紙の本
多くの若い人に読んでほしい一冊
2022/01/03 07:51
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦直後の日系アメリカ人の生活を描いた作品。毎日新聞で取り上げられていて知りました。個人的には「ライ麦畑でつかまえて」を彷彿とさせる世界観を感じました。絶版状態だった作品が川井龍介さんの新訳で蘇ったとのこと。多くの人に読んでほしい一冊です(毎日新聞 特集ワイド 210430夕刊)。
紙の本
移民二世の戦後、現実を等身大に描いた作品
2020/08/16 16:07
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前に移民した親を持つ日系アメリカ人、2世の戦前・戦中・戦後について、ほぼ実話を元に書かれたと思われる文学作品。主人公は、アメリカ人としての徴兵を拒否して服役し、その後出所。両親は出稼ぎとしてアメリカに渡ったため、日本人であるというアイデンティティを捨てないまま、母親に至っては終戦後も日本が勝ったと思い込み「敗戦」を受け入れられないまま、日本の家族からの仕送りの手紙も信じられぬほど精神を病んで自殺してしまう。せっかく生きながらえたにもかかわらず、戦争は家族を分断させ崩壊させる。そしてどんな時代にもかかわらず、若者は若者なりに悩みや葛藤を抱えて成長してゆく。当時のリアルな現実が等身大に綴られているように感じた。
戦前北米移民となった曽祖父の弟について、ちらほら噂程度の話は耳にしたことがあるが、このような実体験を聴く機会はなかった。祖たちの経験について知るための貴重な一冊。翻訳されたものを読むことができて良かった。
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日系アメリカ人の青年が、戦争後のアメリカ社会と自分の家族の間で自分のアイデンティティーに悩む。戦争後の日系アメリカ人はこんなに苦しい思いをしていたのか。
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今年になって、アメリカの日系人を描いた小説を3作読んだが、これは第二次大戦中の日系人強制収容所を体験した作家が書いているので、その当時の日系二世の状況、心情が一番よく伝わる作品だった。
そして、これはヘイトスピーチをしている今の日本人に読んでほしいと切に思った。
アメリカに忠誠を誓わず、戦闘にも参加しなかったノーノーボーイである主人公は、戦後に故郷のシアトルにもどるが、アメリカ人、特に自分たちも被差別民の黒人から「そんなに日本がいいなら日本に帰れ」と言われ、苦しみながら戦闘に参加した日系人からも批難される。日本は負けてないと信じている老いた母だけは、正しいことをしたと誇りに思っているが。一世の両親は英語ができず、その子どもは日本語ができない。そもそも日本に行ったこともないし、差別されながらもアメリカの食べ物を食べ、アメリカの文化で育ったのだから、見た目は日本人でも、中身はアメリカ人でもある。しかし本物のアメリカ人からは日本人にしか見えない。
この状況が在日の二世、三世と重なって仕方ない。帰れと言われても帰る国はなく、帰ったとしてもそこは外国なのだ。じゃあ自分は何者か、という苦しみ。
兵士として闘い、死んでいくケンジ、戦後も夫がドイツから戻らず苦悩するエミ、捨て鉢になって自滅したり、宗教に救いを求めたりする日系人たちの姿はリアルに心に刺さる。
それでもアメリカの理想は生きていると主人公は感じるが、トランプ政権を支持し、外国人労働者を排斥しようとしている人にも、是非ともこの本を読んで欲しい。
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原著は1957年刊行。日系アメリカ人作家、ジョン・オカダが発表した唯一の小説。1960年代末〜1970年代初めの公民権運動の時代に、アジア系アメリカ人のコミュニティの中で再発見されたテクストでもある。
タイトルの『No-No BOY』とは、アジア太平洋戦争時の米国による日系人強制収容の際、合州国に唯一の「忠誠」を誓うことも、合州国軍隊への入隊も肯んじなかった人々のことを指す。442部隊をはじめ、合州国軍隊として激しい戦場で戦った人々のことは知っていたが、こうした人々が日系コミュニティに一定数存在し、コミュニティ内部で複雑かつ根深い対立と分断が生まれていたことは、この本で初めて教えられた。
あとがきで訳者は、日系の若者たちの「自分探し」を描いた作として、「日系アメリカ人の文学作品という前提は、極端にいえばなんら本質とは関係がない」と書いているが、ほんとうにそうなのだろうか。この物語には、アメリカ人なのにアメリカ人とは認められなかった、しかし一方では黒人を差別する側に立ってしまう日系コミュニティのある側面と、たまたま居住と生活の拠点がアメリカにあるというだけの強固な「日本人」意識の持ち主との間の分断が、戦争をはさむことでより深刻に、大きくなってしまった様子が詳細に描かれていく。
