紙の本
真の制度改革
2017/01/29 17:40
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
多数決社会の仕組みについて本当にわかりやすく段階を踏んで解説してくれている良書。専門的な計算も具体的事例で素人にも理解が進む。この本が広く読まれ社会の在り方を考える人が増えてほしい。
紙の本
常識を疑う大切さ
2015/11/21 16:13
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投稿者:紀伊国屋梵天丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
当然のこととして日頃使っている多数決という意見集約の方法がこんなにも問題を含んでいるとは!改めて常識を疑い、根本の仕組みを理解することの大切さを学ばせて貰った。また、スコアリングルールにも深い検討の裏づけがあったとは!本書は人間社会における意見集約に関してその課題を易しく解説してくれているが、理系の私にとっては情報システム等、工学的な仕組みへの応用も、もっと考えられると感じさせてくれた一冊だった。
紙の本
多数決には欠陥あり
2016/03/28 14:16
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投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「多数決」には漠とした疑いがあった。しかし、民主制でのリスクの一つに過ぎないのだろうと深く考えてみることもなかった。考えるにしても問題を設定する知識さえなかった。この本によって「多数決」は多くの欠陥を抱えるシステムであることが分かる。本は後半で、民主制のあり方という必然的だが、大きすぎるテーマに入っていく。そこでおぼつかなくなる。前半のテーマのみに絞った方がよかったかも。
紙の本
様々な集約ルール
2019/05/10 17:04
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投稿者:kaz_p206 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「選挙結果はどの集約ルールを使うかで大きく変わりうる」→誰でも1度権力を握れば自分たちに都合がいいルールを選択できる。とりあえず自分たちにできるのは、「熟議的理性」を働かせた投票をすること。
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“民意”というのがいかにあてにならないものか
2018/05/28 23:24
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
『多数決を疑う』(坂井豊貴 岩波新書)を読むと、民主主義もなかなか難しいなあと思います。
現行の議会制度や選挙制度の中の“民意”というのがいかにあてにならないものか、というのがよくわかりました。なにかというとすぐ「民意」「民意」という人たちは、アヤシイ。
やっぱり、小学生のうちから、なんでもすぐに多数決! ではあかんというのを理解しておかないといけませんね。
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経済学の「社会的選択理論」に関する入門書だが、やや難解。必要以上に易しく説明しようとして余計わかりにくくなっている部分がなくはないか?(私の頭が悪いだけかもしれないが)とくに第1章、第2章はとっつきにくかった。第3章以降は割にすんなりと読めた。
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難しい理論も簡単なモデル化を行ってわかりやすく説明している。
憲法改正でまずやらなければならないのが、改憲手続きである第96条であるというのはパラドクスにも感じる。
新書をオモシロイと思ったのは久々かも。
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せっかく単純な多数決より工夫した投票のやりかたを紹介してるのだから、そのボルダルールや不可能性定理の数理的特徴、実施にあたり想定される実務的課題について、もっと詳しい解説が欲しかった。
一般向けに短く入門書としてまとめるにはこれが限界?いえいえ、もっと厚い本にしても良かったのでは。メインである理論の部分に食いつき足りない印象が残ってしまった。
人民主権のあたりは知ってることばかりだった(民主主義について考えてる人なら、ルソーの社会契約論の翻訳くらい読んだことあるでしょ)。著者の政治的立場を匂わせるより、理論の説明に紙幅を割いてほしかった。
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聞き慣れない定理も多いが、短い文の中で最大限理解できるよう配慮されている。
こういう分野もあるんだ・・・と思った。
著者の「善意」が底流するので、気持ち良く読んだ。
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星蘭祭のクラスの出し物を何にするか、委員会や部活動の代表者を誰にするか、皆で観に行く映画はどれにするか等々、複数の人がいるグループで、いくつかの選択肢の中からひとつを選ぶ場面は日常にたくさんある。そんな時、どんな方法で決めているかと問えば、多くの人は「多数決」と答えるだろう。日本の国政選挙、地方選挙もひとり一票を投じる「多数決」だ。「多数決」は、いかにも常に多数派の意見を尊重する公平で民主的な方法のように思えるが、本当にそうなのだろうか。
共和党のジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアが戦った2000年のアメリカ大統領選挙では、優勢だったゴアが、政策が近い市民運動家ラルフ・ネーダーの立候補により票割れを起こし、漁夫の利を得たブッシュが当選した。しかしこれではブッシュの勝利は、多数派の意見が尊重された結果とは言えない。これは「多数決」というシステムに問題があるのだ。著者は、「多数決という意思集約方式は日本を含む多くの国の選挙で使われているが、それは慣習のようなもので、他の方式と比べて優れているから採用されたわけではない。民主制のもとで選挙が果たす重要性を考えれば、多数決を安易に採用するのは、思考停止というより、もはや文化的奇習の一種だ」と言い切る。それでは、多数の意見を尊重する選挙の方法はあるのだろうか。
