紙の本
不意にやってくる
2017/05/14 14:50
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投稿者:クマゴロー - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際に心霊的な体験はしたことなくてもふとした表紙にびっくりする、みたいなことはあって、そういう脅かし方をされたような気持になっている。読んでいてほんとに怖かった。
日常的な風景を描くのがとてもうまい作者が、日常に混ざる不穏なものを描くのも、まあうまいよな、って納得して。楽しい読書だった。
紙の本
つかみどころのない物語
2017/04/25 08:47
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投稿者:まもり - この投稿者のレビュー一覧を見る
期待するつもりなく期待していたのかな。まあまあ…といった読後感。読んでいる間もちょっと不気味、ちょっと薄気味悪い…と思って読み進めたが、私的にはそれ以上でもそれ以下でもなく、そのようにゆらゆらした雰囲気がこの本の売りで個性で良さだとしたら、ちょっと個人的に物足りなく思えた。多分年内に内容を忘れてしまうんじゃ…というくらい、インパクトを覚えませんでした。作家さんとの相性がいまいちだったのかなあ。使われているイラストはフジモトマサルさんですごく嬉しかったのですが、そこで読む前に無意識に期待してしまったのかな…
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わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説を書くのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。そして、怪談を書くことにした。郷里の街のかわうそ堀に引っ越したが、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、中学時代の同級生たまみに連絡をとった。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、留守番電話に残された声……。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。芥川賞作家・柴崎友香が「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談集。
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成り行きで恋愛小説家と呼ばれるようになった女性作家・谷崎友希が主人公である。恋愛とは縁があるとは言えないので、怪談作家になろうと、怖い話を集めることにした。中学の同級生のたまみに話を聴いたり、たまみの紹介で酒屋の四代目に古地図を借りたりするのである。不思議で怖いことは案外身近なところに潜んでいて、怪談とは縁が薄いと思っている友希自身、実は普段から現実世界の隙間に入り込んでいるようにも見えるのが、いちばん不思議で怖い。突き詰めてしまえばなんということもないのかもしれないことが、中途半端に見たり聞いたりすることで、いくらでも恐ろしくなるのかもしれないとも思う一冊である。
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柴崎友香が書く怪談、という余計な先入観を持たないように読むと、そこにあるのはいつもの優れた動体視力。周囲をさっと掴み撮る作家の視線。この人はどこまでも他人に興味があるのだな。どんな行きがかりでそこにいるのか、どうしてそんなことを言うのか。すっかり判ることなんて決してできないけれど、何故の先にはほんの少し見えるものもある。その行ったり来たりが読んでいて楽しい。これが怪談であるかどうかは気にならない。そもそも、以前から柴崎友香は場所に附随する重層的な時間の重なりに強く惹かれていると公言していたし。今までだって場所にまつわる話を書いていた訳で。考えてみればそんな作家が怪談めいたものを書いたとしても少しも不思議ではない。
そして、この本はもちろん小説なのだけれど、主人公に語らせる価値観が作家の価値観と重なり合い、少し変わったスタイルのエッセイのように読めるところもある。主人公が小説家であるのでその印象はより強くなるのだが、例えば小説の中で波瀾万丈色々起こることをよしとしない、と作家が主人公に語らせる時、どうしたって柴崎友香のこれまでの作品のことを思い浮かべてしまうように、物語の流れとは直接関係の無さそうなことに思わず聞き入ってしまう。もちろん、そういう価値観も含めてこの作家を気に入っているのではあるけれど。
全ての意味は文脈の中にしか存在しない。何処かで聴き覚えたアフォリズム的な言明を自分は意外と真実だと考えている。だから柴崎友香が執拗に辺りの景色を描写したり、さっきと今とこれからの違いに拘って書くことに強く共感する。結局のところ、人もまた文脈の中でしか生きていけないのだから。他人に対する興味は翻って自分自身の意味を探すことへの執着を意味するものなのかも知れない。
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こういう不思議なお話大好き♪
自分自身をモデルにしているようなしていないような、そういう曖昧さが一層本当の話らしくみせていると思う。
お茶屋さん、行ってみたいわ。
近所の人たちとのお花見も。人と接するって面白いことをいくつも発見することなんだろうね。
