紙の本
繋ぐ思い
2013/07/19 14:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けだま - この投稿者のレビュー一覧を見る
『繋ぐんじゃ。思いはのう、生き物なんで。思いがあるかぎり必ず繋がっていくんじゃ。』
私が本作中で最も好きな言葉です。
本作品は作者の自伝的小説なので、七帝柔道というものが主軸となって話は進んでいきます。柔道を経験していない人にとってハードルが高そうに感じるかもしれません。ですが、是非ハードルを飛び越えてこの作品を手に取って頂きたい。そこには勇気を持ってハードルを超えただけの価値はある様に思えます。
皆さんは先生や先輩あるいは会社の上司から受け取った知識、思いはちゃんと繋げていますか?私は繋げていなかった。そして、本作品を読むことで思いを繋げることの大切さに気づくことが出来ました。
私だけでなく、皆さんの気づきのきっかけとなる可能性を秘めた作品です。
紙の本
やさしい眼差し
2014/09/07 23:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:英現堂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
北大柔道部のお話。
この話が面白いのは、派手さはないが本当に強い寝技や絞め技の柔道をとことん追求しいているところ。そしてその寝技、絞め技が十分発揮できる七帝戦というのがあること。そして北大は連続最下位であることだ。
北大、東北大、東大、名大、阪大、京大、九大で争うことを七帝戦という。彼らにとって、その七帝戦で優勝することが最大の名誉である。講道館柔道のルールとは違い、寝技で膠着状態となっても待ったはかからない。技をかけられてもすぐに参ったしないので、審判は絞め技で確実に落ちたかどうか、関節技で骨が折れたかどうかで判定をくだすという、めちゃめちゃハードだ。
もう死んでもいい、と思うような日々の練習。七帝戦で勝つという1つの明確な目標に向かって学生時代の全てを捧げる。しかし、挫折に次ぐ挫折。全てをこの柔道に捧げたことの意味を問いかける。彼らの得たものは何か?人を見る時の<やさしい眼差し>がその答えの1つなんだろうな。
紙の本
久しぶりに味わった、小説の醍醐味
2016/02/12 23:31
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投稿者:maki - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説の宣伝文句で、やたら「泣ける本です!」と強調されているのは、
あまり好きじゃない。
読む前から感動を強要されているように感じるからだ。
そして実際、読んでみるとそれほど泣ける内容ではなかったりすることもよくある。
が、しかし、「七帝柔道記」の「2013年 男が泣ける小説NO.1」の看板に偽りはなかった。
自分でもびっくりするくらい泣いた。男じゃないけど。
どちらかというと、増田さんは文章のうまい方ではないと思う。
ドラマチックな言い回しも、技巧を凝らした美しい表現もない。
ただ淡々と、起こった出来事を、その時感じた思いを、
朴訥な文章で書き連ねていく。
それが、かえって心に響く。
七帝戦で、増田に「俺たちのために死ねるか」と問うた金澤さんに、
道警へ出稽古に行く途中、「こんなことをして何の意味があるんですか!」と
和泉さんに食ってかかった竜澤に、
後輩たちにどんどん実力で差をつけられても部をやめない斉藤テツさんに、
杉田さんを襲った信じられない不運に、
和泉さんが重荷をおろしてやっと見せた笑顔に、
めちゃくちゃ泣かされた。
こんな男たちが今の日本に実際に存在しているんだと思うだけで、
元気が出てくる。
小説を読んで、「続きが気になって気になって寝られない」という感覚を
久しぶりに味わった。
余談だが、増田たちがインカレ北海道予選に出場する場面で、
和泉さんの体格が「160センチ60キロ」と書いてあって
三度見するほど驚いた。
そんな小さな身体で頑張っていたのか!
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大学時代を思い出した。体育会で団体戦経験者には競技を問わず熱くなれる作品だと思う。一つの事に打ち込む事の崇高さ、苦しさが描かれていて泣けるら、そして体育会特有のエピソードは爆笑出来る。今年No.1。
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熱く、懐かしい!自分の現役時代を思い出した。出てくる名前は実名だし、ほとんど実話なのかな。大学と時代が違って細部は違うけど、その生活、楽しみ、苦悩、先輩・同期・後輩達の雰囲気は自分達のときとほとんど同じで実に面白い。個人的には京大ベスト16のときの話しが嬉しかった。でも、七帝柔道関係者以外の読者が本書を楽しめるのだろうか、興味があるところ。
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『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』に続いて、今度は作者増田俊也の北大柔道部時代を描いた自伝的小説だ。これがやたらに面白い。遠征費を得るため文化祭用にでっち上げた「焼きそば研究会」なるサークルなどの爆笑エピソードが随所に散りばめられているが、そうしたエピソードの中通奏低音のように響くのは、汗臭さと熱気が立ち上る練習の描写である。本書を読みながら、読者はさながら自分が北大の柔道場に紛れ込んでしまったかのような練習の苦しさと、過剰なまでの友情でつながれた部員たちと時間をともにできる喜びを感じるだろう。増田俊也は苦しさと喜びを描くのがうまいなあと思った。
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著者の北大柔道部時代の自伝。
とにかく熱いわ。この経験があってこその「木村政彦」だったんだな・・・
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七帝柔道とは?
講道館柔道との違いは?
