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紙の本
老妓抄
2020/11/10 14:54
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
岡本かの子の短編集だが、なんといっても著者の代表作とも言える「老妓抄」が収録されているのがすばらしい。
長らく芸妓として働いてきながら、電気などの新しい文化にも親しむ小そのが、「パッションが起こらない」という青年・柚木を支援する小説。柚木を支援しながら、小その自身も「いのち」に華やぎを得ていく。「いのち」という観点で「家霊」にも通じると思う。
紙の本
「鮨」は本当にいい作品です
2019/01/26 01:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この人の作品は空腹の時に読むべきではない。どの作品にも登場する食べ物の描写が絶え間のない唾液の分泌を促す。「鮨」に登場する湊先生のために母親が握ってくれた鮨、「東海道五十三次」で主人公夫婦がたべた各地の名物料理、「家霊」の徳永がお金もないくせに何度も食わせてくれと頼み込むドジョウと、どの料理も豊かな表現に飾られていてお腹がうごめく。もちろん食の表現だけでなく、「老妓抄」の妖しくて、捻くれていて、でも可愛い老妓、「食魔」の無学である劣等感を高圧的な態度にでて隠そうとする、でも憎めない鼈四郎などの登場人物も楽しめる
紙の本
生きることは、食べることだ!
2005/02/15 20:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アンディーヴって、何てお洒落な名前の野菜なのだろう。
この言葉は、記憶が正しければ、子供の頃、『二年間の休暇(十五少年漂流記)』から、知った語彙だ。実際に食すことができたのは、ずいぶん後だし、その回数も、片手で数えるくらいしかない。大概の人が、似たような出会い方をする野菜、なのではないか。そもそもこの野菜は、現在でも、普通のスーパーに、常時あるものではない。
このアンディーヴを、この短編集の、最長かつ最後の作品、『食魔』の主人公、鼈四郎(べつしろう)は、その冒頭部において、軽々とサラダに仕立てる。ドレッシングは、塩、胡椒、辛子に酢、オレフ(オリーヴ)油からつくる、本格的なものだ。現代なら驚かない記述でも、この作品が書かれたのが、およそ昭和10年代と考えると、いかに贅沢な料理であるかがわかる。この作品には他にも、家鴨(あひる)の血を絞ってその血で家鴨の肉を煮る料理や、大鰻(うなぎ)をぶつ切りにして酢入りのゼリーで寄せる料理など、我々を「パブロフの犬」状態に、しないではおかないような、料理の名前が沢山出てくる。
出てくる料理と同じくらい、登場人物も皆、個性的である。
例えば、『鮨』に出てくる湊(みなと)だ。
福ずしの看板娘、ともよは、ある常連客、湊のことが気になって仕方がない。湊の風貌や言動が、明らかに他の客とは違っていたからだ。最初は見ているだけだったが、ともよは徐々に、湊の酒量が進み過ぎると、盃を奪って、飲ませないようにしたりするのだ。ある日ともよは、店の外で偶然湊に会い、二人で鮨の話を始める。
『家霊』に出てくる、徳永という老人も、どじょう汁に執着する。
「若いうちから、このどじょうというものはわしの虫が好くのだった。この身体のしんを使う仕事には始終、補いのつく食い物を摂らねば業が続かん。そのほかにも、うらぶれて、この裏長屋に住み付いてから二十年あまり、鰥夫(やもめ)暮しのどんな侘しいときでも、苦しいときでも、柳の葉に尾鰭(おひれ)の生えたようなあの小魚は、妙にわしに食いもの以上の馴染になってしまった」と切々と訴えるのである。
終始、ひどく面白かった作品集だが、あえて四つ星にしたのは、『食魔』の鼈四郎は、強いくせがあって好きだったのだが、彼が、煙草を吸う料理人だったからである。アンディーヴのサラダに、ほんの一瞬、煙草の煙りが混ざってしまったように感じられたことだけが、残念だった。
食べること=生きること、を大事にしたくなる本書である。