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著者の小説は主人公の状況がこれでもかと言うぐらい悪くなるパターンが多いと思っている。この小説も山一證券をモデルとした大手証券で働く40歳を超えたサラリーマンが、職場も家庭も失い、滑稽なほど転がり落ちていく様は痛快に読み進める。しかし、いつまでたっても状況は好転せず、低空飛行のまま進むのでだんだんと心配になってくる。人生はこんなものだと感じるが、真面目で堅実な主人公の生き方には何かしら共感してしまう。ニューヨークの世界貿易センタービルの電力供給問題でエレベーターが停止し、89階から階段を歩いて降りるくだりがある。同じ経験をした身としては、著者がヒアリングを重ねて小説を組み立てているのがわかる。
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公立高校から国立大学、証券会社に就職し結婚、ニューヨーク勤務。ここまでは順調な人生にみえた主人公。妻の病気、ここから人生の軸がブレ出す。
離婚、経営破綻、再就職、鬱病、リストラ、転職、老老介護、認知症、再婚、年の差婚、大学受験、浪人、セクハラ、できちゃった婚、ケアマネージャ・・・・。現在、よく耳にする言葉が溢れてくる。だからこそ、リアルに感じて引き込まれていく。
タイトルの銀婚式ってこの離婚男にどう結びつくのだろう?再婚予定の年下の女性から、銀婚式が迎えられるまで一緒に生きていく、って言われた箇所か?なんて思ったが・・・。
周りの人に影響を与え、与えられながら人は生きていく。そうして、自分の運命が決まっていくという、当たり前のことを今更ながら認識させられた。
さらに、自分の人生は自分で切り開いていくものであり、何もしなければ何も起こらない。地味に心に響く作品でした。
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読み終えたとき、高澤と共に長い人生を歩んだ気がした。
…いやいや、それでは私が主人公と銀婚式(笑)
確かに、NY赴任時に仕事を理由に妻の不調に寄り添わず、離婚に至ってしまったところまでは、彼を「仕事は有能だが、家庭人としては失格」というような眼で見ていた。
しかし、会社が倒産し、次々に同僚が新しい職場探しに奔走して退職していく中、最後まで敗戦処理として会社に残る姿は、退却するしんがり武将のようであった。
その後も、何故かめぐり会う仕事はことごとく「尻拭い」「敗戦処理」
あ~、なんて運の悪い人なんだろうと思うと同時に、何があっても投げ出さない姿勢に感心する。
そして水面下で…ちゃんと見ている人たちの信頼を勝ち得ているではないか。
普通に生きていて、仕事は別としても、子供の問題、老親の問題、心配事はあとを絶たない。
特に介護の問題の深刻さはリアルに描かれていて、自分の身にも重ねてしまう。
一つ一つクリアした後…何が残るか、だ。
とても良い終わり方だと思う。
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会社が倒産し日本に帰国、転職先では鬱になり離職することになる。その後、大学に仕事先を求めて、人生をやり直す高澤だった。とことん落ちていかないところが、逆にリアリティがあるのかもしれない。妻とは離婚はするが息子を通して、家族の絆が絶えることはない。高澤が再婚せずに、前妻と縁が切れない辺りが、ありそうで読んでいて感情移入できる。篠田節子本にハズレなし
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高澤修平が証券会社、損保会社、大学と職場を変える中で様々な奮闘を詳細に記載した物語だが、最後の大学編が面白かった。学部長などからの圧力に歯向かう形で学生たちとの交流を深める中で、多くの成果が上がる。鷹右左とのもどかしい感じの付き合いもよかったが、離婚した妻の由貴子と息子の翔とのやり取りが現実の問題として誰にでも起こりそうな形で述べられているのが素晴らしい。
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主人公 高澤修平。
大学卒業後、大手の証券会社に就社してから社内留学の権利を受けて、カルフォルニアで、MBAの;資格を取得。
まさに、エリートコース、まっしぐら!
中学時代からの初恋の相手と結婚し、可愛い息子も誕生。
絵に描いたような幸せの人生。
それなのに、海外赴任から戻った修平に、波乱万丈の人生が、待っていた。
40代にして、離婚!
何処が、「銀婚式」の題名に結びつくのか?
潤風満帆の男が、奈落の底に落とされてしまった。
どのように、持ち直していくのか?
それと、別れた妻と子は。。。。
息子の結婚式に夫婦として、列席することで、、、又、元のさやに戻るのか、、、、?
