紙の本
お薦めです
2017/07/25 07:00
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投稿者:Atsushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「バブル崩壊」という言葉が使われるようになって久しいが、当時金融機関に勤めていた自分は、「株と土地は永遠に値上がりする」と信じていた。狂った時代はあっという間に終わり、この物語の主人公のように「その後の敗戦処理」に多くの時間を費やしてしまう。「ナカメシェアハウス」に集う登場人物たちは自らを、「今はちょっと、ついてないだけ」と受け止め、苦しみ、悩みながら「見たことがない景色を見たい」と新たな道を歩み始める。そんなラストは感動的。最初「嫌な奴」として現れる宮川の亡き母への思いに涙腺が緩んだ。佐山さんも頑張れ!
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「白鳥、芦花に入る」を貫き通すような味わい
2016/04/13 19:05
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投稿者:タンポポ旦那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊吹有喜としては「ミッドナイト・バス」につながる分野の作品。温かさと前を向いて生きる大切さ、喜びを改めて感じさせてくれる。
腰巻にあるような“敗者復活戦”というような勇ましい、或いはある種猛々しさを感じさせる内容ではなく、有喜さんらしい視線で主人公と周辺人物の再生への道筋が描かれていると思う。
現実的には、こうも好人物が集まるもんのか?と感じるところが有るかもしれないが、これこそが有喜さんの世界ではないか。
読後、久々に思い出されたのは、原典は忘れたが「次郎物語」で次郎が恩師から贈られた“白鳥、芦花(ろか)に入る”という言葉。白いアシの花が一面に咲く中、白鳥が舞い降りて、その姿はアシに隠されてしまうが、舞い降りた時の羽風でアシが少しづつ揺れ動き、白鳥の姿が見えてくる……というもので、微力で初めは何の影響も与えないように思っても、徐々に周りに力を、影響を及ぼして行く、というような意味だったと思う。まるでこの言葉に貫かれているような作品と感じた。
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敗者復活
2016/07/17 00:37
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投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作短編集。くすんだ人生を過ごす人々が敗者復活を起こす物語。それぞれが持つスキルで他人を助け、そして自分を助けていく。小さな再起動、再稼働の物語。
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伊吹さん初めて読んだけどおもしろかった。章ごとに主役がかわる系のあれだけど、何も考えてなさそうな人でもいろいろ思ってるのね、とは違うおもしろさです。
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かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチンコに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。
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覇気もやる気も向上心もすべてどこかへ置き忘れてきたような中年男・立花浩樹が主人公である。もともと目立つ方ではなかった浩樹が、ひょんなことから注目を浴び、作られた姿と現実の狭間で自分を見失い、しかもバブル崩壊に伴うあれこれによって、財産もすべて失うことになった結果のこの体たらくである。ある日、母が暮らす施設の母の友人の写真を撮ったことがきっかけで、心の持ち方が少しずつ変わり、周りの人やそのつながりに後押しされて、自分の居場所や進む道を見つけるまでになるのである。見た目と身体だけで注目されてきたと卑下するばかりだった浩樹だが、外見と内面のギャップも魅力的に思われ、つい応援したくなる。どん底にいても、人とのつながりを断たなければ、浮かぶ瀬もある、と思わせてくれる一冊である。
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バブルの崩壊と共にすべてを失った男の喪失と再生の物語。回りを固めるバイプレイヤー達も魅力的で、読後にはほっこりします。
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2020/2/28
