紙の本
今の時代に必要な経済学者
2015/08/08 08:17
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投稿者:タイフー - この投稿者のレビュー一覧を見る
物質経済とお金のとりこになった現代経済ではなく、本来あるべき経済社会を意識し続けた本物の経済学者というものを著者に感じた。経済学の真の魅力、面白さを伝えてくれている本だと思う。改めて経済学を勉強してみたくなった。
紙の本
内外の多数の研究者に刺激を与えてきた岩井氏の来し方行く末
2016/03/24 13:53
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般的な異時点間効用関数を用いた経済成長モデルの最適経路の振る舞いを明らかにし、また、ミクロ経済学的な基礎に基づくマクロ的不均衡動学理論を体系化。さらに、進化論的なシュムペーター動学理論や、サーチ理論的基礎に基づく「貨幣論」を提示。最近では、株式会社とは、法律上のヒトとして会社資産を所有し、法律上のモノとして株主に所有されるという、二階建ての所有構造から成ることを中核とする「会社論」を提示し、さらに、法人としての会社とその経営者との関係を典型例として含む、信任関係の統一理論を、「信任論」として定式化。こうした岩井氏の頭の中を本書が示している。
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ポスト産業資本主義の行き末は
2016/01/23 21:15
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投稿者:木工や - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が説明する資本主義の進化は分かりやすいい。現状のポスト産業資本主義の特徴として挙げている企業のイノベーションによる新技術や新製品による差異の創造は、市場に混迷をも与えてきていると思われる。「差異」と称して投入される商品は
消費者に選択肢を多く与えて選択を難しくしている側面もあるからだ。
もちろん圧倒的な差異であればこのようなことは起きないのだが。
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久々にすごい本を読みました。出版社からの紹介文に「経済を考え抜いた格闘の軌跡」と書かれていますが、正にその通りです。岩井先生の著書はかなり読んでいますし、講演会にもできるだけ出席しているのですが、この本に全てのエッセンスがまとめられていて、断片的に頭に入っていたことが頭の中で全て繋がりました。しかも、岩井先生の自伝がそのまま内外の現代経済学の軌跡になっていて、そうした意味でも経済学の歴史が臨場感をもって理解できます。
岩井先生のすごいところは、今の主流になっている新古典派経済学をきっちりと批判し、更にそれを止揚する不均衡動学という大きな体系を築いていることです。主流派経済学への批判は、往々にして「反市場原理主義」「反グローバリズム」的な感情的なものになりがちですし、急に宗教や思想がかった議論に流れてしまいがちですが、そういったところは全くありません。逆に、ある意味でそうした感情的に反発したり、主流派に迎合したりという政治的なスタンスがないがために、自身で言われているように、「学問をする人間としては幸せでしたが、学者としては成功したと思っていない」ということになるのだと思います。もっと上手く立ち回っていたら、きっと日本人初のノーベル経済学賞を受賞していたのではないかと思います(これからでもまだ分かりませんが・・・)。エール大学助教授から東大助教授で日本に戻らざるを得なかった時のガッカリした感じなど、大変エピソードとして面白いのですが、きっと岩井先生以外の人がこんなことを書いたら、東大の関係者に激怒されるのだろうなと思います。この本の難点はひとつだけで、『経済学の宇宙』というタイトルです。何で『宇宙』なのかがサッパリ分かりませんし、もっと正面から、『岩井克人の経済学』とか『岩井克人の思想』とかで良かったのではないかと思います。
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MITの院生1年目にメジャー・ジャーナルに論文を載せ、サムエルソンとソローの助手を務め、学者人生の「頂点」を極めていた岩井先生が、3年目にケインズ『一般理論』に覚醒、以降、一貫して反主流派(独創)の道を歩むことになる半生を綴った「私の履歴書」であり、「不均衡動学」「シュンペーター経済動学」「資本主義論」「貨幣論」「法人論」「言語・法・貨幣論」の生成過程を辿ることのできる「『岩井克人思想史』決定版」。
通説を論理的に突き詰め矛盾を見つけ、逆説的な結果を導き出す、という岩井流思考が堪能できる。
私は、本書でFiduciary Dutyの意味を初めて知った。
ピケティについては、『21世紀の資本』の中心命題自体に論理的破綻がある、としている。
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http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20150831-OYT8T50182.html
