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紙の本
ディーヴァーの原点か?
2000/10/15 13:42
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エンドルフィン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジェフリー・ディーヴァーの作品は『ボーン・コレクター』が当たっていらい、過去のハードカバーが矢継ぎ早に文庫化されている。たいへん結構なことだ。この『監禁』は日本では1998年の出版されたものだが、のちの『静寂の叫び』や『ボーン・コレクター』の原型がすでにここにある。
元検事のテイト・コリアは別れた妻と娘の三人で昼食をとる約束をしていた。ところが、その約束に娘のミーガン・マコール(マコールは妻の姓)が姿を見せない。父母への激しい憎悪をつづった書き置きが発見されたことから、警察は単なる家出だと判断する。しかし状況に不審な点を感じたテイトは元妻と一緒に捜索を開始する。警察の公式の協力が得られぬまま、ミーガンが付き合っていた画家志望の青年や、中年教師、テイトの旧友の刑事コニーの助けを受けて、彼女の足取りを追う。
その頃、ミーガンはアーロン・マシューズという男によって古びた教会に監禁されていた。彼女の足取りを追うちに、その教会の存在が浮かび上がってくるが、探索に協力する人たちもマシューズの悪辣な企みの前に一人一人、犠牲となっていく。しかしマシューズの目的はいったい何か? やがてそれも判明するが、ミーガン救出のタイムリミットは迫っていた…。
ディーヴァーの小説では奸知にたけた犯人が多く登場するのだが、中でもこのアーロン・マシューズはその邪悪さにかけて図抜けている。セラピストという仮面をかぶって、言葉によって他人の心を操るのだ。彼は被害者の耳許でささやく。
>「アリストテレスの言葉を知っているか? 腕力で身を守れても、言葉で守れないのは悲しいことだと言っている。言葉を操り、説得する能力こそが、人間の生まれ持った、より崇高な本質なのだ」
その言やよし。しかし、その能力を卑劣な企みにつかうアーロン・マシューズ。かたや、学生時代から数々の弁論大会で優勝し、検事となってからも多くの有罪を勝ち取ったテイト・コリア。となれば、最後は彼らの言葉の対決とならなければならないが、そこはジェフリー・ディーヴァーのこと、抜かりはない。
巧みな展開で読者を楽しませるミステリ部分だけでなく、テイト・コリアと多感な年頃の娘や、別れた妻との関係などもしっかり描かれており、全体のバランスは『ボーン・コレクター』よりも上と見た。
なお、海外ミステリに関心のある方は、小生のホームページThe day of wine and mysteryを一度のぞいてみてください。
紙の本
少女を誘拐監禁した犯人を追う両親
2002/05/27 23:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くろねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
セラピストを装って、ミーガンを誘拐・監禁したアーロン。
それも、何から何まで計画的に。
そして、行方不明になったミーガンを探す人たちの前に、善意の人間として現れ、
恐ろしい罠を仕掛ける。
彼が、幸せな少年時代を過ごしたとは言い難いことは分かります。
でも、だからと言って、なぜ、ミーガンを?
狂信者。
でも、狂信者にも、狂信者の論理がある以上、理由があってミーガンを選んだはず。
アーロンが恐ろしいのは、相手の弱いところを巧みに突き、自分に都合のいい
行動をさせる術を持っていること。
狂信者。
だけれども、その頭脳の働きは、常人をはるかに超えているように見えます。
だからこそ、恐ろしい。
わけも分からないまま捕らわれの身になったミーガン。
アーロンのアジトである頑丈な建物の中に、監禁されます。
絶望。
どうやっても、逃げ出せそうにない。
なのに、ミーガンは、そこから、立ち直るのです。
自らを「クレイジー・ミーガン」なんて称してはいますが、なんて強い。
その精神力は、賞賛に値します。
たとえ、万に1つの可能性でもあきらめない。
勇気を出して、状況を読み、行動を起こす。
最後の瞬間まであきらめないでいることは、きっと、思っている以上に難しいはず。
ミーガンを求める人々は、アーロンの正体に疑問を抱いた瞬間に、彼の罠に
はまっていきます。
そう、みんな。
そんな中、ミーガンの両親、ティトと、ベットが、力を合わせて娘を探すうちに、
なくしていた心の触れ合いを、ゆっくり、ゆっくり取り戻して行く様子は、
殺伐とした物語の中のささやかなオアシスのようにも見えました。
やがて、アーロンの過去、隠された動機が明らかになっていく展開は、
驚きの連続でした。
その伏線の張り方にも。