紙の本
批判はあるもの
2016/04/20 23:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simon.n - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はウォーラーステインの提唱した近代世界システム論を著者がコンパクトに導入したものです。
近代世界システム論の考え方は今日では浸透してきており、したがって批判もそれなりにあるわけですがとはいっても重要な思考法であるように思います。どうしても歴史というと教科書的な、歴史を大きく年代と政治・経済の二軸で切り取る考え方をイメージしがちです。しかし人間の歴史をより構造的に、相互連関的にとらえようとしたウォーラーステインの発想により一般的なとらえ方では見えづらかった地域同士の関連などが浮き彫りにされます。そうしたところにやはり重要なブレークスルーがあったように感じます。
歴史に興味がある方は是非読まれてみるとよいと思います。
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世界システム論という観点から世界を眺め、歴史を見た画期的な書です!
2020/04/13 11:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、世界システム論という視点に立って現代世界がどのような構造をもって成立したかを考察した画期的な書です。世界システム論とは、近代の世界を一つの巨大な生物のように見なし、近代の世界史をそうした有機体の展開過程としてとらえる見方を言います。この見方をとることで、大航海時代から始まるヨーロッパの中核性、南北問題、ヘゲモニー国家の変遷といった近代世界のあらゆる特徴が初めてあらわになるというのです。そして、私たちが固定観念としてもっている「国」単位で見るという歴史観、世界観から解放してくれるというのです。同書は、読者の知的興味を引く非常に面白い一冊です!
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世界の見方を鍛える
2016/05/24 19:08
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、世界の見方、世界構造はどうなっているか、ということを教えてくれる一冊である。とくに、近代世界に広まったヨーロッパ発の世界システムについて分かりやすい。
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グローバル化の起源
2016/06/09 21:46
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ryou - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代世界システム論の日本の第一人者である川北稔先生が平易な語り口で、しかも体系的にシステム論を語った。実にわかりやすい。G0の世界と言われる21世紀の行方を考えるうえでも、大変示唆に富む一冊である。
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ウォーラーステインに基づいた世界システム論の概説書。原本は放送大学の教科書なので、分量的制限からミニマムエッセンス的な記述となっており、取っつきやすい。大航海時代以後のヨーロッパ中心の近代世界を対象に、システム論的な見方で世界史を概括する。たとえば英国の産業革命ですら世界システムの影響から逃れ得なかったなど、示唆に富んでいる。近代世界の移民問題について知りたい場合にも重要な観点である。15世紀以前のヨーロッパ世界についてはアブールゴド「ヨーロッパ覇権以前」をひもといてみたい。
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(おそらく)ウォーラーステインの入門書。
原著は2000年出版。こないだ読んだ『オスマン帝国の解体―文化世界と国民国家』も2000年出版だったが、共通しているのは、ヨーロッパ文化圏が世界を統一する前には、地球上には5つかそれ以上の文化圏があった ということ。後進の西ヨーロッパがさまざまな条件により地球上に浸透していったということ。
2000年と言えば冷戦が終わってアメリカの一極支配が議論されていたころだと思うが、こういう議論がはやりだったのだろうか。
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著者はウォーラーステインの著作を翻訳するとともに、その解説書である『知の教科書 ウォーラーステイン』を書いている。日本の第一人者と言ってもいいのかもしれない。本書は、その著者が、ウォーラーステインの肝である「世界システム論」をわかりやすく解説した本であるといえる。
世界システム論では、少なくとも16世紀以降の世界は、それまで複数あった「世界」が、ヨーロッパと非ヨーロッパ世界が一体となって、相互に複雑に影響しあいながら「(近代)世界システム」を展開してきたという認識がその前提となる。近代世界は、一つの巨大な有機体であり、近代の歴史をその有機体の展開過程として捉えるのが世界システム論である。
現行の世界を論じるに当たっては、一般的には「先進国」と「後進国」という概念が適用される(「発展途上国」と表記しても同じことである)。その議論では、「国」という概念がまず前提とされるが、その「国」すなわち国民国家の概念は、すぐれて近代の産物である。日本という「国」にしても、ひとつの国として捉えれる前に藩や郷土というシステムにおいてまず捉えられていた。そういった環境の中でまず「国民」が創り出されて、「国民国家」の概念が次第に形成されていったのである。イタリアやドイツ、イギリス、インドなどを見ても同様のことが言える。また、その「国」の分類として「後進国」、「先進国」という表現を使うことで、暗黙のうちに、すべての「国」は「後進国」から「先進国」に発展するという発想が内在している。ただ、その考え方は、ウォーラーステインのように国を単位として世界を考えない場合には、成立しない。歴史は、「国」を単位として動くのではなく、すべての国は「一体としての世界」つまり「世界システム」の動きの一部でしかないというのが、ウォーラーステインによる世界分析の手法である。また、このような世界システムには政治的に全体が統合されている「世界=帝国」と、政治的には統合されない「世界=経済」があると指摘する。西ヨーロッパを中核として始まった近代世界は後者の原理で成立し、帝国の原理は非効率であるということが世界システム論における一定の結論になる。中国が世界システムの中で優位に立てなかったのは、そのことと結びつけられるのである。
また世界システム論においては、「中核」と「周辺」の概念も重要である。その観点において、日本が半周辺の位置にいたおかげで、周辺化を免れたという点も強調されるべきであるし、帝国主義が「周辺化」をめぐる中核諸国の争奪戦であり、現在、周辺化できる地域がなくなったことによってある種の行き詰まりを見せているという観点もまた重要だ。