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2006年8月5日初版「資本主義から市民主義へ」以来の岩井克人さんの本である。
貨幣論、資本主義論、法人論、信任論、市民社会論、人間論を読んだ。
その後の、研究の進展が書いてあった。
また、岩井克人さんの生い立ち、経済学にのめり込む、キッカッケ、奥様の水村美苗さんとのなり染、お二人の仲の良さが、岩井さんの研究に生かされている。
経済学者が原点であるが、アリストテレスまで遡り、人間科学という新たな軸を打ち立てようとする岩井克人さんのますますのご活躍を期待している。
日本が生んだ偉大な哲学者だと私は思っている。
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寝る前の10分ほど、1日に4,5ページ、結局3か月以上かかってしまった。自伝だと思って軽い気持ちで読み始めたので、途中経済の専門的な話はかなりしんどかった。けれど、なんとか読み通せたのは、岩井先生がいろいろなところで出会った人々などのエピソードが盛り込まれているからだ。後半の法人の話から信任論、そして倫理の話などは非常に興味深く読めた。最終章で紹介されているシーフォードの報告には私も興奮した。「・・・近代的な意味での『哲学』は、歴史上最初に全面的に貨幣化された紀元前6世紀前半のイオニア地方において、まさに歴史上最初に生まれている・・・」柄谷行人とは早い段階で知り合っており、付き合いがあったはずなのだけれど、どこかで何らかの仲たがいがあったようだ。何があったのだろうか気になる。水村美苗のことばが良い。「食べられればいいのよ。引き受けたくない仕事ならば引き受けなければいいのよ。好きなことができていれば永遠に認められなくてもいいのよ。」まあ、まず食べられるということがポイントなのだけれど。岩井先生の講演会を10年以上前に聴いている。いまそのときのメモが見つからないのだけれど、そのときに、最近、「言語・法・貨幣」について考え始めているという話があった。まだ今もまとまっていないようだから、長く考え続けられているのだと思う。「貨幣論」以来、岩井先生の書かれたものには目を向けていたので、今回本書を書店で見つけたときは、大著ではあったけれど、ためらわずに入手した。買って正解でした。2か月弱で4刷、よく売れているんだなあ。
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知的興奮の書とのことだが。
経済学は科学ではなくたんなるイデオロギーの学問であることがよく分かる。
現在の主流の前提は完全な誤りであり,著者の理論の方がまともではあるが,誤った理論が駆逐されない学問は科学ではない。特に今主流の理論は偽の前提から出発しているので,何を結論としても,論理的は正しくなる。
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2016年4月30日図書館から借り出し。「貨幣論」以来の岩井経済学の本。ただし、最初を読み始めてみると「私の履歴書」風になっていて、少々戸惑う。5月15日読了。久しぶりに知的興奮に満ちた本に出会うことができた。あまりに興奮しながら読んでしまったので、著者の「貨幣論」、そしてマルクスやハートの著書等も、もう一度読み直しながら冷静に考え直してみたい。一方的にこの本に書かれたことを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えることの必要性も同時にこの本から刺激を受けた。
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経済学者が自分の人生の歩みと合わせて経済学を語っています。著者の著作に慣れ親しんだ読者であれば、読んでみる価値は十分にあるでしょう。また、タイトルだけ見ると難解な印象を受けますが、インタビュー形式で進んでいくので、専門的な注釈を除いては、わりと読みやすかったです。
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20160801くらい〜0826 岩井先生の経済学に対する捉え方、思想の変遷を辿りつつ、さらに深い学際的?な知的深堀を追体験出来る。専門的な用語も多いけど、先生の語り口を堪能出来る
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アダム・スミス、ケインズ、マルクスについての基本的な学説を押さえておくことが最低限必要か。
著者の学者としての人生を振り返りつつ、経済学の深化について、追想できる。
資本主義論が白眉か。
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2020/09/21 経済学の宇宙 岩井克人 15/07/15読了
岩井克人先生の誠実さが滲み出ている さすが宇沢弘文門下生の筆頭
経済効率性の前提に「倫理=正義」が来るので、
科学たろうとする正統派経済学とは相容れない
「不均衡動学」資本主義経済の本質 ダイナミズムでもある
ヴィクセル
不均衡が累積・累増して、恐慌・ハイパーインフレで発散する
終息するかは神のみぞ知る 今日までは
ケインズ 天才!
