紙の本
社会的課題の最先端にいる存在としての「N女」
2017/08/16 12:08
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投稿者:アキウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
NPOや社会的企業で働く女性へのインタビューをもとに、現代社会の問題に切り込むノンフィクション。
身内にもいわゆる「N女」がいる身として、興味深く読む。
ソーシャルセクターで働くといっても、ボランティアや自己犠牲の精神というわけではなく、女性の働き方や生き方(ワークライフバランス、水平的なキャリア志向など)といった、一般企業・社会における問題の最先端にいる人たち、という印象でした。
単純に、出てくる人みんな面白い、というのもあります。
これからは、「N女」的な生き方というのが必要になってくるのかなと思います。
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NPO業界に従事する女性の物語。NPO業界の課題、女性視点で描くところが興味深い。メモ。
(1)90年代に子ども時代を過ごした人たちにとって問題とは国内ではなく海外で起きていること、貢献とはイコール国際貢献を意味してはいなかったか。
(2)女のキャリアライフは複雑だ。キャリア志向を持つ女性の多くは出来ることなら第一線で仕事をしたいと思いつつも男性と同じ様に100%では走り続けられないことを知っている。‥結局のところ自分の足で立ちたいという気持ちがあるならどこかの時点ではかなはず自分の問題と向き合わざるを得なくなるのだ。
(3)学問は社会に還元しないと意味がない。
(4)民間企業で進められてきた男女共同参画はあくまでも男性中心主義の企業文化の中に男並みの戦闘能力を持った女性の参入を目指すという文脈。
(5)森山さんの受け答えには彼女の権限と責任における彼女自身の意向の様なものが真っ直ぐに反映されている感じがあった。
(6)ブランクとは今までの自分の在り方をリセットして新たな視点を得られる時期。
(7)目の前の問題を自己犠牲によって解決しようとしない。マゾチグムに美を見出そうとする日本の風習は私達を蝕むだけで根本的には何の問題も解決しない。
(8)人は自分とは違うという事実。どの様なものであれ、自分の基準を他人に当てはめようとすればあなたは敵を作る事になる。
(9)誰かの問題ではなく私の問題。当事者性も背負った世代が新しい芽、それこそがN女的なるもの。
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NPOで働く人たち=N女にスポットを当てた本。
何故N男ではないのか?
N女は好奇心旺盛で、
現在の社会を変容させたいと考えている女性でありその活動拠点がNPOであるだけなのだ。
そこまで読んで、ああ〜また◯◯女子みたいな
トレンドをつくりたいのね?
一括りにして、大雑把な名前つけて、
褒めてあげて、野放しする。
少し読み進むのにゲンナリしてしまった。
ただ読んでいくとその目論見は
大きく裏切られる。
ここに出てくる人々は総じて高学歴で、コミュニュケーション能力も高い。
海外留学経験があったり、大学院をでていたり
男性社会でもバリバリとやっている彼女たちが
非生産的なNPOを選ぶのは何故か?という疑問が出て来る。
ただ単に貧困の国に井戸をつくりましたという
可哀想に寄り添っているわけではない。
(私のNPOのイメージはそうだった)
助けてあげてる私というナルシズムでもない。
社会のシステム、サイクルに
危機感を持っている。
変革、修正をしない事には
自分にも危害が及ぶ。
だから小さな事からでも変えなければという
気概に溢れている。
ただキレイゴトだけでは前に進めない。
多くの人は夫の金銭的な助けのもとに
成り立っている。
それは前時代的な主従の夫婦関係ではなく
金銭のポイントだけクリアできないから
それは夫側がやりましょうという関係性に
見えた。
著者自身が前のめりにN女に共感しているわけ
ではないので、その心境の変化が回を追うごとに読み取れて1つの事に過度な期待も絶望もしないという取材姿勢の中から見いだせるものがあるんじゃないかと思いました。
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高給を投げ打って薄給なNPOに転職する高学歴な女性たちを「N女」と名づけ、その人たちへのインタビューを集めたもの。「研究」なんて銘打っているけど研究とはいえない。この著者の本は前にも読んだことがあるんだけど、何というか思いつきで飛び込んで浅いところで書き進んでいくような感じがするんだよね。それでいながら、泥縄的な書きぶりや素朴な疑問の連発が浅薄な感じにはならないのが不思議。
NPOで働く女性たちの働きぶりを読んでいると、これって最近の本だったかなという錯覚が。ところが5年も前に出た本なんだよね。でも、リモートワークとか兼業とか一つ職場に長居しないとか、コロナを受けてようやく一般的になりかけてきた働き方が少なくとも5年前のNPO業界ではすでに一般的だったってのが面白い。こういう硬直化していないのがNPO的世界のいいとこ。
NPOで働く女性がテーマなんだけど、前述のような働き方とも関係するんだろうけど、ジェンダー的な方向にも話が及ぶ。著者の男友達が「男ってのはさ、ああいう女が苦手なんだよ。子どもも出世も、どっちも手に入れようなんてさ、欲張りな女だと思うわけ。旦那がかわいそう。同情してる男は多いと思うよ。」(p.256)って旧弊な発言しているあたりを読んで思ったんだけど、男性って物事を複数進行させることが苦手なんだろうね。だからこの道一筋みたいなのがもてはやされるんだと思う。一方、女性は複数のことを同時に進めることができるんだよ。このあたりの特性ギャップが、自分の生き方の成果を求め、NPO含むいろんな職場を渡り歩きながら、そのときその場での成果を追えるN女に顕著に表れているともいえそう。
