紙の本
給料未払いでも「働け!」と叫ぶ連中
2016/09/10 23:47
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投稿者:猫目太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに読みごたえがあり、面白いが、考えれば考えるほど読む事が辛い。「一億総中流」「皆同じ」という幻想にとらわれ日本を英国在住の保育士が見て、聞いてた事をまとめた。本書は、英国と日本を比べて「問題」をかいている。英国には「問題の解決策」があるように(あるかどうか別)見えるが、日本の場合は「そんな問題は無い」と思い込んでいるように思える。「死ぬ程働く」事が美徳のように言われる日本には、もとから「人権」「貧困」を考える事をさせないシステムになっている。そんな国が、将来どの様になるか、考えるだけで恐怖だ。
紙の本
階級闘争がいま求められているということか・・・
2016/08/28 02:37
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の前著がよかったので、本書発行日に書店にいくと「売り切れました」とがっかり、入荷部数が少なかったのか・・・
前著では、イギリスに在住しながら、庶民の目線から今のヨーロッパの左派が台頭する政治情勢を紹介。
日本では、安保法制反対の運動が昨年来盛り上がりをみせていたが、来日した著者の視点で日本の情勢を分析している。
著者は、シールズなど若者たちの運動が生活実感を伴わないきれいさを感じさせること、反対に貧困問題に向き合うエキタスの若者こそ日本を変える力を持つと分析。
右派左派という政治構図ではなく上下の政治構図がヨーロッパを変えているが、日本での可能性を示唆している。
要するに作られた政治的な構図をいかにいじるかではなく、階級闘争がいま求められているということか・・・
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一章一章それぞれで、
自分の気持ちが言語化されて、改めて自分の思いを認識したり、
こんな現実あったのか、と私も目を背けていたことに気付いたり。
ラストには、日本のこの境のなさが、美しくもある。
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最高に面白い社会ルポ。キャバクラ労働争議、ドヤ街、保育園の実態、貧困層…日本にすんでいると、まあそんなもんだと直視せずに終わらせている問題ばかりなのだが、海外からの視点で切り込むと、「この状況はおかしいよ」ということが噴出してくる。
何冊かみかこさんの本を読んでいたので期待を裏切らない内容だったが、もし他書を知らなければ、一時帰国で訪れただけで日本の貧困をどこまで突き詰められるのだろうと不信感を抱いてしまったかもしれない。でも、そこにはブリクジット前夜の英国の労働者階級にどっぷり浸かった筆者ならではの、英国(と欧州)の動きとの対比があり、そのことが余計に日本の事態の深刻さを浮き彫りにしてくれる。
例えば日本の一億総中流の意識について。英国のミドルクラスと比べてあまりに底辺の低い日本の「中流」は、もはや「一億総中流主義」でしかなく、実は貧困層と紙一重だったり既に貧困レベルにあるとの指摘。結婚して家族を持つことが普通=中流だった時代は終わって、余裕のある人の営みであると考える若者層がいるのだが、彼らはギリギリ仕事があって日々生活できていれば困窮しているとは思っていない。体を壊したり働けなくなったりした時に初めて貧困に陥っていることに気づくのだが、もうすでに心は折れてしまっている…
その根底にある意識の違いとして、日本では人権意識が根付いていないと指摘する。義務を履行してこそ権利を主張できるとの、権利と義務を抱き合わせた思考は確かに日本では根強い。先日も生活保護受給者に対する差別発言が炎上していたが、そこにはやはりみかこさんの指摘するとおり、義務を履行していない人たちには人権を主張する権利がないかのような冷淡な姿勢が透けて見えている。そして何より深刻なのは、「日本ではアフォードできない人々には尊厳はない。なによりも禍々しいのは、周囲の人々ではなく、「払えない」本人が誰より強くそう思っていること」だと指摘する。「人権というのは…全ての力を失ってしまったときにそこにあって私たちを丸ごと受け止めてくれるもの」すなわち、穴の空いた制度というバケツの、底で受け止めている蓋なのだ。日本人はもっと楽になったほうがいいという言葉がずしりと響いた。
その他、印象に残ったのは、日本ではソーシャルワークがあまり政治に結びついていないという部分。すなわちミクロがマクロに結びついていないと。なるほど貧困にしろ何にしろ、こういう制度がありますよという対処療法に終始してしまい、ではどこを変革すべきかという議論(政治)と分断されている。欧州での極右極左の台頭は、その市民レベルの怒り(ミクロ)が政治(マクロ)に吸収されたからであり、スペイン15M運動で広場で各テーマごとにどう政策を行えばいいかという議論から生まれたポデモスは、そのミクロをマクロに持ち込んだ典型だという。わかるようでわからなかった欧州政治が、日本という鏡で一度跳ね返ってきたみかこさんの視線を通して、よくわかった気がする。
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借りたもの。
日本とイギリス、子供支援の“福祉”の現場から比較し、日英双方のメリット・デメリットを挙げる。
この本を通して思うのは、「次世代を育てる重要性」だ。
それがひいては政治・経済への関心――すなわち国を維持すること――に繋がっているのに、日本では蔑ろにされている現状への危機感だった。
イギリス、世界の情勢を通して、常識的な中道政治が人気(というのも不思議な話に聞こえる…)を取れなくなり、世界が右か左か(保守 対 革新)の平行世界での分断から、上か下か(貧富)の分断になりつつあると明言する。
