紙の本
飛田新地を真面目に取材した本
2016/06/17 17:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
御堂筋線「動物園前」駅のごく近くに存在する飛田新地について著者がその関係者からの聞き取りをメインに綴ったノンフィクション。
ネットの書評ではかなり酷評されているケースが目につきますが、私はそれほど嫌な印象は受けませんでした。そもそも正式な広報窓口があるわけでもなく、そこで営まれている活動が法律に抵触するかどうか際どいたぐいである事を考えれば、一人のフリーのライターさんがここまで情報を聞き出して一冊の本に仕上げたというだけでも称賛ものではないかと思います。
読む前は本書が扱う題材が題材だけに暗く、重い雰囲気の本かと思いました。しかし、著者の突撃ルポ的な部分も多く、次々とアイデアを出して取材を進める様子には「そこまでするか」と感心させられますし、そこに登場する関係者の方が話す言葉が当然のことながらコテコテの大阪弁であることがちょっと明るい目のバイアスになって、読むのが辛くならない一面もあったように感じます。
決して「風俗店の裏側の暴露本」といったような薄っぺらい内容ではなくて、真面目にそこで生きている人達の人間模様を描いている本だと感じます。
紙の本
うわべだけではない作品
2015/02/19 14:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dobon - この投稿者のレビュー一覧を見る
私たちの目に触れることのない「飛田」を時間をかけて丁寧に取材した跡がわかります。
世間一般の偏見に偏らず、できるだけ忠実にシンプルに取材しているところに好感を持ちます。
興味のある人も、そうでない人にも必読の一冊だと思います。
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2000年から2011年にわたる取材によるルポルタージュ。
飛田の経営者、働く女たち、お客、警察などに取材したきわめて真面目な記録。
女性であるが故、大変な取材だったと思う。
ただ出版までが長すぎた。
飛田の様子は動画、写真がネットで見られるようになり、体験談も多数。元経営者の本も出版され (杉坂圭介「飛田で生きる」「飛田の子」)、しかもこれが面白い。
新鮮味がなくなってしまった。
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怖いもの見たさで行ってみたいと思ったけど、あくまでも自分は傍観者でいられると信じているからだと思う。でもここに書かれた景色はどこまで残っているんだろう。
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私が知っている飛田情報と言えば、ノーピクチャー、ちょんの間、というだけ。実際行ったこともないし、すすきのや歌舞伎町なんかと違って女が普通に歩いているという場所じゃないらしいし。すすきののちょんの間はたぶん15年以上前に、黄金町のは10年ぐらい前に一掃されたし、もう本当に飛田だけなのかなあ。
章の表紙に使われていた一枚の写真が九份まんまで驚いた。本当にそういう感じなんだーと。単純に写真目当てで行きたい。今は昔と違ってわりかし客層も若く、外国人も普通に歩いていて写真とか撮っている人もいるらしい。あとアベノハルカスから見た飛田の写真がよかったなあ。あれがほとんどすべてと言ってもいいぐらいの外からの飛田じゃないだろうか。
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『色々試してみたら“飛田の人びと”と知り合うことができました』というタイトルに変えた方がよいのでは。
書店で『なぜ木村政彦は〜』と並び平積みされていた本書。
“飛田のことを詳しく知りたい”“アンダーグラウンドな世界にどっぷり浸りたい”といった好奇心に応えるものではなかった。
“古くからの売春市場”として広く認知されながらもある種ベールをまとったこの街に対して、あくまでエロを忌避して見ようとする作者の態度が、結果として“対象”を見失っている。
そのアプローチは、まさに袖擦れ合う程度のエピソードにしか辿り着けず、中学生が書くエロ小説のように、新住民が書く村史のように、浅はか。
目当てのものに手が届かずに、結局“街の風景”をいくつか取り上げて“フツーの街”に仕立て上げる。本末転倒ではないか。
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感想はブログでどうぞ
http://takotakora.at.webry.info/201506/article_3.html
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読み応えがあって面白かった。
「飛田」という街の存在は知っていたし、友人の行ったことがあるという話も聞いたことはあったけど、ここまで特殊な世界だとは…
こういう全く知らなかった世界のことを知るのは刺激的。
それにしてもアンタッチャブルな世界のことを本として出版にまでこぎつけて、さらに文庫本にまでしてしまったというのが驚き。心配になる。そのおかげでこうして読めたわけだけれども…
インターネット全盛の現代だからこそ、実現できたのかなぁ。
今の時代、アンタッチャブルな世界だとしても隠し続けるというのは無理なのかもなぁ。