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怪談を書こうとする作家が「かわうそ掘」でふと出会う怪異の数々を描いたホラー……かな? 正直なところ、ホラーというほどには怖くなかったのですが。日常でふと感じる違和感にも似た怪異は、ある意味突き詰めればひどく怖いのかもしれません。気づかなければ通り過ぎてしまうだけなのだけれど。
蜘蛛のエピソードが印象的。どこかしら和むというかユーモラスな筆致で描かれているのだけれど、よくよく考えれば……とても嫌ですねこれ。
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大阪を舞台にした怪談(よね)
ゾワゾワーとする怖さ
エッセイのような文体 淡々と
でも着地点がはっきりしないので………
読み終わって困ってしまいます
自分の中でストンと落ちなくって
そこが習いなのでしょうが
せめて鈴木さんだけでも教えて下さい
≪ どこにでも つながる道が 異界へと ≫
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なんとなく怖いという怖さレベルがもしかしたら一番怖いのかもしれない。うっすらと漂う妖しさ。読みかけていた本がない、忘れていたほうがいい記憶を少しずつ思い出す。
すこしずつすこしずつ迫ってくる、や、迫っていく感じ。ほんとうにすこしずつ。
柴崎さんの淡々した書き方、怪談話にとてもよく合ってました。
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タイトルのとおり、恋愛小説家が怪談小説を書き始めるため、取材でいろんな人の怖い体験談を聞く中で、ちょっと不思議なことに行き当たり続ける、そこはかとなく怖い短編連作。
ホラー小説ではないところが面白い。蜘蛛に睨まれる話が、とにかく怖すぎる。
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怪談作家を志す谷崎友希が,少しゾッと話を収集する話だが,どこにでも怖い話はあるものだ.宮竹茶舗の四代目の毅から地図を借りる話が面白かった.友人の西岡たまみとのコンビを情報収集に役立っているようだ.原田さんの耐寒登山の話もゾッとする.楽しく読めた.
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図書館で表紙を見て「あっ!フジモトマサルさんだ(^o^)♪」と思って借りてしまった(^^)内容は日常でも普通にありそうなゾクゾク話(゜゜;)いつかドカーンと恐怖が来るかも…(--;)とドキドキしながら、そのまま読み終えてしまった(^_^;)
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恋愛小説家から怪談作家へ転身しようとする主人公がいろんな人に怪談話を提供してもらいながら、自分の体験を思い出したり・・・すごく怖いわけではないけれど、半歩ずれたような感覚の描き方にゾクゾクする。
ものすごく私の好きな世界!
でもでも、鈴木さんって結局なにーー?!
気になります。。。
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自分の肩書きが「恋愛小説家」となっているのを見て、考えた末に怪談を書くことにした小説家の話。『文藝 2021年秋季号 特集 怨』の作品ガイドから興味を持ち、図書館で借りた。
前半はちょっと不思議、なんか不思議、ぐらいの話なんだけど、後半では結構不穏な話もある。でも具体的に事象や怪異が現れるわけではない。
恐い話系の本の紹介を見て興味を持ったけど、著者の柴崎友香さんは『寝ても覚めても』を書いた人なのか。と知ってからは著者自身を主人公に重ねながら読むことになった。
藤野可織さんのエッセイ集『私は幽霊を見ない』と続けて読んだのも、なんかよかった。幽霊を見たことがなく、怪奇現象に遭遇したこともない小説家、という部分が共通。
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柴崎さんの文体と怪談は合っていると思う。ぼんやりとした怖さが一番怖い。後ろから誰かが覗きこんでいる。何かを怖いと感じるのはどうしてなんだろう。足音が何度も何度も繰り返し廊下を行き来する。黒い顔が上から覗く。テレビの向こうからひとが歩いてくる。なんでもないようなことではなくて、異界はどこにでも繋がっているのだと思わせる。大阪が舞台なので余計に面白く感じた。公園もイベント会場も喫茶店もあそこやなって分かるから余計に。これからその場所に行ったときに違うものを探してしまうかも。そんな風に思えた。きっとまた何度も繰り返し読むことになると思う本だ。
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恋愛小説家という肩書きが嫌で、怪談作家になろうと決めた、わたし。
知り合いや友人から時々教えてもらう不可思議な話と、ふと遭遇する不思議な出来事。
知り合いから聞いた話。
つがいでいた蜘蛛を殺してしまったことの蜘蛛の恨み。
山登りで出会った同年代の集団の声。
電車にずっと乗っていた人を追跡して迷い込んだ世界。
部屋を借りようと内見に行った先での閉ざされた押入れ。
わたし、が、お茶屋さんで見せてもらった古地図に浮かび上がる手形。
古地図を持って帰ろうとするわたしを、梯子の上から見ていた黒い顔。
ずっと忘れていたこと。
同級生だったたまみと一緒に行った、廃墟の青い色のマンションでの出来事。
不可解!不可思議!
あれはなんだったんだろうって思うようなことが、やっぱり怪談なのか。この話のように。
私は真相を知りたくなってしまう。