紙の本
光ることばとテーマがある
2017/03/11 02:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青時雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
松田青子さんの作品は将来はきっと現代文学のうえで重要な地位を占めるだろうと期待しながら読んでいます。
この作品集は191ページで50篇もの作品があるという、形式的にはショートショートと分類されかねないものです。
確かに「TOSHIBAメロウ20型18ワット」や「猫カフェ殺人事件」のような作者のセンスで押し切った超短篇作品や、「水蒸気よ永遠なれ」のごとくページをめくった時点と驚くような作品もあります。
しかし、ここで重要なのはショートショートという形式を取りながらも、作者のこれから扱っていくであろうテーマがむき出しの形で提示されていることです。
「ミソジニー解体ショー」や「男性ならではの感性」は現代日本の男女問題の限界を鋭くえぐり出したもので、これらは女性はもちろんですが男性にこそ読んでほしいと思う作品です。
他にも作者の重要なテーマと思われるものが散見されますが、それはぜひ読んで確かめてもらいたいと思います。
実は私は次作「おばちゃんたちのいるところ」は作者の長所であるセンスに溺れていて評価できませんでした。
ただ、この作品で示した作者が持つであろうテーマを突き詰めた作品が読者に手渡される時を信じて、私は松田青子さんの作品を読み続けるでしょう。
この作者は文学の沃野のよき開拓者に成りうると信じさせてくれる作品集だと思います。
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個人的にはスタッキング可能のほうが好きだなと思いましたが、松田青子さんすごいな、という印象が新作でるたび強く思う。
頭の中のぞいてみたい。絶対変笑。わたしの頭のどこか遠く、彼方向こうのほうで薄く一度考えた気がするような子とを
センスよくリズミカルに並んでいる、そんな短篇集。
面白かった。
少年という名前のメカ
パンク少女がいい子になる方法/いい子が悪女になる方法
みつあみ
男性ならではの感性
あたりのセンスがとくに好き。
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著者の言葉の選び方や着眼点はさすがだった。
だからこそ、短編じゃなかった前2作のもつパワーは圧倒的で、それと比べるとどうしても物足りなく感じてしまった。
また長編が読みたい。
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短編とか詩以前のプロットまんまみたいな「文章(?)」に感心しながら読んだ。
「ウォータープルーフ噓ばっかり」健在だった。
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「スタッキング可能」から、更に言葉を研ぎ澄まし、攻めた内容でぐいぐい読ませる松田さん50編の掌編および短編集。
「英作文問題1~3」で教科書英語を風刺したと思えば、ナショナルアンセム目線で憂鬱を描いてみたり「あなたの好きな少女が嫌い」「この国で一番清らかな女」では男性の求める女性観を皮肉っておきながら「We Can't Do It!」では男性社会にNo!を叫ぶ小気味良さ。
「この場を借りて」の某ヨーグルトの蓋には激しく共感。よくぞ言ってくれた!
表題作の地味でもしなやかに生きていきたいと思わせる筆致が染みる。
松田さんの作風は病みつきになる。今後も期待。
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『男性ならではの感性』が
凄く良かった。良かったのだが
読んでる途中で
これ笑ってる場合か?と冷や汗をかく。
蓮舫が嫌われて
小池百合子が好かれてる理由を考える。
女性が好きな女性を男性は好きじゃない
男性が好きな女性を女性は好きじゃない
分かり合えない男と女に少しアメリカ的要素を足している。
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ただの奇想天外系かと思いきや、ジェンダーにまつわるステレオタイプに鋭く切り込んでいく、なかなか爽快な短編集。
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ぶっ飛んでるなぁ。文章って自由でエエんやなぁと思わせる短編集。
玉石混交感は否めないが、その粒の粗さがジャズライブの即興みたい。
過剰にフェニミズムが感じられるのや、突飛過ぎてついていけない前衛的なのを除いて、俺は楽しめたけど、好き嫌い分かれるんだろうなぁ。
ヴィクトリアのファッションのヤツ、3年着てなかったセーターのヤツ、男性感性のヤツ、メロンソーダのテクノロジーのヤツ、金曜日の夜をお金で換算するヤツ、若い時代と哀しみのヤツ、が気にいった。
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星新一のショートショート?ファンタジーのお話かなぁ(よく読んでないイメージですが)、どこかの星に住んでいる住人たちのお話?と思ったら、色々な主人公の短編集。
独特の設定に「???」と言う内容もあったが、同感できる内容もあったりで、筆者独自の視点が面白い。
