紙の本
本好きの胸に沁みる一冊。
2016/05/04 01:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は京都市左京区にあったガケ書房という本屋の店主、山下賢二さんの生い立ち・ガケ書房の11年間・そしてその後のエピソードが詰まった一冊です。
夏葉社から刊行された「昔日の客」も本に対する愛情や本を愛する人々について綴られた一冊でしたが、本書はそれに加えて現在の書店経営のシビアさや、個人経営店の可能性についても触れられています。夢を追うことの魅力と苦悩について「書店経営」という視点から、とても正直に描かれていました。
しかし、ただシビアなだけでなく、ガケ書房を通して生まれた人と人の繋がりや、本という文化の可能性についても山下さんの思いが滲み出ていて、本が好きな人間としてはかなり胸に沁みる一冊でした。
帯のメッセージは単純明快、
「京都、本屋さん、青春」
本当にこのフレーズに尽きる一冊でした。
本が好きな人や、(私のように)モヤモヤしながら就職活動をしている20代の人にぜひ読んで欲しいです。
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2016.5月
なんとも深くて濃い。潔くさらけ出した本音。すごいな。なんとなくマニアックで近寄りがたい店という勝手なイメージを持ってたけど(行ったことないのに)全然違った。行ってみたかったな、ガケ書房。人間、行動力だと思う。人ってやらなきゃいけない時は自分も驚くくらいものすごい行動力を発揮したりする。山下さんにとってのガケ書房は必然だったんだな。書店員として目の前だけを見つめるのではなく、全体を、そのコミュニティを、冷静に俯瞰的に見なきゃいけないなと思った。
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京都の名物書店だったガケ書房。
一度だけ行った事がある。面白い本屋だった。
名物本屋でも悩んだり仕事がイヤになったりするんだなぁ。言われてみれば当たり前かも知れないけど、〝名物〟な本屋って、本にめちゃめちゃ詳しいプロがサラサラとやってると勝手に夢想してた。
読み物としても面白く、一気に読んだ。
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二枚目的な品揃えへの批判に共感。読書や書店に対する思いにも共感。ガケ書房へは一度しか行けなかったのが残念だ。
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ガケ書房なんて京都では恵文社に並んだ名物書店で、そんな本屋でも経営に困ったりするんだなと切なくなったり。高い家賃のせいだったのかもしれないけど...。著者の山下さんのことはホホホ座を訪れた何回かでレジ越しに見たことがある程度なのだけれど、私の中でだれより「良い顔」を持った人として認識されている人でもある。こういう顔の人間になりたい、と、ろくに話したこともないのに思っている人。だからどんなことを著書に書いているのだろうと思ったら、超人でも哲人でもなくて、ただひとりの人でしかなくて、嬉しかった。ひとりの人が本屋のこと、本のこと、これまでのことこれからのこと、じっくり考えていることを纏めたものだった。出版にまつわることを考えるときにもそうでないときにも何度も読み返したいです。ユーモアがありながらも無駄はない真っ当な文章もよかった、良い本でした。
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身を切るように綴られた文に切なくなった。手に取ってページをめくる手触りもよくて、大事に置いておきたい本。自分の正直さとか、必死さとか、外に開いているかとか、考えた。
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これは本屋がどうしたとか、個人店を営むためにはとか、そういったことを飛び越えて紡ぎ出される一大青春記でしょう。
これを読んで胸の奥にふつふつと沸き立った本屋周辺のアレコレを。まだまとまりきれない想いをつらつらと書き出してみます。
本とは何なのか? 読書とは何なのか? 自分にとって読書は娯楽である。本は娯楽を提供してくれる媒体。それ以上でもそれ以下でもないもの。ならば中身さえあればいいのか? 電子書籍でいいのか? いや、本はハードとソフトが一体化した究極の媒体。本さえあればいつでもどこでも、その娯楽を享受することができるもの。風化してしまうことがあるかも知れないけど、物理的にダメにならない限りいつの時代のものでも中の情報を容易く取り出すことができる。だからこそ古本というものが手軽に世に流通する。そんな媒体が好きであり、そこから得る娯楽が好きなのである。
個性的な本屋とは? 個性的な本屋と呼ばれる店がどこも似たような造りや品揃えになってしまっている現状。本好きな人が好きな本というレッテル。しかし売れなきゃ店は維持していけず、売れるパターンがあるのならそれをなぞるのは致し方ないことなのでは。でも、ならばこそ「個性的な本屋」とは何だろう? 個性的であっても経営が成り立っていなければ、そこは本屋として継続できなくなってしまう。
本屋は誰のためのもの? 本が好きな人は本屋がどこにあろうとも行くが、普段本を読まない人の目には本は全く写らない。本を日常的に読まない人に本を意識してもらうにはどうすればいいのか? 本と全く関係ないものと結び付ける? 本を本好きの人たちだけの嗜好品としてしまっては、益々本の未来が本屋の未来がなくなってしまう。かといって安易に別業種と結び付けるのもどうなのだろうか。カフェを併設すればいいという問題ではないかも知れない。