中年の再スタートの話は染みる。
だって私も中年だから。
読み始めはあれ?鬱々としたお話?イヤやなぁ…と思ったけどすぐ大丈夫になった。あ、この話おもしろいに違いないわと思った。
スタートでは嫌な奴やった宮川さんもまさかの復活。
これがニクいよねぇ。
人は一面だけじゃないんだもの。
すぐ関わりを断ってしまう私が本から学ぶべき実感だわ。
逆もあるけど。
コウキが借金返したのはかっこいい。
こんな大きなことはできないけど私も負の連鎖を断ち切れる人でありたい。
世界の負の総量をちょっとでも減らしたい。
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「四十九日のレシピ」がよかったので読んでみた。
「今はちょっと、ついていないだけ」のタイトルがいい。救われる。
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バブル期に名を挙げたネイチャリングフォトグラファーコウキタチバナ。
連帯保証人として大きな借金を抱えることになり、田舎に帰り、借金を返済しながら母と暮らしていた。
母の言葉に背を押され、立花は再びカメラの道に進む。
立花とその周りの人達の連作短編。
皆何かにつまづき、悩んでいる。
シェアハウスを中心に集い、支え合って、それぞれがついていない時期を抜けていくという再生もので、元気を貰えます。
登場シーンは最悪だったけれど、宮川がとてもいい人で、立花のこれからは宮川にかかっているかもとも思いました。
婚活写真を撮りに来た智美の章「甘い果実」は、この本の中では異端でしたが、私は好きでした。
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人生に敗れ疲れた男女の再生物語。
タイトルがいまひとつ…と思ったけど
最後まで読むとこのタイトルが活きてくる。
そう、今はちょっと、ついてないだけ。
【図書館・初読・7月14日読了】
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四十数年の人生を顧みて何やってんだ自分、って思うこの頃なのだが、果たして今、ちょっとついてないだけなのかどうなのか。うん、ええ話だけど。
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うまくいかないことがあっても「今はちょっと、ついてないだけ」と思うことにしよう。
いつかきっとまたいいことあるさ〜。
どこでどんな出会いがあるかわからないもんだな。
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短編連作。
「テイク・フォー」の中で「ワイルドカード」という言葉が挿入されるけど、『四十九日のレシピ』の中の「テイクオフ・ボード」を思い出した。
そう言う横文字単語をこういう場面で投入するのって、伊吹先生の個性なのかな。
順番は前後するけど、「薔薇色の伝言」で、瀬戸ちゃんとあまりにも被って、号泣してしまった。本当に私は今グダグダなんだけど、読後はタイトル通りに『今はちょっと、ついてないだけ』と思えてしまうのは、このお話がすごく優しいからだと思う。
(『四十九日のレシピ』ドラマ版のDVDがまた見たくなりました)
私にチャンスがあったら、次回の本屋大賞に推薦したい作品です。
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同世代の男女が、いろいろな思いを抱え、自身が進む道を探す。
連作短篇集。
秘境を旅する番組で脚光を浴びた
元カメラマン・立花。
背負わされた借金を、必死に働き続け完済。
カメラを手にしなくなり何年経っただろうか。気が付けば40代になっていた。
立花が言う。
「どこへ行くのだろう。そして願えばきっと、どこにでも行ける」。
羨ましいぞ、立花!
その余力が自分にはあるかな。
連作短篇集7話の中で好きなのは
婚カツが上手くいかず、海外へ出掛けた佐山智美。
そこで出会った男性との甘美な話「甘い果実」が衝撃的でおもしろかった。
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伊吹有喜さんとの出会いは【風待ちの人】でした。
この本がとても好みで、気になる作家さんの一人に。
【今はちょっと、ついてないだけ】は4冊目。
バブル全盛期、「ネイチャリング・フォトグラファー」として脚光を浴びていた立花浩樹。
信じていた人の保証人となり、借金を肩代わり。
全てを失って、故郷へ。
表題作を含む7編の短編。
立花のまわりに集う、”今はちょっと、ついてないだけ”な人たち。
それぞれが、悩み、もがいている。
ほんのちょっとしたきっかけで、上手くいかないことはある。
だけど、それは”今はちょっと…”なんだよね!
そして、”今はちょっと、…”を経験した人は優しさを持ってるんだよね…
敗者復活って、思わぬ力を発揮できる事がある!
表題作は、思わず涙ぐんでた。