全体を読んで思ったのが、性差別について皮肉を入れつつ書かれているところが印象的だった。清らかな女性を求める王子の話とか、[ミソジニー解体ショー]。[男性ならではの感性]なんか。女性を男性に変えただけで「なんだかすべてが馬鹿みたい」だし。[履歴書]なんか一昔前(?)今もいるかな。男から見る都合のいい女性と言うか。私が嫌だなぁこう言うの。って思っている女性像を描いていた。
[フローラ]もそう。無意識に順序をつけてしまう自分も嫌なんだよな。
また、[リップバームの湖]は情景が頭に浮かんで(今海の側にいるから想像しやすいのか)確かになる程こういう見方。ありだなと思ったり。
筆者自身が性差別とかで嫌な思いをしたりしたのかな?なんて思ったりした。ガラスの天井が無くなればいいなと。思う。
ワイルドフラワーの見えない一年はよく分からなかったなぁ(笑)最後まで読んで良かった。と思った。
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暗喩が多く、くすっと笑えるものや、わかるわかると激しく同意するものがある一方、何のことやらさっぱりわかりませんというお話もたくさんありました。
巻末にこっそり注釈があると嬉しかったかも。
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11:松田青子さんの短編集!どれもさっぱりとした後味で、最高に面白いです。ふんわりしたもの、キリッと締まったもの、ユーモアと毒など、色々なテイストの作品が楽しめます。表題作もですが、「ボンド」も好きだなあ。ちょっとフェミっけが強い作品もあるけど、めっちゃ好きなやつ。これは買おう。
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50の短編。
印象に残ったものだけ。
少年のイメージを旅をしながら覆していく少年というメカ。
猫という存在を愛してる結論、神は馬鹿だ。
ごめん、正直よくわからんかったけど、
不思議な世界観。
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短編集50編
これが短編?と言えないようなものもあって、実験小説といったテイ。
「女が死ぬ」と改題されて文庫が出たが「女が死ぬ」は面白かった。後やはり、表題作も良かったし、「We can’t do it」も好きだ。
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50もの短編が収められている。
短編だからサクサク読めるかと思いきや、一つ一つが濃厚で、時間をかけて少しずつ読みたい一冊。
全然違うかもしれないけど、芥川龍之介の『侏儒の言葉』を想起した。私たちが普段何気なく過ごしている事柄を言葉に、物語にして提示されることでドキッとする。中にはほんの数行の作品もあるけれど、意味を考えるとクスッと笑ってしまったり、ドキッとさせられたり。
「ハワイ」は3年着られなかったセーターが主人公の話。
世の中でブームの断捨離の裏をかくような内容。
「少年という名のメカ」「あなたが好きな少女が嫌い」「女が死ぬ」などは私たちのジェンダーに対する認知バイアスに思いもよらない角度から攻め入ってくる感じ。「男の感性」も、世の中にある「女」に対する言葉を全部「男」にした作品で、その違和感から、逆に「女」に対する世の中の言及の仕方に疑問を抱かされる。
翻訳家でもある作者の海外映画やドラマへの造詣の深さも垣間見える。歴代ボンドガールが一堂に会して懇親会を行う「ボンド」には笑ってしまうし、私も好きなドラマ「クリミナル・マインド」に登場するDr.スペンサー・リードへの手紙の形式をとった作品もある。
『女が死ぬ』のタイトルとなって文庫化もされているとのこと。でも単行本のタイトルになっている「ワイルドフラワーの見えない1年」もすごく好きな作品。
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短編集。
いくつかの小説に関連性があったり、時々ショートショートより短い一文が挟まったりする。
相変わらず不思議な世界観だが、テンポがいい文章で読みやすい。
以外特に面白かったもの。
・あなたの好きな少女が嫌い
日本のアニメなどを見ていると黒髪ストレートに白ワンピ(もしくは女子学生の制服)が正統派少女像みたいな前提が存在するのを感じる
ポトレ撮影が目的でもなければそんな機能性に欠ける格好をしている女性がいるとは思えないような場面でもそういう格好をした少女が微笑んでいる画が多く、でもこういう少女を好む人たちは“自分を美しく撮影するために装う女”は嫌いなんだろうなぁと思う。
・女が死ぬ
瀕死の重傷を負った女性に行きあった人々。悲劇のヒロインであるその女性になにかしてあげようと声をかけるが、彼女はヴァギナ論を語りだし…
冷蔵庫の女という言葉が登場して久しい。
しかし未だにストーリーに一波乱起こすために男性主人公に試練を与えるために、女性キャラクターが死んだりレイプされたり流産させられたりする。
・男性ならではの感性
ミラーリング。
・履歴書
普通に働いているのに“女の子”としての役割しか求められない女性の履歴書。
「10年働いても、一度もち ゃんと「仕事」だった気がしない。いつもいろんなことがよくわからない。 次の10年も、よくわからない10年だろう。」
・テクノロジーの思い出
人類とともに発展してきたテクノロジー。
並走していると思っているのは人間だけで、テクノロジーは振り返らずに進んでいく。
・反射
物語のしっぽを捕まえるにはタイミングと運が必要
・若い時代と悲しみ
「若い時代と悲しみ」という花言葉を知ってから考えるようになった主人公の独白。たぶんこの花はサクラソウ。
・文脈の死