日本でいうところの「失われた30年」、ジェネレーションY世代の政治への無関心さは、未来への理想を持てないこと、自身の問題と社会問題がリンクした実感が無いことにも起因すると説明。政治力の低迷にも起因する模様(ソ連・社会主義の崩壊と混乱、英・金融政策失敗の後遺症…日本はバブル崩壊か)。当時の若者が抱える問題が、政治的議題に上がらなかったことへの……
話はイギリスと日本の保育園問題へのうつる。(2000年に入りジェネレーションYは子育て世代に)
日英の保育園事情を比較している。
低賃金で画一化して同じサービスを提供する故に融通がきかない日本(決められたこと以上は求められない。ある意味、社会主義的)と、オプションとしてお金を払った分だけ質の高いサービスを享受できるイギリス(ネオ・リベラリズム)。どちらが良いのか、という日本礼賛でも外国礼賛でも、disってもいない。
一長一短で、悩ましい。
‘未来の世代のために借金を残すべきではないと言っても、その未来の世代が存在しなくなったら国は滅亡する。日本の反緊縮運動は保育園からはじめよう(p.139)’ という言葉は日本への処方箋の一つだった。
安宅和人『シン・二ホン』( https://booklog.jp/item/1/4910063048 )然り。
思えば、夏目祭子『知られざる最強の創造エネルギー』(
https://booklog.jp/item/1/490502742X )で、80年代の加入への謳い文句に「来る少子高齢化の時代に向けて貯蓄をするか」という、お金を増やす発展性(未来への投資)ではなく貯める視点だった事を指摘していた。そうした考え方は巡り巡って、より少子化に拍車をかけていた気がする。
この本は2016年出版。
2020年の東京オリンピック後に不況に喘ぐ可能性を指摘していたが、2021年、コロナ禍で無観客開催となりインバウンド需要が見込めなくなった…何となく時間的には当たっているが、この変化の時代に日本は何を目指そうとしているのだろうか?
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日本の貧困問題の根本は、納税していないと主張する権利すらないと感じる「働かざる者食うべからず」の国民性と言っていたがまさしくその通りな気がする。
この本の発行から5年経ち、今年に入ってからはコロナによって経済が落ち込み、密だから抗議デモが出来なくなり、もっと事態が悪化しているんだろうな…
貧困問題、デモクラシー、人権について考える1冊。
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2016.9.25
貧困。新聞なんかでもよく記事になってるけど、あんまり目にも付かなくて、イメージが湧かない。ただ、夜に駅前とかで外で飲み会しているのをよく見るようになった。厳しいんだろうな。
あとは今70歳くらいの人たちが割とお金持っててそのおかげで僕ら世代が何とかなっているという側面もあるかと思う。上手く分配されるといいと思います。
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外国で外国人として生活している方が、日本を見ることで、見えてくるものが書かれていて面白かった。
帯にもある、中流ののろい、は確かにあるかな。
日本の保育園の現場を見て、お金が流れ込んでいないことを指摘、その通りだけど、学校はもっと酷いよ。
ほんとに、この国は、国の宝の子どもの未来をどう考えてるのかな。とても大切にしているとは言いがたい。
ミクロなものをマクロなものの中で見る、そういう視点を英国の子は学ぶんだね。私たちは上の言うなりになることしか学ばないね。危ない。
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イギリスでのワーキング・クラスの地位が何故ああなっているのかについての分析がなるほどだった。
『ヨーロッパ・コーリング』の方が好きかな。
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素晴らしいルポタージュ。英国文化に興味があるといったバックグラウンドが似ていて通ってきたところが近いのか、自分にとって文章がすっと入ってくるし、とても信頼できる文章だった。今の日本とこれからについて考える良いきっかけになる。
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僕はイエローで…が良かったのでこちらも購入。
前回は子供の視点から英国の貧富の差、他民族、政治施策と生活の繋がりなど、とても面白かったので、今回は英国の保育と日本の保育の差を描いているのかな、と思ったら、保育については1章のみで、キャバクラの不払問題、ドヤ街の雰囲気、左翼について、貧困層が権利を主張できない文化、1億総中流が崩れていることに気がつかない状況と想像以上の思い内容でした。。。
考えさせられることは多く、筆者も現状だけでなく意見を述べてくれているのだが、章同士で繋がりがあったりなかったり、全体を通して繋がるものがなかったので、読見終わって、あれ?読みながら色々考えさせられたけど、何だっけ?という状況に陥ってしまいました。
左翼や政治についての知見が薄いせいかなぁー。
特に考えさせられた点
・1億総中流の崩れ。中流階級が英国と日本で年収300万ほど差があること。
→日本では階層の意識があまりない。真ん中を選びたがる国民性にもあるかもだが、中流階級の範囲が下にも上にも広いのだろう。これは人種が限られているせいだと思った。敢えて階層を分ける必要がなくどちらかと言えば中流だろうという感覚になると思う。階層を分ける必要はないが貧困層の自覚、認識をすることで社会を変えるための動きが必要
・キャバクラで稼げないなら女性の稼ぎ方って?
