紙の本
ゆらりと
2015/11/11 18:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ほし☆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
年を重ねた「きょうだい」って、多少なりとも異性として意識するのかな?一人っ子の私には未知の世界でした。ママが自由奔放でステキです。
紙の本
静かで独特な雰囲気に満ちた作品
2015/08/24 10:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
語り手の意識が色々な時代をふわふわと行ったり来たりする、不思議な味わいの作品。パパとママがいた子ども時代、パパとママが本当の両親ではなくきょうだいだと知った時、弟と離れた時期…決して順番に語られるのではなく、話の移り方も脈絡ないといえば脈絡ないことが多い。それでも、まるで水が流れるように自然と読んでいけるのはさすがというべきか、川上弘美ならではの持ち味というべきか。
段々語り手の心の中に秘められた禁忌の思いへと近づいていく距離感も絶妙。最初からパパとママの関係が歪なのはわかっていたが、語り手きょうだいもそうとは思っていなかったので少し驚いた。賛否はあると思うが、ひたひたとした静かな雰囲気が満ちていて、私はこの作品、気に入った。
紙の本
一つの愛の物語
2015/02/06 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数ページ読んだ所で「身を寄せ合って、取り残された子供」なイメージを覚えた。親に愛されなかった子供の話なのかと思ったら、「わたし」である都には、パパとママと、一つ下の弟の陵、そして身内のようにしょっちゅう遊びにくる武治さんもいて、物語は昭和に亡くなったママの記憶、回想と、平成13年の姉弟の現在を行き来する。
パパはふたりの血縁上の親でなく、ママの異母兄であり、のちにママと武治さんが実の両親と判明するも、陵と「わたし」の間には異父姉弟の可能性も匂わせる。複雑すぎる家族だが、家族にどろどろする暗さの入り込む隙がないのは、一家の中心であるママの潔すぎるくらいに生きる存在感に、パパは飄々と武治さんはニコニコと、それは奇妙な関係だが、ママが亡くなってからも最後まで彼らの築いた関係はほのぼのと切なく、愛に満ちている。
異母兄であるパパがどうしてママと一緒に暮らすことになったのか尋ねるわたしに「どうしてもしようがなかったんだよ」と即座にパパは答える。
禁忌から逃れようとして結局は離れられず、親世代は奇妙な関係の形となったけれど、残された子供の「わたし」と陵は死の気配が散らばる現代を生き続ける故に、成就する。
「わたし」は独白する。「母親がいるから自動的にしあわせになれるわけではない。母親ときちんとした関係をもてるから、しあわせなのだ。ママは、いつだってわたしを見ていなかった。見ているようで、まるで見ていなかった。陵だけが、わたしを見ていた。そしてわたしも、陵だけを。」彼らが惹かれあう小石の波紋の一つが読者にも投げられているが、禁忌を自覚しながら親世代、子世代に渡って続く、ある家族の愛の形の物語に、不思議な余韻を残して読み終えました。
あとタイトルの「水声」のイメージなのでしょうが、本の表紙が白黒の構成で地味すぎて、本屋さんの新書の中にあったら間違いなく見落としそうなので、星4つとしました。
投稿元:
レビューを見る
川上弘美さんの作品は大好きなので全部の著書を読んでるといっても過言ではないほど、読んでます。
この作品はかなり雰囲気が違う。江國香織さんの作風にとても近い印象をはじめもった。江國さんの『神様のボート』にとてもよく似ている(そしてわたしにとってそれは大好きな作品なのでとても嬉しいことである)
風変わりで飄々としたママと、血筋では父親ではないパパ、娘の都と、一つ年下の陵。さまざまな事柄、あの夏の日のこと、過去のこと、ずっとずっと過去のこと、夢の中のこと、そしてこれからの未知なことたちのこと。
言葉の一つ一つにときおりうっとりとしてしまう。ため息がこぼれて、ぼーっとする。冷たくひんやりとしている、そんな物語。すごく好き。禁忌を、禁忌として描かないこと、危険なママの香り、不鮮明な家族、だけどそれはまるで昔からそうであったかのような形でしかないこと。ふわふわと、さらさらと、さめざめと。つかみどころがない、まさに水を抱くような、そんな物語。溺れないように流れる川ん漂流しているかのような、そんなひんやりとした、美しい物語。
投稿元:
レビューを見る
そこはかとなくよしもとばななさん的な、静かな物語。この作品のテーマは何なんだろうと考えつつ読んだ。カルマ?
投稿元:
レビューを見る
川上弘美の最新作。
断片的に積み上げられるエピソードが、ゆっくりと大きな流れになっていく様子、妙に淡々とした登場人物、そして緩やかに現実から少しずつずれていく感覚……どれをとっても非常に『川上弘美らしい』1冊だった。
投稿元:
レビューを見る
読んでいる最中、これは江國香織さんの小説だったかしら?と、ふと思うことがたびたび。
とても好きな世界。
道徳とか常識とかに囚われない家族の物語。
そして今年いちばん好きな装丁。
投稿元:
レビューを見る
すごく、読み辛かった。同じ作者の著作では「真鶴」も読み辛いと思ったが、それを上回った。
固く閉じた世界…白くて濃密で、ほんのすこしの例外を除いて、外にも先にもどこにも繋がっていない世界だと感じた。この世界の空気は濃厚すぎて、私にはかえって息苦しく感じた。
投稿元:
レビューを見る
この方の本にしては、珍しくスムーズに読み終わった
読みやすかったのです。
でも、家族の物語?というのは違うと思うし
不思議な世界感でした。
投稿元:
レビューを見る
川上弘美最新作。
家族とは夫婦とは。
川上弘美らしくほわわんとしてまたもやつかみどころがない。水が漂い続けているような感じ。二人の間にも同じ水が流れている(…?)