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【収録内容】はじめに/第1章 やりがいのある仕事と半分の給料/第2章 正論で人は動かない/第3章 居場所をつくり社会の隙間を埋めていく/第4章 女の人生は変化していくもの
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高学歴・ハイスペックとつくから最初読むのにためらう人が多いことはネット上でも散見される。
読んでいくと、あるあるな話。
ただ、2016年~2017年の発刊なので、2年経った現在では多少変化している部分もある。
この頃はクラウドファンディングというコトバもまだ今よりも認知度は低かったし、SDGsという単語もまだまだそれほどなかった時。
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だいぶ前に一度読んだ本。
インタビュー、取材本。
NGOで働く人は、おそらく女性が多くなるんだろうなー。
仕事としてはその後にどうつながるか、見えてこない部分もあり。現実的に、ずっとそこでやっていく、というセクターではないようにも思う。プロとして働かれている人たちが紹介されていて、励みにはなるし、経験としてはとてもいいと思うけれど。一定の経済的安定が保証されている立場にある人、という条件についても共感した。
社会的に価値あることをしていたらその対価を得られる社会を作りたい。
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中村安希さんの著書「N女の研究」は、NPOで働く女性(=N女)を対象にしたインタビューを踏まえて書かれた本です。
「N女」といってもさまざまな方がいますが、
この本の取材対象となった「N女」から、
著者が盗みたいこと(学びたいこと)として挙げているポイントがあります。
その一つが、「人は、自分とは違うという事実を受け止めること」
[様々な壁にぶつかりながら、女性たちがそれぞれの道で奮闘してきたことはよく分かる。
ただし、他の人に自分と同じ奮闘を期待してはいけないとも思う。あなたは育児も家事も仕事も完璧にやってきたスーパーウーマンかもしれない。
すごい努力をしたのだと思うし、きっと環境にも恵まれていたのだろう。
しかし世の中の誰もが、あなたのように強いわけではないし、優秀で努力家で環境に恵まれているわけではない。
あるいは良妻賢母として役割を果たしてきたあなたは、立派だと思う。
でもみんながみんな、あなたと同じ家事能力や忍耐力を持ち合わせているわけではない。
世の中には、いろんな理由で「働けない」「産めない」「頑張れない」人もいるし、いろいろな事情から「働かない」「産まない」「頑張らない」という選択をしている人たちもいて、そこには、正しいも間違いもなく、ただ、違いがあるだけがある。
N女たちは日々、いろいろな立場(自分とは違う立場)にいる人たちを、違いのままに受け入れながら活動している](本書・第4章より)
自分が一生懸命に頑張り、壁を乗り越えてきた経験をすると、他の人にも、その頑張りや努力を当てはめようとしてしまうことがあります。
他の人の問題を解決しようとして、抱えてしまうこともあります。
そんな時は、無意識に、「こんなに頑張っている」「こんなに耐えている」という思いを抱えているかもしれません。
著者は、「自己犠牲によって解決を図ろうとすることは、敵対や分裂を産み、根本的には何も解決しない」といいます。
自己犠牲をせず、他人と比較もしない。
ただ、違いがあることを受けとめる。
そして、ゆるやかな連帯を維持していくために、
利害の一致しない隣の女性のために、一緒に戦うことが、女性をとりまく社会的な課題を解決することにつながるというのが、著者の考えです。
私自身、自分の考え方や生き方と照らし合わせてみると、「ただ、違いがあることを受けとめる」という、
このシンプルな考え方を持つことが、実は、案外、難しいのかもしれないと思っています。
「これで、いいのだろうか?」と不安に駆られれば、
「自分は、これでいいのだ」という確信を持つために、自分と他の誰かを比べたり、自分の言動に賛同を求めてしまいがちな気がします。それが強く出ると「あなたも同じように頑張って」という押しつけがましい一面になる気がします。
「頑張る人」も、「頑張らない人」も、「頑張れない人」も、いる。それを認めたうえで、緩やかにつながり、社会の中にある課題を解決していくために、ともに戦う。
そんな懐の深い考え方を持てたら、いいのだけれど…��
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批判的に読みながら疑問に思う点もいくつかあったが、大学生の読み物として薦めたい。大学職員という仕事もN女、N男の仕事であろう。
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ボランティアではなく、NPOで働いて収入を得ている女性(N女)へのインタビュー集&考察。
冒頭のNPOに転職しようとしている友人とのやり取りを読んでいる時点では、高学歴&バリキャリぶりが鼻について(ひがみかも…)読むのをやめようかと思ったけれど、通読すると大変面白かった。
