イスラム・ヘイトか、風刺か Ａｒｅ ｙｏｕ ＣＨＡＲＬＩＥ？ 「すべては許されている」のか？

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　フランスのイラスト週刊紙「シャルリー・エブド」あるいは週刊シャルリーのイスラム過激派による襲撃事件はまず「イスラム過激派」対「表現の自由」というキーワードで語られた。そして「表現の自由」の主張に疑問符をつける形で「ヘイト表現」という問題が浮上してきた。ムハンマドの画像表現を禁ずるイスラムの教えに反して、それを画像化し、あまつさえ、そのムハンマドに屈辱的な所作をとらせるマンガを果たして「表現の自由」であると擁護していいのか。
　他方、わが国では週刊シャルリーの風刺マンガの掲載をマスコミが自粛したことが批判された。これに対してはイスラム教徒が嫌がるものを敢えて掲載しなくてもいいのではないかという意見もあった。
　しかしいったい週刊シャルリーの「風刺画」がどのようなものか知らないことには議論のしようがないではないかという発想から編まれたのがこのブックレットである。

　ところがどっこい、こうしたブックレットを出版するということに対して日本国内のイスラム教団体からクレームがついた。それで今度は書店が陳列を自粛した。イスラム教団体からクレームがつくとイスラム過激派から襲撃されるとでも思ったのだろうか。件の「風刺画」はネットでなんぼでも見られるのに、何かおかしなことになっている。
　これは買ってやらずばなるまい。

　内容的には週刊シャルリーの「風刺画」はイスラム・ヘイトだというのが編集の基調である。ムハンマドと思われるマンガには顔の部分にモザイクをかけている。表現に関わる10人の人々が短いエッセイを寄せているが、概ねそういう意見。シャルリーの「風刺画」は品がよくない。矛先は確かにムハンマドばかりでなく、イエスやローマ教皇、あるいは大統領にも向かっており、イスラムばかりを攻撃しているわけではない。しかし同時に外国人や原発事故の福島にもえげつない笑いを向けているのである。
　エッセイのなかでは風刺マンガ家の「タブーがあればそれに挑戦したいのが風刺マンガ家の本能というもの」「風刺に危険はつきもの」という述懐が問題提起的であった。そもそも「表現の自由」は権力に刃向かうためのものだったはずで、神や聖職者は力あるもののはず。もちろん冒涜したって神が直接鉄槌を下したのは旧約聖書時代の話で、実際は宗教権力が怒るわけである。そこに風刺を向けるのはありだと思う。日本だったらまずオウム真理教が念頭に上がるし、天皇制を含む神道への冒涜はいまでも危険を伴うであろう。神を含む力あるものを冒涜する自由のある社会、少なくともそれで殺されてしまうようなことがない世の中であって欲しいという意味で「表現の自由」は大切だ。
　ただ現代のフランスにおいてムハンマドをからかうのが権力に抗することになっているのかというとどうなのだろうか。原発事故で手足の増えたガリガリの関取が相撲をとっている「風刺」画によって日本に向けられているものが何か、それはわれわれにも容易に感じ取れることではないか。
　他方、自粛・萎縮が表現を殺すのであり、何かを多少は犠牲にして何かを取るしかないのではないだろうか。