何故本屋なのか? 本が好きであり、本を介した娯楽が好きであり、その楽しさを伝え広めたいから。何故? 広めることで本の世界が広がり、より一層本の楽しみが増え、その楽しみに出逢うことができるようになるから。
つまりは、もっと自分自身が本で楽しみたいから、本の世界が先細りされては困る。楽しむために広めていきたい。
本の世界の端っこに立つものとして、色々考えさせられたのです。
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そのエッセイが良かったかどうかは、その著者に会わずとも活字をとおして惚れたかどうかだと思うのだけど、ズバリ惚れました。性と死のことやセンスとバランスのこと、繋がる人繋がらない人の話、とても共感しました。何かにつけ、考えて、結局そういうことなんだよな、っていうことが、すべて書かれていました。なにより正直な文章、引き込まれました。ぐいぐい。またその後のこと、書いてほしい。
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気にはなっていたけど、なぜか行くことがなかったガケ書房。あの辺りに出向くことがなかなかないのと、ちょっとトンガリすぎた外観に気後れしていたのだと思う。
お店を起点にいろいろ面白いことをやっていたのだとわかってちょっと悔しい気分。
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筆者がガケ書房を始めるまでと、ガケ書房を始めてからの事について書いた本。経営者としては全くの素人だった彼が、実際の書店経営を始めてからの事と、そこに至るまでの様々な経験が生きて今日があることがわかる。
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大学時代によく通った店。2004年から2007年頃なので、比較的初期の頃だと本書で初めて知る。
立地的に恵文社とどうしても比較され、かなり意識して個性を出してる印象があった。CDのほうをよく買っていたので、やはりサブカルチャーのイメージが強い。
ホホホ座に活動を切り替えた頃、店主が「サブカルとか嫌いなんすよ」って言ってたのが印象的だった。
本書で、印象がずいぶん変わる。思ったよりずっとしっかりと取次と向き合って、普通の本屋の一面が見えたこと、店主のルーツ(もっと左京区にどっぷりな人だと思ってた)、そして、まだまだ途半ばであること。
もっと、とっつきにくい感じだと思ってた。とがっていて、変な人が集まって、アンダーグラウンドの世界なんだと。
実際には、この世界、この時代で生き抜いていくために既存の制度を使ってふつうの本屋として、ふつうに本を選び、ときにさまざまに工夫を取り入れ、変わり続けることで、成長してきたお店だった。常に変化が求められるのは、本屋に限ったことではない、今はどんな仕事でもふつうのことである。
本屋だけが特別なわけではないし、ガケ書房が特別なわけでもない。
なぜ、ホホホ座に?ということは多く訊かれていることなんだと思う。そのあたり、うまく時代の流れを捉えながら、機を見て本との関わりかたを柔軟に変えることのできる経営的な才能のある人なんだと感心した。
面白い一冊だった。
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大型書店でさえ閉店になるご時世、個人経営の本屋さんは、本当に大変だと思います。お店はなくなってしまって残念だけれど、人々の心に残る書店だったのでは…。近くだったら行ってみたかったです。
夏葉社さんの本は、何冊も読みましたが、良いですね。好きです。
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ガケ書房店主による自伝。
であるが、単なる自伝にとどまらない。
読書、本屋、出版業界等々に対する問いかけや著者の哲学が、著者の実体験とともに語られる。
「性」や「死」に関する本の売れ行きが最も良かったというのは、シンプルながらとても興味深いことだと感じた。
ガケ書房やホホホ座に行ったことのある人はもちろん、ない人にも読んでほしい。
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京都に行った時、ガケ書房に行ったことがあった。見た目のインパクトから中野や高円寺あたりのサブカル書店を想像していたら、さっぱりとしておしゃれだったので拍子抜けした記憶がある。それは後期のガケ書房だったんだなぁといま読むとわかる。
自分のカラーを押し付けてもダメ、お客さんに買ってもらうように、でも迎合ではなく、何を期待されているのか…試行錯誤しているのがわか、お金という現実に向き合わなければならない、経営って大変だな…。後半はずっと辛い辛いと言っていて気詰まりだった。
それでも本の力を信じてるのが救い。
体験ごと買うお土産、確かに!
本はどこで買って何処で読んで…という記憶もセットになってるから、音楽もそうだけど、だからこそ何処で出会うかって大事だしロマンと、スリルがあるよなと思った。
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山下さんの幼少の頃から「ガケ書房」の開店→本屋さんをの運営→「ガケ書房」を閉店→「ホホホ座」開店にいたるまで、書いてあります。
○始めることより、継続擦ることの難しさ、
○店を畳む時のプライドと解放されたい事のアンビバレンツ
といった心情的なところと
○本屋(自営)を維持するためにはどん事をすればいいのか。
といった実務的なところがバランス良く書かれています。
だれでも思う文がある本ではないでしょうか。