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◎話題のフードバンクは日本の何を示すのか?
フードバンクの考え方が高まり始めたこの日本で、かなりタイミングよく文庫化されたと思う。
フードバンクとは「まだ十分食べられるのに、売り物にならないから捨てられる食べ物を預かり、食べ物に困っている人たちに無料で配る仕組み」のこと。最近、東北地域の市民生協事業連合でも取り組みが始まり、新聞報道で盛んになってきた印象がある。
本書はアメリカのフードバンクの立ち上げと発展を歴史的に紐解いた上で、日本に応用できるだろうかということを実際の事例から解明している。
特徴的な点を言えば、アメリカのフードバンクの立ち上がりが「貧しさを自分たちで解消するためにできることを考えた結果」であることに対し、日本のそれは貧困も解決しようとするのだが「無駄な食品廃棄をしなくてもいいようにするために考えた結果」であることがとても面白い。
また、立ち上がりの過程で企業や個人からの寄付により団体を維持しビジネスモデルを作りつつあるアメリカに対して、日本ではその寄付が少なく民間団体についてはなかなか広がるのが難しいという現状もなんだか日本らしい。
ただ、日本らしいとも言っていられない。
日本でも貧困層が増えている中でフードバンクの考え方は重要性を増す。「生活保護を受けてしまうと抜け出すのがなかなか難しい。その手前で救えるのがこの活動」と語っているのも印象的で、弱い人の立場に立って、なんてよく言うが、行政も民間も本当に弱い人の立場に立った活動・業務ができているのか今一度考えさせられた。
行政の取り組みも群馬県太田市の例が出てくるもののそれ以外目立った事例は出てこないし、国での検討もまだ始まったばかり。これから発展していく活動なだけに、大いに関心を持ちたいし、活動に参画できるならそうしたい。
あとがきより以下を紹介する。
「私たちはどんな社会に住みたいのだろう。
あなたは、どんな社会に住みたいですか。」
この質問に答えることが、フードバンクの未来につながる。
(2008年7月に岩波書店から出された単行本を文庫化)
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2007年時点のフードバンクの取り組みについて書かれている。文庫版ではその後の日本での動きにも触れられている。フードバンクについての調査もいいが、セカンドハーベストジャパンの社長のチャールズさんの生い立ちにインパクトがあって本として少しブレているような気がしなくもない。この本の印税はフードバンクに寄付されるとのこと。私もボランティアや寄付に取り組んでみたい。
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賞味期限、消費期限切れ、パッケージ不備などの理由で廃棄される食料品を回収して、各種施設へ配る仕組みをフードバンクという。諸外国では当たり前の仕組みだが、日本ではまだまだの状況という。東京のフードバンクを立ち上げたチャールズさんの人生が壮絶で非常に感銘を受けた。社会貢献について考えさせられる一冊。
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食品ロスとフードバンクのことを勉強する必要があって読みましたが、フードバンクの実情の勉強になるだけでなく、寄付や弱者救済といった「いいこと」をするためにも様々な観点や立場による意識の違いがあることに気づかされた一冊。日本と欧米の感覚の違いも面白い。
フードバンクを必要以上に美化したり持ち上げたりすることなく、フードバンクというシステムの抱える課題や本質的な問題点についても真摯に記しているのがよかった。
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新年一冊目にふさわしい本。
フードバンクやパントリーの充実は急務。
残念ながらこの国の格差と貧困は拡大していくでしょう。
成長しきった大人にホルモンを投与して無理な成長を強いる戦略。思惑で市場を操作し都合の良い数字を取り上げて政策成功を捏造。実体経済から乖離した電脳市場で繰り返されるイカサマ賭博。
それらを放置すれば一部の富裕層と権力者は潤うが、しわ寄せは今後も中間層以下を打ちのめし続ける。
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「おにぎり食べたい」と日記に書き残して亡くなったひとり暮らしの男性のニュースは記憶に新しい。
アメリカではフードバンクが誕生してから40年以上経っていて、システムも出来ている。
日本にもフードバンクをと立ち上がったのはひとりのアメリカ人だった。似たようなシステムはもちろん日本にもあったが、企業が参加しシステムとして活動するにはアメリカでのノウハウが必要だ。ただ日本の企業はフードバンクに対しては弱腰のところが多いらしい。
この本が刊行されたのが2008年。つい最近の新聞には日本で年間632万トンの食品ロスがあり、そのうちの約半分の302万トンは家庭から出たものだという。やはり日本には定着しないのか。
2017.2.3…3
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川に流れてる赤ちゃんの話が、説得力あるフードバンク事業の意味を示していた。
もし川に流れてる赤ちゃんがいたとしたら、川に投げ込んだ悪いやつを止める人が必要だが、今すぐ川に飛び込んで助ける人も必要だという話。
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目標半分到達。
新しい本との出会いを積極的に求めていた時期に、電車でたまたま近くに乗っていた方が読んでいた本。タイトルに惹かれ、いつか読もうとチェックしていた本でした。
これは結構根底から色々考えされられる本です。手元に残します。みんなにもぜひ読んでほしい。
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2006年に出版された本を2016年に文庫化。
「あとがき」の後に、2006年の出版当時の状況と文庫化された2016年までのその後が書かれており、本書に書かれた事柄の重要性とその深刻さをさらに実感させられた。
