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商品説明
戦争へとつながる国家権力の暴走が大正時代にすでに兆しを見せていたことを、幸徳秋水・大杉栄の抹殺、河上肇「貧乏物語」と貧困・格差論、津田左右吉「神代史」史料批判と和辻哲郎による「古事記」復興などから読み解く。【「TRC MARC」の商品解説】
昭和全体主義の始まりを大正に見る
「大正を問い始めた私は、やがて大正が創り出した、全体主義的昭和という時代の中に自分は生み落とされたのではないかと考えるようになった」。
昭和に思想史的問いを向け続けてきた著者が、幸徳秋水・大杉栄の抹殺、河上肇の『貧乏物語』と貧困・格差論、津田左右吉の「神代史」史料批判と和辻哲郎による『古事記』復興、大川周明による「日本精神」の呼び出しから、大正時代から昭和戦前につながる国家権力の横暴を読み出す。【商品解説】
著者紹介
子安宣邦
- 略歴
- 〈子安宣邦〉1933年川崎市生まれ。東京大学大学院博士課程(倫理学専攻)修了。文学博士。大阪大学名誉教授、日本思想史学会元会長。著書に「昭和とは何であったか」「日本近代思想批判」など。
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書店員レビュー
丸善ジュンク堂書店のPR誌「書標」2016年6月号より
書標(ほんのしるべ)さん
昭和42年7月、最高裁は「大逆事件」(明治43年)再審請求の特別抗告を棄却した。幸徳秋水らの有罪は覆らず、判決後即座に執行された死刑についても不問のままだ。
大正13年9月、関東大震災直後の混乱のさなか、大杉栄は日本陸軍によって惨殺された。今日でも根強い人気を持つ大杉だが、その人となりが偲ばれることは多くとも、労働者が社会変革の道具だけにとどまらず、運動の主体であるべきとするその思想が、参照されることは少ない。
ぼくたちは、昭和20年に大きな「切断」を見ることに慣れすぎている。だが実際には、時代は連続しており、戦後の「民主主義国家」日本の国家的発展史とは、「民主主義」の衰退史ではないか、と子安宣邦はいう。「大逆事件」から1世紀後の日本は社会主義をその政党とともにほぼ消滅させた、と。
幸徳や大杉らの「直接行動論」の対極にある吉野作造の「民本主義」は、「国家の主権の活動」としての政治が人民を目標とすべきことを言う。現在の「お任せ民主主義」に繋がる。
「神代」を政治的な「作り物語」と喝破した津田史学の〈脱神話化〉の読みのすごさが顧みられることもなく、『古事記』が今またもてはやされている。
だから、子安宣邦は「「大正」を読み直す」のだ。明治38年の「日比谷事件」を発火点とし、「米騒動」へと結節する、民衆が秩序を動かしていくエネルギーの充満した「大正」を。
紙の本
津田左右吉の章は圧巻
2016/07/04 07:35
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マハラオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神代史」は「つくり物語」である。この意味は神代の物語が歴史的伝説でない、ということであり、神代史をいくら「史料i批判」したとて「歴史的i事実」を見出すことができないということである。神代史は天武朝の捏造であるから民族の歴史と無関係である。戦前津田が起訴された理由は「<神代>と<いま>との連続性を遮断しようとする意志の表明」であったからである。翻ってみれば皇祖神とされる太陽がいざなぎ・いざなみから生まれるというのは「宇宙開闢神話」としてありえないことである。ひとくちに記紀というが古事記の序が後の世の作であるのは真淵以来疑われていることであり、宣長によって古事記偽書説を否定する著者の立場はいささか苦しい。