紙の本
現代中国を見るための一視座
2017/02/27 18:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の論理を歴史から解き明かし、読者に現代中国の思考・行動論理を考えさせるための一冊。
殊に興味深いのが中国の歴史における「史学」の位置付けで、中国においては「正統な歴史」という観念が極めて強くそれは現代の日中が抱える歴史認識問題にも響いている。
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隣国中国の「論理」を理解するためには、歴史に学ばなければならないが、日本人の中国に対する歴史認識には心許ない部分がある。本書は中国の「論理」を、謎の国・中国の「史学」(儒教と史書という大枠)、社会と政治(士と庶の分別)、世界観と世界秩序(天下と華夷)という視角から定位を試み、そして「近代の到来」、「「革命」の世紀」と直近の歴史を分析する。
Ⅰ〜Ⅲ章が基礎編、Ⅳ章、Ⅴ章が応用編と言っても良いだろう。コンパクトかつ平易にまとまっていて学ぶところが多い。とくに近代に入って「西洋の衝撃」を受けてからの中国知識人の「附会(こじつけ)」の論理は、康有為 → 梁啓超 → 陳独秀へと明快に整理されており、わかりやすかった。
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漢字を使い、その他文化も一見日本に似ているように見える中国だが、実際は全く違う論理をもとに動く国である。その論理を歴史から解き明かそうというもの。
まずは史学から始まる。儒教は諸子百家の一つだったが前漢時代に勢力を広げて一種の国教となった
中庸を重んじるように常識的であるため、一定以上の合理主義が育たない。そして自分を中心に上下関係で外界を整理する思想となり、平等といった概念が希薄となった。また、思想の具体例となる史学から正統といった観念が生まれ、例えば偽満洲国といった呼び方をするなど、建前が史実を動かすパワーを持ちうる。
前漢からの安定した400年間の間に貧富の差や身分が生まれ、貴族制となったが、宋代以降、君主独裁・官僚制が生まれ、士大夫が成立した。科挙に受かった彼らは庶民に対して優越感を抱き、士と庶に隔たりが生まれた。
清朝時代の西洋との外交や条約は、実現できない攘夷にかわる撫夷だった。日本人は明治維新の辿ったコースが正当で当たり前と考えがちだが、中国は条件が違うので、それが当たり前ではない。中体西用や附会と称する歴史過程があった。その後日本での漢語での西洋の概念の訳語が、経書などから離れての思考を促した。
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歴史的アプローチから、一筋縄ではいかない中国の「論理」、すなわち理屈のこね方を考察。
本書の中で特に、中国が西洋化を受け入れる過程においてみられた「附会」という「論理」の指摘が、初めて知ったことで、非常に興味深かった。「附会」とはひらたくいえば「こじつけ」の意味であり、西洋が中国と「異なる」とすれば、それは(中国より)「劣る」ことと同義なので、西洋に倣うのは論外になってしまうため、西洋のすぐれた部分は、「異なる」のではなく、つとに中国の古代・古典に存在したものだと、附会する・こじつけることで、西洋かを正当化しようという論理であるという。
なかなか掴みどころがなく、御しがたい、やっかいな隣国である中国を、歴史的・構造的に理解するための端緒となる良著である。
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この作者の中国関連本を続けて読んでいる。とにかく、わかりやすくておもしろい。これも中国の二元化という一貫した視点での中国史で、見通しが明るくなった。
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予想外に面白かったな。
中国という国のようで国でなはい文明を理解するのに、歴史を辿るのは正しい視点だろう。中国の歴史を勉強してきた人には当たり前のことかもしれないが、なるほど感がある。
なぜ中華思想なんてものが生まれて、社会主義市場経済なんてものが成立するのか。
日本て、本当に怖いところにあるよ。
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日本が嫌いなのに、爆買いするといった中国人の思考の「矛盾」の理由を説明するということをうたっているのだが、自分はあまり理解できなかった。のっぺりと儒教を中心にした中国思想史を説明されて「というわけなんです」と言われてもと……。テーマが絞れていなくて、著者がいちばん得意で言いたいことに終始している気がする。
