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商品説明
ナチス主要戦犯を裁いたニュルンベルク裁判とその後の継続裁判とをあわせ、実態を描き出すとともに、第一次大戦後のライプツィヒ戦犯裁判から戦後ドイツにおける受容のあり方までを辿り、未曾有の戦犯裁判の全体像に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
芝 健介
- 略歴
- 〈芝健介〉1947年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程(国際関係論)修了。東京女子大学現代教養学部教授。ヨーロッパ近現代史(ドイツ現代史)。著書に「ヒトラーのニュルンベルク」など。
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紙の本
どこで線引きをして裁くか
2023/07/06 06:50
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
仮にも「戦犯裁判」なので1939年9月1日以前の第三帝国を裁く権利は連合国にはない。ソ連は1941年6月22日以前はドイツの同盟国だったではないか。ヒトラー政権の犯罪を裁くには、どこの時点を起点にするのか、あるいはこの本でも触れているように戦略爆撃は裁いている連合国側もドイツの都市を廃墟にしているので「空軍の戦争犯罪」として裁かない(裁けない)のか、を線引きして論じるべきだった。マーザーの本は独ソ不可侵条約とカチンの森を取り上げてソ連の共犯性を弁護側が論じた事を書いているが、独英海軍協定のような再軍備宣言の容認に代表される対独融和政策やオーストリア併合の容認、ミュンヒェン協定とチェコスロヴァキア解体の容認といった誤った政策があったからこそヒトラーの戦争があったのではないか。
ザイス-インクヴァルトのようなオーストリア人の立ち位置が書かれていないのが気になる。そもそもヒトラーがオーストリア出身だ。また戦後、オーストリアはクルト・ヴァルトハイムの「過去」の暴露まで「ドイツの最初の被害者」と見做したという。それで「サウンド・オブ・ミュージック」のような「オーストリアはドイツの被害者」という偽善的な作品が流布されたわけだ。
またDDRの「褐色の過去」の対応がドイツ連邦共和国より「厳しい」とあるが、ヴィンツェンツ・ミュラー将軍のような「騎士十字章に輝く英雄」やアルノー・フォン・レンスキー将軍のようなフライスラーの国民裁判所の陪席判事だった人物が高い地位に就いていた。ソ連が「特別収容所」として「活用」したザクセンハウゼンに勤務した元SS隊員がSED中央委員で元武装SS隊員が閣僚だったではないか。DDRは「ボンの傀儡政権」を批判する道具として脛に傷持つ人物を批判する一方、自分は「ヒトラーと戦っていたので「褐色の過去」とは関係ない」と主張していた。
「褐色の過去」は再統一前のドイツ連邦共和国のみが追うべき過去なのか?
仮にも「ニュルンベルク裁判」という題名の本なのにデーニッツ提督が「ドイツ海軍ではじめての元帥」はないではないか?
ソ連での戦犯裁判で刑法第58条の「「犯罪武装集団」が参照され」たとあるが、本来は帝政時代のオフラーナや国内戦当時の「反革命」諸政府での勤務を対象にした項目を外国の組織に勤務した外国人に適用したのは無理があるのではないか。もっとも日本の特務機関に勤務した「前職者」は、それだけで「戦犯」と裁いたのでおかしくないのだろうが。
ハンガリーの項目は唖然とする内容だ。スコルツェニーがホルティ提督を打倒した時に矢十字党の国民統一政府を樹立したが、イタリア社会共和国と違って「王位なき王制」は廃止しなかったので「元大統領ラスロ・バルドシー」なる正体不明の人物が死刑執行の「代表格」というのは、どこから持ってきたネタなのか?ホルティ提督は「ソ連軍の追及をおそれ西独に逃れた」ではなく、摂政(「国家指導者」ではない)からの退任時にドイツに「賓客」として連行された。