市場の不完全性が崩壊を押し留めるex賃金の下方硬直性
価格調整 賃金
数量調整 雇用
ルイス 労働人口
日本・中国は「農村→都市部への労働移動」で経済成長を実現した
⇒ルイスの転換点
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『すなわち、貨幣とは、一つの部屋からもう一つの部屋へと次々に移動させられていく無限ホテルのお客と同じように、一人の人間からもう一人の人間へと次々に受け渡されていく無限世界のお客なのです』―『『1、2、3…無限大』から』
「欲望の貨幣論」で岩井克人の言説に惹かれたのを切っ掛けにもう少し氏の著作を読むことにする。如何にアカデミアの世界に入っていったかを含め公私に渡る氏の軌跡についても語られており、とても興味深い。インタビューを下敷きにした一冊とのことだが、語られているのは氏の研究成果のみならず、経済学全般、更には波瀾に満ちた個人史と盛り沢山。この稀代の知性の出発点にガモフの名著があるというのも、氏の数学的・論理的志向と貨幣論の繋がりの原点を知ったように思えて得心した気分となる。なるほど、なるほど。
『共同体的社会とは、すでに述べたように、「兄弟」的な連帯意識によって結ばれた人間関係によって成立しています。これに対して、「貨幣」という抽象的な価値の担い手を交換の媒介とする資本主義社会においては、「異邦人」とも「身分違い」とも「敵」とも交換関係を結ぶことができます。このように、お互いが「兄弟になる」ことを必要としない非人格的な人間関係を可能にしてしまう「貨幣」とは、共同体的社会を解体しかねない不可解な力を持った、まさに「異物」そのものなのです』―『『ヴェニスの商人の資本論』から『貨幣論』へ』
アリストテレスのポリス論に端を求める資本主義、貨幣論の原点探求に始まり「欲望の貨幣論」で展開された論のほとんどは「経済学の宇宙」の中でより丁寧に語られている。前者では触れる程度であった法人を巡る哲学論争への解の提案、そこから広がる信任契約の本質へと迫る歩み、そして市場の不安定性や欲望の根源にも視野を行き渡らせた考察から導かれる倫理の原理までが、広範な知識の平原を背景に順序立てて語られる。前者が氏の主たる考察のエッセンスを簡潔に示したものであるとするなら、後者はその発想の原点から考察の過程までも「そもそも論」から余すところ無く記した一般解説書のようなものと捉えることが出来る。
二つの著作の間には5年弱の時間の経過があるが、主張するところは同じであり、資本主義のその先への課題認識も同じであるように思える。「欲望の貨幣論」の最後に示唆されている「倫理」についても、その骨格となる考察は既に本書の中で展開されている。とすれば、そろそろ何がしかの著作が発表されていてもよいように思うのだが、これまでの岩井克人の問題への対峙の仕方からすると、氏の中でその論理は未だ詰めきれておらず、発想から考察の段階を抜け出ていないとの判断があるのだろう。氏の真摯な考察と徹底した研究調査の態度がそこにはあることが分かり尊敬するばかりであるけれど、何とか論考を締め括って世に出して欲しいものと思う。