紙の本
稲妻のような真実
2017/09/02 08:22
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
霞を食べて生きるのは仙人であって、詩人ではない。
もとより詩人だって人間であるから大根をかじり焼き魚をほじくり、スープをすする。いやいや、食するだけではない。
詩人だって台所に立って、今夜の晩御飯のメニューに頭を悩ます。お買い物に出て旬のものに心を動かす。ましてや愛する人のためならば。
詩人茨木のり子は昭和24年に23歳で結婚した。相手は鶴岡出身の医師三浦安信。茨木は彼のことを日記で「Y」と呼んだ。
茨木の遺品を見ると、それは彼女の性格なのか、こまめに日記や自身が書いた記事などのスクラップが残されている。
そのなかにはメモやノートに残された色々なレシピもある。
この本では茨木の手書きのそんなレシピが写真図版で紹介されていて、多分そのレシピで作ったのであろう料理の写真まで収められている。
例えば、ちぢみ、例えば、茶碗蒸し、例えば、チーズケーキ。
茨木の使っていた台所の図面やそこに残されていた食器や冷蔵庫の写真を見れば、そこに立って料理をしている茨木の姿がすっと立ち上がってくるような気がする。
きっとそんな茨木を女性の読者ならもっと身近なものに感じるだろう。
女性に愛された詩人は、当たり前のように日常で料理し、愛する夫と食卓を囲った。
しかし、そんな幸福な時間も長くはなかった。
1975年、茨木が49歳の時、夫三浦安信は亡くなる。
茨木はそのあと79歳で亡くなるまでの時間を自分のために作りつづけることになる。
詩人が残した「歳月」という詩のおわりにこうある。
「稲妻のような真実を/抱きしめて生き抜いている人もいますもの」。
それこそ茨木のり子だったにちがいない。
紙の本
ファン垂涎の献立帳公開
2017/03/21 23:08
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こゆき - この投稿者のレビュー一覧を見る
文人の献立帳、レシピ本は結構好きなのですが、これもファンが喜ぶ楽しい一冊。
レシピも載っていますが、著者直筆のメモや日記に書き残されている献立、など、お料理を知りたい人向けというより、やはりファン向けの本といえます。
写真が多くて、直筆の料理手順などが見られるのが至福。
韓国料理、北欧料理など多国籍。
レシピはとっても簡単!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
参考になりました。献立に迷った時なんかないパラパラとめくって献立を決めたりしています。助かっています。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人というと仙人のように霞を食って生きているイメージですが、現実には無理ですからね。こういった献立が出てくるのも面白い。
投稿元:
レビューを見る
詩人茨木のり子が残した自筆のレシピに基づき再現された日々の献立と彼女の日記が織りなす楽しい本。ご主人「Y」との仲良しぶりが読み取れる。子供みたいでかわいい夫だったようですね。
投稿元:
レビューを見る
茨木さん,料理作りの好きな方だったのですね。
直筆のレシピや自身が使用した食器や道具など,数多くの写真とともに紹介されている。
投稿元:
レビューを見る
詩集は手に取ったことがないのだ。これは好きだ。ぽつぽつ拾い読みしたい。ので、読み終わったとは言えないけれど。
投稿元:
レビューを見る
昭和のあたたかさ、よいにおいが漂ってくる本。
茨木さんは『倚りかからず』などのイメージからもっと厳しい方を想像していたら、表紙のお写真を拝見すると(初めてみました)、とてもチャーミングで可愛らしい方だったのですね。
しっかりと生活されている日記も、優しさや、楽しさ、賢さがかんじられて、いつまでも読んでいたい、読み終わるのがもったいないと思ってしまう本。
実は図書館で、他の本を借りようとしたら間違って、届いた本だったのですが、返却するのがもったいなくなりました。
料理のレシピも真似してみたかったな。
あとで、もう一度借りて作ってみたいです。
胡麻豆腐を手作りされていたり、豪華なパエリヤやオマール海老のリゾットなんてすごいのや、韓国料理まであって、みているだけで、幸せな食卓でした。
プロの料理本とはまた違った趣がありました。
こんなにちゃんと生活されていて、すばらしい詩もかかれていたなんて、なんて素敵!と思いました。
私もこんな暮らしがしてみたいと思いましたが。