あのまま続いていれば、今年銀婚式なのね!で、この題名が、理解出来た。
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50代の元エリートサラリーマンの半生。
エリート証券マンが、ニューヨーク在住中に離婚、その後会社は破綻し、損保会社に再就職するも、鬱を患い退職。仙台の無名私立大学の非常勤講師として再々就職。
何とも波乱万丈な主人公高澤。
それでも、誠実で仕事に対しても熱意があり、品行方正なため、周りからの評価は常に高く、好感が持てます。
大学での功績は高く、やる気のなかった学生達が、きちんとした大人になることが出来るよう、下地を作ったのは彼でした。
元妻、息子との距離感は、かなり近いもので、タイトルからもしかしてと想像しながら読み進めていました。
浪人して国立大学に進学した息子にひと安心するも、最後までそのままでは終わらせない展開に、思わずまたか…と。(笑)
この2人なら元サヤはありでしょう。
我が家は来年が銀婚式です。
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離婚した元夫婦が、子ども、親を含めて浅い交流を続け、親を送り、子どもが巣立ったことで互いの関係を見直し、最後は復縁を示唆する描写で終わる。
由貴子が認知症になった母親を人に委ねなかった理由として、自宅で親を看たのは、母親がいやがるからでなく、自分のためだったと語るシーン。認知症で何もわからなくなってしまったように見えても、実は自分を見守ってくれていたのだと思う と語る場面は胸に来た。
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都立の進学校から国立大学を卒業し、大手証券会社に入社、社内留学を経てMBAを取得後ニューヨーク支店勤務と順風満帆な人生を送っていた高澤が、慣れないアメリカ生活での妻の発病、離婚、会社の経営破綻、再就職、鬱病発症、リストラ、再再就職と都落ちしていく人生の悲哀を描いた長編。
前半は高澤の前向きな生き方に頭がさがるばかり。特に、再就職した中堅損保会社での代理店のおばちゃんたちへの誠実な対応と、再々就職で大学教員になってからの学生への精一杯の教育など、常に目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢には清々しさを覚えた。
こうなると再婚もしてほしかったけど、いくら前妻との間に息子がいるからって、離婚したのにここまで前妻の家庭の事情に関与されたら、やっぱり相手の女性もいやよね・・・
元妻の父母の介護に対する頑なさにはほとほとうんざりで、若いうちから大人にならざるを得なかった息子がかわいそうだし、ことあるごとに巻き込まれる高澤も気の毒。
親も死に、息子も巣立ち、独りぼっちになったからってじゃあ、やり直そうか?っていうのがお手軽過ぎてほんと嫌だわ。
ということで、残念ながら終わり方が嫌いです。
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初めまして、の作家さん。しばらく多いかもしれません。
NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 1万円選書のいわた書店。
番組に登場した本を、ご丁寧にまとめてくれてる人がいました!
けど、コメント残す画面が見当たらず、また無言でリンク張り m(_ _)m
https://rahmaway.hatenablog.com/entry/2018/05/04/111147
https://rahmaway.hatenablog.com/entry/2018/05/06/001648
で知った本です。
ここに載った本のレビューを書くたびにコピペした方がよいものか…?
なかでも、銀婚式にあたる日を通過するので選びました。
だがしかし!
エリートコース、まっしぐらでスタートしたお話の序盤で離婚。
その後若い人が登場するので仕切り直してから25年の話かしら???と
思っていたけれど、そうでもない。
不遇は続き、誰にも起こりうる波乱万丈といえばそうだが、
作り話にありがちな大逆転も起きない。
もしかしたら、この後、離婚した妻と復縁するのかしら?っていうところまで。
いわた書店オススメの理由が、まだ理解しきれないかもしれません。
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同年代で損保業界の話もあり、手に取ってみた。
読み進めるうちに親の介護、看取り、子供の受験といった欠かせないことがあり、我がことを振り返りながら、読み終えました。
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以前読んだことがあるのを失念して、また購入してしまったため再読。
主人公がエリートであるのに、いろいろな理由で転職を繰り返しているのが、我が身と重なり(私はエリートではないが転職を経験しているので)興味深かった。最近親を亡くした経験もあり、親の介護などで戸惑う場面も同感しながら読んだ。
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少し世代の上の話だが会社、老いてゆく両親など身近に感じながら読んだ。人の気持ちは自身の熟成度と共に変わって行くものだな、と感じた。
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タイトルから想像した内容とは違ったけれどラストにそのタイトルが染み込むように納得してしまった。真面目なエリート男性の人生中盤からの物語で世代的にははまるけど、目線が男親だから共感よりも、そんなものか、うちの旦那もそうかもな、などと思ってしまった。人生うまくいかない、真面目にやってもどうにもならない時もある。それは1人で生きてるわけじゃないから。その通りだと思う。
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華々しい学歴は、社会に出た後にその一生を保証するものではなかった。それでも身に付けた自助努力の精神は、人生のどん底を経験したとき、破滅の淵に転がり落ちる寸前で、何とかもちこたえ、はい上がるチャンスを与えてくれるものになるだそうと高澤は信じている。
最敬礼されて事務所を出てふと振り返ると、まだ見送っている錦城の姿がある。
濃霧が晴れて視界が開けたような気がした。
「人生、うまくいかないからおもしろい」
父の残した言葉が、よみがえる。
何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない、と息子のことを思った。