紙の本
自分の人生を振り返って心が痛くなりました
2020/06/22 22:48
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼少期、高校生、上京、大学卒業を経て詩人兼ライターとしてご飯を食べていくまでのエッセイ集。女性性に悩み、周りとのズレに悩み、詩の世界で生きていく不安に苛まれ、様々な洗礼を経て何者かになっていく過程が綴られていて何だか考えさせられてしまった。
「作家たるもの恋愛を」とありきたりなことを言われてくよくよする著者は恋愛経験の少なさに悩んでいるけど、その一方で誰かに言い寄られると冷めた目で自分を客観視していたりする。こういうところはああ人間ってそういうとこあるよな(クソデカ主語。すみません)、と思ったり。中の下の顔でもああ毎日が楽しくなるような恋愛したいなって思いつつ「結局それって、つらいから心の拠り所がほしいだけでは?まずは独りで生きていけるくらい強くなれよ」とか思い直したり。会社に行く電車の短い時間の中で、うまくいかなかった人生のあれこれが頭を過って、恥をかき直したり、反省し直したりした。
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詩人の欠点は数え切れない。「人付き合いが壊滅的にヘタ」「批判したがり」「傷つきやすい」「被害妄想が過剰」。さらに、言葉に器用だからこそ「相手が決定的に傷つく一言」を口にすることもある(詩人を敵に回してはいけない)。
(P.9)
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エッセイを読んでて1番危ないのは
自分が賢くなったつもり、
自分が何かを簡単に手に入れたと
思ってしまうことだ。
ただそれは諸刃の剣で(つもり)なだけで
私は何も変わってない焦燥がある。
その感覚がこの本にはある。
プラスもマイナスもひっくるめて
自分の事を詩人の感性なんてない
垢抜けない普通の私の
さして変わらない日常と言っているが
現代において天然記念物の「生きる詩人」であることの難しさ、楽しさを
ジップロックして凝縮してある。
鮮度がいいうちに味わって欲しいので
是非同じ時代に生まれた事を感謝して
お早めにお召し上がりください。
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夢見がちな詩人のエッセー.15編
案外普通な事を普通にいう感性が,瑞々しくて素敵でした.朝顔の水やりなど,何でもないことが面白いです.
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職業・詩人、平成生まれ…という肩書きだけをみるとキワモノなのかと思いますが、ひとりの女性の生きづらさが厳選された言葉で綴られた、共感しまくりのエッセイでした。
劇的な出来事があるわけではなく、誰にも心あたりがありそうな、ちょっとしたささくれを丁寧に拾い上げられていました。
しんどい生き方だなあと思いながらも、なんだかわかるなあと思ってしまいました。
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詩人・文月悠光さんのエッセイ集。装画・カシワイさん。
文月さんのエッセイ集は2冊目。『臆病な詩人、〜』では直面した問題に対する悩み方・身の振り方に共感したりスッと理解できるポイントが多く、今作も文月さんに親しみを感じながら読んだ。
『「かわいい」は疑え!』守られるために愛嬌を振りまき弱者を演じる、その必要がある社会的構造。
『祖母の膝』祖母と母と私。
詩集はまだ読んだことがないので、さすがにそろそろ読みたい。
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前々から気になっていた文月さんのエッセイ集。
確かWebで何話か読んだような記憶があるけれど、この本の挿絵が可愛くて、詩人の方の言葉はやはり紙で読んでみたいなと思いました。
「スクールカーストのち、雪」では自分自身の高校時代の周りへの馴染めなさを思い出しながら読んだ。
そしてとても瑞々しい文章を書く人だなぁと思うと同時に、同世代だからこそ分かるワード(前略プロフとか懐かしい…!)だったり価値観、生き辛さなどすごく親近感を感じたエッセイだった。
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この臆病さやナイーブさはなんとなく私より少し若い世代の感覚。でも私にもわかる部分がたくさんあった。傷つき苦しみそれでも自分の中で少しずつ消化していくこと。自分を救えるのは自分しかいないんだよなあ。
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清廉潔白で、無垢な詩人の姿などここにはない。
自意識を認めながら、生きることをもがいている姿がここにはあります。
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平成生まれの詩人が、〈生きづらさ〉を言葉で解き放つ!
