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投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
の元ネタを恥ずかしながら読んだことがないのですが、大変魅力的でした。
あの彼が今でもあそこに留まっているのかと思うと切なくなります。
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブルーのノートから始まる、都会の不思議な冒険。
誰にでも秘密があって、それがこんなにも人を不幸にしてしまうという哀しさ。
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久しぶりのポール・オースター。
凝った構成と作中作が絡み合い、オースター独特の、『現実なんだけど現実っぽさのない世界』を作り上げている。と、同時に、主人公とその人間関係にも複雑さや暖かみがあって、これまでの無機質な作品とは一線を画しているように思う。面白かった。
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物語に次ぐ物語に引き込まれ、気づけば残り数ページ――そのような心地いい読書を久しぶりにできました。同作者の『ムーン・パレス』が好きなら、本作も楽しめるはずです。
余談ですが・・・
退学を余儀なくされ、堕落した毎日を送り、両親を悩ます救いようのない息子が登場しますが、これは作者の配偶者であり小説家であるSiri Hustvedtの長編What I Lovedに登場する息子を想起させます。
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大病から生還した作家は、ふらりと入った文具店で青い布装のノートを買うと、そこに小説を書き始めた。『波』2016.1にて。
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ポール・オースターが2003年に発表した中編作品。ブルックリンの街を舞台に、一人の男性作家を主人公として、偶然の連鎖による重層的なストーリーテリングを満喫できる傑作。主人公、その妻、作家の友人というトリオを基本構成としながらも、衛星的に周辺人物が物語を引き立て、柴田元幸が評するように「室内楽的」な美しさを醸し出す。室内楽的とは極めて的確な表現であり、特に弦楽四重奏のように、4人の奏者のフレーズに一切のムダがなく、音楽が持つ基本構造を全て網羅するかのような世界観に近しい。
そして物語を一層複雑にするのは、主人公が作中で執筆する小説であり、古典的な”小説内小説”(しかも小説内小説の中で「オラクル・ナイト」と題された別の小説が語られることとなり、マトリョーシカのような様相を見せる)の技法でありながらも、現実世界と奇妙なリンクを見せる小説内小説の描き方が見事。
オースターの作品は一通り読んでいて、一番の傑作は「ムーン・パレス」だと思っているが、それに次ぐ出来のような気がする。様々な偶然の連なりが半ば必然のように描かれながら、物語をドライブさせていく手腕は安定のオースター節という他ない。
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ポール・オースター氏初作品。
ありきたりで陳腐な言い方だけど、ジェットコースターの様な作品。序盤は中々引き込まれなかったが、退屈だからというわけではなく、場面を仔細に描写し、世界に引き込もうとしている段階だから、退屈と、早合点してしまったのだと思う。
で、まんまと世界観に引きずり込まれたら、読む手を抑えられない。ストーリーが急速に動き、登場人物達がうねる様に暴れる。先にも出したけど、ジェットコースターと言う他ない。
キャッチャーな話にも見えたけど、読み終わってみると、とんでもない大作を読み切ったようなズッシリとした読後感。本書は左程ページ数が多い訳でもないし、物語も数週間という短い期間で展開されている。けれど、とてつもない密度。情報が多すぎるわけじゃなくて、物語に物語が絡みに絡み合い、複雑な層を成して物語が作られている。
雨の日にしっとりと読みたい本でした。
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ポールオースターは随分前に読んだ「偶然の音楽」以来の2作目。1作目もかなり好印象だった。日常的とも言える出来事の積み重ねの中に 少しずつある種の物語が浮かび上がってくる。特別な事件は何も起こらないのに 引き込まれていく。う〜ん、なかなか読後感も良かったです。
他の著作も読みたくなります。
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物書きを生業にする男とその男の知人であるやはり物書きを
生業とする男の物語(現実)、
その男が奇妙なノートブックに綴る物語、
その物語の主人公のもとに送られてくる物語の中の物語、
知人の男が過去に描いていた物語、
男が映画原作のために描いている物語、
男の妻や近所の文具店店主に対する虚実入り乱れた想像、
それらが緻密に組み上げられ描かれた、
言葉と愛情をめぐる一篇の物語。
最近のオースター作品の主人公、
触れようとしたら触れられそうなくらいには現実感が伴っている
(実在してそうな感じ)。
初期作品群を覆っていた、絶対的な孤独感、
透徹とした喪失感が
ちょっと恋しくなったりもする。
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不幸や不運はいろんな顔でふいに現れるけど、ひとつの愛があれば、それらを凌駕できる。というたいへんシンプルでゆるぎない構図。こう書くと安直でメルヘンチックに聞こえるけど、世界の秘密に触れそうで触れられない、見えない影を追うような、なにか力強い何者かに突き動かされるような寓話。
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あとがきからの引用ですが、オースターによると、『幻影の書』が交響曲だったとすれば、『オラクルナイト』は弦楽四重奏だとか。室内楽の魅力。