戦争によって人生を、生きる時間の意味を変えられてしまった日系コミュニティの若者たちは、理念としての「アメリカ」の実在を夢見ながら、現実には、出口のない生を送らざるを得ない。その証拠に、この物語の「イチロー」は、ある種のアメリカ人たちから嘘のようにあたたかく迎えられ、アメリカ社会に包摂されそうになる瞬間に、「ここは自分の居場所ではない」といわんばかりにその手を振りはらってしまう。それは、「理念としての「アメリカ」」が現実の世界には存在していない、という諦念の裏返しでもあるだろう。探し当てられる「自分」などどこにもないまま、アメリカの大地で、「お前は何者だ」と不断に問われ続けるのだ。
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親子の関係っていろいろあるんだなーと、本を読んでて思う。小説でもノンフィクションでも、そう。いろいろあるのに子どもと特に母親との強烈な関係性。思い。そこから生まれてきた命が生きているんだもんね、もう一つの人間として。
このお話で主人公がもがいている様々な関係性の中にも家族の関係、親と子の関係、母と子の関係は重要な位置を占める。
そして戦争、人種、移民、といったより大きな枠組みから見た社会的テーマが直接的に扱われている。
現社会にも通づるこれらの課題をただ一般的に学ぶのではなく、具体的な一人の人間の生きざまについて想像し考える機会を与えてくれるのが、このようなストーリーなのでは、と思った。
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吐きそう。ものすごく胸が詰まる。どうしようもなくぐるぐるとめぐっているような感じ。
太平洋戦争時の日系アメリカ人を扱った話。明らかにその人たちは太平洋戦争中の被害者としては少数派で目立たないのだけど、そのような存在だからこその苦しみもあると思う。
自分とは何かという今にもつながる問いがこの話にはあるきがする。
時々希望が見えるような、光が少し差し込むようなシーンが所々にある。後半になるにつれそれは増えていく。それが唯一の救いだ。
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日系アメリカ人一家としてシアトルに暮らす家族。日本が真珠湾を攻撃する。アメリカで産まれ、アメリカ人として生活しているのに、軍に入って戦うのを拒否して服役していた長男が戦後釈放され「母国を攻撃して敗北した」レッテルを貼られ生きる。色んな考え発言に、彼の頭の中に自己がとぐろを巻いて絡まって行く。仕事を見つける際、友達と遊んで別国籍の人間と関わっても、彼にはどうしても、簡単に答えが出て自分を納得させられない。彼の中でどうしてもごまかせない部分があって、向き合う程に混沌とする。移民の国アメリカで自分を悩む。
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戦時中の日系アメリカ人の苦悩。
普通に考えればわかるのに、初めてその方たちが居たことを認識した自分が恥ずかしい。
人間は、自分たちと違う『生き物』を絶対作ってしまう。そして、差別して生きていく。
昔からずーっと変わらない。
同じ地球に生まれて、同じ種族。なんで差別が生まれるのかわからない。
なんで、ずーっとこんなことが続いていくのかわからない。
人間が長く生きてきて、便利に、豊かになってってるらしいけど、心や考え方が全然豊かになってない。
いつか、本当の意味で、この地球上に生存するものたちが『平和』を感じれる時がくるのだろうか。
難しい話やったけど、ものすごく、沢山の事を考えさせてくれる本やったた。
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生まれた環境だけは自分で選ぶことができないから、完全にわかり合うことはできないと思うんだけど、想像し寄り添う気持ちは持ち続けたいな
お偉い方の恣意的な概念に振り回されるのはもう疲れた
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2022年5月29日 高志の国文学館文学講座
「外国児童文学の中の日本人-多文化社会の“人種”への感受性」
講師:富山国際大学現代社会学部教授 渡部恵子氏
紹介図書
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久しぶりに心がえぐられるような小説を読んだ。戦争によって人生を狂わせられた日系アメリカ人たちの気持ちを、生きている時代も状況も違う部外者の私が理解出来るとはとても言えないが、それでも胸の深い場所に届く、そんな小説だった。
アメリカ軍に入りアメリカ兵として戦うか、それを拒否するか。日本から移住した親世代とアメリカで生まれ育った子供世代では基本的に考え方も違う。日本と戦うために軍に入る子供を親はどんな思いで見ていただろう。読み終えてからもしばらく考えてしまった。