ん~。憧れです。
投稿元:
レビューを見る
献立帖というだけあって、彼女が日記のようにノートに綴ったレシピを編集部が再現。
料理が好きな人だったんだろうなあと思う。
外食して気に入った味を家で再現できる人だったのだという。
全然イメージが違いました。
『自分の感受性くらい』や『倚りかからず』の刺すように強い言葉が使われる詩を書いた人が、こんなに夫を大事にして料理に腕をふるう人だったなんて。
しかも初めての詩を投稿したのは、結婚してからなんだよ。
日記にもその日の献立が書いてあったりして、武田百合子の『富士日記』みたいだと思ったけど、もしかして当時の女性はみんなこうして記録をつけていたのでしょうか。
三年日記も楽しい。
特に毎年の大みそかの過ごし方が、紅白に文句をつけつつ最後まで見ていたりとか。
普通の主婦と、繊細な詩人と、どうやって自分の中で折り合いをつけていたのだろう。
とても不思議。
投稿元:
レビューを見る
男性が料理すればアートで、女性が料理するのは家事で義務。
茨木のり子の献立帖やセンスのよい台所から、紡ぎ出される言葉の秘密をこっそり見せてもらうような一冊。自筆レシピ、日記は必見だ。いまの時代だからこそ、記録を付けることは大切だと思う。
プリン、ハヤシライス、ビフテキ、グリーンピース、ごはん、玉子焼き、チキンライス、
毎日食べるものだから、素朴で、体のことを考えたものがとても嬉しい。愛していること、愛されていることを伝え合うようで。器へのこだわりも、食器選びから、もう愛がはじまっていることを感じさせる。そこで、どんな会話をし、いくつの物語があったのだろう。毎日の生活にていねいに気を配る姿が想像できる。僕はあなたのような、愛を深く理解している人と出会いたい。
投稿元:
レビューを見る
この方の詩ははっと心に刺さるものが多くて好き。
のり子さんのそのままの日常が垣間見えて嬉しい。
旦那さまのことを愛おしく思ってる様子も伝わってきてほっこりする。
略年譜を見てあれこれ想像するのも楽しかった。
レシピに関しては簡単なものもあるけど、美味しそうと思ったものは手の込んだものなので作ってみるのは断念するだろうな。
投稿元:
レビューを見る
茨木のり子 著「茨木のり子の献立帖」、2017.1発行。著者は1949年(昭和24年)23歳で医師三浦安信(1975年没)と結婚。この本の最初の写真は、1958年に建てた東伏見の台所、素晴らしいです。著者はここで亡くなるまで(2006年没、79歳)暮らしたそうです。本書は詩人ではなく家庭人としての顔が。手書きレシピ、スクラップ帳、日記などを元に、茨木のり子の食卓が再現されています。ローストビーフ、パエリア、ブイヤベース、オマール海老のリゾットなど、粋でおしゃれなメニューが多いです。
投稿元:
レビューを見る
大変おもしろかった。
茨木さんの詩はやはり「倚りかからず」が印象的。
なんとなく凛としたイメージだったので、
この献立帖で普通の昭和の主婦的な顔を感じて意外な気がした。
サラリーという言葉が昭和だなあっと。給料日に肉を買ってくる旦那さんとか、ホームドラマだわあ。
映画を見にいったり、外食したり、豊かになりつつある時代だなあ。
お料理、おいしそうだった。
プリンとかつくりたいなあー。
岸田衿子さんが友人だったとのこと。この方の詩集が読みたいのだけれどみつかんないんだよなあー。
以前なにかの本のあとがきかなんかにあった詩がとても素敵だったので・・・・。
弟さんめっちゃ大事に想ってたようですが、いい人はみつかったのでしょうか。
倚りかからず、の椅子、が
亡くなった旦那さんのお気に入りの椅子だったのかもと思うと感慨深い。
詩ってその言葉だけ読んでも楽しめるけど、
作った人がどういうときにどういう気持ちでつくったのか、とか考えるともっと奥深く読めるのかもなあ。
投稿元:
レビューを見る
これまでにプリンだけつくった。両親にとって懐古イズムに憑かれる味だったようだ。なるほど素朴な味わいだが、おいしい。
「倚りかから」ない、地に足ついた暮らし。
投稿元:
レビューを見る
茨木のり子の日々を献立とともに。地に足のついた生活がある。創作、料理や家事、読書、観劇や買い物、友人や家族との付き合い、夫との暮らし…。目の前にある暮らしがありありと見える。今の時代は目の前が見えなくなりつつある。目の前や今や単調なことよりもスマホの中や未来や楽しそうなことばかりに気も心も向きがち。でも満ちるものは目の前にこそあるんじゃないかと。今ある暮らしをどう生きるかでその人の姿勢や信念は生まれてくるような気がする。