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商品説明
ラカンの鑑別診断論の理論的変遷と、ポスト−鑑別診断の理論を検討。ラカンの理論と臨床の全体が、神経症と精神病の鑑別診断論とポスト−鑑別診断論の両方の側面をもつことを指摘し、現代におけるその意義を展望する。【「TRC MARC」の商品解説】
國分功一郎氏、千葉雅也氏がいまもっとも注目する著者!!気鋭の精神医学者がジャック・ラカンの思想の核心にせまる。本書は、精神病か神経症かを判断する「鑑別診断」に、思想と臨床の両方から光をあて、まったくあたらしいラカン像を提示しようとするまさに画期の書である。そこから50年代、60年代、70年代とラカンに一貫したテーマがはじめて浮かび上がってくるのだ。【本の内容】
目次
- 序論
- 問題設定
- 本書の構成と限界
- 第一部 ラカンの理論的変遷を概観する
- 第一章 三〇年代ラカン−妄想の無媒介性とシュルレアリスム
- 第二章 五〇年代ラカン−精神病構造をどのように把握するか
- 第三章 六〇年代ラカン−分離の失敗としての精神病
- 第四章 七〇年代ラカン−鑑別診断論の相対化
- 第二部 神経症と精神病の鑑別診断についての理論的変遷
- 第一章 フロイトにおける神経症と精神病の鑑別診断(一八九四〜一九三八)
著者紹介
松本 卓也
- 略歴
- 〈松本卓也〉1983年高知県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専攻は精神病理学。共著に「天使の食べものを求めて」など。
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紙の本
これだけ整理された内容の、ラカン研究書はこれまで無かった。素晴らしい。
2015/08/31 13:06
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:超絶技巧者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までラカンについての解説書や考察書は、日本でもかなりの数が出版されているが、本書はそれらと比較してもかなり有意義なものとなっている。
著者は精神科医であるが、10代の頃からラカンに興味があって、精神科医と分析家のどちらの道に進むかで悩んだという。
しかし結果、精神科医という道を選んだことで、本書のような視点に立てたと思うので、進路選択は間違ってはいなかったと思う。
本書におけるラカンの精神分析の取り上げ方は、きわめて明確だ。
精神分析や精神科医はその分析や治療に入る前に、初回面接において「鑑別診断」ということを行う。
もちろんその患者の病状をはっきりとさせることをするわけだが、同時に神経症の領域なのか、それとも精神病の領域なのかということをはっきりさせる必要があるので、「鑑別診断」というものを行うことになる。
症状と病名のみたてができなければ、分析家も精神科医も先に進むことが出来ないわけであるから、きわめて重要な行為であるといえるのだ。
ラカンの著作として『エクリ』や『セミネール』というものが残されているが、それらは何れも大変難解なものとして有名だ。
その理由として、ラカン自身によって考案された理論や独特の用語、記号論理学的な記述や数式のようなものまで登場するので、それが難解さに拍車をかけているのだが、その理論的にも生涯に渡ってかなり変化しているという事実がある。
こうした「理論的変遷」というものもその時代順に著者は追っていきながら、必ずそのまとめとしてそれらを整理して記述している。
こうした丁寧な書き方が、これまで難解さに埋もれていたラカンの精神分析をかなり理解しやすく整理できている点は特筆に値するだろう。
正直こうした高水準でありながら、読みやすいラカンについての本というのは全く無かったので、本書が出版された意義は極めて大きいと思う。
ラカンの講義録として有名な「セミネール」は、フランス本国でも未だに完結してはいなく、その隙間をうめるためにゼミネールの海賊版の出版すらおおっぴらに黙認されているくらいであり、日本においてはその翻訳作業も遅々として進んでいない。
こうした現状では、ラカンの精神分析の全体像すら提供されていないことになるので、最初から最後までをしっかり追って書かれた本書のような存在は、かなり貴重であり役に立つものだといえる。
ラカンの理論的変遷を明らかにしていくために、後継者であるミレールやラカン派の論文からもかなり多くの引用がみられるが、著者のしっかりした考察力と整理力によって、しっかりと理解を深める道具になっているところも評価に値するだろう。
ラカンを読む者にとっては、本書は必読レベルの本であり、必ず読者の収穫になってくれる本であると思う。