「まだ食べられる食品が大量に廃棄され、もったいない」という、イメージしやすいテーマが入り口ではあるが、食べることに困っている人達に届けることがいかに難しいことであるのかが理解できた。
まさに挑戦し続けている方々の活動と課題を理解できる一冊。
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フードバンクが、ロスされる食品だけでは成り立たなくなっているのを感じました。食品ロスを減らすという役割は現在の全米では薄く、結果的に生活困窮者支援の意味合いが強くなっています。
ただ生活困窮者に食料を配るということは原因治療ではなく、明日の命などをつなげるなど人が困っていることに対してその場しのぎの絆創膏的な役割です。ただ緊急で支援を求める人もおり、そうした人にとっては有効であり、最も必要な支援である以上まだまだ役割が求められていることを感じました。
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コロナ禍にあって注目が集まるフードバンクという活動について知りたくて手に取った。初版は2008年に単行本として刊行され、2016年に現代文庫に収載されるにあたり、その後の経過も加筆されている。やや情報が古いが、とてもいい本だった。
まず、前半でフードバンク発祥の地であるアメリカの2008年当時の最新状況が紹介される。ビジネス街の中心にビルを構え、いくつもの専門部署に分かれる等、想像を超えたスケールの大きさに驚かされる。参加する企業には税制優遇のインセンティブがある等、制度上もしっかりサポートされている。一方で、すでに当時、企業の効率化が進み、廃棄品が出にくい状況となっており、フードバンクでは食料を購入したり、自らのブランドを立ち上げたり、食料を提供する施設から「維持費」を徴収したりと、変化が生じていた。
データが多用され、非常にわかりやすい説明がなされるのは、さすが元新聞記者の著者である。
アメリカの章で印象に残ったのは、教会が地域のコミュニティのハブとなり、フードバンク活動を支えているということ(日本には寺があると思ったが、最初はうまくいかなかったらしい)。そして、活動資金の半分は個人からの寄付で成り立っているということ。寄付やボランティア文化のない日本では、そもそも根付きにくい活動なのではないかと想像させ、日本のパートに入っていく。
日本のフードバンクの草分け的存在であるセカンドハーベスト・ジャパンの創設者は、マクジルトン・チャールズさんという外国人男性である。日本のパートは、彼の生い立ちが導入となり、団体設立までの興味深いエピソードが描かれる。日本とアメリカの文化的な違いがフードバンクの設立にも色濃く影響を与える。悲しいかな、日本の困難な人たちは、横にも縦にもつながらず、孤立しているのだ。
2008年当時、日本のフードバンクは「もったいない」食品のロスを減らすことに主軸を置いてきた。しかし、リーマンショック後、「貧困」へと視点が移ったという。そして、各地にフードバンクが設立され、2016年現在に至る。企業や個人からの寄付に大きな期待ができない日本独自のフードバンクも育ってきている、としてまとめられている。
うーん、すごく勉強になった。でも、その後どうなったんだ。今はどういう状況なんだ?
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読了しました。
現在、私がボランティア活動として地元のフードバンク活動に参加しており、様々な知見を得たくて手にした本です。
本書は、日本で初のフードバンク団体「セカンドハーベスト」(2HJ)の設立から、軌道に乗るまでを中心的に記載されており、アメリカなどの海外の情報や日本の現状についての分析が詳しく記載されてい本です。
2008年に著書は発刊されていますが、2021年の現在に起こっている「食品ロス」「貧困」などの社会状況は変わっていおらず、むしろ深刻さを増しているような感じがしています。
なので、今でも新規性豊かなものであり、十分に手に取った動機を満足できた内容でした。
食品ロスをもたらす、資本主義、商業主義的な流れ。
子供、外国人、一人家庭、派遣社員などグローバル経済がもたらす格差社会。
それをつなぐのが、フードバンクだということです。
現在もあるフードバンク運営団体「セカンドハーベスト」ですが、ただの善意の
ボランティア団体ではありません。
寄付金を募るためのマーケティング戦略、専門知識を有する人材採用と育成、
効率的に食物を運ぶためのロジスティクス、経営管理的な組織運営。
老後の余勢をボランティアという考え方は否定しませんが、「人助け」は持続的な
モノでなければならないと私考えており、そういったことをするためには、
経営的なものの視点をもち、「社会課題」を解決していくといったあるべき姿であると思っています。
本書は、そういう気持ちを満たしてくれる本です。
随所にそういった事例や考え方、そしてそれを進めるための熱い気持ち、パッションがてんこ盛りです。
私が知りたかったフードバンクという組織の運営の考え方などもヒントがたくさん載っています。
「フードバンク」を知りたい方にとては、教科書的な本の位置づけであり入門書を探している方にお勧めの本です。
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大学の授業の課題を書くにあたって読んだ。
アメリカと日本に対するボランティアの価値観が違うことに驚いた。セカンドハーベストジャパンの活動は今食糧難民の人たちを助けることはできるけど、救済措置であって原因解決にはならない。だけど、それを必要としている人はいるわけで、その活動を辞めてしまったらその人達はお腹を空かせてしまう。このバランスが難しいと思った。でも、私はこの活動は、まだ食べられるのに捨ててしまう食品を活用できるのでとっても良いと思う。セカンドハーベストジャパンのことが詳しく知れてよかった。
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アメリカのフードバンクの歴史、アメリカのフードバンクの現状と課題、日本初のフードバンクの設立に携わったアメリカ人の半生、日本のフードバンクの紹介や現状と課題など。
自分の地域のフードバンクの支援をしていきたいと思った。