また中核におけるヘゲモニー国家 - 17世紀中頃のオランダ、19世紀中頃のイギリス、20世紀後半のアメリカ - の存在も世界システムの分析には欠かせない。ヘゲモニー国家は、オランダ、イギリスのように、生産から商業、さらに金融の順に支配形態を進化させ、逆に崩壊するときには、この順に崩壊するとされる。
イギリスの砂糖入り紅茶が比較的近年に確立した習慣であり、世界システムにおける「帝国」となったことで実���したインドの紅茶とカリブ海の砂糖のプランテーションによって初めて成立する、いわばステータスシンボルであったというのは、世界史のエピソードとして面白い。植民地と囚人の関係もそれがアメリカの成立にも深く関与した点と合わせて、システム的な観点からも興味深い。
柄谷行人が『世界史の構造』で世界システム論を援用した理由がよくわかる。
「世界システム」をざっと見直す教科書的なものとしてはとてもよい本。
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『知の教科書 ウォーラーステイン』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062582228
『世界史の構造』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000236938
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「世界システム論」はイマニュエル・ウォーラステインが提唱した概念で、国家ではなく交易・経済を有機的なシステムとして捉える。国家を超えるという意味での「世界」であり、全世界を意味するわけではない。
https://sessendo.blogspot.com/2021/02/blog-post_4.html
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近代世界史がなぜヨーロッパを中心に展開していくことになったのか、それは世界は個別の主体(国家)による自由競争なのではなく総体として捉えるべきシステムであるから、という世界システム論で捉える本。元々は口頭の講義なのかとても読みやすいです。この書籍以降のアフリカ・中東の紛争と難民、欧米のナショナリズムの状況だったり、中国の台頭、あるいは気候変動問題なども地球規模の相互作用の中で捉えるという意味では今では当たり前の話ではありますね。それでもヘゲモニー国家の変遷と各国の文化の成立要因が連動しているところなんかはなるほど、と面白かった
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歴史学の分野でシステム論と呼ぶからには、当然、ニクラス・ルーマンのシステム論が根底にあるのだろう。ルーマンがひたすら抽象的な理論に徹したのに対し、これなどはその考え方を中世〜近代世界史に適用した、具体的な学説の例といったところか。
しかし本書ではじゅうぶんに「システム論」的なところが感じ取れず、世界史を「社会システムの自律的動向」として把握しきることは困難だった。
ところどころに面白い知見も見られるが、どういうわけかそうした個別の知が相互につながってくることがなく、単なる「雑学」のような、ばらばらの知識のように見えてしまった。なので、読んだときにはおもしろく思っても記憶に残らず、それは全体像のゲシュタルトに結びつかないからなのである。
本書が壮大な学術を語り尽くすには小ぶりに過ぎるということもあるだろう。個々の章はばらばらであり、「システム」の統一感が出てこなかった。
世界システムの中核としてのヨーロッパ文化と、中国などアジア文化等との関係など、示唆的なところはあったのだが・・・。
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現在の世界がどのようにして一つの価値観に支配されてきたか、500年ほどの近代史をもとに解説されていた。
歴史をあまり勉強してこなかった自分にはわからない部分もあったけれど、ざっと500年間をまとめてくれていたので大きな流れを掴むことができた。
イギリスの甘い紅茶文化がなぜ形成されたのか?
インド経由のお茶と、三角貿易で得た砂糖が中核となるイギリスに集まったからということを知って、どんな文化にも歴史があるのだと感心した。
もちろん細かい部分でそれぞれの国の文化があるものの、ヨーロッパ的思想で統一化されている世界観と考えるのも面白かった。
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最初はだるいが、半分過ぎて面白くなってきた。
産業革命は奴隷貿易の産物、
アメリカを作ったのは故国で食いつめた貧民と流刑者、
フランス革命は… と、
世界システムの目で見ると革命の神話は崩れ去る。
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本書は、ヨーロッパ、特にイギリスを「中心」に、重要な史実を関連付けて、システム論という大括りにされた視座で解説がなされている。高校の世界史の授業で扱われたかすかな記憶が線で繋がったようだった。世界システム論の核となる「中核」と「周辺」の概念は、世界の大学の発達過程や、日本国内の大学間の関係を理解するときに活用できよう。例えば、中核となる大学はその機構を強化しつつ、周辺の大学は「大学間連携」の名のもとに当該大学を溶融させようとする効果が企図されている、というように仮定することは言い過ぎだろうか。また、著者は植民地が製品・商品の「生産地」であると同時に「社会問題の処理場」だった側面があるとしているが、これも国内の大学事情に無理やり当てはめると、思い当たる事象があるだろう。
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『砂糖の世界史』の理論を解説し敷衍した内容。非常に読みやすく噛み砕いた内容になっているが、逆に重要な部分を読み飛ばしてしまいそうになる。多分、参考文献を参照しながら、読まないと「分かった気」になってしまうかも。
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以前に同著者の学生向けのやはり名著『砂糖の世界史』を読んでいますので内容的には自分にとって新しくはありませんが、アメリカ史を学びつつ改めて読むと色々と繋がり腹落ちします。
アメリカの独立から南北戦争期の歴史って、まさにヨーロッパ(スペイン、イギリス、フランス)の「世界システム」の「中に組み込まれた」人たちとそれに対する「抵抗派」の確執であり、さらにヨーロッパの国同士の覇権争いがそこに絡んで来て、またそれを利用する力学あり、牽制する力学あり、の歴史なんですよね…
「アメリカ史を知ると世界システムの歴史が見える」と感じる次第です。
あ、話が若干逸れましたが、間違いなく一読の価値ある名著ですね。