「オラクルナイト」とか、「ペーパーパレス」っていう語感からすでに予感はしてたけども、初めて読むのにもかかわらず、ものすごくオースター的(※)で、心地よい既視感を何度も感じました。
けど他の作品と比べるまでもない速さで展開がころころ変わって、読み応えがあるし、単なる悲劇というわけでなく、結びもオースターらしいオープンエンディングなので、オースターをはじめて読む人にはこれを勧めたい。
とはいえ物語内物語内物語は初めてのようです。 これが構造上、どんな役割を果たすのかわからないけど、物語自体に多面的な広がりは感じたし、 もしかしたら物語内物語内物語内物語…とマトリョーシカのように物語構造がどんどん続くこと(つまり、わたしたちの生きている現実もフィクションでありうる、ということ) が示唆されているのかもしれないとも思いました。さすがに深読みしすぎかもしれないけど。
けど少なくとも、夢であれ、現実であれ、出口はあるものなのだというメッセージは込められていると思う。
そう考えてみればグレースの例のセリフってラストだけじゃなくて作品中でもすごい活きるんですよね。
「それがね、私の夢はそこで終わったの。あなたは怯えた表情を顔に浮かべていたけど、私が何をしてあげられる間もなく、目が覚めたのよ。そしたらあなたはベッドにいて、両腕を私の体に回していて、夢でしてくれたのと同じように私を抱きしめていた。素敵だったわ。目覚めたあとも、夢がまだ続いてるみたいだった」
「じゃあ僕たちが閉じ込められたあとどうなるかは知らないんだね」
「そこまでたどり着かなかったわ。でもきっと、何か出口が見つかったはずよ。人間は自分の夢のなかで死んだりしないのよ。ドアに鍵がかかっていても、何かが起きて、私たちを出してくれたはずよ。そういうふうになってるのよ。夢を見ている限り、いつだってかならず出口はあるのよ」(pp.182-183)
気になるのは、これって9.11の直後に書かれた話なんだな、ということ。
オースターが9.11以降、作品にそのエッセンスを盛り込んでいるのは自明のことなのだけど、当時の惨事が、ミニマルな形ではあれすごくストレートに反映されているなと思いました。
1982年の9月の出来事を、20年前とシドニーが回想していることはもちろん、閉じ込められてしまうという構図(9.11後のアメリカの状況にはまってしまったことから予想外にヒットした"Stuck In America"っていう曲を思い出してしまった)や、 家をめちゃめちゃにされて、子供も流れてしまって、夫婦間の信頼関係も壊れてしまった、0になってしまう形って、もろに9.11の影響を受けているなと思いました。
ノートの物語内物語が中途半端に終わってしまうのも、テロによってこれまでの日常がある日突然終わってしまうことを示しているのだろうな。
読んでるときは物語内物語が中途半端に終わって残念だなと思ってたけど、ラストまで読むと、白紙のページを捨ててしまったことって、未来を捨てることのように��とれるから、やや不安になる…。
シドニーが物語を書くことで、彼の日常は動き出し、さまざまな変化を導いたのだけど、 もし偶然ペーパーパレスやあのノートに出会わなければ、というパターンを考えると、この物語が二度楽しめるだろうし、 グレースの夢のことも、執筆中のシドニーに電話の音が聞こえなかったことも、もしかしたら偶然なのかも、と偶然と必然の線引きを考えるのも、すごく楽しいです。 (きっとそれがオースター作品の真っ当な楽しみ方)
その他
・M・R・チャンがチャイニーズなのはオースターが親日家だからなのかなとか考えてしまう。
・ジェイコブの施設でのミーティングな話がジェイコブ自身が言うようにけっこうおかしかったです。
司祭さまの格好して万引きのエピソード、好きだわ。
・トラウズの昔の作品の『骨の帝国』の設定がまんまいまの日本と一致していてつらい。いまの日本でなく戦時中のアメリカや日本をモチーフにしているのであろうということが余計つらい。
ポイントは、政府はつねに敵を必要とする、たとえ戦争をしていなくても、ということだ。(p.227)
連邦を維持するために人民を十分怯えさせておくには、いまにも蛮族が攻めてくるというふりをするらしい。
・ジェイコブがわかりやすいくらいに父殺しでアメリカ的。
※わたしの考えるオースター的物語
・語り手はもちろんブルックリン在住の作家
・物語内物語(すごくおもしろいのにクライマックスを超えた途端にそのおもしろさが急降下する)
・誰かしら怪我を負っていたり、病気であったりする
・幻想的なアイテムや空間
・あやしい異国人
・果てしない作業
・偶然性
・家族とは(これはむしろアメリカ的)
・過去と未来の対比
・そこそこ大きなお金が動く
・わりと主要人物が命を落とす
・たまに終盤で答え合わせ
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高校生のとき「ムーンパレス」を読んで感動して以来、20年ぶりのオースター長編。漂う空気、人物の輪郭、優しさの漂うストーリーはやはり良い。ラストはやや急速に悲劇的に収束していくが、オースターが人間に向ける眼差しが常に優しいためなのか、最後まで慈愛に満ちた物語のように感じる。おそらくそこがこの作家ならではの魅力なのだろう。映画「スモーク」が好きなら本作もやはりおすすめだ。
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すんごく面白かった。
80年代の『バシャール』の概念を思い出した。
パラレルワールドとか思考の現実化とか…。
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最後はあっという間の結末だったけれど、そこにさしかかるまでの物語の牽引力はやっぱりすごかった。ところで途中、ちょっと村上春樹を思い起こさせるシーンがあったなぁ・・・。
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長編だけど、小さな範囲を丁寧に書いてくれている小説。小さな範囲だけど、悪い意味での箱庭感はない。文章がすとんと心に収まる感じがしました。不遜ながら、今の自分の身の丈に合った小説だなあと思って、すごく心地よく読めました。【平成30年10月2日読了】