集団の意思決定のあり方を理論的に考えるのが、著者が研究する社会的選択理論だ。より正確に民意を反映する方法の研究は200年以上前から行われており、様々な集約ルールが検討されてきた。そのひとつのボルダルールは、自分の意に沿う順に1位に3点、2位に2点、3位に1点という点数を付けて投票し、その合計点で当選を決めるものであり、票割れ問題を解決する。本書では、ボルダルールなどのスコアリングルール、統計的手法を用いるコンドルセ・ヤングの最尤(さいゆう)法、決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルールなど多くの方法が紹介されている。そしてそれぞれの頑健性と脆弱性について具体例を挙げた説明があり、大変興味深い。どれもある意味では理に適っているように思えるが、同じ投票内容でもどの集約ルールを使うかによって結果が全て異なる例もある。集約ルールによって変わるのでは、選挙結果が民意を反映しているとは言い難い。
著者は多数決の結果が必ずしも民意を反映するものではないことを示し、様々な集約ルールや社会的メカニズムを考察して、現状の社会制度は大きな問題を抱えるものだと教えている。「社会制度は天や自然から与えられるものではなく、人間が作るものだ」との著者の言葉に納得したら、因習や固定観念に囚われることなく、日本の社会制度についてもどんな問題があるのか、どうすればより良い社会になるのかなどを自分の頭で考えてみて欲しい。18歳から選挙権が与えられることになった現在、皆さんはこの問題に関しては、もう当事者なのだ。
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読了日:2017/10/21
・多数決の問題点は票割れが起こること
・二択では票割れが起きないため多数決でよい
・一位が3点、二位が2点、三位が1点、などといった方法の方が票割れが起こらず分かりやすくて良い(ボルダルール)
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多数決の中身がわかる非常に面白い一冊であった。
また、本書と長谷部恭男『憲法とは何か』、加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』が参考文献により繋がっていることも興味深い。
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社会選択理論の入門書.みんなでなにかを決める必要があるときどうすればよいのか?特にいくつかの案のなかで一つ選ばないと行けない場合について考察する.
このような問題を扱った研究はコンドルセに始まる.コンドルセは,各個人がもつ選好順位から点数をつけるボルタルールを批判し,彼の提案は後にコンドルセ・ヤングの最尤法へと繋がった.本書ではそれ以外の選択ルールも比較して今日あたりまえのように使われる多数決の問題点を浮き彫りにする.
またルソーの思想についての記述もあり,「主権」とは何かやルソーが代表民主主義を批判してることなど知らんかったことが多く読み応えがあった.
各案を数値化して直線上に並べることができる場合は中位ルールが機能することやアローの不可能性定理についても興味深かった.また現実問題への応用にも目を向けている.
最後のほうではマーケットデザインに関して触れている.これは適切な市場をセッティングしてみんなの意見を集約する仕組みのことである.
最近の新書にしては内容が濃くたいへんお買得である.
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一番記憶に留めておく必要があるのは、「そもそも多数決は、人間が判断を間違わなくとも、暴走しなくとも、サイクルという構造的難点を抱えており、その解消には三分の二に近い値の64%が必要なのだ。そしてまた小選挙区制のもとでは、半数にも満たない有権者が、衆参両院に三分の二以上の議員を送り込むことさえできる。つまり第九六条は見かけより遥かに弱く、より改憲しにくくなるよう改憲すべきなのだ。具体的には、国民投票における改憲可決ラインを、現行の過半数ではなく、64%程度まで高めるのがよい。」ということです。
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新聞書評で見かけて興味を引かれて買った本でしたが、期待以上におもしろかったです。
単純多数決は、特に選択肢が3以上になると「死に票」が多くなるので必ずしも全体の意見を適切に代表しないということは何となく意識していましたが、それが「社会的選択理論」として定式化されているというのは恥ずかしながら知りませんでした。しかも、より優れた意見集約の方法として、投票者にすべての選択肢に順位をつけさせ、それに等差の点数をつけて集計することで総合順位を決める「ボルダールール」や、あるいはその個々の票の順位を統計データのサンプルとみなして、それらと総合順位との差を最小化するように総合順位を決定する「コンドルセ・ヤングの最尤法」が最も優れた集約法だということが、数学的に結論づけられているというのは、結構驚きの事実でした。
これまでは、選挙や住民投票のように投票者の数が多い場合には実務的にそのような集計を行うことが難しかったのでしょうが、これだけITが発達した現在、もっとこういう「合理的」な投票方法が取り入れられてもいいのではないかと強く感じさせられました。
最終章で展開されていた、住民の直接投票による政策決定手法は、代議制民主主義を否定するものではなく補完するものではないかという作者の主張にも共感を覚えます。マイナンバーが導入されれば、本人確認が容易で確実になるのですから、もっとITを活用した住民投票が広まって欲しいものです。