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何だか想像していたのと違う感じのルポだった。飛田だけを追っていたわけじゃないだろうけど、足かけ10年以上の取材で関係をつくり果敢に飛び込んで色街だけじゃない飛田の姿が記されている。
色街でない飛田とは、いろんな意味での貧困や障害を抱えた人たちが生きている街だという一面。女の子からおばちゃんになった人が「満足度0%」と話したり、店をもつママさんが「楽しかったことなんてない」と言ったり、そんな人たちがいることをどこかでわかっていながら、ここで満足しながら働いている人も、割り切って働いている人もいると思いたい、そういう文章を読みたいと思いながら、結局そんな話はまったくなかった。飛田のみんなで底なしの井の中の蛙のように生きているイメージ。そこがやっぱり10年通ったからこそだろう。考えずに、あるいは考えながら飛び込んでいって、後で何となくわかってきたといった感じの書きぶりで、著者が飛田を知る過程につき合いながら素人目線で飛田のいろんな面を見ていける。お上手にまとまったルポより正直で素直……っぽい感じがする。
とはいえ、文庫版あとがきでは取材時、執筆時とはだいぶ変わった飛田の姿が少しだけ紹介されている。少しだけなのにだいぶ変わっている様子。飛田も変わっていないようで変わっているのだなと思った。著者が通ってた10年より、上梓前後から文庫化までの数年のほうがドラスチックに変わった感じ。いろんな意味で飛田って予想や想像が追っつかない街に思える。
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「吉原で生きる」が面白かったので、西の色街についても知りたくなり本書を図書館で借りました。
本書はフリーライターの井上理津子さんが2000年から2011年までの間に経営者、働く女性たち、客、警察、ヤクザへのインタビューを通して、飛田という人間の性むき出しの街を活写したルポルタージュの力作です。
飛田新地は概ね400メートル四方。その中に160軒ほどの「料亭」が並びます。料亭には女優のようにきれいなホステスが上がりこまちに座っていて、曳き手おばさんが「兄ちゃん遊んでいってや」と呼び込み。
「この『遊び』とは料亭の中でホステスさんとお茶やビールを飲むこと。お客が案内される部屋はホステスさんの個室。その中で偶然にもホステスさんとお客が『恋愛』に陥る。恋愛は個人の自由。恋愛がセックスに発展することもあるが、それは決して売春ではない。だから、支払う料金も」「ビールやジュースや菓子の料金である」
この偶発的な恋愛はソープランドの屁理屈と大差ありませんが、料金体系はだいぶ違うようです。値段は20分15,000円、30分20,000円。女性の取り分は50%、経営者が40%、遣手婆さんが10%とのことです。
本書が描くのは①飛田の歴史②経営者の生態③女性のそれぞれの事情④売春防止法への対応⑤飛田町内会の活動。
色街だけあって取材対象が非常に閉鎖的。著者は飛田に何回も通い、経営者と仲良くなったり、抱き付きスリのような危ない目に遭ったり、取材希望の貼り紙を出したり、ホステスの採用試験を友人に受けさせたりと肉弾的取材を試みます。会話の殆どは大阪弁であり、非常にどぎついルポルタージュになっています。
飛田で働く多くの女性は借金持ち。人気のあるホステスは、なるべく長く店に縛り付けておきたいと思うのが経営者。まゆ美ママという経営者は「この借金が終わるまでに、宝石、ブランドの服などを買わせ、海外旅行をさせ、夢と希望を持たせ、この店にいるからこそ自分があると思うように洗脳していく。借金が減っていくとホスト遊びを覚えさせる。それも安いホストクラブではなく座るだけで3万、4万の高級店。お気に入りのホストを指名し、ボトルを入れ、一晩で何十万ものお金を使わせて」借金がなかなか減らないように工夫したようです。怖い話です。
また、「料亭」の経営者は夫婦であることが多く、中の切り盛りをしている奥さんは
「心労、過労が激しく、飛田の奥さんのほとんど早死しやんねん。だいたい奥さんが先に逝く。その後旦那さんはだいたい店の女の子と再婚する」。
結局、飛田という街はホステスであれ、経営者であれ、女性が苦労する街であることは間違いないようです。
ルポルタージュのお手本のような本で、面白くは読めましたが、少なくとも飛田に行ってみたいと思わせる本ではありません。飛田で働く人間の醜さみたいなものを垣間見たような気がしました。
他の飛田に関する本は読んだことがないので、何とも言えませんが、この本の資料的価値は高いと思います。興味あれば、お読みください。ただ、結局のところ、この世で一番大切なのはお金です。
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一人の女性ルポライターの、大きなタブーに取り組む愚直なまでの一途な姿勢に、どんなに困難に思える仕事でも、コツコツ粘っていけば成果に繋がるよ!と、勇気づけられる一冊。
もう15年以上前のことだけど、ある仕事で同僚とあの町に足を踏み入れたことがある。ほかの女性も同様だと思うけど、今の時代の日本にこんな街があったのかと、ただショックを受けた。
もちろん著者のように、あの街並みをひとりで歩き取材をすすめる勇気なんて、私にはどこをさがしても無い。
私的には、女性著者のルポものとしては、家田荘子さんの『私を抱いてそしてキスして』と、がが~んと双璧になりました。