ポプラ社のウェブマガジン「WEB asta*」の大人気連載、待望の書籍化。
現代詩人の登竜門「中原中也賞」を18歳で受賞し、大学4年の時に「詩」に関心を持ってもらおうとアイドルオーディションに出場、
「ポエドル」と呼ばれた著者。だが、その日常は驚くほど地味で不器用だった!?
いま最注目の詩人が、研ぎ澄まされた言葉でトホホな身辺を綴る、初のエッセイ集。
言葉の繭の中に住んでる文月さん。
時々手を伸ばしては、外の世界にこわごわ触れる。
その姿が滑稽で痛くて愛おしい。
───瀧波ユカリ(帯コメントより)
◆もくじ◆
脳みそはみんな同じ
いらっしゃいませの日々
セックスすれば詩が書けるのか問題
トラウマの花
山手線号泣
自撮り流星群
スクールカーストのち、雪
朗読少女のたましい
パラレルワールドの恋人たち
布団のドーム
「かわいい」は疑え!
世にも奇妙な母物語
人間スイッチ
日記帳のわたしへ
祖母の膝
あとがき――洗礼前夜
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“決められた仕事をこなしていると、自分の中の「認められたい」という欲求が息を潜めるのがわかった。エゴが殺されるその時間は、平らかで心地よかった。”(p.21)
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名前はずっと知っていた
最年少で賞を受賞した詩人という新聞記事はあまりに衝撃的だった
当時自分は詩を書き始めていた頃のような気がする
「すごい人がいるなぁ」と
海の向こうを見るような気持ちだったことを覚えている
――それから
いくら歩いても 眩しさと同時に影も濃くなって
喜びが増えた分 痛みも深くなった
詩集を何冊か出版して
自分は詩を書く人ではなくて 詩人なんだなって 思うようになって
自分が信じた言葉は 決して間違っていなかったのだと
受け取った人が 教えてくれた
そうして出会った 詩人の物語
海の向こうにいる どこか遠い人の理想ではなく
きっと同じ思いを持って どこかで戦っている
同じ風景を見た人なのだと 思った
同志と言うには 大げさかもしれない
仲間と言うほどの ものではないかもしれない
でも、ちゃんと そういう人がいるんだって 安心した
詩人という生き物は 言葉にならないものを背負うから
きっと わけ隔てられることのない世界で 息をするのだろう
人から見たら なんだか子供みたいで 可笑しくて 滑稽で
時には呆れるかもしれないし 世間知らずって 責めるかもしれなくて
圧倒的な孤独感と 触れるか触れないかの微かな温度差で
言葉にしたもので この世界と繋がれるのなら
それはきっと 救いのように 眩しかったから
言葉に恋をしたように
言葉というものが生きているこの世界が とても 愛しいのだと 思う
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もし感情を形づくる粒子みたいのがあるとしたら、著者のは細やかで円やかなんだろうな。で、それを表現する言葉の解像度が高いので、読んでてぐっとしみてくる感じがある。こういう文章を前にすると、どうしても自分の精神のガサツさを省みてしまう。
「人間スイッチ」が、初めはスキンシップというコミュニケーション形態への考察かなと思いきや、とちゅうから國分功一郎『中動態の世界』みたいな話になってきておもしろかった。
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現代に生きる詩人のエッセイ。
この面倒くささは親近感がわく。
異性に恐怖を抱いたり、恋愛がうまくいかなかったり。
この人可愛いのになぁ。
人の目を気にしたり、SNSに投稿してみたり。
同世代だからこその共感があった。
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全く存じ上げない詩人さんでしたが、(たしか、)以前朝日新聞で取り上げられていた一文にピンッっときて読んでみたら、エッセーでした。
何の予備知識もなく読んでいたら、あら、この詩人さん、かなり若いのね…若い頃の感情を思い起こさせられ、自分も年取ったなぁと実感。
若い頃は悩む時間や余裕や自由があり、悩む事、考える事自体が人生の意義のような、悩んでいれば何かしらをしている気になれていた気がしていた事に思い当たった。
引用…
一緒にいたい気持ちと、離れたい気持ち。私はいつも、どちらかが過剰みたいだ。誰かと一緒の時間に溺れたり、ひとりの時間に没頭して他人を遠ざけたり。我に返って「ごめんね」と水をやっても、相手はしおれ、色あせていく。
詩人だけに、言葉のチョイスが絶妙で、ハッとする表現に度々出会えました。