人助けではなく、税金を払ってもらって、将来の国をよくするためにNPOで就労支援をしているというN女の意見には深く納得した。
魚をあげるのではなく、魚のとり方を教える。といったことが支援として重要だと感じた。
一方で、スキルのあるN女が一般企業で働いた場合と比べると、給料に雲泥の差がある。夫の収入があるからこそ働けている人も多いようだ。社会貢献は素敵なことだけれど、仕事として成立させるのはかなりのハードルだと感じた。
N女の仕事が理解され、政治や企業の仕事になれば、ある程度はうまく回りだすのかなとも感じた。
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読みごたえのある本だった。コロナを経て、ソーシャルセクターで働くことの意味はまた変わっていそうだが、「N女」として取材された方の言葉は響くものがたくさんあり、なおかつ筆者のまとめand考察もとても興味深い視点がたくさんあった。
もう一度、心に残ったところを振り返り、学びにつなげたい。
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登場するN女の姿から逆に浮かび上がるのは
家族や地縁、終身雇用の会社といった団体から
切り離されて、ばらばらになった個人の集合体としての
現代日本の姿。
新しい働き方であるNPOに飛び込んだ女性たちの
現実的、合理的な思考法は参考になる。
自己犠牲、上から目線禁止、
自分ごととして関わっていく姿勢は
学ぶ
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非営利組織で働く女性(N女)へのインタビューによるノンフィクション。
皆、働く事に真剣な女性だ。
また、非営利団体で働く女性というテーマが面白い。
N女の定義として、エリート並みの学歴や職歴としているが、(文中で「ハイスペック」と称されるが、偏差値で人を判断しているようで、私は余り好きじゃない表現。)、そこに焦点を絞るよりも、様々な女性の非営利団体への関わり方を表現した方が面白かったのでは。
とにかく「優秀な」若い人達ばかりが出てきて、就職活動や、会社での成功者のインタビューを見ているこにもなった。
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最後まで読むと、良さがわかる本。
以下、本文より
そして、もしかしたら「N女」は、と考えた。崩れゆく日本に現れた最後の切り札になり得るかもしれない、と。
女のキャリアライフは複雑だ。キャリア志向を持つ女性の多くは、できることなら第一線で仕事をしたいと思いつつも、男性と同じように100%では走り続けられないことを知っている。仕事にもプライベートにも、どうにか折り合いをつけて生きていかなくてはいけないことに気づいている。
女性の場合、キャリアアップのためには努力するが、ポジションアップへの関心は薄いかもしれません。今でも女性たちは、男性中心の企業構造の中で踏ん張り続けています。
余計なことに力を使わず自由にやりたい人にとっては、(NPOは)魅力があるのではないかと。自由に社会をクリエイトしたい人、自分でどんどんデザインしていける人にとっては、刺激的な職場なのではないでしょうか。
リクルートと出会う。「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という社の理念に惹かれたのだ
自分の手の届く範囲、顔の見える範囲を良くする
自分の生活を犠牲にした働き方ではなく、細くとも長く続けられる働き方と仕事の選び方をしたいです。社会貢献的な仕事に携わっている人は、どうしても自分の生活や体のバランスを無視して邁進してしまう傾向が強いと思うのですが、基本は自分や家族あっての社会だという気持ちが強くなりました。まずは自分と目の前にいる人たちを大事にすること、そのうえで、私たちが生きている社会をよくしたいと考えること、その順番を忘れずにいたいと思います。
一番ワクワクしたのがリクルートだったんですよね。リクルートは、人をやる気にさせるのがめちゃくちゃ上手な会社だと思います。
多様化する女性社会の行く末のヒント。N女たちの生き様より3つ
・目の前の問題を自己犠牲によって解決しようとしない
・冷静かつ論理的、八つ当たりをしない
・人と自分とは違うという事実を受け止めること
経営が苦しいのは補助金が少ないからだといわない。できるだけ助成金や補助金に頼らず、自力で資金を集めたいと口を揃える
新しく事業を始めるにあたって、行政からの指導や規制の壁はなかったのか?
補助金に頼らない自立型の運営をしているので、あまり色々言われない。
行政からは「委託」を受ける。
行政をあてにはしないが「協働」はする
政府にはお金がない
貧乏というのは残念なことだ。しかし、悲しいことではない、とN女たちを見ていて思う。お金がないから出てくる知恵があるし、いい時代を知らないおかげで、現代や未来を過度に悲観せずにすんでいる。
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N女(NPOや社会的企業などソーシャルセクターで働く女性)を対象にその人生観やキャリア感などを丹念に取材。そかも団体代表ではなく団体職員が対象というのが非常に面白い。
・やりがいのある仕事で半分の給与
・成果を出して、目の前の景色を変えたい
・行政を当てにしない、しかし協働はする
・きれいごとは言わない
・圧倒的な当事者性
・自己犠牲しない、比較もしない
・人々のマインドセットを変えていくのがNPOの仕事
N女だけじゃなくN男も共感できる部分があり、自分の立ち位置を再確認できる。分野はともあれNPO近辺にいる方にはお薦め