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中国の伝統的な歴史観国家観そして知識に対する捉え方を最初のイントロダクションで簡潔にまとめてくださり、その後これらの考え方が中国国民ネイションステートの創設にあたりどのような役割を果たしたのか、あるいは障害となったのかをわかりやすく解説してくださっている。
特に日本の和製漢語による新しい中国語(白話運動)への影響と、イデオロギーを正当化するための歴史観についての説明が非常に興味深かった。個人的に岡本先生のファンの1人であるので今回の著作もイチオシ。
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非常にわかりやすい。
中国の立場から歴史をひもといてみれば、現在の中国の有りようがよくわかる。
西洋的尺度で見ると、中国は巨大なガラパゴスであって、現在でもそれは色濃く残っている。
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・儒教は個人主義。儒教を軸にしていくと、紀伝体(天子の記録と個人の伝記を中心に編むもの)になるのは自然な流れのように思えるが、それが「歴史」として正しいかは疑問が残る。日本人が思う正しい史実と、中国にとっての「正史」は昔から違うものなのだ。
中国を統一するものこそが天子、それこそが正統とする中国。ありのままの史実を第一とする日本。ここに差が生まれることになるほどと思った。
・貴族たちの支配から科挙制度に変わっても結局士と庶の溝は埋まることはなかった。
・その後の時代も「華」「夷」として社会的に分けられていた。
・18世紀後半、イギリスとの貿易でも、清国はイギリスを野蛮人(外夷)として扱った。イギリスも清朝の人々を野蛮人とみなしていた。
後半の内容は結構難しい。この一冊だけで理解できる内容ではない。中国を学ぶ入り口という感じ。
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【そんな百年,中国の思考・発言・行動は,目まぐるしい転変をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは,中国の言動を根底で枠づける社会構造,論理枠組の本質が,いかに変わらなかったか,という事実ではなかろうか】(文中より引用)
思考の枠から中国を紐解いてみようという中国入門書。史書や科挙といったキーワードを元にしながら,いかにして中国が思考し,現実と直面したかを概観していきます。著者は,京都府立大学で教授を務め,近代アジア史を専攻している岡本隆司。
大枠で中国という存在を捉えるのにうってつけの作品かと。しかもそれが平易な言葉で記されているというところがまた高評価を与えたくなる点。中国の論理を提示しながらも,必ずしもその通りに現実は動いていないという点を指摘していることもまた重要に感じられました。
帯が強烈ですが☆5つ
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中国史の概説を通して、現代中国の振りかざす論理を説明しよう、という内容の本。古代から話が始まるので、非常に持って長々とした展開になるが、原因が過去にある以上、そうならざるを得ない。最後まで読めば、納得のいく結論になっているはず。
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「現代の中国を知るには、目前の現象だけでなく、歴史の事実からみなくてはならない」という著者の主張のもと、中国の内在的な論理を歴史的なアプローチから読み解く。
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理解しがたい隣人の行動を、歴史や家族観、文化の
基盤まで掘り返して「あちらの論理」を平易に解説してくれる
好著。
戦略的に日本を悪者にしているというのでは
説明がつかない、広範な反日感情や、
やり過ぎて逆に中国の国益を損なうようなことが
なぜ起きるのか、理解できた。
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中国人が何を考えているのか、本書は長い歴史から教えてくれる。いかに中国人(主に漢民族)が儒教に従って行動しているのかが分かる。これは王朝が代わっても、現在の中華人民共和国になっても行動の指針は変わっていない。ということは、中国人が持っている中華思想のもとに世界の中心であることを目指している。昨今の東シナ海の人工島や尖閣の問題で中国が一歩も退かないのは大昔から引き継がれている行動指針があるからだろう。これは国が明確な目標を持っているともいえる。一方、日本はどうだろうか。5年後の日本の姿を想像できる人はほとんどいないのではないだろうか。中国は100年先まで見据えた国家の計画を実行に移しているのではないだろうか。ここは中国の優れたところだと思う。隣国を知り、良いところは真似、悪いところは正せばいいのではないかと思う。