投稿元:
レビューを見る
+++
過去と現在の間に立ち現れる存在「都」と「陵」はきょうだいとして育った。だが、今のふたりの生活のこの甘美さ!
「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。
+++
「ママ」の存在の大きさと、彼女を取り巻く人たちの距離感。死んでもなお影響を与え続ける圧倒的な存在感。いつもどこかに彼女の声を聞きながら、姉弟として育った都と陵は自分の身の内にある水の声に耳を傾けながら、かけがえのない存在を身近に感じながら生きているのである。途方もなく甘美でありながら哀しく切なすぎる一冊である。
投稿元:
レビューを見る
【過去と現在の間に立ち現れる存在】都と陵はきょうだいとして育った。だが、今のふたりの生活のこの甘美さ!「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。
投稿元:
レビューを見る
川上弘美のここ最近の小説で一番好きかも。
姉と弟の間で流れる危うい雰囲気は、よしもとばななの『哀しい予感』を想起させるが、あれがみずみずしい夏の夜の空気をまとっているなら、こっちはどろどろした熱帯夜の空気。
この姉弟だけではなく、両親自体も謎めいている。
最初は母だけが変わっているのかと思ったら、父もかなり変な人だ。
この二人の関係性は最後まではっきりしない。
愛していたのか、恋していたのか、両想いだったのか、恐れていたのか。
この二人の関係に、母の実家を継いでいる人物まで絡んできて心情的にややこしい。
娘に買ってきてくれたおみやげは彼女には不釣り合いで、結局母親にわたるがそれは二人のかけひきの一種みたいな、なんともまわりくどくて色っぽい。
主人公とその弟をもういちど近づけてしまうのが、日本人なら誰でも覚えている、忘れられない忌まわしい記憶『地下鉄サリン事件』、紙一重でその列車に乗らなかった弟はそのことで恐怖と罪悪感を抱くことになる。
このエピソードがあることで、このあやふやしたファンタジー色すら漂うこの小説に一種のリアル感が出てくる。
だが、あの事件自体、狂った夢そのものが日常に乱暴にぶちこまれたものだ。
そう考えるとこの構成は皮肉っぽいなぁと思う。
投稿元:
レビューを見る
随分、私小説風の響きのする作品だな、と頭の中で声がする。もちろん、私小説の筈はないけれど、頭の中の何処かでそれをなぞってみるたくもある。きっと記憶というものの描かれ方がそう感じさせるのだ。例えば上野周辺の描かれ方。ごく個人的な昭和の風景がそこには見える。その作家の記憶に残っている風景を恐らく同じ目の高さで眺めた同じ時代の記憶が、それに釣られるようにして呼び起こされる思いがする。失われてしまったものの記憶は何故か湿度が高い。現在進行形のものは、乾いている。
物語はミステリー風の展開。但し過去に起きた出来事がなんだったのかを推理するのは難しくない。それを主人公の語る記憶と伴に遡る物語。考えてみると、全てのミステリーは過去へと遡る物語である。と同時に、遡り切ったら一気に現時点に立ち戻り、辻褄が合って収支の合計がゼロとなる。原因一つに対して結果が一つ。しかし現実の世界では推理小説のように単純な解決が与えられることは、ない。現在が如何に過去の出来事の積み重ねの上に成り立つものであっても、今、この瞬間に起こる一つひとつの判断が、行く先を決定する。過去と未来の収支を合わせる機会は、死の瞬間まて訪れない。いやむしろ過去の出来事へ背負わせる因果の糸は生き永らえている限り増えるばかり。その重さが自然と湿り気を帯びる。
過去へ向かう視線と、未来へ向くしかない視線。それは、記憶と現実という対比を生み、頭と身体の分離を強要する。 川上弘美を読むとそんなことばかりいつも考えてしまう。 その狭間にいつまでも留まって居ることは出来ないけれど、一定以上の年月を生きてみれば、人生にはそんなエアポケットのようなものが幾つもあったのだと気付かされる。若い時はそんな昼とも夜とも付かない淡いの時など、一瞬にして過ぎ去るように思えたけれども、不惑を過ぎてみれば、その黄昏の時がいつまでも続いているように思えてならない。夕焼けは薄らぎ、全てを覆い隠す夜の闇は未だ訪れない。中途半端な時を意図もないままに遣り過ごす。しかし、この小説の主人公と同じように、それが格別悪いことのようにも思えない。
それは、恐らく自分というものの輪郭が不明瞭になっていくことを意味するのだと思う。姉と弟、夫と妻。親と子。幼い頃には明確に異なるものとして対比される関係にあったものの関係性は時と伴に曖昧になる。年齢、身長など測ることによって明確に出来た違いの持つ意味が薄れる。それと伴に自己と他の差も鞣されるようにして小さくなり、終には渾然となる。その混沌に身を置くことに対する抵抗感は徐々に小さくなる。大胆な仮想の物語のようでありながら、この小説に現実的な肌触りを感じるのは、きっとそんなことを自分自身も感じて生きているからなのだろう。
川上弘美の熟年は次に何を産むのか、そのことをぼんやりと思う。
投稿元:
レビューを見る
不思議な小説だった。
陵、みやこ、奈穂子、セブンナッ、時計が鳴ってる開かずの部屋、近親相姦にもとられる設定。
不思議な小説だった。