇役として登場する「そばかす」とエンジェルの物語のほうがちっとも思い出せず、光文社古典新訳文庫のほうに入ったという『そばかすの少年』(あるいは角川マイディア文庫の村岡訳が発掘できればそちら)を読みたくていてもたってもいられない気分。
キーアイテムのひとつとしてバイオリン(音楽)がでてくるというのはすっかり忘れていたが、「自然が先生」という文脈の中での使われかたはすてきだった。
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少女の頃、何度も繰り返し読みました。
懐かしいです。
今になって、きれいな新刊で、しかも村岡花子の訳で読めるなんて、朝ドラ効果に感謝します。
今読んでみると、母親がちゃんと娘を愛してるんだと分かる描写がそこかしこに或る。
母親も頑固ですが、娘もたいがいだと思う。
『うちはお金無い!』と言われたら、学校は諦める子だっていると思います。
そこを押しとおす根性がすごい。
しかも、自分でお金稼いで。
そして、いい意味で“分をわきまえる”事をせず、ブルジョワジーなお友達と、遊びも着る物も引けを取らないようにと頑張るのだから、我の強さは筋金入りだと思う。
母は母で、16年も、間違った思い込みで(知らないというのは恐ろしい事です)娘を恨み、その心が時とともに解けることもなかったというのもすごい事。
秘密を知ったとたんの手のひら返しっぷりも。
シントン夫妻や、鳥のおばさんががいい人過ぎて、それが救いでした。
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昔、何かでタイトルを見て読みたくてたまらなかった小説。
いいですよねこの『リンバロストの乙女』って邦題。
イメージ的には表紙のまんまです。
が、可憐な乙女は虫を集めてました…。
そりゃまぁ、日本には『虫愛づる姫君』という超ぶっとんだヒロインが千年前にいましたけどね。
この可憐な乙女はそれをドレスやら教科書代に替えるわけです。
たくましすぎる可憐なヒロイン。
父親の死のせいで、娘に対しひどい仕打ちをする母親。
シンデレラの継母なんか尻尾まいて逃げ出すような行状です。
周囲はそんな母親に怒り乙女をかばいますが、ヒロインは自力で何とかしようと努力を重ねます。
そしてまぁ母親が心を入れ替えるんですけ・ど・ね
ちょーまて、手のひら返しすぎじゃないっすか!
かーちゃん!
いっそすがすがしいまでの愛憎の配分の逆転に口空きました。
面白かったけど……私の憧れはこっぱみじんに砕かれましたとさ
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1909年に出版されたアメリカ小説。女性作家ジーンポーターは生物学者としても優れていたが、この小説は彼女ならではの作品となっている。
(ネタバレ)
主人公エルノアは虫愛ずる姫君。蛾の収集オタク。シングルマザーに育てられるが、その母親が鬼母。愛する夫をなくしたことから立ち直れず、娘を可愛がれない。ドのつくケチで娘にお金を使いたくない。エルノアは高校に行きたいがお金がないので、インデアンの遺跡や蛾の収集でお金を稼いで、けなげに生きる。
最初はボロを纏って髪の毛も洗わず、クラスメイトに軽蔑されていたが、自分で稼いだ金で近所の人に服を縫って貰い、ついにはみんなの人気者に。
沼で溺れかけている夫を助けようとした時に産気づいたらことがきっかけで娘を恨んでいた母親は、夫が浮気をしていたことを知って急に娘に対する態度を改める。そして一緒に虫の収集を手伝うようになる。さらに虫の収集で知り合った金持ちのイケメンと最後はめでたしめでたしとなる。
このストーリーには突っ込みどころがいっぱいある。
美しい主人公は「蛾の収集オタク」。
自然愛好家でナチュラリスト。知識も豊富だ。でも知識をひけらかすし、思ったことをはっきり言う。
次に動物虐待のシーンが時々ある。二匹の猫の足を縛ってぶら下げる子供や、犬にいたーをかぶせて乗る場面など。いたずらっ子にさせるにしては残酷だ。
当時のアメリカ社会や価値観がよくわかって面白い。「ありえない」とわめきながら読むと楽しい。
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美しい少女のエルノラが高校に入学するところから始まる。
入学する、しかし母はお金は一切出さない。
前半は母との戦いで、母がお金を出さないので自分で稼がないといけない。