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他にこういう風俗系のノンフィクションって読んだこと無いので飛田以外の風俗街の人々についてはよく判らないのだが、元の認可地。赤線地帯で、往時の気配を濃厚に残す「アンタッチャブルの街」飛田を10年に渡って取材して著した労作。
エピローグ間近のエピソードと、単行本発行後を記した文庫版あとがきにある加速度的な街の変わり様がすごい。
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大変読み応えのある、いいルポだった。ネットでササッと検索しただけだと、当たり障りのない通り一遍なことしか出てこない「飛田」という街のこと。中の人らは彼らにとって良くないことが書いてあることに不満でしょうが、やはり外の人が知りたいのはその負の部分でもあったりして。出来るだけ中立(読み方によってはやっぱ外側かな?)にバランス良くエピソードが書かれてました。最初の取材から12年、文庫あとがきで更に2年経過しており「なんも変わっていない」(ように見える)中も、色んな店の閉店、新しいビルの建築、働いてる女の子達のタイプ、お話を聞いてた人の死など何かしら変化が…。実際に足を運びたくても運べない、運んではいけない場所だけに、この本で飛田を垣間見れてとても良かった。あたしの気持ちが落ち着いた。一生の本にします。
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数年前、わたくしの仲間数人が何を考へたか「飛田ツアー」を企画いたしました。わたくしも勧誘されましたが、清廉潔白にして公明正大な自分としては、やんわりお断りしました。といふのは嘘で、単に予定が塞がつてゐたからなんですが。
しかし好奇心も強く、やはり行けば良かつたか喃とも思想しました。そんな訳でもありませんが、せめてこんな本を読んでみやうかと。
実は発売当時から話題になつてゐたので、その存在は知つてゐました。文庫化の際に購入もしました。しかし評判がイマイチで、上から目線だとか、取材が雑だとか、構成力がないとか、そもそも執筆趣旨が不明だとかで、何となく今日まで放擲してゐたのであります。
第一章の「飛田へ行きましたか」で、飛田で遊んだことのある男性にインタヴューしてゐます。その動機や「中」の様子、女の子の特徴、行つた感想など。インタヴュアーが女性だからか、中中取材に応じる人がゐないやうです。
第二章「飛田を歩く」で現在の飛田の概観を井上節で綴ります。しかし「中」の人たちは質問しても口が重い。といふか、完全なる拒否であります。この町のことはヨソモンがなぶつてくるな、何も話すことはないぞ。そんな時に出会つた飛田のヌシ、「原田さん」と出合ふ幸運に恵まれます。
「飛田新地料理組合」にも取材を申し込みますが、完全に拒否モード。粘り強く交渉するうちに相手も少し軟化してきて、何とか話を聞けるまでになりました。
第三章は「飛田のはじまり」。飛田の立ち上がりから現在に至る歴史であります。「あいりん地区」の命名が、警察側によるものだとは知りませんでした。
第四章「住めば天国、出たら地獄」では、飛田のシステムといふかメカニズムについて述べます。女の子はどんな境遇の子が多く、どんな経緯で飛田へ来て、どんな人々が支配してゐるのか。彼女らは大概借金を抱へてやつて来ます。貧困の負のサイクルを断ち切らないと、人身売買だの売買春はいかんとか叫んでも詮無いものです。搾取する側は、寧ろ女の子たちを救つてやつてゐると嘯くのです。
第五章は「飛田に生きる」。実際に著者が求人に応募して、どんな感じか探るのが面白い。かういふ世界で、暴力団が関与してゐない筈はないと調べるが、飛田の組合は全力で文字通り暴力団を排除してゐたさうです。しかも警察とさへタッグを組んでゐるフシがあります。うーむ。
第六章は「飛田で働く人たち」。友達付き合ひになつた「原田さん」が、突然飛田から去つてゐたといふ事に、著者は衝撃を受けます。「まゆ美ママ」の哲学はとてもついていけないが、飛田で生きる上での処世術なのでせう。我々の善悪の尺度は通用しません。
著者はかかる世界を、戸惑ひながらも否定はしません。無論人権上の問題などに目を瞑る訳ではないが、表面上の事象のみを見てあれこれ論評するのは無意味であるからでせう。
レヴューの中には、著者は心の底では飛田を馬鹿にしてゐるので、愛情が感じられぬといふのがありましたが、わたくしは十分に「愛」を感じました。単にこの人は極端な天然なのだらうと思ひます。
また、取材時に嘘を言つて話を聞く���が怪しからんとの声も聞きますが、何が問題なのかと思ひます。目的を果す為には、誰だつて様々な手段を講じるだらうに。その昔鎌田慧さんが『自動車絶望工場』を発表した時、工場の内実を探る為に自ら期間工に応募し働いて、その体験を書いた事に批判があつたのを思ひ出しました。
個人的には、飛田の雰囲気を伝へてくれる良い一冊だと感じましたよ。
デハ御機嫌やう。
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正直、助平心もあって手に取った本。でも女性作家によるものだから、当然視線は自分とは違う。より第三者的見方が出来るというか、働く女性よりも街そのものに対する関心が前面に出てるというか。そこに生きる人たちを通してかの街の栄枯盛衰が綴られ、そのさまがよりリアルに見えてくる。