そんな説明抜きに、まず読んでほしい。
増田さんがゴンカクで語っていたように時代や内容は違えど
「木村政彦は・・・」に流れが続く、増田柔道の第二部である。
ここでの柔道とは高専柔道。
「高」は旧制高校、「専」は旧制専門学校のこと。
寝技引き込みあり、判定なしの格闘技なルールの柔道だ。
ここまで練習をするのか!と壮絶の一言。
練習後には体重が5キロ減っていたという。人によっては7キロ
減っている人もいたそうだ。それほど過酷な通常練習。
さらに、北海道警への特別練習。日本柔道のエリート集団に
ほとんどリンチのように投げられる、絞められる日々。
(この描写は壮絶だ)
これを北大の一年生がやっているのだ。しかも、周りには
普通のキャンパスライフを送っている同級生がいる(もちろん、作者は
授業出ていない)。そんな中、雪の日も毎日毎日、嫌になっても
練習に通う日々。
同じく頑張っている先輩のため、北大のため、そして自分が好きな
柔道のため。
同じ大学生の年のとき、自分はここまでの覚悟を持って
生きることができただろうか・・・。
そして、これだけ練習をしていても自分より強い先輩たち含めて
北大はあっさりと敗退してしまうのだ。
とにかく感動する一冊。
現在木村政彦本を執筆中のようだが、願わくばこの北大時代の
続きを中井祐樹との出会いを含めて読んでみたい。
尚、札幌分かる人には、中々面白い店がたくさん。
ホテル札幌会館(確か潰れたような)の裏手の鮨の正元のジャンボ鮨。
その横にある、焼き鳥のみねちゃん。
そして北24条の北の屯田の館。
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柔道に洗脳されていく。
洗脳といっては、失礼なぐらい全てを賭けていた青春小説。
否定的な言葉をつい使ってしまうのは、自分には踏み込めない世界の話だから。
憧れと諦めが、ごった煮されて、つい斜に構えてしまって、否定的な言葉を吐いてしまったわけです。
とにかく暗い、重い。日々の練習に押しつぶされるでなく、すりつぶされながら、勝利という光だけを見据えて、苦行を重ねていく青春。
柔道でなく、伝統に洗脳されていくのか。
和泉先輩が部長になってからの、毎日は特に苦痛の連続。読んでいても、何のために柔道をしているのか、考え直してしまう。
否定的になるし、拒絶も感じるのだけど。
最後の七帝戦では、北大の勝利を求めてしまいます。
つまり、自分も読んでるうちに洗脳されてしまったわけか。
それだけのパワーがある文章です。
血が滾るけど、同時に凍りもする。
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よかっぺ。
感動したな、普通に。
作者の増田さんの体験記でもあろうで、ドラマチックな結論がある訳でもない、ある意味淡々としたもんだ。
七帝柔道と言う、業界紙にも出ない、渉外柔道を目指す訳でもなく、優勝しても注目される訳でもない。
旧帝大という、それなりに勉強して入学して、場合によっては何もスポーツ経験のない学生が、ただ、七帝戦で勝利することだけを目指して血反吐吐く。
血反吐吐きながらも、必ずしも、納得している訳ではない。だけど、そこに何かの意味を見出したものだけが、血反吐を吐き続ける。
男なら、読むべし。
女の人には判らんのやないかと思う。
漢なら読むべし。
前の、木村政彦はなぜ〜より随分文章が熟れている感じがした。
ただ、簡単に、留年とか浪人とか言うなよなあ。お父さんは大変やねんで。
しかし、私の母校は、文中で悪役っぽく書かれているところなのだが、「しちていせん」と言っていた。「ななていせん」と書かれているが、どっちが正しいのやろう。
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ほとんど自伝?のようで、しかも面白い。これは部活の域を超えて、どこかで修行僧の喩えが出ていたが、それに近いというかそれ以上のものがある。そして、その厳しい練習の後の試合の興奮と達成感!すごい世界で、またその中での縦と横の繋がりは、まさしく人生の宝だと思う。
井上靖のひょうひょうとした『北の海』の味わいとはまた違って、でもどこか似ていて、、今もこのように続いているのかと思いました。
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めちゃくちゃ面白かった。次の展開が気になって早く読み進みたくて,後半もそれは変わらないんだけど残りページ数が減ってくると読み終わってしまうのが残念で読み進めたくなくなる感じ,久しぶりだった。私が偉そうに言うことじゃないけど,大学時代にこんな経験をしたら曲がった人生を歩むことはないんじゃないかと思う。人間関係は一生だろうし,羨ましい。
続きはないのかなぁ。素人的には3年目4年目にどんな境地に至ることになるのか知りたい。
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餃子耳のビルディングスロマン。なぜ増田俊也は「なぜ木村政彦は力道山を殺さなかったのか?」を書けたのか?がわかりました。熱く甘く苦く爽やかで痛いもので胸がいっぱいです。
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小中学校の教科書に載っていた、井上靖の「しろばんば」「夏草冬濤」が面白かったので、当然のようにその続編「北の海」を読んだ。そこには、若き日の井上靖が没頭した「練習量がすべてを決定する柔道」高専柔道という特殊な世界が描かれていた。そして、それは過去の遺物だと思っていた...
が、高専柔道は旧帝大の柔道部に「七帝柔道」として生き残っていた。そして、七帝柔道を志すものは、練習量がすべてを決定する柔道を、いまもまだ受け継いでいたのだった。「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」の作者、増田俊也の自伝的小説。作者は1965年生まれということは、私とほぼ同年代。いや、若干遅れてやってきた彼が学生だった頃、世の中はバブル経済に向けて成長を謳歌していた時期のはず。その頃、こんなことをやっていた連中がいるのかと思うと、不思議であきれて眩暈がする。が、若者は何かに没頭する時期があっていいのだと、改めて思う。
良い本だと思います。
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増田俊也の自叙伝的作品である。
残念なのは主人公(自分)の4年間を書いたものではない事、まだ半分である。
ということは、続きがあるのか?ある意味楽しみである。
七帝柔道はお互い辛さが判っているから、他大学の人であっても皆優しい。
自分の財布をポンと投げて全部使えと渡すシーンなどは、こんな人もいるんだとも思えた。