エルノラはそんな状況にも負けず、近所のおじさん、おばさん、鳥のおばさんの協力を得、同級生に囲まれながら成績優秀で卒業する。
前半は赤毛のアンとシンデレラを掛け合わせて割ったみたいと思ってしまう。
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◆◆ ベッドでミステリー ◆◆ 第四十二回
・・・ 第四十二回 「リンバロストの乙女」 ・・・
これはカナダの偉大な(と私は思います)作家兼博物学者であるジーン・ポーターの代表作です。
ジーン・ポーターその人そのものがかなりの女傑だったらしく、150センチくらい、と非常に小柄ながら、12人の子どもを育てながらその家はいついっても気持ちよくかたづき、前触れなしにいっても暖かい食事とお茶が出てきた、とどこかに書いてあったと思います。
その上で彼女は近くにあるリンバロストという沼の生物の研究者で(夫は心配して、沼地に出掛けるときはいつも一緒についてきてくれたそうな……そういう男を捕まえるのも実力かね?(^^))作家で、何冊もベストセラーを書きました。
この本のテーマは児童虐待です。
ヒロインは賢くてしっかりもの。なのにお母さんはことあるごとに彼女をののしり、いじめます。
高校にいく費用も払わない、というので彼女は沼で珍しい蝶を捕まえて町の女学者に売って(モデルはご本人でしょう(^^))学費その他を稼ぎます。
近所の子どものいない老夫婦が可愛がってくれ、服を買ってくれたりお弁当を作ってくれたりして、彼女はなんとか生き延びる……。
えっ?
そのどこがミステリー?
ですが、それは単なる子どもいじめではなくて、お母さんには娘を苛める理由があった……!
それがこの話の下を脈々と流れて支えていて、単なるミーハーなお涙ちょうだい物語ではなくしているのです。
昔から何度も訳されてきてるのですが(いろいろな題名がついてます“森の乙女”とか“なんとかの少女”とか)最初の頃の日本の読者はそこにでてくる見慣れない食べ物に心を奪われてしまって(みんなお腹すいてたんでしょう)物語のそういうとこには目がいかなかったみたいですが……。
(^^)
(凄いんだよ。ステーキを“焼き肉”、ポップコーンを“とうもろこしのはぜ菓子”、クラムチャウダーを“貝の煮込み”とかって訳してます)
だから読むならこれは完訳で読んでね。
角川から出てます。
続編というわけじゃないんだけど、同じ町を舞台にした、片手のない少年が主人公の「そばかす」というのもあって、それも面白いよ。
2018年12月04日
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赤毛のアンの翻訳者、村岡花子の名訳が光る作品。赤毛のアンが大好きなので、すっかりはまってしまった。
ストーリーもさることながら、リンバロストの森の自然の表現が素晴らしい。また、蛾の羽化の様子が本当に美しく描かれている。
主人公エレノアの美しい心とリンバロストの自然に囲まれ、私も浄化された思いがした。
下巻の梨木香歩の解説は、一読の価値あり。
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翻訳者、村岡花子さんと言えば「赤毛のアン」シリーズだが、この物語は知らなかった。グリーンの森と黄色い帝王蛾が描かれた上巻から読み始める。
「骨折り仕事だけで、無知のまま一生を暮らすのはいやだ」リンバロストの美しい森に母と住むエルノラは、町の高等学校へ進学した。
初日に教科書もなくみすぼらしい身なりを笑われた彼女は、授業料がいることを聞き呆然となる。なぜ母は知っていたのに、学校行きに賛成しながらも話してくれなかったのか…。
娘を冷遇する母親にも辛い過去がある。
夜の沼に向かい、溺死した夫を「返せ」と叫ぶ姿は壮絶だ。エルノラに愛情深く接するマギーおばさんとウェスレイおじさんがいて良かったと思う反面、終盤で明かされる"夫の死因"をなぜ本人に言わなかったのだろう…。
「勉強をしたい。できれば大学にも行きたい。」賢く努力家のエルノラは、収集した蛾や繭、インディアンの石器を鳥のおばさんに買ってもらい学費に充てる。
立派に成長したエルノラは、送別式の夜ついに母の仕打ちが許せなくなる。
頑なさを捨てられず、人と張り合いながら自分の正当性ばかりを主張する母親。娘が自分を必要としていないことを知り、初めてエルノラに赦しを乞う気持ちになれたようだ。母と娘の関係はこれからどう変化していくのだろうか。下巻を読むのが楽しみだが、思わぬ展開も待ち受けていそうで怖くなる。