・日本では義務と権利が紐づいている。納税できなければ人権を主張できない。
→これは全く気がつかなかった!宗教で人権がベースになっておりそれを信仰している海外では最低限の人権は皆主張する、かつ人権を幼少期から教えられる。そういうのもあって信仰者もふえるのかーというのと教育の大切さを感じた。とはいえ、国民性ではなく日本の文化が権利を主張できなくしているとの話もあり、これはどうしたら変われるのか。。
・過酷な労働条件に慣れきっている親は子供が悪い環境に置かれても気がつかない。昔の英国で子供を工場や炭鉱の危険な環境で働かせても気にしなかったように。
→劣悪ではなくとも親の慣れきった環境を当たり前と思わず、子供にとっての最適な環境を改めて考える必要がある。前に習えなら頭を使わないが、常に頭を使おう
・inclusion and diversity 地獄。マクロな視点で考える筋力を鍛える必要がある。
→学生時代から義務教育の一環でやってほしい
・海外では政治の話をパブでも話す
→どうやったら政治が生活に紐づくのか。アメリカもそうだが、選挙の話も話すなという暗黙のルールもあるし。生活に紐づかせるべきだがこれも何故なのか。
・「上」と「下」や「右」と「左」の概念が平気で混沌と入り混じり、そのことにあまり違和感を覚えていない日本
→日本人過ぎてこの感覚が全く分からなかったけど、具体的なこの感覚を知りたい!
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日本の保育園と保育環境、イギリスとの比較はとても面白い。
日本の良さ、イギリスの良さがいずれもあり、どちらがいいとも言えないのだけど、日本の方が平等かな。
保育士の待遇は、社会の中でも、一番下に近い、など、共通点もある。
本人とバイタリティも素晴らしい。
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いつも通り面白かった。ただ、保育園と幼稚園で分かれている日本の制度を、イギリスの観点で比較することに無理を感じる部分もあった。イギリスの保育園は、日本の保育園と同じ文脈で語ることは難しいと思う。
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貧困に対する向き合い方は人それぞれ様々だが、それに巻き込まれている人も、積極的に関わっている人も、あるいは傍観している人も、何らかの既成のものの見方にとらわれがちである。本書を読んで、自分もまた、しっかり既成のものの見方に囚われていると実感させられた。それだけ著者のものの見方は、巷に喧伝されるものにも、熱心に社会運動に取り組んでいる人々に共有されているものにもとらわれないもので、なおかつ、確かにそうだなと納得させられるものである。「一億総中流という岩盤のイズム」「ミクロをマクロに持ち込め」「クラウドとグラスルーツの概念」「もっと楽になるための人権」等々、日本社会を分析するための道具をいっぱい提供してくれている。特に日本と英国における「人権」概念の違いについての指摘は重要だと思う。
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日本は、富裕と貧困、資本主義的なものと社会主義的なもの、が渾然一体となっているという視点は、言われて気付く。
富裕層の子どもが野宿者のおっちゃんと仲良く遊ぶ、その子どもの富裕層の保護者もそれを良しとしている、というオルタナティブな面。
日本で社会運動が横に連帯することの難しさ。貧困な若者が折れてしまっているというどうしようもなさ。
今の日本はとても複雑であるな。